K

著者 :
  • 講談社
3.62
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本棚登録 : 190
感想 : 42
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062176705

作品紹介・あらすじ

円満とはいえなかった夫婦生活を、優しさとユーモアに溢れた眼差しで振り返るとき、そこにはかけがえのない「愛」と呼べるものがあった-。逝ってしまった妻・Kへの想い。半世紀に及ぶある夫婦の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 私小説なのにこんなに面白くて良いのかって思うほど面白かった。
    面白いって言葉が適切なのか自信はないけれど。
    他人の夫婦、余所様の家庭を覗き見してる感じで。
    我ながら悪趣味だな。

    詩人で作家の三木卓氏がやはり詩人だった妻“K”の事を赤裸々につづった本書。
    この妻の悪妻っぷりがすごい。思わず笑っちゃう。
    お風呂を沸かしてくれと頼んだだけで怒って家出しちゃうし、結婚後初めての夫の給料は全部自分で使っちゃうし。
    挙句の果てにアパートを借りて夫をそこへ追い出す。
    夫が病気で入院しても自宅には戻ってくるなとなんと冷たいお言葉。

    でも、そんな妻を三木氏は最後まで好きだったんだろうな。
    わがまま放題で冷たい仕打ちをされたにも関わらず、妻の闘病生活を支えているし、時に妻のために涙する。
    東北のお嬢様育ちの妻の都会での寂寥感を理解し、死後は妻のために遺稿集も出版する。
    本当にKは幸せ者だよ。

    でも天国でKは何と言ってるだろう。
    勝手に小説に私の事を書いてってきっと憤慨してるだろうな。
    遺稿集にしても、絶対「ありがとう」なんて言わないんだろうな。
    そんな妻だもの。
    そんな妻が唯一の伴侶と言える三木氏、いいわぁ。
    こんな素敵な私小説をありがとう。

  • 男性が妻を亡くして書く追悼記には鼻白むことが多いのだが、これは違った。
    著者が妻になる女性と知り合ってから、彼女が亡くなるまでを書いているが、まあこの女性の強烈なこと。
    家事はしたことがなく、仕事もしたくない。お金はあるだけ使ってしまう。子どもは溺愛し、自立させない。夫は追いだす。(生活費は夫持ち)
    普通の男なら離婚して当然のような人。
    でも、いやな気持にならないのは、夫である三木さんが、彼女の生い立ち、性格を十分わかっていて、彼女の個性を認めているから。
    確かに乳児の頃に乳母の家に預けられ学齢になったら、むりやり家に戻されるという体験が感じやすい女の子の心にどれほど深い傷を残したか想像に難くない。
    生き方が非常に下手で、生きにくい世を精一杯生きた彼女、Kの冥福を祈ります。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      三木卓は、結構好きな物書きです。「おおやさんはねこ」「星のカンタータ」等
      福井桂子の詩は読んだコトありませんが、今気になるのが彼女自身が三木...
      三木卓は、結構好きな物書きです。「おおやさんはねこ」「星のカンタータ」等
      福井桂子の詩は読んだコトありませんが、今気になるのが彼女自身が三木卓をどんな風に思っていたか。。。もう聞けない訳ですが、、、
      2012/10/31
  • 詩人三木卓氏が、同じく詩人だったKこと妻の福井桂子氏との出会いからその死までを描いた私小説。夫婦(家族)のことは夫婦(家族)にしかわからないというけれど、それはこういうことなのだなぁという感慨、そして陰惨にもなりかねないこの物語をそうは描かない(またはそうは受け取らない)著者のスタンスとセンスの絶妙さ。切なく滑稽で、深く頷いてしまうような。数十年間ほとんど家に帰らず別々に暮らしながらも離婚はせず、しかし当然のように乞われて最期を看取る。惚れ抜いた伴侶と共に歩んだ人生"ではない"、としてもそれを失敗とはせず、むしろそこから得たものがなんと豊かに描かれていることか。人の生と情の様々なあり方に静かに感嘆する。

  • 人間関係の距離感は、人それぞれ違う。
    特に異性との距離感は、様々。
    悲喜交々相まって、複雑だ。
    夫婦関係も同じだ。
    ラブラブ親密をいつまでも維持している
    カップルがいる反面、
    なんで、まだ婚姻関係が続いているのか
    理解不能なカップルもいる。
    面白いものである。
    本書は、ある意味特殊であり、どこにでもある
    夫婦。
    すれ違いあり、心の通い合いがあり。
    個人的にはとても楽しめたのだが、読者を選ぶかもしれない。

  • 氏の作品は「路地」以来でしたが、ここまで妻との関係を書ける著者の力に感服しました。


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  • 久々に3日で読破しました。


    我が家は日経新聞を読んでいるのですが

    以前、新聞で見た三木さんの書いたものの印象が、とても強く残っていて

    いつか読もうと決めていた本でした。

    三木さんご夫婦の不思議な、というより変わった関係と、

    近頃私も考えてしまう孤独と、繋がっているような気がしてきました。


    それにしても、Kさんは謎。

  • 読んでいて辛かったし、苦しかったし、楽しいなんていうこともほぼなかったし、けれど何かしら、引きずり込まれるような感覚でどんどん読まされてしまって、結局読み終えてしまった。
    やっぱり我が身の人生に照らし合わせてもいた自分があった。
    「結婚」。これはもう筆舌に尽くしがたい世界。この「結婚」をどう捉えていくかで、人生は如何様にでも変遷していく、そう思う。だからこそ・・・、ということで、敢えて「・・・・」のことは明記せずに置いておこう。人生、まだまだ道半ばでもあるからだ。

  • がまくんとかえるくんの、心にしみる翻訳が好きだが、恥ずかしながら翻訳以外は初挑戦の三木卓作品。
    生意気承知で言うが、さすがの文章力で、エッセイを読むのが苦手な私にも、とても読みやすい。
    奥様(K)と、奥様との暮らしの回顧録だが、読んでいくとKという女性が奥様という言葉が遠い方だとわかる。そして、三木さんとKさんの夫婦生活が、普通とずいぶん違うことも。
    この本をKさんが読まれたら、と想像すると、思わず笑ってしまう。でも、芥川賞作家で日本中の子どもたちに愛されるアーノルド・ローベルの名翻訳者の三木卓さんがあるのは、ちょっと変わったKさんと、Kさんとの結婚生活があったからかもしれない。

  • 私小説だが、他人の生活を覗き見るような気持ちではなく、Kという女性の嵐のような生き方に圧倒される。女にとって、結婚が生存競争そのものだった時代があり、「私」を選んだKは、それに勝利した人なのではないかとも。

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著者プロフィール

詩人、小説家。1935年生まれ。早大露文科を卒業。詩人として詩集『東京午前三時』でH氏賞、『わがキディ・ランド』で高見順賞を受け、小説家としては「鶸(ひわ)」で芥川賞、『路地』で谷崎潤一郎賞、『K』で伊藤整文学賞を受賞する。児童文学作品や児童文学の翻訳も数多く、『ぽたぽた』で野間児童文芸賞、『イヌのヒロシ』で路傍の石文学賞を受賞するなど、詩、小説、児童文学の世界で受賞歴多数。2011年、旭日中綬章を受章。

「2018年 『ミッドワイフの家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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