ともにがんばりましょう

著者 :
  • 講談社
3.36
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感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062177825

作品紹介・あらすじ

不況がなんだ。会社に希望の灯をともせ。"七人の侍"+女子一名、超リアル「労働組合小説」。笑って泣いて、熱くなる。

感想・レビュー・書評

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  • なにを隠そう、私は91年から05年にかけて連続14年間労組の中央執行委員という役職をこなして来た者である。別に好きでやっていたわけじゃない、好きでやるはずがない。毎月まる一日会議で潰れ、下手をすると関連会議や合宿、労働交渉、集会等々で、休みや仕事が終わった後の半分以上が潰れるのである。「私の青春を返せ」と言いたい。(←それでも何故やっていたか。成り手がいなかったのと、使命感、そして世界が広がる面白さである)

    この小説は無謀にも、そういう労組活動そのものをまるまる描いている。労組員500人と言えば、私の所も正規(1番多い時は)500人、パート800人だったので、似ているとも言える。

    ここでは、執行委員は一年交代だと云う。まあ、そんな所もあるだろう。しかし、いかにも非現実的な処が散見する。ろくな専従もいないのに、あまりにもスムーズに引き継ぎが行われる。新執行委員はみんなベテランのように労組の仕事をこなしている。それから、一般的に非労組員は、労組活動に無関心だ、この小説にもそういう記述はある。しかし、一般労組員があまりにも労組に協力的だ。新聞社社員となれば、忙しい仕事の代表選手だ。労組活動に見向きもしなくて当たり前だと思えるのであるが、なんと毎月の央委員会の前に支部長会議が成立し、中央委員会が実出席でほぼ全員で成立して、物凄く活発に意見が出るなんて、私の処ではあり得なかった(100人に6人の役員配置は妥当。本来は分会がないといけない。それにしても、分会長会議でも100%近い出席率は凄い)。こんな戦闘的な労組が果たして存在するのか。

    また、これは提案ですが、回答がでてからやっと職場の声を経営にぶつけて事態が進展する場面がありましたが、団交は提出団交の時に「現場の意見」を最も出すべきです。私の処では、提出時に800人団交をした事もあります(←今は昔)。
    経営者の対応や、交渉の推移もあんなもんだと思います。小説で読むとひつこいぐらい同じようなことを議論しているようにみえるが、労組対経営では、力関係では最初は情報量、人事権、等々で経営の方が上なのだから、あとは「団結の力」しか武器はないのです。ひつこいぐらいの議論がなくては、勝てないのが現実。(労使協調の労組とはそこが違う)普段、表に出る事のない労組活動をよくぞ小説にしてくれました。そのことだけは、感謝します。

    これは、秋季闘争でしたが、最もきついのはいうまでもなく春闘です。是非とも春闘編まで頑張って下さい。ともにがんばりましょう。

  • 新聞社の労働組合の役員になった主人公が成長していく物語。作者がもともと新聞社に勤務していただけあって、新聞社の内実がリアルに描かれている気がします。
    前の2作より若干パワーダウンした気もしますが、それでも面白かったです。
    今回も登場した人物が次回も出てくるか気になります。

  • 労働組合というものに触れたことが無いのでとっても新鮮やった。個人クリニックには絶対無い熱い組合!!
    仲間の絆や信頼がとっても心地よかった!
    大好きなYASUSHIに会えたのも嬉しかった笑
    しょーもない詩が健在でホッとした笑

  • 珍しい組合もの。舞台は新聞社なので元神戸新聞社員だった著者には庭みたいなもの、違和感全くなし。著者の他作品と同じくスルメイカのような味わい、わかっちゃいるけどやめられない。。
    親方日の丸の会社でなければ、組合経験者は出世の近道というか通過儀礼というのは社会人の常識。会社側も組合専従経験者が並ぶ。組合執行部の視点で物語は語られるが、結局お釈迦様の掌を走り回る孫悟空みたいなもの。結局労担の朝比奈専務以下の会社側の読み通りで決着したとしか思えない。執行部個々人の会社への思いの吐露で、あんなにあっさりと会社側が妥協するはずがない。会社側の方が役者が上という感じ。まあディベート小説ともいえるかも。

    蛇足①
    冴子さんが娘とは。やられました。
    蛇足②
    遥ちゃん、絶対主人公が新人時代に記事にしたバイオリン奏者の姉という伏線だと思ってました。ニャー吾郎だったか。

