サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件

著者 :
  • 講談社
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感想 : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062175890

作品紹介・あらすじ

名門企業を地獄に引きずり込んだ悪党は誰だ?会社を私物化する経営者、粉飾に群がる闇の人脈、批判を潰される社員たち。マスメディアが無視する中、内部告発と極秘資料をもとに、著者がたった一人で追及した経済スキャンダルの全貌。誰よりも早く不正を暴き雑誌ジャーナリズム賞「大賞」受賞。

感想・レビュー・書評

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  • オリンパス事件が発覚する端緒になったファクタ記事を書いたフリージャーナリストによる手記。当時はウッドフォードの社長解任のニュースを聞いて「そう言えばファクタオンラインで何か書いてたな」と思い出すのも束の間、pwcの調査報告書やら事情通元証券マンのブログやら何やらが続々ネットに出てきて、野次馬根性をおおいに満足させてもらった。そんな急展開する事態の裏では、こんな徒手空拳のフリージャーナリストの奮闘があったのかと改めて感心。

    やっぱりなと思うのは内部告発があったことについて。少人数の偉い人だけであれだけの粉飾を長期間できるわけはない。M&Aも不自然だし、社内ではいろんな噂が流れていたろう。また本社ばかりがお偉いというオリンパスの企業風土も描かれる。これはまったくの仮説だが、粉飾の秘密を抱えると、上に上がれるのも秘密を守る人だけになるし、それが風通しの悪さにますますつながる悪循環があったのではなかろうか。なにしろ10年以上のあいだごまかし続けていたのだから。

    こわいのは、こうした形で事件が明るみに出たのも、社員からの告発をたまたま著者がキャッチできて、たまたまウッドフォードという日本人サラリーマンではない人が社長のポストについて、ファクタの記事をウッドフォードに伝えた人がいてと、偶然が重なってのもの。いずれ別の形で表に出たかもしれないが、逃げ切り一歩手前まで行っていたと言える。

    またわが身というか勤め先を振り返ってみると、オリンパスとまでは行かずとも、完全に他人事とばかりも言えない感じがする。コワイコワイ。

    著者が戦う相手はオリンパスだけでなく、大手マスコミや日本の企業社会全体とも見える。組織のメンバーとして組織に同一化し、雉も鳴かずば撃たれまいでリスク回避するのが標準的な日本のサラリーマン道であれば、ペン1本で時には人の嫌がることを暴きたてもするフリージャーナリストはその対極にある。日系企業育ちとは言え、やっぱりアングロサクソン型経営者のウッドフォードと著者が気脈を通じ合うのはなんとなく分かる。

    事件を報道で追っかけていた頃は、一サラリーマンとしてある意味身近なオリンパス内部のことがどうしても関心の対象だったが、元野村やジェイ・ブリッジの強盗紳士たちは悪いね。著者やウッドフォードがこの事件においては善玉の一匹狼とすれば、こちらは鈍くて従順な羊を食い物にする悪玉狼だ。

    最後の章のあたりでの、上場維持判断や官製粉飾決算疑惑については、ボクは著者とは見解を異にする。上場廃止は誰得問題が残る。再発防止の見せしめという要素はあろうが、つきつめると事業自体はまだ健全な会社を罰してもしようがない。下手人=経営者個人をとことん罰するべきだろう。ここの分離ができないのは、組織と一体化してしまう日本人サラリーマンの文化とコインの裏表だ。

    細かいところだが不正確だったり、疑問だったりする点も。
    ・税務は検査でなくて調査。調査官が1人や2人ということもない。2チームの間違いだろう。
    ・買収手数料をのれんに含めるのは正当な処理。オリンパスの場合は、それは正常な手数料じゃないでしょ、ということ。
    ・株主代表訴訟で賠償を払わねばならないのは訴えられた経営者など。会社が払っても意味ない、それじゃ配当じゃないか。
    ・公認会計士に監視がないというのも舌足らずでは。ピアレビューや金融庁の検査がある。どれだけ機能しているか分からんが、常にアカウンタビリティーを意識しながら監査しているとは思う。

