ハンナの記憶 I may forgive you

著者 :
  • 講談社
3.32
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本棚登録 : 78
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062178068

作品紹介・あらすじ

「山手のおばあちゃん」静子の家出、謎のクリスマスカード、そして東日本大震災の発生…さまざまな事件が起こるなか、波菜子は67年前の秘密の交換日記に手を伸ばす。戦時下の横浜、日本とイギリスの少女の友情をえがいた青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 現代と過去、戦争や人災(この場合は原発)によって住まいや祖国といった居場所を失われた人々がリンクしていく構成は良いと思う。そこに67年前の祖母の交換日記のミステリーがからめている。大人目線で見るとかなりデリカシーのない主人公(波菜子)であるが、子どもだから許されるんだろうか?
    「ぽぽぽぽ~ん」のくだりなどは、震災で大きな被害をうけた人たちにとっては笑えないエピソードではないかと胸が痛んだ。ちょっと残念な作品。

  • うーん…。
    あの3月のことをフィクションの中に落とし込んで書いたものを、楽しむには、まだお互い早いんじゃないかと思った。
    書きたいことがあるのは分かるけど、生々しいのにフィクションなのに生々しいのに、って重心がぶれて苛々する。自分にはまだ平静に読めない。ノンフィクションか、いっそ振り切ってくれた作品なら読めるんだけど。半端に、東北以外の人々の現実がちらついて集中できなかった。
    この要素が気にならない人なら楽しめるのでは。祖母の女学生時代の交換日記と謎を解く云々はよかったので。

  • 【あらすじ】
    横浜の山手出身の祖母を、老人ホームに入居するまでの間、預かる事になった。
    その家の高校2年生の娘が、日米戦争中の祖母とその友達、ハーフのハンナとの交換日記を見つけた事と、311の震災を経験した事を、戦争と震災、人と人のつながりを学生の目線で描いた作品。
    交換日記から、祖母とハンナがそれぞれ辛い出来事を体験した事と、ハンナの特殊な状況では、似た境遇の外人とその家族が人まとめで収容されていた事実を知る事になる。
    やがて、戦争が終わり祖母とハンナはお互い理解し合えないまま、分かれる事になるが、作中の終盤で手紙のやり取りから、数十年ぶりに合う事を約束し、物語を終える。
    この間にいくつか震災時の出来事が描かれるが、こちらは割愛しておく。
    【感想】
    横浜の山手は西洋の人が住んでいたこともあり、西洋館が残されており、そこに足を運んだこともあるからこそ、臨場感をもって読めた。
    また、戦争に突入するにあたって、祖国に帰ることを選ばなかった外人がどのような扱いを受けていたのかを、この作品から学ぶことが出来たと思う。ただし、戦争と震災がバッチリかみ合ってはおらず、テーマがボヤけたような、いまひとつ伝わりきらなかったもどかしさを感じた。
    きっと、作者も薄々気が付いているだろうし、大切な何かを俺自身捉えきれずなんだかモヤモヤした気持ち。

    震災と原発については、何が悪いのかを考えるよりも、何をこれからしなくてはいけないのかを、考える方向に作品をもっていってほしかった。
    ここまでネガティブな感想になっているけれど、祖母とハンナのやり取りの日記は本当に良かった。前向きで行こうという気持ちや、互いの境遇を生々しくも物語の友情ありきで描き、読んでいて楽しめた。
    主人公の恋愛に関しても、結局冷める事になったりと、中途半端な感は否めなかったが、作者のデビュー作という所からすると粗削りではあるけれど、知識としても、震災を思い出すきっかけにもなった。
    この作品は好きになりたいけれども好きになりきれない、というなんだか惜しい作品で、こんな感想を抱いたのは初めてだからなんかもどかしい。
    なにを書いてるか自分でもよくわからないけれども、。
    あと、作者はムサビ出身ということで、これまた何かの縁だったんだろうさね。
    こんど山手の西洋館に一緒に足を運びたいもんだ。

  • 題名と表紙が気になって手に取った本
    最初から最後まで止まらず読みきれました。

    この本に書いているようなことが実際に起こっていたかもしれないと思うとゾッとします。
    さらさら読めて面白かったです。

    記憶に残ったシーンは、戦争が終わりハンナの家族がしずこの家族の元へ荷物を取りに行った時のシーンです。同じ日本にいたけどやっぱり勝者と敗者なのかなと感じました。「早く国に帰れば良かったのに」と言われてハンナはきっとすごくショックを受けたと思いますが、しずこがそう言ってしまう気持ちも分かる気がします。

    個人的にはしずことハンナが再開するところも読みたかったです。

  • 認知症になったから老人ホームに入る前に、ということで一時的に家に来た祖母。祖母宛のクリスマスカードには、ハンナという人から「I may forgive you.」と書かれていた。戦中を日本で生き延びたハンナと祖母は親友だったらしいが、かつての彼女たちに何があったのか。
    読み始めたら引き込まれてしまって最後まで一気に読了。最近、こういう昔の時代と現代とをいったりきたりする物語が多いような気がするけれど、やはり昔の方が空気が濃密。ひとつのミスが危険だったりするからかも。しかし、今回は現代が2011年3月。何が信じられるのかわからない空気が、いっそう彼らを過去へ結びつけるというのがよくわかる。

  • 記憶から未来へ
    戻りたくても戻れない。

    深い考えなく行ってしまった言葉が、行動が、誰かの心をえぐっているかもしれない。
    そう考えると自分の口から発せられる言葉が恐ろしくなってくる。
    特に私は、口でよく失敗をしている。
    三歩あるけば忘れてしまうなんて!