  • 塩田武士の新刊であちこちの書評でも結構良い評判をとっているが、会社物語。内容は新聞社の秋闘交渉を機に組合活動に引きずり込まれた一人の記者が、交渉の過程を目の当たりにして成長していく過程を描くものだ。

    著者はかつて神戸新聞者の記者であったことから、恐らく当時の経験が少なから本書に反映されているであろうとは容易に想像がつく。だが、果たしてこうした組合物語が今の時代にどれだけ通じるのであろうか?個人的には今から30年前に就職した会社がこういう組合活動をやっていたという記憶が残っているが、その後同社を辞めてからは一度もこうした組合活動を身近に感じたことは無いし、社会的にも既に組合活動は完全に過去のものになっているではないだろうか。

    作者が敢えてこの時代に組合活動の教科書的な内容の小説を書いているのか意図が良く判らないが、失われてしまったものへの郷愁を誘う目的だったのだろうか?それとも真面目に本書で語られる組合活動内容とその議論の的である一時金、深夜労働手当などに何らかの意味を持たせようとしているのだろうか?

    まさか逆に、夜間8時から10時までの間の新聞社の「深夜」労働割増金について不当に高待遇であると世の中に訴えるために本書を書いているとも思えない。新聞社の常識がどれだけ世の中からの乖離しているのかの距離感が掴めていないのではないかという違和感がつきまとって離れない。

  • (2020-03-04L)

  • 面白くなかったとは言わないし、「ともにがんばりましょう」ってそいうことだったん!?って言いたいし、もしかして最後だけ書きたかったん?なんて言いたくもなるけど、ここまで引っ張られたことも、確かw

  • 経営側は経営数字と景況感から賃金を算定しているのに、労働側は「死活問題」「僕らの頑張りを見てほしい」。これでは噛み合うはずもないが、それなのに落ち着くところに落ち着く不思議な世界。

  • 2014/9/30(火曜日)

  • 突如、組合闘争に巻き込まれた武井の混乱と奮闘ぶりに
    いっしょにハラハラドキドキ
    交渉の現場があんなかけひきある
    なんてスリリング
    重苦しい場面も多いけど恋バナもあり軽やかに読め
    面白かったです

  • 上方新聞記者の武井涼は、強引な上司の誘いで労働組合執行部に加わることに。恐る恐る足を踏み入れた未知の世界は、強烈な個性の執行部員と、深夜手当のカットを目論む会社との、怒涛の戦場だった!

    登場人物たちのキャラは立っているけれど、地方紙の労組は私には特殊な世界過ぎた。読者を笑わせようとして力み過ぎている文章も鼻についた。
    (D)

  • 私がここに記した作品で☆5つ付いてる作者の他の作品を読んでみよシリーズ第一弾(笑)。
    『女神のタクト』で高評価だったわけなんですが、この作品はいまひとつだったかなあ。ひょんなことから地方新聞社の労働組合の仕事を引き受けることになった主人公。
    読後ふりかえれば、地道で粘り強い交渉が丁寧に描かれていて良い作品だなと思うのですが、最後のほうではぐっとくるシーンもあったのですが、テンポがよくなかった気がする。

  • 2013.7.1読了
    新聞社の組合と経営側の闘いを、気弱で真面目な主人公の視点から描く。
    組合の基本がこれ読んだら理解できそう。闘いにより色んなことを学ぶ主人公もいい。
    関西弁でテンポ良く進む文章。

    面白かったぁ!!

  • 労働組合運動を題材にした小説。手に汗握る労使間の駆け引きから垣間見れる、豊富な知識・経験に裏付けられた巧みな交渉力に興奮した。組織とは、リーダーとは、かくありきというのを強く意識させられる小説であった。
    なかでも、誰もが敵対構造を思い描くであろう労使交渉という舞台で、予想通り激しくぶつかり合う双方の根底にあるのが「信頼」であるということに感動した。「敵は倒すためにあるのではない」「歩み寄るためにある」―信頼関係があればこそぶつかり合える。けんか(交渉)の真髄を再認識した。

  •  表紙にはスーツを着た若い男性の後ろ姿。
     青空を表しているのだろうか、ブルー一色を背景に、彼は大きくジャンプして伸びあがっている。拳は天に向かって力強く突き上げられており、一見すると爽快でやる気に満ちた青年が主人公のサラリーマン小説のように思える。だが、普通のサラリーマン小説では見られないアイテムが一つだけ目に留まる。伸ばされた右腕に巻かれた赤い腕章だ。

