ラバー・ソウル

著者 :
  • 講談社
3.67
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本棚登録 : 766
感想 : 184
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  • Amazon.co.jp ・本 (578ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062177139

作品紹介・あらすじ

洋楽専門誌にビートルズの評論を書くことだけが、社会との繋がりだった鈴木誠。女性など無縁だった男が、美しいモデルに心を奪われた。
偶然の積み重なりは、鈴木の車の助手席に、美縞絵里(みしまえり)を座らせる。

感想・レビュー・書評

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  • 私の大好きな本『Wonder』は、生まれつき顔面に異常がある5年生のオーガストが初めて学校に行き、心無い言葉やイジメを受け、傷つきながらも自分も周りも成長していく物語でした。
    こちらの『ラバー・ソウル』はオーガストと同じハンデを持った36歳の男性の話です。主人公の鈴木は、小学校で受けた周囲からの仕打ちで心を閉ざし、それ以来引きこもりの生活。両親からの愛情も受けられず、心を許し会話ができるのは使用人の金山だけ。そんな鈴木がある日出逢ったモデルの絵里に恋をした。そして次々と起こる事件。
    物語は事情聴取を受けているそれぞれの登場人物たちの主観と、鈴木の回想で進んでいきます。
    初めは鈴木本人が、自分がどれだけ周囲に受け入れられないか自覚していること、そして他の登場人物たちが鈴木を直視できないことに対する罪悪感のようなものが綴られるのですが、途中から鈴木の異常性が描かれてゆくのです。
    井上夢人さんはどんな着地点へ読者を導こうとしているのだろうか???と眉を顰めながらの読書でした。
    ‥‥思いもよらぬ着地点でした。もうここからは何も言えません。まさか、まさか、です。
    読み終わり、ため息がこぼれました。

  • 切ない、、、(´・_・`)

    病気で顔に障害を持った主人公、鈴木誠が仕事で出会ったモデル、美縞絵里に病的にのめり込んでゆく。
    彼の心は彼女の事でいっぱいになり、やがてストーカー行為に、、、。

    病気のせいで小さい頃から顔にコンプレックスを抱き人から虐げられてきた故に外出できないし、人とのコミュニケーションもとれない。
    会う人は彼の顔を怖がり、直視できない。
    何度も自殺を試みるが失敗。
    絶望で生きてきた男の真っ直ぐな純愛が痛い。

    話は会話形式で進められ読みやすいです。
    鈴木誠の心の傷が痛いほど出てきます。

    そして、普通に終わりませんっ!

    好きだわ〜!
    井上夢人の他の作品ももっと読みたいっ

    • shukawabestさん
      shukawabestです。
      先ほど読み終えました。なんともいえない気分です。井上夢人と岡嶋二人、僕もゆっくり追いかけていこうと思っています...
      shukawabestです。
      先ほど読み終えました。なんともいえない気分です。井上夢人と岡嶋二人、僕もゆっくり追いかけていこうと思っています。
      2022/05/17
    • Kaniさん
      shukawabestさん、こんにちは^ ^
      いいですよねぇ〜。
      何だか切ない話ですが、とても綺麗に纏まっていて、あのラストがあって完成され...
      shukawabestさん、こんにちは^ ^
      いいですよねぇ〜。
      何だか切ない話ですが、とても綺麗に纏まっていて、あのラストがあって完成されている。
      岡嶋二人も井上夢人も、安心して読める感じしますね^ ^
      私も少しずつ読んでいきたいです。
      2022/05/17
  • ううう・・・。

    話の入り口は共感できた。

    好きになった人をずっと考え、追いかけ続けたいと思う気持ち。

    でも、ダメ押しのように条件を突きつけられ、展開していくなか、読み進めるのは苦しかった。

    異形で対人接触も36歳になる現在までほぼ一人のみ。

    そんな環境下で生まれ育ち、生涯初めての恋?(=執着、大切な人)に出会ってしまったら・・・。

    非常に読みやすく、しっかりした文章・構成なのだが、『鈴木誠』の手加減ない心理・行動描写に途中、何度も休憩しなければ読み進められなかった。

    僕だって同じ・・・。

    同じ環境なら僕も、と何度も思ってしまったから。

    終盤は、そう来たか・・・という感じ。
    (岡嶋+井上計7冊目、学習しました!)