    公益通報者保護法が役に立たんと言うのはその通り。
    怪僧和空なんて登場人物まで。

  • 経営の中心部分が腐っており、その周辺部分も汚染され、
    悪い意味でのサラリーマン根性の集大成ともいうべき状態だった
    ※193、第三者委報告

    バブル期の投資の失敗、
    金融資産の会計主義が取得原価主義→時価評価主義
    巨額の含み損の表面化を回避するために
    連結対象外の海外投資ファンドに飛ばす
    価値の低い会社を買収、のれん代のかたちで資産に計上し
    償却ルールに従って秘密裏に処理する

    有価証券報告書の読み込みでスクープになったのかと
    思っていたら、実際は内部告発だった
    FACTAに持ち込み原稿が正解

    それしても東芝の「不適切会計」といい、ありゃまあ、という感じ

  • 府中市立図書館の本日返却の棚にあったので借りて読む。きっと東芝の方が「こうした悪しき先例がありながら自社はどうして似たような轍を踏んでしまったのか?」と慚愧の念に襲われながら読んでいたのでしょう。同情を禁じ得ません。
    オリンパスの粉飾を追求したFACTAに寄稿した著者による単行本。
    フリージャーナリストの努力と非大手媒体の意義と価値の分かる一冊です。

  • いわゆるオリンパス事件、2011年に表沙汰になった巨額の損失隠しについて、追及の最前線に立っていたジャーナリストが、これまでの取材をまとめた本です。

    複雑な損失隠しの具体的な手法が、臨場感のある筆運びで暴かれていきます。さすがは大企業、その粉飾スキームは隅々まで手が込んでいて興味深い。先人が残していった無謀なギャンブルの残骸を、表に出ないように粛々と「減価償却」していくメカニズムは惚れ惚れするほどの完成度。そしてこれを主導した経営陣には、2013年の東京地裁判決にてまさかの執行猶予がついたのですから、これはいろんな意味で実に「素晴らしい仕事」であったといえます。

    憤りを覚えるのは、退任後も菊川氏が社長室を占拠していた(P.183)という事実に象徴される、経営陣の図々しい開き直りと、それを唯々諾々と受け入れてきたオリンパス社内の堕落した空気です。確かにいまの経営陣が損失をつくったわけではないのかもしれません。それにしても第三者委員会のレポートにある通り、「悪い意味でのサラリーマン根性の集大成(P.193)」として切り捨てるべき傲慢な体質だと思います。

    とりわけ解体屋が絡み合う国内3社の買収劇の記述において、著者たちの力量が特に発揮されているように思います。よくここまで切り込んだものだと、その努力に感心するばかりです。取材の裏側を明かす場面やウッドフォード氏退任に関する部分は、著者の正義感みたいなものが少々暑苦しく感じられたので読み飛ばしましたが、本書は日本企業の「先送り」体質を考える上で必読の書といえるかと思います。

    (20160228)

  • 「日本人はなぜサムライとイディオット(愚か者)がこうも極端に分かれてしまうのか」この事件のキーパーソンであるマイケル・ウッドウォード氏が筆者に対して問うたこの問いはそのまま我々へと向く物だと思います。

    オリンパスといって僕が思い出すことは八王子に大きな工場があったなということと、WBSでマイケル・ウッドフォード氏の様子を何度か見たかなという程度でした。

    ところが、このオリンパスの中で、日本はおろか、世界中の市場及び企業社会を根幹から揺るがしかねない経済スキャンダルと、その裏ですさまじいまでの暗闘が行われていたことをこの本を読んで、改めて知ることができました。本書を著した筆者はオリンパス社員からの『内部告発』によって巨大なグローバル企業と戦うのですが、筆者の後押しをする「ファクタ」という雑誌の阿部氏の気骨ある姿勢とブログに掲げられている文書の洒脱さと『震えながらお待ちください』などのキツいユーモアの数々ににやりとさせられながらも、天文学的な負債を巧妙極まりない手段で隠蔽し続けてきた当時の経営陣と、金融の『プロ』達による複雑極まりないスキームが読み進ていくにあたって明らかになるプロセスには本当にある意味でひっくり返りそうになりました。