     最近、大阪市の橋下徹市長が市の労働組合に対して行った様々な言動が度々ニュースになっていた。橋下市長自体についてはいろいろ良い点悪い点あると思うが、善し悪しは別として危険な存在だと僕は考えている。でもそれは別の話で、この労組関係のニュースを見るたびにいろいろ考えさせられた。
     労組というもの自体、組織率は年々低下していると言われ、その影響力も比例して低下している。JALのように会社の経営を傾かせる要因になったケースもある。終戦直後から日本経済に深く関わってきた労組の存在意義は、岐路を迎えている。

     確かに労働組合といえば「自分に都合のいいことばかり要求してくる」「経営に対して反対しかしない」「理想主義で現実的な議論をしない」といったイメージがつきまとう。しかし実際は単純にイメージだけで捉えられない複雑な構造を抱えている。
     この小説の舞台は大阪の新聞社「上方新聞社」だ。大阪府内で朝刊70万部、夕刊40万部を発行するこの地方新聞社に勤務して6年の武井は、編集局で働く若手記者だ。
     ある日、先輩の強引な誘いを断る事が出来ずに労働組合の執行部に参加する事になってしまった武井は、そこで今まで思いもよらなかった世界を目撃することになる。嫌々引きずり込まれた組合活動。働く人たちの思い。「20年後、うちの会社残っていると思うか?」やがて武井の胸には組合活動や新聞の未来について様々な思いが芽生えていく。

     新聞社は職種のデパートと業界で呼ばれることもあり、そこに勤務している人の中には記者だけでなく販売系の人もいれば営業系の人もいる。印刷工場で働く人もいればもちろん総務系の人や技術系の人もいる。
     だから部署ごとの労働環境が全然違っていて、よって現場で働く人たちの感情も部署によってガラリと変わる。そんな会社の労働組合の執行部で労働者をまとめるというのは非常に骨の折れる仕事だ。半ば無理矢理執行部に参加させられるまで、まったく組合活動に関心を払わなかった武井にとってその苦労は人一倍である。

     そんな訳でただでさえハードな役割を与えられた武井だが、彼を待ち受ける障壁はそれだけではない。武井に立ちはだかる大きなハードル。それは彼自身の気弱さ、優柔不断さ。つまり自分自身の弱さだ。
     引っ込み思案で奥手の武井はおかしいと思う事があっても口に出す事ができない。考えがあっても言いだす事ができない。黙々と役割をこなしていくが、肝心の意見を表明することができない。流されるままに生きる彼だが、それではいけないと心の中ではわかっている。

     ストーリーの大半は経営側と労組側による団体交渉の場面で占められる。数で優位に立つ労組側が交渉を有利に進めるにはしっかりした考えの基盤とそれに基づく意見、そしてそれを相手に説得力を持って伝える力が必要となる。
     気弱な主人公の姿は僕自身とも重なってすごく感情移入してしまったのだけど、僕と違ってそこから大きな世界へと羽ばたいていく主人公の姿は眩しい。

     新聞社の労働組合を舞台にした小説というのは寡聞にして他に知らない。だが作者はもともと関西の地方新聞社に勤めていたというだけあって、恐らく実体験に基づく部分も多いのだろう、とてもリアルにそしていきいきと地方紙の労組という現場を描き出している。作家デビュー以後、この小説が三作目とのことだが、かなり手慣れた感じだと思う。

     ただしリアルな会社小説/労組小説の中にあってヒロイン役である遥の存在がどうにも浮き上がっていて、この部分だけどうも作り物めいている(労組に可愛くてしっかり者だけどちょっとドジっ子な女の子なんかいるか!)。実写映画の中に一人だけアニメの美少女が紛れ込んでいるような違和感があって、すごく気になった。
     まあ小説を仕上げる上でこういう恋愛要素を入れなくてはいけなかったんだろうが、ラストもなんだか予想通りだし、作者ここらへんの描写はこれから苦労して磨き上げていかなくてはいけないのかも。

     日本の経済発展の上で様々な功罪を残してきた労働組合。あまりにも歴史を重ねすぎて本来の姿が忘れられかけているけど、それは弱い者に手を差し伸べる組織でなくてはならない。人は一人では生きていけない、とまでは言わない。一人で生きていける人だっているだろう。ただ、一人では生きていけない人もいる、という事を知ってほしいのだ。

