作品紹介・あらすじ

あの忘れられない日を心に刻む、胸に迫るアンソロジー。作家・詩人17人は、3.11後の世界に何を見たのか。

感想・レビュー・書評

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  • 東日本大震災を題材にしたアンソロジー。それぞれの作家が「詩」「短編小説」「エッセイ」などの形で表現している。この本が出版されたときはまだ、震災後1年もたたないうちだったので、作品にする方々も大変な思いの中で書かれたのではないかと察する。直接的に震災を扱った作品もあれば、全くそれには触れない作品もある。しかしすべての作品はあの震災を内包しており、読むものの心にずしりとくるものを感じさせる。震災を実際に体験した人も、直接的な影響のなかった人も「今」この時期の心を知るために是非読むべき作品集だろう。これから時が経て、数年、数十年後にこのような作品集ができるとすると、作家たちはどのような作品を発表するだろうか。またそれを読む我々はこの頃よりも少しでも精神的にも実質的な面でも前に進んでいるだろうか。

  • 何もかも失って
    言葉まで失ったが
    言葉は壊れなかった
    流されなかった
    ひとりひとりの心の底で

    言葉は発芽する
    瓦礫の下の大地から
    昔ながらの訛り
    走り書きの文字
    途切れがちな意味

    言い古された言葉が
    苦しいゆえに甦る
    哀しみゆえに深まる
    新たな意味へと
    沈黙に裏打ちされて

  • 正面から向かったり、一見無関係なことを書いているようだったり。
    でも、みんな東日本大震災を心のどこかに納めたいという気持ちは同じ。
    震災直後には文学は役に立たなかったかもしれないけれど、前に進まなければいけない今、物語が必要だと思う。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「物語が必要だと思う」
      この一冊は始まりの一冊だと思う。忘れないようにするために、毎年一冊出るくらいが望ましいかも、、、バトンを受け取って書...
      「物語が必要だと思う」
      この一冊は始まりの一冊だと思う。忘れないようにするために、毎年一冊出るくらいが望ましいかも、、、バトンを受け取って書き始める人が出てきますように。。。
      2012/10/17
  • 東日本大震災(2011年3月11日)をテーマにオムニバス。

    全てを失ったけれど、言葉は生まれ続ける―谷川俊太郎
    放射能によって孤立した福島と海外の反応―多和田葉子
    1年間だけ福島で過ごした子供時代と、生きていた同級生―重松清
    どうしようもないときの対処法、夜泣き帽子―小川洋子
    神様2011バージョン、くまとのピクニック、震災後。―川上弘美
    思いつきの旅行によって被災を免れた妊婦の夫婦―川上未映子

    子どもたちだけのなかに存在していた犬のルル―いじいしんじ
    写真に撮った少年は七歳だった―J.D.マクラッチ―
    支援物資を運ぶ途中で聞いた身の上はなし―池澤夏樹
    夫の不倫相手との落ち着いた会話、忘れることはできない起きてしまった以上は―角田光代
    結婚記念日に里帰りし、放射能の影響に苦しむ農家、家族と過ごす時間―古川日出男
    箱について、箱の内側が世界のすべて―明川哲也
    哲学者が船に乗って見たもの、現実と夢の狭間―バリー・ユアグロー

    津波から逃れて避難所での生活、昔の人は津波の恐ろしさを誰もが知っていた事実―佐伯一麦
    大波に憧れるサーファー―阿部和重
    災害や放射能に臆することなく、逃げることをせず、向き合うこと、希望について―村上龍
    関東大震災と被災した芥川龍之介―デイヴィッド・ピース

    多和田さんのは未来予測下手すぎ。
    重松さんのがしっくりって感じ。
    川上弘美さんの神様をまた読めてうれしい。
    川上未映子さんのは愛の夢とかで読んだことあるけど、読み終えてああ被災を免れたんだと気付かされる感じが好き。
    阿部和重さんのサーフィン?かよく謎だけどあれってなに。

    前半よかったけど後半印象薄い。
    震災当時、自分にもっと出来ることがあったんじゃないのかな、と後悔が生まれた。
    改めて3.11を思い返す本)^o^(

  • <閲覧スタッフより>
    谷川俊太郎や多和田葉子、重松清、小川洋子といった現代の作家・詩人17名によるアンソロジーです。3.11という大きな失意・焦燥感をそれぞれの方法で昇華させた作品群をぜひ一読ください。

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    所在記号:918.6||ソレ
    資料番号:10212500
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  • 『原子炉はまだそこに立っている 暖めるもの、殺せるものが、まだあるというのか』『幸福が得ることではないと同様、不幸は失うことと同義ではない。』…この日本で起きたこと、今起きていることに関心を寄せ、向き合わなくては。あらためて日本人であることを強烈に意識しました。感じることは読み手によって全然違うでしょう。これ読んだ人の会やりたいくらいです。

