ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 59
感想 : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062178013

作品紹介・あらすじ

戦後の約20年間、台湾において旧大日本帝国軍人による大規模かつ組織的な軍事支援がおこなわれていました。密航して台湾に渡り、蒋介石の軍事顧問となった彼らは「白団」と呼ばれました。その名はリーダーを務めた元陸軍少将・富田直亮が「白鴻亮」という中国名を名乗っていたことに由来します。
 しかし、よく考えてみれば旧敵たる蒋介石を、どうして日本人たちがさまざまな危険を冒して海を渡って助けなければならなかったのでしょうか? 逆に、どうして日本の旧軍人たちに助けを乞いたいと蒋介石は考え、実行に移したのでしょうか? 蒋介石のいわゆる「以徳報怨」演説と敗戦国日本への寛大な政策への恩義、反共というイデオロギーでの一致、日本人の勤勉さへの蒋介石の畏敬の念……。さまざまな要素が絡まりあって史上例を見ない不思議な軍事顧問団が形成されていったのです。ただ、そこには当然、それぞれの思惑、建前と本音が存在しました。本書は足かけ七年を費やしてアメリカ、台湾、日本に散在する未公開資料を渉猟し、関係者を取材した記録です。蒋介石という政治家の実像と白団の等身大の姿が、いまはじめて浮かび上がってきます。

感想・レビュー・書評

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  •  旧日本軍将校による、戦後中華民国(台湾)での軍事顧問団「白団」に関する本。非公開資料も含め、一次資料を多く使い実証的だ。
     冒頭は、日本への評価と批判が両立する蒋介石の対日観。両者は整理されており、愛憎が渾然一体だったわけではないと著者は観察する。
     岡村寧次の無罪判決が既に「白団」結成の伏線だった。その活動期間は1950〜68年。当初2年は70名以上いたが、米国に問題視されたこともあり順次削減され、最後の数年は20名程度から数名に。一方日本国内では、服部機関とも関係していたと思われる「富士倶楽部」が後方支援として軍事関連の資料を収集し発送する。
     本書からは「白団」の率直な姿が見える。現地では飲酒の上の死亡事故や喧嘩の警察沙汰を起こしたり、メンバー間の不和だったり、現地妻を作ったり、給与値上げなどの条件闘争をしたり。著者はメンバーの参加動機を、軍人としてのキャリア活用、やりがい、そして何より待遇の良さだとする。それが悪いとは思わない。戦後直後に旧軍将校が日本国内で置かれた立場を考えれば当然の選択であり、「以徳報怨」への恩義のためなどと言われるよりも嘘臭くない。
     それでも戦後、日本国内の保守派は「以徳報怨」への恩義を唱えていたと著者は指摘。現在の保守派が李登輝の日本贔屓を持ち上げるのと好対照だ。学問的にはともかく、日本でも、そして台湾でもイデオロギー的な善悪や好悪が入りやすいのだろう。
     なお、本庄繁を「満洲事変を主導した」としたり、一夕会を「のちに二・二六事件を起こす母体」としたり、皇道派を「軍部主導の国家総動員体制による国防国家を建設しようとした」としたり、本筋ではないが疑問符の付く箇所があった。

  • NT3a

  • 蒋介石のことを知る貴重な書物であるが、白団の歴史的の意味はあまりよくわからないままで終わった感じがする。

  • [異形の残響]共産党に追い詰められ、大陸から台湾への撤退を余儀なくされた蒋介石と国民党。壊滅も予期されるほどの崖っぷちに立たされる中で、旧日本軍の軍人からなる「白団」という団体に彼らは軍事的な助言を求める。「昨日の敵は今日の友」を体現したかのような中国及び台湾と日本との関係にスポットライトを当てた作品です。著者は、朝日新聞社に入社後、シンガポールや台北で支局長を経験された野嶋剛。


    日本と中国の関係を中途半端に大きな枠や言葉で括ると、必ず見落とされるものがあるということを痛感する作品。不勉強にして「白団」の存在を知らなかったのですが、その影響力の大きさや長期間に及ぶ活動に驚かされるばかりでした。記者を勤め上げられた野嶋氏だけに、丁寧かつつぶさに「白団」の活動を浮かび上がらせていく記述には静かな興奮を覚えました。


    「白団」というグループのみならず、その構成員の個人としての歩みにまで筆を進めている点が印象的。本書の主人公とも言える蒋介石をはじめ、戦後の混乱期に各人が各人なりの夢や郷愁、必要に迫られてこの特異な集団が形成されていったのだと感じました。蒋介石の個人史としてもぜひ参照したい一冊です。

    〜白団は、旧日本軍の隠し子のような存在だった。本来は一九四五年の敗戦で燃えつきていなければならなかった軍人たちのプライドや夢や知識を、台湾という新天地に移植しようとした試みだった。その意味で、白団にとって一九四五年で戦争は終わっていなかった。〜

