- Amazon.co.jp (386ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062175647
作品紹介・あらすじ
1945年8月15日、異端の石油会社『国岡商店』を率いる国岡鐵造は、海外資産はもちろんなにもかもを失い、残ったのは借金のみ。そのうえ石油会社大手から排斥され売る油もない。しかし『国岡商店』は、社員ひとりたりと馘首せず、旧海軍の残油集めなどで糊口をしのぎながらも、たくましく再生していく。
20世紀の産業を興し、国を誤らせ、人を狂わせ、戦争の火種となった巨大エネルギー・石油。その石油を武器に変えて世界と闘った男とは何者なのか――
『永遠の0』の百田尚樹が初めて挑んだ、実在の人物をモデルにした本格ノンフィクションノベル!
感想・レビュー・書評
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出光興産・出光左三をモデルにした一代記であり、歴史経済小説である。
国岡鐡造は貧しいながらも神戸で勉学に励み、その後国岡商店を立ち上げる。まだ、自動車も普及していなかった時代から、国際的な経済動向に目を向け、必ず石油の時代が来ると確信を持つ。彼は石油を販売することを通して、国民の暮らしを豊かにし、国に貢献したいと考えるようになった。しかしながら、石油製品の販売には利権が絡んでおり、なかなか思うようにはいかない・・・。
上下巻のうち、上巻では終戦直後から、2年後にようやく石油の販売にこぎつけるまでと、生まれてから終戦までが描かれている。まるで山崎豊子の小説を読んでいるように、主人公には次から次へと無理難題が降りかかってくる。ただ、本作の主人公には私利私欲が見られず、周りにも自分が認め、育てた信頼のおける部下たちや、彼の人柄を理解しその生きざまに惚れる実力者たちが大勢いる。彼を目障りに思い、排除しようとする者たちも大勢いるが、理解者たちに救われる思いがする。
先見の明があり、覚悟をもって一生の仕事を邁進する人が明治時代から戦後にかけての時代に輩出しているように思うが、それは混沌とした時代だから知見があり、知恵と知識を存分に生かし、胆力と気骨ある人を生み出したのか?
いやいや、今の時代にも必ずそういう人たちはいる。
時代の先端をまっすぐに進んでいく、進化形のすごい人がきっといる。まぁ、私が知るようになるのは後年小説になったときか、せいぜい「プロフェッショナル」にとりあげられたときだと思うけど・・・。
あまりにもタフで、信念を貫いていける主人公にただただ感心するばかりで、存在が遠すぎる。けれど、その覚悟を少しだけでも自分なりに意識してみるかと思いつつも、早々に日々の生活に追われて忘れている。それでも、ちょっとだけ小さな器を広げられるように、車の運転中に人に譲ってみたりして・・・。
P352で「永遠の0」の宮部さんが登場した。2人の人生が交錯した瞬間だった。
一瞬でありながらも、宮部さんの人柄を認める人がここにもいると知って、妙にうれしかった!
下巻では、何が起こるのだろう? -
この物語に登場する男たちは実在した。
最初のページの真ん中に刻まれている。
緊張した空気を纏いながら幕が上がる感じがした。
20世紀の産業を興し、人を狂わせ、戦争の火種となった巨大エネルギー・石油。その石油を武器に変えて世界と闘った男…出光興産の創業者・出光佐三をモデルにしたノンフィクション・ノベルである。
話が進むにつれ、これは本当にあった話なのか、こんな判断ができる経営者がいたのかと驚嘆がつづく。
主人公を支える社員、資金援者、妻の人生も凄まじい。
特に妻 ユキの覚悟に心が引っ張られた。
国の在り方を問い、国民の在り方を問う。
そして戦争への深い哀しみが刻まれている。
途中にゼロ戦の話が挟まれる。
(あーきっと出てくるだろうな)という名が刻まれていた。
上巻を読み終え、物語を楽しむというより歴史を受け入れなくてはいけない気持ちを感じつつ、下巻を手にする。 -
出光興産の創業者を、「国岡商店」の店主(社長)国岡てつぞう、として、その男らしい生き方を百田さんのよく調べ込む筆力で描く。いやあ、素敵だ。
1945年、太平洋戦争の敗戦に伴い、満州の資源を全て失い、油を売ることもできず、(そもそも売る油がない),石統っていう会社からは排斥され・・・そんな状況の中、社員1000人誰一人も鶴首(クビ)にせず再生を目指して奮闘する国岡商店の社員たちの、かっこいいこと。
会社にとって社員こそが財産、黄金の奴隷たる勿れっていうやつをモットーにして、自分の信念を貫くてつぞうさんの、かっこいいこと。
あきらめるな、どうしてもだめなら、一緒に乞食をしよう、と、てつぞうを励ます日田重太郎のかっこいいこと。
彼らの日々のたゆまぬ努力、探究心、日本を愛する心にしびれた。ちなみに「永遠の0」の宮部さんがちらっとこの作品にでてきたのもしびれた。泣けた。
これは、まだ、上巻なんですよね。てつぞうさんすでに60歳・・・まだまだ働くのでしょうか? -
出光興産創業者 出光佐三氏の生涯をもとにした小説
自分の信念を曲げることなく、戦前、戦中、戦後の動乱期を生き抜いてこられたこんな日本人がおられたことにただただ感動!
