ふくろう

著者 :
  • 講談社
3.63
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本棚登録 : 79
感想 : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062176170

作品紹介・あらすじ

伴鍋次郎は西丸書院番士に引き立てられるが、両親はなぜか狼狽する。町で会った初対面の老武士には「許してくれ」と土下座され、不審は募るばかり。そんな矢先、家で書物の整理をしていると、「鍋次郎」と記された自分の名前の位牌と、父の昔の日記を見つける。日記には、鍋次郎が生まれたころの記述だけが欠落していた。自分は養子だったのか?己の出生の真相に迫る鍋次郎。私はいったい誰なのだ。ふくろうの根付にこめられた我が子への願いとは。若手注目株の長編時代小説。

感想・レビュー・書評

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  • 江戸時代後期、文政六年(1823)松平外記忠寬によって引き起こされた刃傷事件「千代田の刃傷事件」を題材に書かれた素晴らしい読む価値のあるご本です。
         家族の絆。
    本作中 痛みを知らねば、痛みはわからぬ。この言葉が読後も強く印象に残った。

  • 久しぶりの時代小説です。

    幼なじみの気立てのいい妻とやがて生まれてくる子供。
    西丸書院番士に引き立てられるという幸運にも恵まれ、
    幸せな家庭をちゃくちゃくと築く、伴鍋次郎。
    ある日、茶店で出会ったうつ病の老人が、
    自分の顔を見てひどく驚き、
    切りつけられるという事件に遭遇します。

    あの老人はなぜ自分を見てあんなに驚いたのだろう。
    鍋次郎は、ずっとそのことが気になっていましたが、
    ある日、自宅で書物の整理をしていて、
    自分の名前の位牌と父親の古い日記を見つけます。
    自分の出生に秘密があると悟った鍋次郎は、
    母親から自分が養子であったことを聞きました。

    では自分の両親は誰なのか?
    自分の名前の位牌のそばにあった
    ふくろうの根付は誰の物?
    老人が自分を見て驚いたのも
    自分の出生と何か関係があるのだろうか?

    まだまだ解けない謎を追い求め、
    ついに鍋次郎は、実の父母の哀しい過去を突き止めます。
    そこには、陰湿な大人のいじめがあったのでした。

    やれやれ、驚きました。
    江戸時代にもこんな陰湿なパワハラがあったとは。
    上には逆らえない縦社会の中で恨みつらみが募っていく不幸。
    そんな哀しい運命から逃れた鍋次郎ですが、
    この出来事をきっかけに復讐心がめばえます。
    そんな鍋次郎を救ったのは、不細工なふくろうの根付でした。

    親ってなんて子供にたいして奥深い愛情を持つものなのだろう。
    言葉ではいいあらわせない、
    万感の思いが込められたふくろうの根付は
    きっと鍋次郎の将来を導いてくれることでしょう。

    大人社会のいじめは、現代にもありそうです。
    この点においては、
    江戸時代も今も変わらないなあと思いました。

  • L

    自分の出生の秘密と父の壮絶な最期を知る話。

    父の話は、史実。
    ここまでの刃傷沙汰をでっち上げるとは…と思ったら、松平外記話は実在で史実。
    文学演劇の題材にもなってるらしいけど、恥ずかしながら知らず。

    wikiによれば長男までは実在で、主役の次男が創作なのか?

    城内の刃傷沙汰は浅野内匠頭の事件と田沼意次の息子くらいかと思ってたらほかにもあったのかー。内容的に興味深い。

  • 3.5
    自分が自分ではなかった。
    ネタバレ。
    自分の出生の秘密。職場での壮絶ないじめにあい、刃傷に及んだ父が実父だった。友人宅に引き取られ、何も知らず育っていた。
    父を虐め、刃傷、切腹に追い込んだ大元を殺めようとするが、その孫を助け、黒幕も許す。
    実母に偶然会い、挨拶をするが、実母は実は気づいてたのでは。
    仇二人も気づくぐらい顔が似てるし。
    職を引き立てられたのは、贖罪の気持ちから、黒幕か?
    それもそれで嫌味だけど。

    全体的に哀しい物語だけど、救いがある。

  • 自らの出生を調べる主人公が知った、思いもよらない事実とは。
    今の生活が幸せに満ちているからこそ、過去との対比がすさまじい。
    真っ当なことが真っ当に行われない、もどかしさや憤り。
    舞台は江戸時代だが、そのまま現代に通じる問題。
    しかも、史実だったとは。

  • 西丸書院番士に引き立てらた伴鍋次郎が、両親の狼狽を目にし、そして町で出会った老武士の不可解な態度に不審に感じ探ると自分の出生の秘密、西丸書院番士に纏わる過去の悲しい事件を知ることになる。無骨な手彫りのふくろう(不苦労)の根付にこめられた我が子への愛情に溢れた父親の思いに涙した。江戸時代後期の新人いじめ「千代田の刃傷事件」という史実を基に、事件を起こした息子を主人公に設定し武家人情物語として構成される。

  • いじめが主題になってて胸糞だけども、最後で救われた感じ。

  • いい年した男のいじめって結構壮絶だってきいたことありますが、
    お城のなかの侍の間でくりひろげられます。あまりにもせこい陰謀ですが、結果は深刻。親子二代にわたり、影響がでていきますが、読後感は悪くないものになってます。いい、です。

  • 愛妻の妊娠が分かり幸せいっぱいの旗本が、あるきっかけで
    自分の出生に疑問を抱く。
    主人公は、秘密にされていた実父の起こした刃傷沙汰について、実父の親友から話を聞く。
    壮絶ないじめが原因で、心を病んでしまう父。泰平の世、就職難、リストラ、格差社会、どこか現代とよく似ている。
    復讐に燃える主人公が選んだ道には、ホッとした。
    あまりに酷いいじめは読むだけで辛い。

  • オトナの世界のイジメもえげつないこと

    いつどこで負の連鎖を断ち切るか…

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著者プロフィール

東京生まれ。フリーランスライターの傍ら小説執筆を開始、2005年「い草の花」で九州さが大衆文学賞を受賞。08年には『一朝の夢』で松本清張賞を受賞し、単行本デビューする。以後、時代小説の旗手として多くの読者の支持を得る。15年刊行の『ヨイ豊』で直木賞候補となり注目を集める。近著に『葵の月』『五弁の秋花』『北斎まんだら』など。

「2021年 『吾妻おもかげ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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