別海から来た女――木嶋佳苗 悪魔祓いの百日裁判

著者 :
  • 講談社
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感想 : 84
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062177641

感想・レビュー・書評

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  • 「消された一家」「女帝 小池百合子」の系譜にあたる本です。
    冒頭にも何回か出てきますが、彼女は間違いなくなんらかのパーソナリティ障害を抱えた人物でしょう。その事実を踏まえた上で、自分の周囲を見回してみると、このような人物は決して珍しくないような気がします。なんだか別の世界の話のように感じてしまいますが、落とし穴は意外と身近なところに潜んでいるのかもしれませんね。

    個人的には彼女とヤマギシ会の関係をもうちょっと掘り下げて欲しかったかな…。というのも、ヤマギシ会の理念は、彼女が犯した罪の価値観と非常に似通っている部分があるからです。彼女がもし本当にヤマギシ会に入っていた時期があるのだとしたら、多感な子供時代に、あのような病んだ組織から影響を受けたのだとしたら、、、そう考えると、彼女の支離滅裂な犯罪歴のひとつひとつが繋がって見えるような気がするのですが、実際のところはどうなんでしょうね。

  • 図書館で。
    BUTTERを読んで、練炭犯罪の犯人もブログやったり色々してるんだ…と知り借りてみました。
    なんだか著者が犯人に対して攻撃的すぎて読み切れませんでした。なんて言うのか些細なエピソードでも先入観があると、そういう風に見えてしまうというのはあると思うんですよね。確かに何故?とは思いますし、被害にあった方の事を思うと義憤にかられる思いもわかるのですが、幼少期から悪意があっただの、サイコパスとまで書かれるほどでもないのかな、なんて自分は思いました。

    男性の方が潜在的に彼女や彼女の犯した犯罪に対する恐怖は強いんじゃないかな。自分にとって無害というかどうでもよいヤツ(不美人・太っている・無職・若くない・女性)に脅かされるのが耐えられないのかな、と思ったり。別に彼女の犯した犯罪や彼女自身を擁護する気はさらさらありませんが、ここまで取りざたされたのは、そういう男性優位という神話が覆されたことに対する怒りと恐怖があるのかな、なんて思いました。

  • 先日読んだBUTTERがすごく良かったので、ノンフィクションを読んでみた。木嶋佳苗の家族のルーツとか、裁判での答弁とか、そういった部分はたしかに面白いんだけど、結局この著者の中に流れているのは確固とした女性蔑視とルッキズムだし、こう言う人がいるから木嶋佳苗みたいな女性が出てくるのではないかな…とすら思う。「こんな感情的な判決文を書くのはあの28歳女性裁判官に違いない」っていうくだりのところ、嫌悪感バリバリで気持ち悪くなった。
    この本よりも、BUTTERの方が真実に近いのでは?という気がする。
    裁判での答弁を読めば読むほど木嶋佳苗という人がどんどん分からなくなる。本当は何がしたくて何を感じていたのか、きっと解明されることはないし、本人も分かっていなかったのかもな…

  • 表紙がモザイクかかった木嶋さんの写真で夜中に読む時ちょっと怖かった。
    別海出身なのも生い立ちも知らなかったので「へ〜」と思いながら読みつつ、筆者の容姿いじりが激しくて辟易した。わかったから何度も言うなやという感じ。昼のワイドショーと同じ取り上げ方するならワイドショー見ますから……と思ったし、木嶋さんの見た目がどうこうというのは個々の感想でありオメーの感想は聞いてねーからという気持ちにしばしばなった。インタビューさせてもらっておいて相手の悪口を書くのもどうかと思う。気分が悪かったというか、どんどん読む気が失せていった。

    騙してお金とって殺すのは言うまでもなく悪いことで、木嶋さんが悪い人であることに違いはないけれども、毒婦とか聖女とか、そんな話を読みたいんじゃなかった。でも、80のおじいちゃんと寝たのを否定するのは、事実はわからないけど、プライドが許さなかったのかなと思ってなんとも言えない気持ちになったりした。

  •  連続不審死事件の犯人、木島香苗の人生と裁判を追ったノンフィクション。

     別海って北海道の地名なのだけど、もうこのタイトルから面白い。
     小学生で隣人の銀行通帳を盗むなど木島香苗の半生はエキサイティング過ぎる。美人でないけど上品さと不思議な魅力を持った木島香苗は上京し、男達を毒牙にかけていく。彼らもまた一風変わった人生を歩んでいた。
     圧倒的な面白さの前半から、後半の裁判部分はやや単調か。木島香苗の謎は裁判では明らかにされなかったと言えるのかもしれない。。。

