最果てアーケード

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  • 講談社
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  • / ISBN・EAN: 9784062176712

作品紹介・あらすじ

ここは、世界でいちばん小さなアーケード――。
愛するものを失った人々が、想い出を買いにくる。
小川洋子が贈る、切なくも美しい記憶のかけらの物語

※本書は、「BE・LOVE」連載コミック「最果てアーケード」の原作として書き下ろされたものです。

感想・レビュー・書評

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  • 異空間に突然紛れ込んでしまったかのような余韻にいつまでもひたっていたくなる。

    ここは世界で一番小さなアーケード。
    入口はひっそりとして目立たず、中も古びていて薄暗い。街中にある商店街というより、何かの拍子にできた世界の窪みのような空間。知る人ぞ知る、という感じの特殊な場所。
    アーケードで売られているものは、使い古しのレース、使用済みの絵葉書、義眼、ドアノブ、遺髪レース…。一体誰が使うの?と問いたくなる品々だけれど、必要とし買い求めるお客が少なからずいる。買い求めるお客がいる限り、アーケードは消滅することはない。

    酒井駒子さんの表紙がアーケードの物悲しさを見事に表現していて、目が離せなくなる。
    常に死の香りがまとっていてこの世の寂しさ切なさ哀しみを拭いきれず、けれど頁をめくる指を止めることができない魔力がそこにある。止めたいのに止めれない。そして物語が終わっても続きが読みたくて仕方ない…そんな物語だった。
    久々に小川ワールドの虜になってしまった一冊。

    ああ、できることならノブさんの雄ライオンのドアノブを回して窪みの中に入り、好きなだけ閉じこもってみたい。

  • 世界一小さなアーケード、ほんの10数メートル先は行き止まりそこには変わった店が軒を連ねている。
    「私」は家主であり配達員でもある。
    どんなアーケードなのか想像してみる、どことなく懐かしい感じがする。
    シャッター街でもなく、おかげ横丁や温泉街の横丁でもない、どら猫横丁でもなさそう。道化た雰囲気があるきっとスペイン横丁的な感じ。行ったことないのでイメージなんですが脳内の色見本をめくりながらあわせてみました。

    読了して、うーん、なんだろうこの雰囲気は自分はこの気持ちを表す言葉を持ち合わせていない、まだ解明できないでいる前世とを繋ぐ何かのように感じてしまった。仮に「@#$%」ぽいと表現してみる事にした。
    生と死の境界に日常が蠢いているような「@#$%」ぽさは原始の揺らぎのように時を刻んでいる。
    ひょっとして「@#$%」じゃなくて「@#$%!?」があってるのかもしれない。
    辿り着くとそこには川が流れていて何度渡っても同じ川が現れるようなデジャブ
    彼女は佐野元春信者だったから当然「ロックンロールナイト」の歌詞はそらんじてるに違いない。
    小川洋子さんだけに「リトルリバーアゲン」って感じで真実に辿り着けないでいる状態。そうだ、頭文字をとって「LRA」「りら」ってるってかんじ。
    ろれつが回らないような響きがいい。
    りらってるんだww

    彷徨いながら常に何かを追い求めているって感じかな。

    作中、たくさんの音が鳴っていたはずなのに聴こえてこないのです。サイレントムービーをみてるように。
    フォークダンスの擦り切れたレコードの音もドーナッツを揚げる音も路線電車が通る音も何も聞こえなく情景だけが現れては消えてゆくそんな背中を追ってるような
    コウモリのメロディーをヴァイオリンで奏れる助手。周波数を人の耳にあわせても不細工な響きにしかならなかったように耳鳴りにしか感じない。
    石鹸の香りや軟膏の匂いはイメージできるのに不思議だ。
    時間軸が曖昧に乱れて過去と今を行き来して愛する人たちに出会うけど、未来はほんの10数メートル行ったら行止まってしまう行き場のない閉塞感。

    たらり・たらりら・りら・りら・たらり

    お店のことで近所にも風変わりなところがあります。
    金曜しか営業しない手作り振りかけ屋さんとか、月水金はディサービスに行ってて火木土しか営業しない金物屋さんとか。長野で入った蕎麦屋さんも週4日昼時の150分しか営業してないとかww
    仕事してるとゆうよりそこで生活しているって感じが強くって閑散とした暮らしの一部に仕事があるってところが長閑に映りました。
    最果てのアーケードもそんなお店が集まってるような気がしました。

    小川さんの作品はこれで7つ、小説にエッセイ、短編集に対談集、図書館の棚の背表紙に彼女の名前を見つけると不思議に手に取ってました。小説とは違うジャンルの棚にも隠れていたり、地下書庫に眠ってたり、返却したてのワゴンの棚にも彼女はいました。
    違う作品も読んでみたい、でもしばらくいいかも・・
    偶然みかけたら借りてしまうかもだけどww

