海賊とよばれた男 上

著者 :
  • 講談社
4.24
  • (1867)
  • (1548)
  • (591)
  • (97)
  • (26)
本棚登録 : 11507
感想 : 1206
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062175647

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 出光興産・出光左三をモデルにした一代記であり、歴史経済小説である。

    国岡鐡造は貧しいながらも神戸で勉学に励み、その後国岡商店を立ち上げる。まだ、自動車も普及していなかった時代から、国際的な経済動向に目を向け、必ず石油の時代が来ると確信を持つ。彼は石油を販売することを通して、国民の暮らしを豊かにし、国に貢献したいと考えるようになった。しかしながら、石油製品の販売には利権が絡んでおり、なかなか思うようにはいかない・・・。


    上下巻のうち、上巻では終戦直後から、2年後にようやく石油の販売にこぎつけるまでと、生まれてから終戦までが描かれている。まるで山崎豊子の小説を読んでいるように、主人公には次から次へと無理難題が降りかかってくる。ただ、本作の主人公には私利私欲が見られず、周りにも自分が認め、育てた信頼のおける部下たちや、彼の人柄を理解しその生きざまに惚れる実力者たちが大勢いる。彼を目障りに思い、排除しようとする者たちも大勢いるが、理解者たちに救われる思いがする。

    先見の明があり、覚悟をもって一生の仕事を邁進する人が明治時代から戦後にかけての時代に輩出しているように思うが、それは混沌とした時代だから知見があり、知恵と知識を存分に生かし、胆力と気骨ある人を生み出したのか?

    いやいや、今の時代にも必ずそういう人たちはいる。
    時代の先端をまっすぐに進んでいく、進化形のすごい人がきっといる。まぁ、私が知るようになるのは後年小説になったときか、せいぜい「プロフェッショナル」にとりあげられたときだと思うけど・・・。

    あまりにもタフで、信念を貫いていける主人公にただただ感心するばかりで、存在が遠すぎる。けれど、その覚悟を少しだけでも自分なりに意識してみるかと思いつつも、早々に日々の生活に追われて忘れている。それでも、ちょっとだけ小さな器を広げられるように、車の運転中に人に譲ってみたりして・・・。

    P352で「永遠の0」の宮部さんが登場した。2人の人生が交錯した瞬間だった。 
    一瞬でありながらも、宮部さんの人柄を認める人がここにもいると知って、妙にうれしかった!

    下巻では、何が起こるのだろう?

    • nico314さん
      hongoh-遊民さん、こんにちは!

      この本の主人公は国を動かすほどの強い信念を持っていて、正直自分の暮らしとはかけ離れ過ぎていました...
      hongoh-遊民さん、こんにちは!

      この本の主人公は国を動かすほどの強い信念を持っていて、正直自分の暮らしとはかけ離れ過ぎていました。ですが、「覚悟を持って生きていくこと」というあたりは、自分の中に多少なりとも蓄積されたのでは、と思っています。
      2013/10/05
    • honno-遊民さん
      いい本との出会いは、人生の大切な羅針盤を手に入れたと言えるかもしれませんね。
      いい本との出会いは、人生の大切な羅針盤を手に入れたと言えるかもしれませんね。
      2013/10/08
    • nico314さん
      私にとって大切な本との出会いは、とても大好きになれる人にめぐりあえた!という喜びに似ていると感じています。
      私にとって大切な本との出会いは、とても大好きになれる人にめぐりあえた!という喜びに似ていると感じています。
      2013/10/10
  •  出光興産の創業者を、「国岡商店」の店主(社長)国岡てつぞう、として、その男らしい生き方を百田さんのよく調べ込む筆力で描く。いやあ、素敵だ。

     1945年、太平洋戦争の敗戦に伴い、満州の資源を全て失い、油を売ることもできず、(そもそも売る油がない),石統っていう会社からは排斥され・・・そんな状況の中、社員1000人誰一人も鶴首(クビ)にせず再生を目指して奮闘する国岡商店の社員たちの、かっこいいこと。
     会社にとって社員こそが財産、黄金の奴隷たる勿れっていうやつをモットーにして、自分の信念を貫くてつぞうさんの、かっこいいこと。
     あきらめるな、どうしてもだめなら、一緒に乞食をしよう、と、てつぞうを励ます日田重太郎のかっこいいこと。

     彼らの日々のたゆまぬ努力、探究心、日本を愛する心にしびれた。ちなみに「永遠の0」の宮部さんがちらっとこの作品にでてきたのもしびれた。泣けた。
     これは、まだ、上巻なんですよね。てつぞうさんすでに60歳・・・まだまだ働くのでしょうか?