    でも、心構えは出来ていても、読後感、ラスト1行はどうしようもなく気持ちを持って行かれる。

    やっぱり・・・。

  • パッと見完全なストーカーもので、相当気持ち悪かったので、読み進めるのに時間がかかってしまいました が、最後まで読んで本当に良かったです。
    鈴木誠の語りパートと警察の聴取パートを両方読むと、自己正当化がものすごくて、ヤバい奴だという印象が増す一方、なんで警察相手にこんなに喋れるんだろうと違和感もありました。
    昔のストーカーが絡んできて上手いこと解決するのかと読んでいましたが、予想外すぎる結末でした。
    本当に怖いものは簡単には分からないとつくづく思いました。
    途中までと最後で本の印象がガラッと変わると聞いて読みましたが、本当にその通りでした。ずっと鬱々とした雰囲気だったのに、最後はガリレオシリーズの名作を思い出していました。

  • 著者も本作品も何の予備知識なく、ビートルズの名盤で章構成になっていたので読んでみた。
    ストーカーの偏愛を「ラバーソウル」の歌詞に重ねあわせたミステリー作品かと思いきや、ラスト一転して純愛小説に展開させてみせ、「ラバーソウル」の全体曲想のような甘く切なくさせてくれる読後感。とても好きな作品でした。
    主人公が所々で聴く「ラバーソウル」以外のビートルズの曲が心情を的確に表出させていて、ニヤッとしてしまった。

  • 2022.4.6読了
    素敵な装丁に惹かれ、本作を手に取った。後から気づいたが、著者の作品を読むのは、魔法使いの弟子たちに続き二作目だ。
    読後の感想はとにかく、切ないに尽きる。

    • shukawabestさん
      shukawabestです。
      先ほど読み終えました。
      たしかに切ない。そんな気持ちでいっぱいです。
      shukawabestです。
      先ほど読み終えました。
      たしかに切ない。そんな気持ちでいっぱいです。
      2022/05/17
    • ちゃーさん
      こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      自分も、最後の最後で茫然としてしまいました。
      こんな悲しいことがあっていいのかって、なんだか悔...
      こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      自分も、最後の最後で茫然としてしまいました。
      こんな悲しいことがあっていいのかって、なんだか悔しくなってしまいました。
      いつもいいねしてくださり、ありがとうございます。
      2022/05/17
    • shukawabestさん
      あれで幸せだったのかと思うと、泣けてきます。共有できてよかったです。今後もよろしくお願いします。
      あれで幸せだったのかと思うと、泣けてきます。共有できてよかったです。今後もよろしくお願いします。
      2022/05/17
  • 重々しい内容に、途中でリタイアしかけたが、最後のどんでん返しを楽しみに読み続けた。
    確かに、全く予想出来なかった結末で、粘って読んだ甲斐があったと思える作品。

  • 誰もが目を背けたくなるような容姿・容貌の持ち主である鈴木誠。
    人と関わることを避けて生きている彼が、ある日モデルの絵里を助手席に乗せたことで彼女に特別な感情を抱き・・

    いくつかの事件に関わる登場人物の事情聴取と、客観的な物語が交互に描かれる。
    歪んだ愛で絵里を監視・盗聴し、彼女に近づく男を次々に殺す鈴木誠。

    物語終盤、鈴木の使用人の金山によってすべての種明かし。
    鈴木は殺人を犯しておらず、そこまでの精神異常でもなく、むしろすべては絵里を想う故、絵里を救うために偽装工作をしていた。
    鈴木誠、切ないなと一瞬思ったが、やったこと考えるとやっぱりおかしい。
    そして絵里は最低。

  • bundanTVで初めて知った作品です。人の前に出ることができないほど醜い顔をした男が、モデルの女性に恋をする物語で、最初から終盤の方まではストーカーじみた行動にかなり引きます。終盤のどんでん返しにはさほど驚きませんでしたが、終わりはかなり切ないです。

  • *ややネタバレ*
    オチが勝負のミステリー。なので読み返すことは・・・なさそう。が、一読の価値はかなりある! そりゃ話題になるわなぁという感じ。

    最終章で明らかになる真相は「おおぉ、そうなるかぁ」と唸ってしまった。
    それまでのストーカー心理描写の巧みさ(読んでいて不愉快になるほど)があっただけになおさら物語に引き込まれていった。

    小説形式と問答形式で綴られていく全体の構成も見事。心地よいビートを刻んで、グイグイと物語世界へと誘っていく。

    読み進めていくうちに何故『ラヴァーソウル』に準えた展開なのかと疑問に思っていたが、最後の最後に綺麗に氷解。ビートルズでストーカーといえばチャップマンと思ったがそうではなかった。

    しかし、真犯人の動機は腑に落ちないなぁ。そこをキッチリ描くと全体のリズムが狂うというのも判るんだけれど。


    話題になるだけはある一級のエンターテイメント小説!

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著者プロフィール

昭和25年生まれ。昭和57年に徳山諄一との岡嶋二人名義で第28回江戸川乱歩賞を受賞してデビュー。平成4年に『ダレカガナカニイル……』(新潮社)で再デビューした。代表作に『ラバー・ソウル』(講談社)など。

「2020年 『平成ストライク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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