  • 知らない町や駅に降り立つと
    必ずといっていいほど商店街を探し
    コロッケなどの総菜を頬張りながら、
    猫の尻尾を追いかけながら
    町を散策する自分には
    まさにツボだった本(笑)

    想像力が一瞬にして広がる秀逸なタイトルと
    絵本作家である酒井駒子さんによる
    静謐さをたずさえた芳醇で美しい表紙のイラスト、
    『そこは世界で一番小さなアーケードだった』で始まる
    吸引力抜群の冒頭の一行からして
    否応なしに引き込まれた。


    その『世界の窪み』のような目立たないアーケードには
    使用済みの絵葉書、変わった動物の剥製、玩具の楽器、人形専用の帽子、化石、レース屋、義眼屋、ドアノブ専門店、シンプルなドーナツを一種類だけ売っている「輪っか屋」など
    「一体こんなもの、誰が買うの?」というレアでマニアックな商品を扱う店ばかりが集まっている。

    そんなアーケードだからこそ
    立ち寄る客もちょっと変わった人ばかりで…

    劇場で衣装係をしていた老女、
    あしながおじさんのイメージにピッタリの「紳士おじさん」、
    お金持ちを絵に描いたような「兎夫人」、重たい鞄をヨレヨレになりながら背負ってくる百科事典のセールスマン、黒いバイオリンケースを提げコウモリを研究する若者などなど。
    (ねっ、なんか変でしょ笑)


    物語は大家だった父を大きな火事で亡くした後もアーケードに住み続け
    様々なお店の配達を手伝う主人公の女性『私』が語る、
    様々な時代の様々なお客さんにまつわる
    切なくて優しい大人の寓話となっています。


    アーケードで買い物した人だけが利用でき、
    無料のホットレモネードと
    百冊ほどの本が常備された読書休憩室の発想は
    昭和な香りとあたたかな善意が感じられて
    なんかいいなぁ~って思ったし、
    オシャレでなくていいから
    こういう社交場がその町その町にあればなぁ~っと妄想が広がる(笑)

    アーケードにある様々なお店に来るお客さんの話なので
    読んでいるうちに自分がその商店街を歩いてる気分になり、
    次はどんな店が現れるんだろうと
    ワクワクしてくる。
    (しかし、そこは小川作品だけに
    死の影がそこら中に散らばっていて不穏な空気感も…)


    それにしても『永遠』を感じさせる瞬間が
    これほどある本を僕は知らない。

    心の中だけで上演されるお芝居のため、登場人物たちの衣装を縫っている衣装係のお婆さん。
    主人公が彼女のことを考えながら
    中庭で妄想するシーンの
    静謐で詩的でロマンチックなこと。

    他にも子犬のベベに聞かせるために
    声を出して百科事典を読むRちゃんと
    それをうっとりとして聞く主人公のシーン。

    アーケードの天井の偽ステンドグラスをすり抜けて地上に降り注ぐ幻想的な光に、
    主人公の少女が白い運動靴を浸して遊ぶシーン。

    あるいは、主人公の母が入院する療養所の雑用係の老人が
    40年間もの長い間、自分宛てに出した絵葉書の束を主人公に見せるシーン。

    ドアノブのためだけに存在する狭く真っ暗な暗闇に膝を抱え座り込み、
    主人公が薄まった自分を取り戻すシーン。

    主人公が亡くなった父の姿を重ね、アーケードに来るお客さんの後をつけ尾行をするシーン。


    限りある命の人間には
    必ず終わりがある。
    『永遠』を所有物として持つことは決してできない。

    でも僕らは本を読み、音楽を聴き、映画や美術を観ることで
    永遠に近づくことや
    永遠に続くと感じることはできる。

    『永遠』を感じるとき、
    人は満たされ、幸福感に包まれる。

    物語はラストのラストで
    ずっと感じていた違和感がストンと腑に落ち、
    『そうだったのか…!?』と
    すべての意味ありげなシーンが繋がっていく…。

    それは悲しくも胸を打つ結末ではあったけど、
    永遠の中でいつまでも浸っていたいと思いながらページをめくった
    本当に幸福なひとときだった。

    中でも百科事典を愛するRちゃんと主人公の触れ合い、
    そして紳士おじさんの深い想いにグッときた『百科事典少女』と
    無口なドーナツ屋主人とポニーテールが似合う元体操選手の恋を描いた『輪っか屋』、
    そして衝撃的なラストの『フォークダンス発表会』は
    何度となく読み返したくなるほど
    深く余韻を残す。

    これは是が非でも漫画版も読んでみなければ!