  • 『がんばりましょう』と言うと上からだし、『がんばってください』と言うと相手に任せっぱなしに聞こえるので、『ともにがんばりましょう』という言葉で締めくくる。

    労働組合がある会社を知らないので、入り込めるかなぁと思いながら読み進めました。

    自分自身財務とかスタッフ系に長くいたので、労働組合側の主張ってわがままだなぁといい子ぶってる自分に気付き、自身にこのようなことが降りかかった時にきちんと自己主張が出来るのか、人任せにしてしまったり、面倒だから交渉しないなんて事にならないだろうかと、深く考えさせられました。
    主張しないと損をするという『これまけてえや』と気軽に言う関西人気質みたいなものかなぁと思いましたが、私自身関西出身で、確かに家電量販店でも一言『まけられへんの?』と聞かずにおられない。
    そんな軽い感じで読めちゃうのですが、意外と奥が深いかも。

    さて、もう少し書いてみます。

    価値ある情報を毎朝自宅に届けるというビジネスである新聞業界。

    ネットが普及し、アメリカではどんどん廃業が進んでいるとか。
    日本でも同様に新聞広告の価値が下がり、折込チラシも一時期よりかは随分と減っている。
    スマホが普及しだすと更に電子版なるものに移っていくが、その場合新聞広告というものが取れるかというとそうではないだろう。
    宅配する必要がないので折込チラシで収益を下支えする必要もなくなる。

    でもネットからの情報は無料というなんとなく暗黙のルールというか価値観が醸成されつつある中、新聞業界の先行きについて不安に思う人も多いだろうし、経営者であれば可能な限りコストカットしないといずれ立ち行かなかくなると考えるのも自然。

    そんな中みんな頑張っているし、生活もあるしという中で、それを守るための主張はものすごく熱い。経営側はそんな思いをホントに大事だと思って交渉をするのか、どうしようもないんだからと言えば相手が納得してくれると思っているのか…

    気持ちのいい関西弁でのやり取りが続く文章は、懐かしさを感じつつ読めました。

    読後感としては、完璧な人間はいないが、完全なる悪人もいない。
    基本的にみんな良い人、一緒に頑張れるってイイコト。というあったかい気持ちになれました。

  • 全く知らない労働組合について知る事が出来た。すごい世界だなぁ・・組合と会社の関係は。恋の話はいらなかったのでは?

  • 音楽を愛しもめ事を嫌う気弱な新聞記者、武井涼。憧れの文化部への異動をエサに、組合執行部に入るよう口説かれる。そこは、強烈な個性の執行部員と、深夜手当カットを目論む会社との、怒涛の戦場だった・・・。まったく知らない労働組合の世界も興味深く読み進められる筆力はさすが。日本を変えたい・・・会社を変えたい・・・それよりもまず自分を変えたい・・・そんな思いに囚われている人たちに読んで欲しい一冊。神戸新聞社を退職した著者がどうしても書きたかったという、会社と仕事と闘争とちいさな恋の物語。「どうせ会社は変わらない」という弱気な言葉よりも、同僚や先輩・後輩たちと『ともにがんばりましょう』と、声を掛け合うことができたら素晴らしい。仲間がいるってステキだなぁと思わせてくれます。

  •  連合は、必読書として各単組に推薦すべき、もしくは大量購入して配布すべきだろう。
     ユニオンショップではない組合を取り上げたら、もっと厳しい人間模様を、描くことになったろう。

  • 会社の「労働組合」を描いた小説。

    そういう固い話は苦手・・・な自分でもわかりやすく読めました。そういう固い話が得意な人からしたらつまらないのかもしれませんが。
    話のテンポもいいし、自分のような苦手なタイプでもついていける展開なのはよかったんですが、ちょっと話が散らかってしまってる印象はありました。最後の恋愛的なまとめはともかく、過去に事故で今も入院中の・・・というくだりはとってつけたようでなんかバランスが悪い。え?そういう話だったの?って面喰いました。

    でも、若干軽めではあるものの門外漢の人にもわかりやすく伝えられるような平易な文章だとか、なんとなく恋愛にからめて・・って作風とか、なんというか文章がもっとこなれてきたら「男性版の有川浩」みたいななったりするのだろうか?いい意味でも悪い意味でも。

  • 久しぶりに泣いた。若手の新聞記者である主人公が先輩に誘われて労働組合に首を突っ込んで成長していくストーリー。感動の嵐。是非皆さんも呼んでみてください。労組役員13年の私がお勧めします。星4つ

