- Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062177993
作品紹介・あらすじ
『ヘヴン』『すべて真夜中の恋人たち』と一作ごとに新境地を開拓する川上未映子の多彩にきらめく魅力が一冊になった初・短編小説集!
・「アイスクリーム熱」 いつも同じアイスクリームを買いに来る彼に想いを募らせるわたしは・・・
・「愛の夢とか」 ピアノの音に誘われて始まった、わたしと隣家の主婦との不思議な交流の行方は・・・
・「日曜日はどこへ」 14年前に恋人と交わした約束の場所へ、ひとり出向いたわたしは・・・
・「お花畑自身」 わたしが丹精して育てた愛しい花畑の庭が、あの女のものになるなんて・・・
・「十三月怪談」 愛し合う夫婦の妻が病死した後、魂がみつめる夫の「その後」の風景・・・
ほか、女と男、女と女の関係の出会いと別れ、日常の裂け目を鮮やかに描き、こころ揺さぶる万華鏡のような7ストーリーズ。
感想・レビュー・書評
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2013年発刊の短編集。
「日常がゆらいで光を放つ瞬間をとらえた、心ゆさぶる(オビより)」7つの短編が収録されている。
看板に偽りなし。いずれもすばらしい短編。
とくに、最後の2篇は衝撃的とすら思えた。
お家が好きすぎて自分自身がお庭になっちゃう「お花畑自身」と妻の発病から死、死の瞬間の妻の意識、残された夫をフラットに描く「十三月階段」。
終盤に畳み掛けられます。注意。
村上春樹さんとの対談集「みみずくは黄昏に旅立つ」を読んだからなのか、オマージュなのかな?と思うくらい村上さんの影響を強く感じる部分があって、新たな発見というか、おもしろかった。 -
ヘヴンは震えるくらい面白くてすごかったけれども、これも震えるくらい面白くてすごい。ほんとうにすごい。こころの震えが手に取るように分かって、わたしのこころも震える。とんでもなく深くてやわらかいところまで響くような、決して偽物ではない。どこまで行くの、と聞きたくなるような。自分がいて他者がいて、自分の欲求があってどうしようもなさがあって、苦しさがあって、生きるのってほんとうに難しい。やわらかくてあたたかいところを守るような小説にわたしは弱い。しかしその良さ、その素晴らしさを言葉にしようとしても、具体的にここがいいとかあれがいいとかそういう風には言えなくて、ああなんて情けないと思うのだけれど、それすらも肯定されるようなぬくぬくと優しさにつつまれるようなそんな。
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詩人ならではのならではの攻撃的な言語感覚、そして作家縛り抜きで勝負できるルックス故に色眼鏡で見られることが多く評価がはっきり分かれる川上未映子。
だから無理に勧めることはしないが少しでも彼女の感性に興味があるのなら入門として読んでみて損はないダイジェスト版。
詩的要素たっぷりの「いちご畑〜」から耽美派純文学テイストの「愛の夢〜」「お花畑〜」どれもまた違った味わいが出て良いのだが特に良いのは今後の作品の芯になっていくだろうと思われる哲学的な趣きの「十三月怪談」 …大切な人を想って涙腺破壊必至のせつなくも愛おしい佳作 -
3月10日に読み始め、3月11日に読了。
なぜわざわざ日付を書いたかというと
確かこれは去年末に買って3ヶ月ほどの積読になっていた小説なのだけど、内容は知らなかったのに本当に偶然、3.11の震災にも少し関連する短編がいくつか収録されていたから。
こういうことはたまにある。
人でも物でも表現でも、出逢うタイミングには不思議な縁がある。
終始浅い夢を見ているような短編集で、カポーティの「夜の樹」を少し思い出した。
物事や現象というよりも、主人公の感情の描写に引き込まれるような感じ。
少し前によしもとばななさんの「スウィート・ヒアアフター」を読んだとき、もしも愛する夫か恋人がいる状態で自分が先に死んで、その先愛する人が自分以外の誰かと一緒に生きていく姿が見えてしまったら…ということについて少しばかり思考したのだけど、この小説の「十三月怪談」にはそのことをさらに考えてしまうような描写があって、読みながら泣いてしまったし、私は「無理だ。自分がいなくなったあと愛する人がまた誰かと生きて欲しいということは願いたいけれど、その暮らしが逐一見えてしまうのは辛すぎる。狂ってしまう。願いなんてただの綺麗事なのかもしれない」と思ってしまった。