  • 3.11をモチーフとしたアンソロジー。
    震災を直接描いたものは半数くらいだったが、どれも突然日常が崩れることに関する喪失感ややるせなさが溢れている。

    第一線で活躍する執筆陣なのでどの話も申し分なく質が高い。
    初めて知った作家だったが明川哲也の『箱のはなし』は好きだった。こういう不条理な設定で破綻なく進む物語というのは好みである。

    話自体はピンとこないものの川上未映子の『3月の毛糸』はそれが意味するところは深味を感じた。表紙にもなっているし。
    ただなんというか観念的な小説を書く女はどうも合わない。たぶん心の根っこが違うからだろう。

    しかし谷川俊太郎の詩から、いきなり多和田葉子のこんな話を載せるとは編集の痛烈なメッセージを感じるけれど、当事者としたらもう続きを読む気にならないのではないかと思ってしまった。

    感想はそれぞれだろうが、私はたった2年前のことでもここまで記憶が薄らいでいる自分自身に驚愕した。
    角田光代の話は街が大停電に襲われた一夜を描いているのだが、あの日帰宅した時家の電気はついたのか、それすら危うかった。

  • 17人の詩人・作家によるアンソロジー。

    それぞれの詩人・作家が変わらずそれぞれの詩人・作家だった。

    重松清の「おまじない」いしいしんじの「ルル」、川上未映子の「三月の毛糸」、池澤夏樹の「美しい祖母の聖書」、角田光代の「ピース」、明哲也の「箱のはなし」。
    切ない話だったり優しい話だったり、ささやかに勇気を与えるような話だったりそれぞれよかった。
    村上龍の「ユーカリの小さな葉」はいつもの希望を信じて止まない村上龍だった。

    そして全ての作家の言葉と想いをまとめたような谷川俊太郎の「言葉」。



    多和田葉子の「不死の鳥」は設定は面白いとしてもここで書かなくてもいいんじゃないかという内容。
    阿部和重の「RIDE ON TIME」も同様。

  • つかみどころのない、不思議な話が多い。選者の意図が読めない。ただ、それでも三月は、また、やってくる。

  • 実は、これと並行して、『いまだから読みたい本 3.11後の日本』を読んでいたのだが、胸の奥深くまでまっすぐに入ってくる言葉がどちらに多く収録されているかというと、これはもう明らかなのだ。
    その違いは、おそらく、短編小説という形式がもたらす制限のためではなく、いま必要な言葉を聞きたいと願う作り手の切実さの問題だろう。ことが起きてからわずか5カ月めの「記念日」にこんな本を発行しようという出版社の蛮勇には恐れ入るが、ここに参加した「実力作家」のひとりひとりが、この短期間にどれほど深く事態を受けとめて言葉を成熟させ得たか、無惨なほど露わにされている。
    川上弘美の『神様2011』は、やはり読み返すたびに新たな感じ方をさせてくれる傑作。川上未映子の『三月の毛糸』も、「その世界では三月までも毛糸でできあがっている」という言葉に、この世界で生きることの痛みと不安を結晶させて、忘れがたい一篇となっている。
    一方で、「私はかつて『この国には希望だけがない』と書いたが、今、わたしたち日本人は、希望の光だけは失っていない」などと「私たち日本人」を主語にして能天気かつ粗雑なステートメントを述べることのできる村上龍とは対照的に、デイヴィッド・ピースは、関東大震災の直後、「よき市民」として自警団に動員された芥川龍之介の視た世界――娼婦たちや子どもが真っ先に犠牲になり、朝鮮人は虐殺されている――を通して、惨事に終わりはないと暗示するのである。
    他の作品にも、もちろん悪くないものはあるけれど、この種の本はやはり、アンソロジーとしての評価が問われるべきだろう。その意味でも編集責任者が明記されていないのは不誠実というしかない。

  • 震災を目の当たりにして、それぞれの作家がどのようなことを考えたのか、それぞれの短編を通してじんわり伝わってきた。描かれている人々の様子などでは、私自身も震災の時に感じた人々の様子もあり、再度考えさせられた。

  •  智恵がなかろうとお金がなかろうと病があろうと、夜、眠れさえすれば、人間はその時間だけ生き延びることができる。
    (P.50)『夜泣き帽子』小川 洋子

    「海の中を漂う祖母の聖書。美しい祖母の写真を挟んだまま水の流れに乗ってゆらゆらと揺れながら沈んで行く聖書。あるいは海底に着いてじっと動かない聖書。その場所は天然の岩の間かもしれないし、津波で陸から運ばれた瓦礫の間か、ひょっとしたら誰かの死体の枕になっているか。失ったものではあるけれど、ここにいれば写真の祖母の顔をずっと覚えていられそうな気がする」
    (P.155)『美しい祖母の聖書』池澤夏樹