  • いーんだけど、物足りない。読者の満足度という欲望は恐ろしいものですね(苦笑)

    時折みせる文章の作者特有のキレの良さは、更に増してますね。

    物語としては、一応一本の線になるのだけど、構成の流れに揺らぎを感じた。練る時間が足りなかったのかなと同情したくなる。

    しかし、この調子で徐々に伸びて行って欲しい。今後も追跡する作家に入れときました。

  • 私の職場も一応組合あり、加入もしているが、活動に参加することは少ない。このご時世、経営する人は、会社を潰さないよう考えるのが仕事。当然ながら、社員の賃金や手当てのカットを考えるだろう。でも、会社を支えているのは社員。カットによりモチベーション低下や離職する人がでたら、それこそ会社存続できなくなるし…難しい。

    組合の意見もそうだそうたと共感し、経営側の言うこともうなずけた。

    そしてふと、自分の職場も30年後、存在してるかなぁと考えた

  • 「敵は倒すためにあるんやない」「なんのためにあるんですか?」「歩み寄るためや」……組合の執行委員長寺内のことばは初めて交渉を体験した若い武井に沁みてくる。交渉の際に現場での声が次々に出てくるあたりが圧巻。

  • これは著者にとってなじみの深い、関西の大手地方新聞社を舞台とした労働組合の物語。

    言ってみれば、今はやりの「お仕事系」小説の変わり種ということだろう。
    そこはかとなく散りばめられた関西ならではのユーモラスなやり取りや、カリカチュアされた人物描写に東京もんとは一線を画すという矜持を感じるのは私だけだろうか。

    内気で軟弱、文化欄で音楽記事を書くことを夢見る主人公の武井は、入社6年目の社会部記者。取り柄は筆が早いということと動物好きというところか。口先達者な先輩記者に囲まれての下積み生活のうさは、ネタ探しを兼ねた動物園の散歩で晴らしている。そんな夏のある日、あやしい人影が後をつけてくる、、、、

    逃げる武井を捕まえたのは、新たに組合委員長に就任したばかりの寺内。狙いをつけていた教宣部長候補者が大怪我をしたというので、なぜか武井に白羽の矢が立ったのだ。逃げることの出来なかった武井は、文化部への転勤というエサと中途での辞退も可という約束に乗せられて新執行部の一員として活動する羽目になる。

    そこから始まる、苦闘の日々が具体的なエピソードとともに語られていく、、、

    地方新聞社らしい労使交渉のやり取りのさなかに、登場するちょっとおかしなエピソードはやはり関西ならではのもの。ふにゃふにゃした武井が次第に成長していく姿を追うグローイング。ストーリーとしての一面も、、、

  • 労働組合のお話。ちょっと疲れた。

  • 大阪の地方新聞社の労組を舞台にした団交物語(笑。労組のない中小企業に勤務する俺にははなかなか新鮮でした。大手は大手でまた大変なんですねぇ。ま、楽な仕事なんて政治家くらいなもんですか。

  • 関西の地方新聞社を舞台にした労働組合小説。
    はっきり言って超異色ジャンル。
    まあ、面白ければ良し!

  • 労働組合を描いた物語。団交がひたすら続き、読んでいる方も疲れちゃう。
    しかも、残業代カットとか普通に行われているこのご時世に、ここって、すごく恵まれた職場に思えるんですが・・・

  • それまで興味の無かった組合の役員に抜擢されてしまった若手記者の奮闘と成長そして恋。
    元新聞社勤務の作者だけに、労使交渉での現場の主張は切迫感あり。
    声を荒げる人や自己主張の強い人が苦手なので
    文章でも言い争いの場面はザワついた気持ちになった。

    巻頭の主な登場人物に
    遥が載ってないのが一番の疑問。

    【図書館・初読・8/10読了】

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著者プロフィール

1979年、兵庫県生まれ。神戸新聞社在職中の2011年、『盤上のアルファ』でデビュー。2016年『罪の声』で第7回山田風太郎賞を受賞し、“「週刊文春」ミステリーベスト10 2016”国内部門第1位、2017年本屋大賞3位に輝く。2018年には俳優・大泉洋をあてがきした小説『騙し絵の牙』が話題となり、本屋大賞6位と2年連続本屋大賞ランクイン。2019年、『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞受賞。2020年、21年には『罪の声』『騙し絵の牙』がそれぞれ映画化された。

「2022年 『朱色の化身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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