    やがて、「ファクタ」のほかにも大手マスメディアがこの問題を追及し、東京地検特捜部が本格的な捜査に乗り出し、最終的には逮捕者まで出るという一大スキャンダルになったという顛末を改めて知るにつけ、内部告発という手段でこの問題を提示したオリンパスの社員と、文字通り孤立無援で記事を書き続けた筆者。『個人』というものが凄くキーになっているなという印象を持ちました。

    最後のほうで、キーパーソンであるマイケル・ウッドウォード氏が筆者に『日本人はなぜサムライとイディオット(愚か者)がこうも簡単に分かれてしまうのか』と少し感情的に問われたとき、筆者は何も答えることが出来なかったと書いておりますが、もし、僕が筆者だったとしたら欧米のエリートにはありえない感覚だが、と前置きした上で
    『日本の社会のエリート層にはサムライもいるのだがその一方で、義理を書く、人情を書く、さらには平気で恥をかくといういわば「三カク術」を駆使して出世してきた人間が一定の割合で存在しているからであると思う』
    と返答するでしょう。そのときに彼が一体どういう反応をするかは、神のみぞ知る、といったところでございます。

  • 新社長の気持ち、告発した社員の気持ち、ジャーナリストの気持ち。そして、不正をした張本人。どれも、正義の人とも悪人とも思えない。共感しうる。こういう会社と普通の会社、
    なんかギリギリだと思った。

  • ウッドフォード元オリンパス社長自身の「どうして、日本人はサムライとイディオットへ極端に分かれてしまうのだろう」という言葉がそのままタイトルになった本書。 ほんと、どうしてなんだろう。

    オリンパスの多額損失隠しと、これら一連の不法行為を指南し、利得を得ていた野村OBを、芋ずる式に明るみへ引っ張り出す端緒となった月刊誌FACTA の記事提供を行ってきた著者による一冊。

    なるほど、こんな不正がまかり通ってしまうんだな、というケーススタディという意味では「本社」と名のつく職場で働くかたは、一読の価値があります。 また、海外の報道と国内の報道をきちんと比較できる能力を得なければならないという重要な示唆を得ました。

    ライブドアは1年間で50億円の不正会計をあげ上場廃止となった一方、オリンパスは20年間で1,000億円の不正会計をあげ上場維持をしているとあります。 預かりものの資本主義ではなく、真に世界に通用するマーケットの構築こそ、冒頭の疑問に耐えられる解かと感じました。

  • 俺はこれだけ危ない橋を渡ったみたいな作者の自己満足と感じられる部分が多く読んでいて不快になった。

  • 個人のパワー。日本的企業の悪しき慣習。

  • これは面白い。やっと不可解なストーリーがわかった。しかしウッドフォードを美化賞賛しすぎではないか。気に入らない。その後、ダニのようにオリンパスから10年分の給与を吸い取った。世の中、善と悪には分けられない。

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著者プロフィール

山口義正(やまぐち・よしまさ)
1967年生まれ。愛知県出身。法政大学法学部卒。日本公社債研究所(現格付投資情報センター)アナリスト、日本経済新聞証券部記者などを経て、現在は経済ジャーナリスト。月刊誌「FACTA」2011年8月号で初めてオリンパスがひた隠しにしてきた不透明な買収案件を暴いて大きな反響を呼ぶ。その記事は解任された元社長マイケル・ウッドフォードがオリンパスを告発する引き金となり、また第18回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞「大賞」を受賞。本書の親本『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』は第34回講談社ノンフィクション賞最終候補作となった。近著に『内部告発の時代』(共著、平凡社新書)がある。

「2016年 『ザ・粉飾 暗闘オリンパス事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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