  • +++
    あの忘れられない日を心に刻む、胸に迫るアンソロジー。2011年3月11日に発生した東日本大震災により、甚大な被害を受けた日本。福島第一原発の重大事故との闘いは、今後何十年も続く。大きく魂を揺さぶられた作家、詩人たちは、何を感じ、何を考えたのか? 谷川俊太郎、多和田葉子、重松清、小川洋子、川上弘美、川上未映子、いしいしんじ、J.D.マクラッチ、池澤夏樹、角田光代、古川日出男、明川哲也、バリー・ユアグロー、佐伯一麦、阿部和重、村上龍、デイヴィッド・ピース。
    日本、アメリカ、イギリス同時刊行!本書の著者印税相当額/売り上げの一部は震災復興のため寄付されます。
    +++

    直接的に、間接的にと表現の仕方はそれぞれだが、あの日から変わってしまった事々が描かれているのは間違いない。そして、深い喪失感と哀しみに浸っていてさえ、ただそれを嘆くだけでなく、なんとしても光を見つけ、明日を生きることにつなげていこうという意思のようなものを感じることができる。いまもなおただなかにあり、あるいは、いつ我が身の問題となるかわからない状況にあるすべての人たちが、あの日のことを忘れずにいることを、そして乗り越えることができることを祈らずにはいられない一冊である。

  • う~んとね…。
    イマイチ。

    もちろん、好きだなって作品もあったけど、
    これだけの人が寄せているのに、
    どうにも響き合ってない…というか。
    1冊の本にしてる意味が伝わってこない。
    むしろ不協和音。
    あ。それこそが、味なのかな。
    混沌こそが。

  • それぞれ、震災の直後に書かれたものなのだろう。いま読むと違和感のある描写などある。いしいしんじの「ルル」が良かった。こういう時には童話がいいと思う。

  • 震災直後、自分に何ができるのかと悩んでいた時に巻頭の谷川俊太郎の詩を新聞で読んだ。声に出して繰り返し読んだ。身体の中に何かがわいてきた。そう、言葉は発芽するのだ。17人による物語や詩。形もアプローチも描き方も様々だけれど、それぞれが震災後のその先を見つめ、言葉を紡いだアンソロジー。

  • 3.11について、もしくはそれを連想させるような話をいろいろな作家が綴った短編集。
    どれも短いながらも印象的であの衝撃をさまざまな形で新たな形で感じました。

  • 言い古された言葉が
    苦しみゆえに蘇る
    悲しみゆえに深まる
    新たな意味へと
    沈黙に裏打ちされて

    これはこの本の最初に掲載されている、谷川俊太郎の「言葉」という詩です。沈黙は一つの力だと、理屈上は知っていますが、こうやって、厳しい現実を目の前にこの言葉を叩き付けられたとき、頷くとともに恐怖が襲ってきます。
    どうやって、わたしたちはこれから生きて行けばいいのでしょうか?何を選択して進んで行けばいいのでしょうか?それでもわたしたちは生きて行く。地球はそれでも回り続けると、言うのでしょうか?
    多和田葉子の言葉も厳しい。この予言はあたるかもしれない。この予言にわたしたちは引き寄せられるかもしれない。
    眠る暇もおしんで、わたしたちは今考えなければならないという、岐路に立っているのだと痛感します。

  • 2012.9.29読了。

    川上未映子、角田光代、バリー・ユアグロー、阿部和重がよかった。あのことを綴るには、こうした短編のようなものの方がいいのかもしれない。

  • 谷川俊太郎さんと、
    小川洋子さん、のものを読みたくて手に取りました。
    家じゃないと、ゆっくり読めないです。
    やはり、感情が高ぶるので。

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著者プロフィール

谷川俊太郎(たにがわ しゅんたろう)
1931年、東京生まれ。父に、哲学者・谷川徹三。現在の東京都立豊多摩高等学校を卒業し、1948年頃から詩作の活動を開始。1952年第一詩集『二十億光年の孤独』出版。以後詩、エッセー、脚本、翻訳などの分野で多岐に渡る活躍を続けている。
翻訳については、ジーン・ウェブスター『あしながおじさん』や『スイミー』、ゴフスタインの絵本の数多くを手がける。詩集に『ことばあそびうた』、『みみをすます』、『日々の地図』、『はだか』、 『世間知ラズ』など、エッセー集に『散文』、『ひとり暮らし』、絵本に『わたし』『ともだち』『もこ もこもこ』、詩集に『シャガールと木の葉』、『すき』、『詩の本』、『トロムソコラージュ』など。
萩原朔太郎賞、鮎川信夫賞、三好達治賞、朝日賞など多くの受賞歴がある。

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