大阪アースダイバー

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 557
感想 : 65
  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062178129

作品紹介・あらすじ

南方と半島からの「海民」が先住民と出会い、砂州の上に融通無碍な商いの都が誕生・発展する。上町台地=南北軸と住吉〜四天王寺〜生駒=東西軸が交差する大地の一大叙事詩を歌いあげる。

感想・レビュー・書評

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  • アースダイバーと称して、地域ごとの地質・自然環境と時間軸に基づいた人間社会の変容を思想(主に宗教)をベースに紹介した書籍の大阪編。

  • 大阪は水の都である。という一文から始まる司馬遼太郎の小説があったと思う。何だったか思い出せないのだが、
    私事ながら、秋から大阪に単身赴任している。東京と比べると大阪は本当に平べったい。坂がない。地下鉄の出口案内に並ぶのは、橋や堀のつく地名ばかり。高低差を愛でるタモリ氏やスリバチ学会の会員だったらつらい都市だろう。

    東京の地形の記憶を扱った前作のアースダイバーを読んだのは、2006年頃。大阪をテーマにした本書が出版されたことは知っていた。暫く手を出さないでいたのだが、大阪暮らしに慣れる意味でも読んでみた。

    土地勘がない心配は杞憂だった。舞台になるのは殆ど上町台地ばかり、北は大阪城から南は住吉大社近くに繋がる台地。他の場所は昔は海の底だったから、東京版のように彼方此方の場所を尋ねる面白さは少ないと思う。
    大陸系の海民の姫神達、物部氏の本拠に建てられた四天王寺、と大地に残る歴史を中沢氏らしいチョッと気障っぽい語り口で物語る。
    商業は共同体ではなく、「無縁」から生まれたとの記述は、著者の義兄、網野善彦を思い出させる。
    後半は上町台地から西の千日前やミナミのディープな大阪の演芸や処刑場、墓地の記憶。そして差別の原因になった歴史の経緯。

    漫才についての記載。
    「ここから、大阪に独特な言語コミュニケーションの発達が起こった。意味の中身を伝え合うのではなく、意味らしきものを伝えあっている、そのプロセスの方に重点がおかれた。意味の固い層の下を流動している無意識の流れを、ひょっと会話の中に紛れ込ませる技に高い評価を与えた。」
    内田樹さんの「うほほいシネマ倶楽部」にあったポストモダンの説明、ボールに価値はない、パスにこそ価値があるという言説を思い出す。大阪人どうしの会話ってポストモダンなのか?え~!。

    河内の盆踊りでは非業の死を遂げた人の物語や猟奇的大量殺人事件や俊徳丸のような物語が音頭で歌われる。
    東京版のような地形から呼び起こされる物語は少なかったが、なかなかディープな話が多く、満足した。

  • 読み物としては面白い。村田沙耶香の『地球星人』につながるようなことが書いてあった。

  • 古代大阪は海がほとんど島として天満橋近辺、三国ヶ丘、石切まであった。

    縦軸は生命の軸。
    横軸は死の磁力をもつ死の軸。横軸があることがいまの大阪を作った。

    歴史や土地名の由来をいろいろ。当時13歳の厩戸皇子は物部守屋と蘇我馬子の戦闘をみたこと。森ノ宮は物部守屋が敗れ去った場所。当初建てられた四天王寺はそこから移転し、現在の場所へ建てられた。

    千日寺であった法善寺へ向かう道が千日前通り。法善寺の奥には処刑場があり、しょっちゅう首が晒されていた様子。墓守非人と呼ばれる人たちが千日前にあった大阪最大の墓を中心に遺体処理をしていた。非人は縄文時代は霊と踊ったりとネクロマンサー的な役割。お経をあげる聖と非人は芸に秀でていた。見世物小屋などを通し芸能が盛り上がっていく。漫才など芸能の始まりであった。

    荒陵の地である茶臼山から新世界にかけての場所で第5回内国勧業博覧会が開催。不潔住宅の取り壊しで行き場を失った住人は今宮村方面へ。海が隣接していた時代、塩を焼く釜があったため釜ヶ崎と呼ばれた場所も集まり場所となった。
    四天王寺の作り手の伝説はさておき、古代に建立された四天王寺の許容の深さにおいて、大阪人の人情深い精神・性根が作られたのかもしれない。

    大阪のもっとも古い文化層は生駒山麓。軍事的志向の強くならに根ざした天皇家に服従はしたが、経済的政治的にはそれを上回っていた。モノと呼ばれる精神技術があり、モノを扱う専門集団という由来で物部氏。磐船の内部へ入るのは物部氏の若者の成人になるイニシエーション。これが6世紀。