「店員は家族と同然」創業以来、一度の首切りもなく、店員を国岡商店の一番の財産と言いきり、戦時中、出征した店員の家族に僅かながらの給金を届け、守り抜いた国岡鐵造
商いは人々のため、しいては日本国の発展のためという生き様は、時勢がどう変化しようともぶれることがなかった
『黄金の奴隷たるなかれ」という言葉に鐵造の姿勢がよく表れている
こんな社長だからこそ、店員は困難な仕事にも嬉々として働くことができたのだろう
両者の間の太い太い信頼関係を見ることができる
人間としての生き様に感動しただけでなく、
昭和初期から戦中、戦後の世界の中の日本の位置、どうして大陸に活路を見いださざるを得なかったのか、戦争に突入していったのか、教科書です通りいっぺんの知識としてしか知らなかった史実が改めてよく分かった -
歴史小説によくある文章の感じがあまり得意で無いので、恐る恐る読み始めたが、とても読みやすくて驚いた。
出光興産の創業者をモデルにした「歴史経済小説」前編。
日本が戦争に突入していく様や、戦中物資がどんどん徴用されていく様、身を呈して国のために亡くなっていく様、後半の方は読んでいて辛かった。。。
それだけの犠牲を払って得たものは何だったんだろうか。戦争って虚しい。。
太平洋戦争がそもそもは石油のために始まったのは知らなかった。
国岡鐵造のような社長の元で働けたら幸せだろうなー。
後編でどうなるのか楽しみ。 -
この本を挟んで、
坂本龍馬と中岡慎太郎が
談笑している画が浮かんだ。
豪快に笑いながら龍馬が言う。
「いいか、中岡。この海賊、実はな…
ワシなんじゃよ♪」 -
友愛と努力の話かと思いきや、多分に狂気を持った経営者の一代記だったとは・・・。上巻を読んだだけでも、実際に存在した経営者を基にした、史実に近い小説であるとは到底信じられない内容です。戦前から戦後に掛けての日本の経済や政治の流れを太い幹として、その幹を激しく行き来する田岡商店をはじめとする石油商たち。その石油の世界の中で異端児である田岡は、他の石油商社から憎しみの的になるくらいに突出した存在であり、社員たちを自分の体の一部と思うほどに愛情を注いでいます。
狂気と言ったのは、人間として王道を歩んでいるようで有りながら、ビジネスとしては綱渡りを選び、社員に多大な犠牲を強いてでも国の為と突き進んで行く所です。普通に考えたらとてもついていけないのですが、田岡氏のカリスマ性で人心を鷲掴みにしていきます。
この小説をビジネス書のひとつとして読む向きもあるようですが、僕から言わせると「正気か!目を覚ませ!」と言いたくなります。
田岡商店の歩む道に出てくる数々の障害はほぼ同業者からの妨害で、それを数々の知略と人脈と運で次々乗り越えていくのですが、こんな物凄い経営者じゃ参考にならないでしょう。戦国武将を参考に会社経営するのとほぼ変わらないと思います。
あと、この話を日本の誇りと思うのも如何なものかと思います。あくまでこの田岡氏が異常に傑出しているだけで、正直民族の誇りにはなりえないし、そもそも足引っ張っているのも日本人ばかりなのですから。まさに田岡商店無双であって、それ以外ではないです。
それにしてもなんて引き込まれる物語なのでしょうか。読んでいるうちに日本人の魂的な所に火がつくのを感じますね。前述したのとは矛盾しますが。
さすが伊達に禿げてないな百田尚樹。下巻にさらに期待。 -
読んでよかった1冊です。
社員を家族の様に愛し、また社員からも愛された男の話。
読んでいてページをめくるごとに目頭が熱くなってきた。
人を真剣に愛するからこそ、周りの人達もこの人の為な頑張れる。
そう思わせるオーラが読んでいてヒシヒシと伝わってきました。
「会社がなくなったら、君たちと一緒に乞食をしよう。」この言葉にグッときた。
この人となら一緒に乞食をしても楽しいだろうな。それくらい惹きつけられた。
何があってもこの本は残しておきます。 -
「これは"0(ゼロ)"に連なる物語」、なんて見出しが似合いそうな。