  • 世界で一番小さなアーケードには不思議な店がたくさんある。レース屋、輪っか屋、紙店、ドアノブ屋、勲章店…どれも皆が普段気に留めないような些細な小さな物だけれど、心の隙間を埋めるために買いにくる人は絶えない。
    主人公の少女も最後には心の隙間を埋める事ができて、無事父の元に行けたのだろうか。雰囲気的に吉田篤弘さんの世界観に似た感じがしたが、どの話も死に直面する内容があったので、しんみりする内容であった。

    吉田篤弘さんと言えば、文中に百科事典を売りにくる人が出てきて、これはもしや「針がとぶ」とリンクしているのか!?と思ったが真相は分からず…。

  • 長さはほんの十数メートル、その先は中庭で行き止まり。
    誰も気づかずに通りすぎてしまいそうな、世界の窪みのようなアーケード。
    店に並ぶのは、中古の端切れレース、動物や虫の義眼、使用済みの絵葉書、ドアノブ、勲章など「誰がこんなものを買うのか」と首をかしげるようなものばかり。アーケードのオーナーをしていた父の死後、そこで配達係として働く「私」が語り出す物語。

    どこか死の香りがまとわりつくような小川作品特有の文体はそのまま、犬のベベが「ブラフマン」のように愛くるしく我々を歓迎してくれる。

    遺髪で織られる繊細なレース、亡くなった娘の代わりに百科事典を読破する父、輪っか屋さんの恋の結末・・・メモリアル・ジュエリーのようなお話たち。

    日本で喪服といえば「黒」、喪の装いも当然「黒」、であるがこの黒=喪の由来とされるのがヴィクトリア女王。夫アルバート公を亡き後、全身黒の装いで故人を偲んだそうだ。彼女が装身具として愛用したジェットは、イギリスを中心にヨーロッパで大流行し、現在でも多くの国で正式な「モーニングジュエリー Mourning Jewelry」(喪に服する期間に身につけられる装身具)とされている。

    そう言えば、ベベやブラフマンの漆黒の瞳はどこかジェットを連想させる。

    また彼女は夫の遺髪を忍ばせたロケットも身につけていたらしい。
    髪は肉体が朽ちても残る。物理的にも呪術的にも強さを持つ。かの夏目漱石も『こころ』で、「先生」にこう語らせている。
    「気を付けないといけない。恋は罪悪なんだから。私の所では満足が得られない代りに危険もないが、――君、黒い長い髪で縛られた時の心持を知っていますか」(上・十三)

    現在では遺灰からメモリアルダイヤを作ることが出来る。遺骨中に含まれる炭素に高温高圧をかけて生み出されるダイヤは薄い青みを帯びているそうだ。

    ブルーダイヤの原石のように、鈍く光る故人の思い出の欠片たち、、、時を止めたアーケードにはそんなものが詰まっている。

    • katatumuruさん
      hetarebooksさん、いつも私の拙いレビューを読んでいただいて花丸マークもつけていただいて、ありがとうございます(^^)

      このレビュ...
      hetarebooksさん、いつも私の拙いレビューを読んでいただいて花丸マークもつけていただいて、ありがとうございます(^^)

      このレビューも、「死の香りがまとわりつくような」に思わず、「そう!そう!」と共感してしまいました。
      私も以前この本を読んだけど、何かそういう雰囲気が漂ってるな~と思います。
      素晴らしい形容力に拍手です!
      2013/07/30
    • hetarebooksさん
      katatumuruさん

      こちらこそ、いつもありがとうございます♪

      いえいえ、いつも月並みなレビューになってしまうのですが・・・(^ ^...
      katatumuruさん

      こちらこそ、いつもありがとうございます♪

      いえいえ、いつも月並みなレビューになってしまうのですが・・・(^ ^)>”

      小川洋子さんの作品って、不安定な時期に読むとあちら側に引き込まれてしまうような危うい感じがある気がして。。またそれが不快でもなく、、というところに怖さを感じます。
      2013/08/02
  • 「この世界では、し、ではじまる物事が一番多いの。
    し、が世界の多くの部分を背負ってるの」

    病気であっけなく召されてしまうRちゃんが百科事典を見ながら語った
    この言葉に象徴されるように、死の気配に満ちた、美しい物語です。

    時のはざまに浮かんでいるような、世界で一番小さなアーケード。
    その中に並ぶのは、使い古しのレースだけを扱うレース屋、義眼屋、
    たった一種類のドーナツだけを売る「輪っか屋」、ノブが壁一面に並ぶノブ屋など
    どこか浮世離れした、不思議な店ばかり。

    もちろんピカピカの新品もあるのだけれど、
    そんな新品の商品よりも遥かに敬意を払って恭しく並べられている、
    持ち主より長生きしてしまったモノたちの描写が、ため息が出るほど美しい。

    死を禍々しいものとして遠ざけず、
    喪われゆくものの尊さ、美しさを抱きしめるように生きている人たちだからこそ
    犬のべべが年老いるまでの長い歳月、飼い主である大家の娘の「私」の存在を
    受け容れ、温かく見守ることができたのでしょうか。