普段生きていて自分の自己中心性にはっとすることがあるけれど、小説を読んで想像して感じることもある。
誰かのために生きる、という思想もあるけれど、結局は自分の感情からは逃げられない。
淋しかったり、いい意味でぞっとする物語は私好みだった。文章はやはりやや独特なところがあるけれど、いまの川上さんの文章は好きだと思う。
表題作はリストの愛の夢を聴きながら読んでみたら少し感慨が生まれました。 -
短編集。孤独の最小単位はふたり、ということ。
ふたりを知らなければひとりを知りようもない。
色々なふたり、色々な孤独が詰まってる。
十三月怪談だけが幸せな終わり方をしていて、幸せな終わり方をしたのがこのお話で良かったと思った。
終わりが終わりの顔をして近付いてこないこと。「通りすぎたうんとあとにあれが最後だったと気づくだけ」なのは、悲しいけど本当。 -
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「十三月怪談」で「同化」って感じられたところ、面白い視点だなと思いました。わたしは気付かなかったので、いずれまた読み返してみたいです。「十三月怪談」で「同化」って感じられたところ、面白い視点だなと思いました。わたしは気付かなかったので、いずれまた読み返してみたいです。2013/04/19
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けっこういろいろなタイプの短篇を集めたという印象。
全体を漂うけなげな諦観は、森鴎外『雁』にも匹敵するうつくしさ。
個人的に好きなのは最初のふたつ『アイスクリーム熱』と表題作『愛の夢とか』。
読んでいて、最近はあまり会う機会もない懐かしい友人ふたりの顔が浮かんだ。で、私たち、けっこうまじめに生きてたけど、なんだかいつもちょっとずれちゃったよね、可笑しいね、みたいな話をしたくなった。
凄かったのは、最後の『十三月怪談』。
パートナーを病気で失くすっていう話は今までうんざりするほど読んだ気がするけど、ここまで切ないというか、ああ、そうだよね、きっとそういう気持ちになるよね、と思えたのは初めてで、そこまでリアルでありながら、いつのまにか怪談になっちゃって、読む者は虚実の重層に竜巻みたいに巻き込まれるしかない。-
コメントありがとうございました。同化はどうかな?とくだらないシャレはおいといて、お花畑自身→十三月怪談の流れで、ヒトとモノの肉体の同化に対し...コメントありがとうございました。同化はどうかな?とくだらないシャレはおいといて、お花畑自身→十三月怪談の流れで、ヒトとモノの肉体の同化に対して、ヒトとヒトの精神(というか、記憶の根っこ)の同化というふうに解釈したんですが・・・まあ願望込みですね。森鴎外の「雁」は未読なので、是非読んでみます。平野啓一郎さんも鴎外から文学の道へと仰っておりましたし。。2013/04/19
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今回これを読んで初めて川上未映子を「わかった」ような気がした。
今まで私の中で川上未映子は、なんというか、敵意とか愛情とか、自信とか羞恥とか、嫌悪とか憐憫とか、もっと言えば喜怒哀楽様々なの感情を針のように全身にまとい、ちょっとやそっとで共感しないでよ、と言っているような、そんな存在。
それが、この短編集を読んで、初めて自分と同じ地面に立ち同じ呼吸をしている一人の人だと、そこにいて私たちに向かって叫んでいる一人の人だと、「わかった」気がする。
生半可な共感を拒絶し続ける7つの短編を読むと、わからないけどわかる、そういう不思議な体験ができる -
五月、図書館の入り口に、
「いちごの本」と題したコーナーができていて、
その中にあったこの本に目がとまりました
読み終わったのは真夏ですが、、、
めんどくさい女ばっかりで、
男もややこしく、
物語もあいまいで、
フワフワとモヤモヤしながら、
なんとなく読み進めてしまった
読了になんだか体力がもってかれました
まあそんだけ心が揺れた、そんな本でした。
現在『黄色い家』読んでます!
金原さんにつづき、未映子さんも被ってきてますね!笑
現在『黄色い家』読んでます!
金原さんにつづき、未映子さんも被ってきてますね!笑
なんと!!!
僕も「黄色い家」仕入れました!
本屋大賞ノミネート作制覇してから読もうと思ってますが、横から図書館予約...
なんと!!!
僕も「黄色い家」仕入れました!
本屋大賞ノミネート作制覇してから読もうと思ってますが、横から図書館予約本が横入りしてきてなかなか辿り着けません(泣)