エビカツでお世話になっている方からお借りして、夢中で読んでしまいました。
全てを失った夏、0を継いだ春、乾坤一擲の秋、そしてつないでいく冬、
四季になぞらえての展開も、時代の流れとリンクしていて、入りやすく。
そして、石油という"エネルギー資源"の大切さと呪縛、戦略性をあらためて。
けだし、先の大東亜戦争は「資源戦争」であったのだと、実感。
その資源問題は戦後になっても変わらずに、むしろ加速していきます。
そして今再び、資源戦争の兆候も見え隠れし始めてもいますね。。
これを念頭に、尖閣や竹島を読み解くに、単純な領土ではなく「資源」をキーワードにすると、
それぞれが突っかかって来る理由も見えてくるのではないかと。
そういった意味ではもう「戦後」ではないのでしょう。
個人的には、人や食料も含めての、広義の資源を対象とした、
「覇権と独占、そして収奪」という戦前の帝国主義が復権しつつあるとみています。
閑話休題。
さて肝心の本編ですが、出光興産の創始者「出光佐三氏」をモデルとしており、
形式は架空の人物名でありながらも、日章丸事件はそのまま使われています。
経済小説に分類されるとのことですが、歴史物語として読んでも面白い。
途中、"0(ゼロ)"を感じることができるのもまた、なかなかに。
"筋"を通すとはこういうことか、国を、人を愛するとはこういうことか、
戦後、日本がどこかに置き忘れてきてしまった「価値観」がこれでもかと迫ってきます。
信念を貫くに、相手を問わず、諦めることなく、天地に恥じることなく、
そういった日本人の失われつつある心性を感じながら、読み進めました。
そして、そんな出光氏(劇中は国岡氏)を偲んで一つの歌が残されています。
国のため ひとよつらぬき 尽くしたる
きみまた去りぬ さびしと思ふ
(出光佐三逝く 三月七日 昭和天皇御製)
この一事を見るだけでも、本当に日本を国を愛していたのだなと、実感できました。
こういった逸話こそ、歴史教育の中で伝えられていくべきと思うのですが、
不思議と戦後の話は省略されることが多いのではないでしょうか。
これは、GHQの赤い部分の意向が強く働いた結果とも言われていて、
それらが戦後に日教組や自治労との形をとって、侵食し続けている証左なんでしょう。
確かに汎用的な評価が難しいとの側面はありますが、、
現在を生きる者にとって、卑近の歴史こそ大事とも思います。
それをしてこその、学問であり教育だよなぁと、あらためて実感です。
ん、生涯学習との切口で、立ち向かってみようと感じた、そんな一冊。 -
待ちに待った百田尚樹の新作!
国岡鐵造。すごい男が居たものだ。戦後の動乱期、ひとりの馘首もならん…日本企業の経営者に聞かせたい言葉だ。社員を人財と考え、自己の利益よりも国益を優先させる姿勢は真の経営者だ。
今の日本企業は、企業の存続のためにリストラと資産処分と企業の切り売りしか行ってないように見える。グローバルという流行りの言葉を使って、安価な労賃ばかりに目を向けた海外生産だけの戦略で、単に日本国内のものづくり文化を空洞化させているようだ。
真のグローバリズムとは鐵造の経営姿勢を言うのではないだろうか。
もともと日本は資源の乏しい国。先人達は知恵と努力で、ものづくり立国を創り上げて来た。鐵造もそんな先人のひとり。
さて、下巻はどのように展開するのか楽しみだ。
そして、零のサプライズプレゼント…うまい!
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百田尚樹の作品






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この本の主人公は国を動かすほどの強い信念を持っていて、正直自分の暮らしとはかけ離れ過ぎていました...
この本の主人公は国を動かすほどの強い信念を持っていて、正直自分の暮らしとはかけ離れ過ぎていました。ですが、「覚悟を持って生きていくこと」というあたりは、自分の中に多少なりとも蓄積されたのでは、と思っています。