泡をたたき割る人魚は

著者 :
  • 講談社
3.13
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本棚登録 : 166
感想 : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (138ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062177719

作品紹介・あらすじ

21歳の現役女子大生、鮮烈なるデビュー作。恋はしない。美しい魚になるために。みずみずしい感性で描く新時代の人魚姫物語。第55回群像新人文学賞優秀作。

感想・レビュー・書評

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  • 普段行かない図書館でビビビ☆借り!タイトルと表紙に一目惚れ。

    幻想的で音楽で言うなら…Coccoさんが書く歌詞の世界観のような作品。恋はしない、したくない薫は美しい魚や人魚になることを夢見て…その結末は…。

    文章がきれいで…わかりにくい部分はあるけど、そういう部分は読み返しました。中盤からグイグイ一気読みでした。


    “落ちているのは愛情でも友情でもなく自分だ。ネックレスも指輪もいらないから、尾ビレがほしい。”=55ページ=

    “「天使が通ったね」「静かだったね」”=71ページ=

    “人間と魚の境目である、腰のあたりを指で撫でみんなはっきりさせたがる。境界線をたゆたうのは不幸だと、だらしないと決めつける。”=98ページ=


    恋や愛、男と女、泉と海、日常と非日常、正常と異常、愛情と友情…それぞれの境目がテーマ。比喩が美しくってこれでデビュー作だとこの先が楽しみな作家さんになりそうな予感♪

    ここで終わりなの?と思った。もう一度読んでみるともっと消化できるかもしれない。すごいなと思った。

  • ワニのような形の島が舞台.右半分は観光や漁業で栄え、左半分は沼地が広がっていた.主人公の薫は左半分に住み、島中をピタニィの配達をしている.絵描きの瀬戸や魚屋の村井と恋愛と友だちの間の関係をつむぐ毎日.ある日、願いを叶えてくれるという今川焼き屋の老女のもとへ行き、「魚になりたい」ことを告げる。老女は薫の脚と、配達に使っていた原チャリと引き換えに、薫を人魚にした.

    不思議な世界観.比喩の仕方が独特.
    海と砂浜の境目、上半身と下半身の境目、恋人と友人の境目、人と魚の境目、、
    さまざまなところに境目があるけれど、それはもともとはっきりしているものなのか、はっきりさせられるものなのか、限りなく同じものなのか.
    薫は泡をたたき割る.恋を望みながらも恋を嫌悪しているのかなぁ、と思った.最後にはワニによって上と下が別々になって魚になってしまう.外界は境界を許容しない.なぜ境目ではダメなのか、と訴える声が聞こえる気がする.

  • 大きな書店をはしからはしまでみわたしてたときに、この本を見つけた。装丁からものすごく好みだと思った。これは好きだ、絶対に、という確信があった。著者がまだ現役の大学生で90年生まれなことに驚いた。

    一文読んでやっぱり好きだって思った。頁をめくるたびこの本、この著者好きだって強く思い、最後の一文でたまらなく好きになってた。
    また若い作家さんが生まれた。嫉妬しちゃうなー。こんな素敵なお話がかけるなんて。
    群像新人文学賞優秀賞作。わたしの大好きな島本理生さんとデビュー同じ。この著者もきっとぐんぐん伸びてファンが増えるんだろうな。瑞々しくてちょっととげとげしい、若さがうまく生かされてる。あーあたしも感情ある魚になりたい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      タイトルがとっても素敵。読んでみようっと!
      タイトルがとっても素敵。読んでみようっと!
      2012/08/23
  • 水槽のなかには呑まれ溢れて自分をなくした女がいる。自由のために脚をすてた人間が罰をうけて閉じこめられている。
    月が太陽に、水が火に焦がれるように、反対の物に吸い寄せられる。欠けてゆくものは完全な円になりたい。陸から海にもどりたい。けれども、そこはほんとうに楽園か。感情や関係性に名前を与えると、お互いを縛り合うことになる。所有されるのを拒む女は境目をたゆたい、越えようとした。
    そんなことうまくいくわけがない。境目とは裂け目のことだから。落ちた深淵は孤独という地獄。引き裂かれてすべてを失う前に、一つを選ばなければ。

  • びっくり新人。
    これから楽しみ。
    装丁がきれいで、かわいい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「装丁がきれい」
      小笠原ありのイラストが不思議な雰囲気を出してますよね、、、ジャケ買いしそうになったけど、思い直して文庫化を待ってます。。。
      「装丁がきれい」
      小笠原ありのイラストが不思議な雰囲気を出してますよね、、、ジャケ買いしそうになったけど、思い直して文庫化を待ってます。。。
      2012/11/08
  • その島は、右半分は観光や漁業で栄え、左半分は沼地が広がり寂れていた。薫は左半分に住み、栄養飲料の配達をしている。絵描きの瀬戸や魚屋の村井と仲がよい。ある日、願いを叶えてくれるという老女のもとへ行き、「魚になりたい」と告げる。老女は薫の脚と、配達に使っていた原チャリと引き換えに、薫を人魚にしてくれた。うれしくて泳ぎまわる薫。海にもぐって島の右半分に顔を出した薫に、新しい出逢いが待っていた。
    「Amazon内容紹介」より

    この内容紹介を書いた方はこの本をちゃんと読んだのだろうか,と疑問に思うほど明るい書き方をしているけど,はっきり言ってこんな単純な話ではない.
    自分の中でなにかが欠落している,という感覚を常に持ち続ける人の話.独特の文体.

  • 恋をしたくない、恋人もほしくない、ただ魚になりたいと願う薫と、瀬戸君と村井君、「ワニさん」の山脈で2つに分けられた小さな島。

    描写が凝っていて、最初はそれだけの作品かと思ってしまったけれど、薫が本当に人形になってからの展開、そしてラストにどこか恐ろしいような妙な美しさを感じた。
    描写ももちろんだけど、こういう幻想的で不思議な世界観と展開を自然に書けてしまうことには、「すごい」という言葉しか出てこない。

  • 著者の片瀬チヲルちゃんと、ひょんな繋がりで友達になったので読んだ一冊。
    (正確には、友達になったあとに、チヲルちゃんが小説家だと知った・・・)

    普段あまり読まない「文学」でした。
    ある種現代らしいテーマなのに、現代小説らしくない。情景も人々の気持ちも全てが幻想的な物語。
    女性らしく、若者らしく・・・。とても同世代が書いたとは思えない文筆でした。すごい。

  • タイトルと表紙のイメージを裏切らない雰囲気のお話でした。感覚だけでいうと「やまなし」みたい、と感じた。

  • 小さい頃から魚になりたいと思っていた薫。

    島にある家にはそれぞれ泉があり、その水は地下で管のように繋がっていた。

    男たちと話すのは楽しくて、だけど恋人という関係に縛られるのは避けたいと思っていた。

    願いをかなえてくれるおばあさんに、ついに魚にしてもらい人魚となった薫は、地下を流れる水脈を泳いで、各家にある泉から顔を出しては人間たちを観察していた。

    金持ちの男の人の家に住み着くようになり、愛のない結婚をして、恋はしなかったものの、島に住み着くワニによって完全な魚となった薫。

    自由の身となったのに、瀬戸くんの家の金魚鉢に入れられ、彼をずっと見ていることは出来ても、話すことも体を重ねることもできなくなった。

    独特な、世界観。
    人との距離感って難しいのかも。

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