    人さらいの時計がついに止まったとき、
    静謐な場所へとつながるノブ屋のストーブの前で、旅立ちの近いべべはまどろみ
    「私」はようやくデートに間に合って、お父さんとグラタンを食べている。きっと。

  • 10編からなる小説集で、小川ワールドの魅力に満ち満ちている
    酒井駒子の表紙の絵は、おそらくはこの小説集の語り手である【私】の、
    少女時代だろうと思われる。
    綺麗に編まれたみつ編みの先には、ピンクのリボンが結ばれている。
    【遺髪レース】の章には、このみつ編みの髪が、リボンを結ばれた状態で登場する。
    そして、そのみつ編みを器用に編んでくれた母の思い出も語られる。
    【紙店シスター】で、亡き母への思い出に泣く主人公が、なぜその思い出のみつ編みをレース編み師に預けたのかが、最後の【フォークダンス発表会】まで読んでわかるようになっている。
    それぞれの章は巧みにリンクしあっているのだ。
    そして、【衣装係さん】から始まるすべての章が、濃密な死のにおいをはらむのはなぜか、最後まで読むと一気に解けていく。
    そこにたどり着くまでの作者の魔力は、さすがである。
    これは、【私】が、亡き両親に捧げる切ないレクイエムなのだ。
    優れた散文詩を読むような、無駄のない美しい文章。
    わずか数十メートルで行き止まりになるという「世界の窪み」のような最果てのアーケードには、失ったものにもう一度出会える不思議な物語が詰まっている。
    【私】は今もここに暮らしているという。
    作者と共に静かな極北の旅をしたような、そんな気持ちにさせられる印象深い作品だった。

  • 「何かの拍子にできた世界の窪み」のような小さなアーケードが舞台。
    そのアーケードにある少し変わったお店とその店主たち、そしてそこを訪れるやはり少し変わったお客さんたちを、配達係を勤める「私」が静かに見守っている。
    とても静かで穏やかで、どうしようもなく寂しい物語。


    「私」の視点で語られるアーケードの物語は、どれもすごく愛おしい。
    愛犬ベベの愛らしさ、お父さんの優しさに涙が出そうになる。
    とても魅力的な場所なのだけど、永遠に存在するわけではない。
    そんなつい目をそらして忘れたくなることを、ずっと突きつけられている。
    だから愛おしいし、寂しいんだと思う。

    • takanatsuさん
      「パっと見て気に入らなかったら、読まなければイイ」
      (笑)
      そうですね。その通りだと思います。
      「パっと見て気に入らなかったら、読まなければイイ」
      (笑)
      そうですね。その通りだと思います。
      2012/07/11
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「読まなければイイ」
      勿論、所詮マンガですから、全く読まないと言うのも有りですし。。。
      (私は、マンガが最初に描かれたので、ちょっと気になっ...
      「読まなければイイ」
      勿論、所詮マンガですから、全く読まないと言うのも有りですし。。。
      (私は、マンガが最初に描かれたので、ちょっと気になってます)
      2012/07/12
    • takanatsuさん
      「所詮マンガですから」
      いえいえ、そんな…。
      nyancomaruさんのアドバイスでもっと気楽でいいんだなと思えたので、読む気満々です。...
      「所詮マンガですから」
      いえいえ、そんな…。
      nyancomaruさんのアドバイスでもっと気楽でいいんだなと思えたので、読む気満々です。
      小説と漫画で違うアプローチをするのは当然ですし、その違いを楽しめたらいいなと思えるようになりました。
      ありがとうございます!
      2012/07/12
  • タイトルが素敵すぎる。
    読みながら想像力が大きくふくらんでくる物語。

  • 童話のようなぼんやり靄のかかった向こうにあるようなお話でした。
    世界の果てにあるような寂れた小さなアーケードで生まれ育った少女と、そこで生活を営む店主たちの交流が描かれています。

    母を幼い時に病気で失い、16歳の時に火事で父を失った私。
    レースや義眼や手紙やドアノブや勲章や、どこに需要があるのかわからないようなお店。
    着る人のいない舞台衣装を作りつづける衣装係さん、百科事典を読み続ける少女、兎の眼を探す夫人、ドーナツの格好をする元体操選手、自分に手紙を書きづつける雑用係、ライオンのドアノブがついた小さな窪み、遺髪専門のレース編み師、動くところを見ると人さらいに連れて行かれるという時計。

    そこに流れる時間は現実と違う速度で、すべての輪郭が曖昧で、ぼんやりとした印象しか残らない。
    でも、その残像がゆっくり心の奥に沈殿していくような感じがありました。
    色彩も音もゆっくり失われていくような。
    悲しいな。

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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