    堺と平野は環濠都市として農民が入らない、商人職人が集まる市民を作り上げていった。それに対抗したのは一向宗の寺内町。15世紀の室町時代。組合などの信頼と、宗教による信仰による結びつきを作っていた。織田信長や豊臣秀吉の統一国家づくりには大きな障害て、排除を続けてきた。イスラム教では今もそれがつづいている。

    大阪の在日問題や天皇家のことを少し露わにしながら進んでいった。大阪の歴史は深い。この歳になりあちこち土地や土地柄を知った状態で、学ぶべき歴史をようやく学んだ気がする。

  • 大阪市東住吉区で生まれ育った私には、とても説得力のある分析だった。筆者の大阪へのシンパシーと造詣の深さがひしひしと感じられた。あとがきの指摘も全く同感。今、大阪は歴史と伝統文化の重みを理解しない某為政者の、学歴では測れない教養と品性の欠如に振り回されがちである。しかし大阪人は賢明にも違和感を感じ始めている。

  • 海民・無縁など、網野善彦の歴史観に立ちつつ、砂州の上に作られるべくして造られた都市として、大阪をアースダイブする。読んでいるうちに、今ではすっかり色のうすくなった大阪らしい息遣いが、立ち上ってくる。

  • 中沢新一(人類学者、宗教学者ほか)著「大阪アースダイバー」を読みました。
    かなり面白く、かつ、うさんくさい本。

    大阪のまちの全てについて解明しているわけではなく、
    上町台地、船場、ミナミ(難波~天王寺、西成)、そして渡辺村について古代、いや、それよりもっと前の時代から含めて読み解いています。

    例えば、「お笑い」の始まりは上町台地「玉造」にあった、という話。
    そこには初代の四天王寺が物部守屋の霊を鎮魂するために建てられ、
    そこで密儀の参加者は一斉に「ワッハッハ」と笑った。
    それは、生命力の一部が宿っている体の部分を安全に分離する作業であった、とのこと。

    今日のヨシモトの笑いは、ミナミの焼き場や処刑場から生まれた。
    近世になり、道頓堀には芝居小屋が並んだが、
    その南、千日前には、広大な刑場、墓地、焼き場があった。
    刑場は千日前通りのすぐ南、今のビックカメラ(旧千日デパートビル)の東あたり、
    焼き場は今のNGKの少し北あたり。
    道頓堀の小屋での見せ物興行より、本物の処刑を人々は楽しんだ。
    そして、死者を扱い、この世とあの世の接点で仕事をする墓守は、多くの芸能を産み出したという。
    そこに、吉本せいが漫才を持ってきた、というような話。

    西成の釜ヶ崎がどのようにできていったかという話も、非常に勉強になりました。
    もともと、今の日本橋電気屋街あたりに住んでいたドヤ街にいた人々が、
    内国勧業博開催の影響で追い出されて移動したのが始まりだとのこと。
    黒門市場は、そのドヤ街を狙った堺魚商人が始まり。

    中沢氏の偉いところは、大阪の歴史をひもとくと当然ぶつかる差別の問題を避けて通っていない点。
    墓守など人の死を扱う「黒不浄」と、動物を扱う「赤不浄」の大阪における歴史を、ちゃんと解説し、しかも、政治起源説をしっかり臭わせている点が評価できると思いました。

    大阪の成り立ちを知る上で常に座右に置いておきたくなる本ですが、ただしバイブル的に、というわけにはいきません。
    あまりに演繹的すぎて、それはこじつけだろ、なにを根拠に言ってるんだ、たんなる想像だな、という点もありました。

    ああ、面白い本だった。今のところ、今年一番(出版は去年の秋)。

  • 大阪の歴史が地名とともに解き明かされる。緩やかに動く人々の生活が時を経て確固たる幹へと受け継がれていく経緯に圧倒される。生と死、差別と笑い、縁と無縁を互いに牽制し迎合しながら生活を営む術を模索していく。処刑場から見世物小屋に変貌していく千日前の神秘に心地よさを感じる。

  • 魅力的な「物語」である。わたしにとって「物語」こそが重要であるので、ここで見せられた都市への直感には魅せられっぱなしだった。「大阪」が何ものであるかが整理される。
    海の中から出た都市、聖と俗を抱え込んだ都市、海民の発想、半島からの視野、などなど示唆に富む視点。大阪を買いかぶりすぎでは?とのオーバーランはご愛敬。

  • 大阪は東京とはずいぶん違った発展の仕方をしたらしい。
    大阪に行く前にこれを読んでおくと、景色がちがって見えるはず。(コアラ)

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著者プロフィール

1950年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。京都大学特任教授、
千葉工大日本文化再生研究センター長、秋田公立美術大学客員教授。思想家。
著書に、『チベットのモーツァルト』『雪片曲線論』『森のバロック』『カイエ・ソバージュ』シリーズ、『アースダイバー』シリーズ、『レンマ学』『野生の科学』ほか多数ある。


「2021年 『日本の古式捕鯨』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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