    でも、だから人の痛みに敏感になろうと思える。
    まだまだ、それは遠いけれど。

    おばあちゃんにはハンナという親友がいた。
    茶色い目の「外国人」。
    二人は親友だった。
    しかし戦争はそんな二人を引き裂いてしまう。
    ハンナにとって日本は故郷。
    生まれ育った街だ。
    それを奪われてしまった悲しみが伝わってくる。

    現在を生きるハンナの言葉は出てこない。
    登場するのはI may forgive youという言葉だけ。
    それが何を意味するのか。
    そこには長きにわたる悲しみと、希望があった。

    物語の背景に「3・11」がある。
    人が起こしてしまった最大の悲劇。
    政治が、原発が、二元論に陥りがちな背景を善悪のみで直接語らないところは評価できる。
    ただ、個人的な希望としては、ハンナとシズが会えるところまでを描ききってほしかった。
    そして、「とりあつかい説明書」はあえて強い言葉を使っており、著者自身の厳しい指摘だと感じた。
    中学生らしい表現を描いているが、若い読者にはどれだけ伝わるだろう?

    記憶は生き続ける。
    嫌な記憶ほど、ある時突然フラッシュバックする。
    それを残すべきなのだろうか?
    本作品内での指摘もあったが、「記憶」を持つヒトとして、考えさせられる。

  • しばらく前に読了。長江さんは、たぶん三冊目。
    震災と戦争を交錯させるというのは興味深かった、けれど、若者のエネルギーでおばあちゃんたちの過去のわだかまりを晴らす、という展開にはちょっと頷けなかった。当人同士が当人だからこそ踏み出せない、ということはたしかにあるだろうし、第三者があえて踏み込むことで事態が好転することもあるだろうとは思う。でも、当人を置き去りに事後承諾で進めて結果オーライでは、けっきょく波菜子の気のすむことが第一なだけな気がしてしまった。ちょっと気になったのは、波菜子がハンナへの手紙を英語で書くという部分。ハンナが日本で子ども時代を過ごしたなら、日本語で書いても読めるのじゃないかと思うのだけど、日本を離れて長いからもう読めないということ?返事が英語というのはわかるのだけども。
    表紙の赤い服が目に鮮やか。

  • 戦中と震災原発。祖母と孫。
    内容を大雑把にいうと、祖母の戦中時代の秘めた交友や誤解を孫が解き明かし、今につなげていく。

    いつまでも表面を上滑りするような感じがして私には合わなかった。

  • 養護老人ホームに入居する予定の山手のおばあちゃんが、一週間ほど波菜子の
    家に泊まることになった。
    おばあちゃんは、認知症が始まっているってお母さんは言うけど、波菜子には
    そうは思えなかった。

    お兄ちゃんが、山手の家に忘れられていたと言って、一通の手紙を持ってきた。
    差出人は、ハンナ・フォックス、クリスマスカードだ。
    カードには、「I may forgive you.」(私はあなたを許してあげてももいい)とだけ書かれている。
    おばあちゃんは知らないと言うが、その様子は、けっしてボケてはいないと思う。

    3月11日の大地震で、部屋にあったおばあちゃんの荷物もくずれ、床に落ちた
    灰色のノートに目が留まった。
    それは、おばあちゃんとハンナの交換日記だった。
    太平洋戦争が始まり、親友で混血児だったハンナの家族が日本人から隔離されて
    からの、二人の秘密の日記だった。

    「I may forgive you.」
    この言葉の意味が知りたい。
    二人の間に何が起こったのか、この日記に鍵があるはずだ。

  • 2011年3月11日と、戦争の時の話があって、しかも舞台が横浜の方だったので、知ってる土地ばかりでした。主人公のハナコはハンナというおばあちゃんの元親友から届いた手紙に書かれた言葉が気になり、おばあちゃんの過去を掘り下げる物語。
    前半は少し読みにくかったですが、後半から急に話が進んで面白かったです。

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著者プロフィール

1971年、東京都生まれ。武蔵野美術大学卒業。構成作家として主にNHK Eテレの子ども番組の制作に携わる。2006年、「タイドプール」で講談社児童文学新人賞佳作を受賞し、同作にてデビュー。21年、『サンドイッチクラブ』(岩波書店)で第68回産経児童出版文化賞〔フジテレビ賞〕を受賞。ほかの作品に『ハンナの記憶 I may forgive you』『木曜日は曲がりくねった先にある』『百年後、ぼくらはここにいないけど』(以上、講談社)、「NHK オトナヘノベル」シリーズ(共著、金の星社)などがある。

「2022年 『ぼくのちぃぱっぱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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