  • 歴史小説によくある文章の感じがあまり得意で無いので、恐る恐る読み始めたが、とても読みやすくて驚いた。

    出光興産の創業者をモデルにした「歴史経済小説」前編。
    日本が戦争に突入していく様や、戦中物資がどんどん徴用されていく様、身を呈して国のために亡くなっていく様、後半の方は読んでいて辛かった。。。
    それだけの犠牲を払って得たものは何だったんだろうか。戦争って虚しい。。
    太平洋戦争がそもそもは石油のために始まったのは知らなかった。

    国岡鐵造のような社長の元で働けたら幸せだろうなー。
    後編でどうなるのか楽しみ。

  • 友愛と努力の話かと思いきや、多分に狂気を持った経営者の一代記だったとは・・・。上巻を読んだだけでも、実際に存在した経営者を基にした、史実に近い小説であるとは到底信じられない内容です。戦前から戦後に掛けての日本の経済や政治の流れを太い幹として、その幹を激しく行き来する田岡商店をはじめとする石油商たち。その石油の世界の中で異端児である田岡は、他の石油商社から憎しみの的になるくらいに突出した存在であり、社員たちを自分の体の一部と思うほどに愛情を注いでいます。
    狂気と言ったのは、人間として王道を歩んでいるようで有りながら、ビジネスとしては綱渡りを選び、社員に多大な犠牲を強いてでも国の為と突き進んで行く所です。普通に考えたらとてもついていけないのですが、田岡氏のカリスマ性で人心を鷲掴みにしていきます。
    この小説をビジネス書のひとつとして読む向きもあるようですが、僕から言わせると「正気か!目を覚ませ!」と言いたくなります。
    田岡商店の歩む道に出てくる数々の障害はほぼ同業者からの妨害で、それを数々の知略と人脈と運で次々乗り越えていくのですが、こんな物凄い経営者じゃ参考にならないでしょう。戦国武将を参考に会社経営するのとほぼ変わらないと思います。
    あと、この話を日本の誇りと思うのも如何なものかと思います。あくまでこの田岡氏が異常に傑出しているだけで、正直民族の誇りにはなりえないし、そもそも足引っ張っているのも日本人ばかりなのですから。まさに田岡商店無双であって、それ以外ではないです。
    それにしてもなんて引き込まれる物語なのでしょうか。読んでいるうちに日本人の魂的な所に火がつくのを感じますね。前述したのとは矛盾しますが。
    さすが伊達に禿げてないな百田尚樹。下巻にさらに期待。

  • 新年早々、気持ちを奮い立たせてくれる1冊でした。
    余韻がすごい。そして、これが史実に基づいていることが何よりすごい。人間の尊さや日本人としての誇りに胸が震えます。

    「出光興産」の創始者、出光佐三が本書主人公のモデルです。
    名前くらいしか知らなかった出光興産ですが、当時は「出勤簿なし、馘首なし、定年なし、家族も面倒見る」という、ただの理想論にも思えるものを、信念を持って有言実行した驚くべき会社でした。

    人道主義と企業の利益追求は相容れないものに感じるのですが、一切の妥協をせず、結果的にはどちらも手に入れている。それは、目先の利益ではなく、10年先20年先のことに目を向ける経営感覚や、戦時中は無償で国に尽くす愛国精神に見られる世のため人のために尽くすという精神が土台にあるからでしょうね。

    長いものに巻かれない、自分の正義を曲げない、なんてことをすれば、敵も多いだろうと思いきや、予想を超える敵の山。「もうダメだろう」という山場がそれはもうたくさんあるのに、その度に天の采配か全て乗り越えてきた。すべての始まりは「人」であり、窮地に陥った時に手を差し伸べてくれるのも「人」であった。
    「ありえない」と思うようなことが逃げ出さずに戦い続けることで次々に達成されていく様は本当に圧巻ですね。

    和を尊ぶ日本だからこそ、出る杭は打たれやすかったんでしょうね。どれほど日本のことを思っていようと、なかなか伝えるということは難しい。
    それでも、明治の人らしい、さっぱりとした気骨のある人物像は会えばきっと多くの人が魅了されたんでしょうね。

    堺屋さんの解説がついているのもよかったです。
    本書には敵のように描かれている人たちにもそれぞれの正義があったことが添えられています。
    これだけの大作を半年で書き上げた著者の百田さんですが、3ヶ月間に3回も倒れながらも没頭して書き上げた1冊ということもすごい。右とか左とかじゃなくて、日本人にこんな素晴らしい人がいたんだということを誇りに思える人でありたいと思いました。

  • 【情熱】
    遅ればせながら読みました。
    期待しすぎたせいで、4★となってしまいました。

    経営者は読むべきでしょう。

  • どんな状況におかれても、自分の為でも、会社の為でもなく、国の為にと、常に広い視野で物事を判断して、正しい道に導く姿は、真のリーダシップに思えた。
    多くの邪魔が入るが、正しい道に進んでいる限り、必ず味方になる人が現れてくれ、助けてくれる場面が多く、人望の厚さを感じさせてくれる。
    度重なる苦境にたたされながらも、わずかなチャンスを必ずものにする姿には、執念を感じた。

    サラリーマン、エンジニアには、読みやすい小説である。

  • 百田尚樹の小説は、どれも感動を呼ぶ力作ぞろい。この作品も、実在の人物をモデルにした感動作。本屋大賞に選ばれるのも納得。次々と襲いかかる障害、困難にひるむことなく、敢然と立ち向かう、こんな日本人がいたんだと、今の時代に勇気をもらえる。

  • 『感想』
    〇終戦直後の状況は現代の環境に慣れている私では本当の意味では分かりませんが、大変だったのは確かでしょう。その中必死に生きた人がいて、今の私たちがいる。そう感じた。

    〇上下巻にまでなっている本で、題名にある”海賊”が何を意味するかが早いうちにわかるとは。他の意味も今後出てくるかもしれないが。

  • 想像以上におもしろい本。
    主人公、国岡鐡造の企業家精神にはただただ感服するだけ。
    出光創業家がシェルとの統合をあれだけ拒むのも納得。
    とにかく下巻が楽しみ。

著者プロフィール



「2022年 『橋下徹の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

百田尚樹の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×