美しき一日の終わり

著者 :
  • 講談社
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感想 : 42
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062175128

作品紹介・あらすじ

ある日、父が家に連れてきた少年は秋雨と名乗り、美妙より七つ年下の異母弟であった。それから五十余年、互いへの思いを心の奥底に秘め、それぞれの人生を歩んだ二人は、取り壊しの決まった、古い家で再会する。ともに暮らした幼い日々をなつかしみながら、長い歳月を慈しむように来し方を語り始めた。生涯のすべてを一日に込めて、至高の愛の姿を描く恋愛長編小説の新境地。

感想・レビュー・書評

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  • この小説で一番不思議だったのは、どう考えても姉弟の間にあるのはお互いへの恋愛感情なのを周りの人たち(姉弟の父親と姉の母親で弟の継母、姉の夫や娘、弟のふたりの妻)は気付いているのに、誰一人として声高に「それは良くないことだ」や「気持ち悪い」みたいに責め立てたりする人が居ないことでした。
    言外に匂わせるみたいのは母親からしかなかった。姉の夫は義弟に嫉妬したり、弟の妻は「お姉さんには敵わないな」と弟と別れてしまったりする。でも罵倒されて方が寧ろ楽、みたいなのは弟の二人目の妻も言ってた。罵倒されたら、あぁもう赦されないんだな、と覚悟が出来るのに、、、
    姉・美妙と弟・秋雨は自分の恋心を深い愛情へとじっくり熟成させ、安保闘争や2000年問題などが起こりつつ月日は流れ、たくさんの家族を喪いながら、年老いていく。
    まもなく取り壊される事になった生家でふたりは最後の日を過ごす。
    置いていく家族の象徴として「虫の声が着信音の携帯」があるのでしょうが、置いていくときの言葉が素敵。
    静かなラストでした。ふたり一緒ならもう、なにも怖くない。

  • よかった。
    1人の女性の人生が丁寧に描かれていた。

  • いくらでも昼ドラにできそうなのに、終始そういった下世話な感じにはならないのが上品だよな…

  • 確かに「美しい」のだけどこんな「終わり」納得いかない。

  • 幼き異母兄弟が出会ってから、老いていくまでお互いを想い続けながら、周りの人間に心のうちを見透かされながらも、自分の心をだましながら、凛として生きていく様子を描く。美しい文体と二人の生きざまに感動。

  • 姉と弟の間の55年の歳月が昭和から平成の時代への変遷とともに美しい言葉で綴られています。裕福な家庭で育った15歳の美妙の家に秋雨という8歳の男の子が突然引き取られてきます。冷たく接する母に代わってお世話をする姉の気持ちが痛いほど伝わってきて涙が止まりませんでした。失われてゆく美しい昭和の風景とともに年老いてゆく2人の姿が切なくて物語の世界からなかなか抜け出せなくなってしまいました。

  • 美しい文体で丁寧に描かれた生活にうっとりした一冊。嫉妬からの腹いせのような行動もきれいに表現されており、読んでいて切ない気持ちになりました。よい作品に出会えました。

  • 素敵ないい作品なんですけど・・・。
    ちょっいと違和感。
    人ってこんなに永遠に人を思えるのでしょうか。
    それも心に後ろめたさを抱え、そしてあの状況で。
    孫までいるのに、それでも自分の思いを貫くのでしょうか?
    男だからわからんのかな~。

    • magatama33さん
      禿同。おばさんですがわかりません。(笑)
      禿同。おばさんですがわかりません。(笑)
      2012/09/26
  • この作家さんの作品好きだわ、と改めて思いました。なんとも言えない美しさというか、ゆったりした感じが良いのです。誰かを愛していたら、きっと強くいられる。がんばり続けた一生の最後は愛する人と。

  • タイトルの「一日」は「いちじつ」と読む。
    美妙という名もそうだが、登場人物の名前がとても美しい。
    半分血がつながった弟、秋雨(しゅうう)、その子の冬陽(ふゆひ)、美妙の娘京香と孫の里桜。
    封じ込めた思いの切なさ。
    ささみの海苔巻きが食べたくなる。

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著者プロフィール

作家。1963年生まれ。早稲田大学哲学科、東京大学美学藝術学科卒業。ニューヨーク大学大学院演劇学科終了。母・佐和子との日々を綴った『身がわり』で坪田譲治文学賞受賞。著書に小説『ねむい幸福』『キャベツの新生活』『車掌さんの恋』『月とシャンパン』『風の牧場』『ぼくたちはきっとすごい大人になる』『渋谷の神様』『カムフラージュ』、エッセイに『ニューヨーク空間』『雛を包む』『世界は単純なものに違いない』『恋するフェルメール』『三度目のフェルメール』など。

「2014年 『南下せよと彼女は言う』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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