  • ノンフィクション
    社会
    犯罪

  • 著者は木島佳苗事件には"怨念"も"流血"もなく、殺意の"沸点"が異常に低いことを指摘し、そこに何よりの興味を抱いている。


    <blockquote>最初にお断りしておけば、木島佳苗に"悪女の魅力"を期待するのは間違いである。それはあまりにも古典的かつロマン主義的願望である。
    殺人事件が人間の興味を引くのは、それがふだん超えられないハードルを飛び越えるふるまいだからである。ふだん超えられないハードルとは、人間世界を人間世界たら占めている規律、すなわち「法」のことである。
    そのハードルを越えるには、それなりの"負荷"がかかる。。だからこそ、人間は殺人という行為から目が離せなくなる。ドストエフスキーの『罪と罰』の例を持ち出すまでもなく、殺人事件を人間の極限の行為としてとらえているからである。
    (P.91)</blockquote>
    本著者が橋下の例の記事を書いたのもそれなりのハードルを越えていたと思うのだが、"負荷"あったのかな?

    太っているのは木島佳苗ではなく著者の筆力だと思った。『東電OL殺人事件』で冴え渡りぶりはもう窺えない。

  • 東電OL事件を書いた人のだから読んだけど、東電OLの本ってこんなに独善的で頭が悪そうな文章だったっけ?と最初から不安で、最後まで変わらなかった。
    ノンフィクションなのに合間合間で挟んで来る著者の、明確な論拠もなく「〜に違いない」とか言ってみたり、いきなり「んなわけねーだろ!」と突っ込んでみたりっていうセリフに寒々しい気持ちに。
    コラムニストという肩書きの北原みのりが書いた、木嶋佳苗は毒婦ではないというスタンスの本も読んだけど、コラムなら裁判の傍聴がうまくできてなくても、裁判以外の取材で得た情報がなくてもしょうがないし、著者の勝手な意見や評論もそりゃあるだろう。週刊誌みたいな下世話な書き方なのもしょうがない。
    こっちの本はコラムでもエッセイでもないのに幼稚な構成と文章で読んでて嫌な気持ちになった。せっかく事件の当事者達のルーツを探る取材をしてるのに、ワイドショーで終わってる。
    東電OLの本もこんなにひどかったのか確かめるべくまた読んでみようと思った。

  • 先日判決の確定した事件のルポ、及び裁判傍聴記。
    ものすごい精神力と言うか、まるで理解できない思考と言うか。でも女子力は完全に負けてるんだよなーと複雑な心境。読物としては興味深いのだけど、やっぱ理解は無理。弁護側はどういう気持ちで接するのかな。

  • 2012年刊。所謂、首都圏連続不審死事件について、被告人の来歴を加味しつつ「一審の裁判傍聴録」を叙述。◆公訴事実を否認する上、目撃証言等の直接証拠のない中、なぜ死刑判決を導出し得たか。裁判員制度での、この困難な証拠評価の是非を論じる観点からは、著者は力不足。ただこれは著者の目的ではない。◇一方、稀有な犯罪を犯した被告人の人間性や性格への接近という、著者の目的からみれば、裁判傍聴を中心に据えるのは取材不足も甚だしい。犯罪行為に対する刑罰確定を目的とする刑事裁判制度を完全に誤解・過大評価。という意味で不十分。
    ◇特に、騙されたり、殺された被害男性の取材不足が目につく。◆また、著者の叙述の悪い癖も散見。理由なく著者の感情や感想が挿入されるところだ。◆PS.本筋と全然関係ないが、公判担当検事が、大阪地検証拠捏造事件で問題となった厚生労働省元局長郵便不正事件の捜査(取調)担当の一人であったのは驚いたけど…。

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。編集者、業界紙勤務を経てノンフィクション作家となる。1997年、民俗学者宮本常一と渋沢敬三の生涯を描いた『旅する巨人』(文藝春秋)で第28回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2009年、『甘粕正彦乱心の曠野』(新潮社)で第31回講談社ノンフィクション賞を受賞。

「2014年 『津波と原発』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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