    中国についてはこれだから勉強せずにはいられない☆5つ

  • 太平洋戦争後に台湾に渡り、国民党に協力して対共産党への戦争準備に協力した元日本軍人達の団体がいた。彼らはそのリーダーの偽名の名字から「白団」と呼ばれている。これまで秘密とされてきた白団の真実に迫る・・。

    というのが、この本の大きなテーマと言えるだろう。この本を手に取るまでは、白団の存在自体は知っていたもののどういった活動をしていたか詳しいことを知らなかったので、大変興味深く読むことが出来た。
    これまでの自分のイメージでは「白団」というのは死に切れなかった軍人達が戦地を求めて台湾において軍事顧問団になった・・という程度のものしかもっていなかったのだが、本書ではそういう視点を越えて、蒋介石の嗜好や精神性、国際状況、そして個々人が身心に積み重ねてきた歴史というものがあわさって一つの組織が出来あがっている様を描いている。

    台湾史というのはあまり「売れるマーケット」ではないという気がするのだが、こういう良質なノンフィクションは多くの人の手にとってほしいと感じた。

  •  第二次大戦後に台湾で軍事面で協力した、旧日本軍人たちのグループ白団の話である。なぜ彼らを蒋介石が受け入れたのか、なぜ白団が20年近く存続したのかを筆者なりに調査した歴史ノンフィクションというかルポルタージュである。
     元白団の数少ない現存者や家族、台湾人関係者、当時の日記や資料など新聞記者らしくよく調べて書いている。新たな資料も発掘しているようだ。
     当時の話しだったり、子や孫の記憶だったり、話があちこち飛んで飽きさせない構成ではあるが、ときどき表現が大げさというか決まり文句風になっており、もう少し読み物っぽさを排し、事実の記述というか羅列的な書き方をした方が、読者の心に感じさせるところが増えたのではないかと思う。
     筆者の今後に期待である。

  • 東西冷戦(反共)という枠組みが外れ、関係者の多くが鬼籍に入る中で、利害関係がなくなり、ようやくとその詳細が明らかになってきた感がある。

    団といっても寄せ集めの集団であり、その内部に旧陸海軍の対立や個人的派閥があり、決して一枚岩ではなかった点も明らかになっている。

    また、服部卓四郎も関わりがあるとされてきたが、実際に訪台して講演を行なっていること、服部機関が団のバックアップ、サポートを行なっていた点も明らかになった。GHQと団は服部機関を通じてつながっていたが、米本国からの軍事顧問団とGHQではつながっていなかったのだろう。

    本来、日本軍が「反共」であったなら、国共合作を阻止し、共産党の息の根を止めていれば、国共内戦もなかったとする指摘は面白い。

    また、団が蒋介石の軍隊の役に立つことで、軍による台湾人の抑圧が行なわれたとする指摘も興味深かった。

    以下、引用省略

  • 「ルポMOOC革命」に続き朝日新聞の記者による本を読む。記者さんの文書は読みやすい。白団の生き残り・親族へのインタビュー、蒋介石や白団の日記、台湾の土地の描写などを織り交ぜ話がすすむにつれて、白団が成立する要件や活動内容が理解出来ました。私のおじいさんは軍人教育を受けていなかったけれども、満洲で教師として過ごしたので、機会があればまた満洲で生活してみたいと思うことがあったのか。そんな話をしてみても良かったなと思いました。故宮博物館、中正紀念堂、たくさんの温泉施設、日本風の鉄道駅舎などなど、観光客として台湾を訪れるだけでも蒋介石のこと、日本とのつながりを意識せずにはいられない台湾です。

  • (欲しい!)

  • ジャーナリストである著者は、これまで知られてこなかった新資料や証言を得て、なぜ蒋介石が敵国であり敗戦国の日本に軍事顧問を要請し、かれら白団もなぜ20年も台湾にとどまったのかという疑問を明らかにする。研究者や在野の歴史家をも瞠目させるほど歴史的価値の高い資料の発見がなされているが、そうではない一般読者の身としては、最高の素材を最高の料理人が調理して饗されたとは正直感じられず、物足りなさを覚えた。「最後の部隊」という意味のタイトルから受ける悲壮感よりは、「最初の天下り部隊」とも呼ぶべき安穏さを感じてしまった。

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著者プロフィール

ジャーナリスト、大東文化大学社会学部特任教授。1968年生まれ。朝日新聞記者を経て独立。著書には、ちくま新書の『香港とは何か』『台湾とは何か』『二重国籍と日本』(共著、国籍問題研究会名義)のほか、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)、『タイワニーズ――故郷喪失者の物語』(小学館)など多数。

「2021年 『蔣介石を救った帝国軍人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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