大阪アースダイバー

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 60
  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062178129

作品紹介・あらすじ

南方と半島からの「海民」が先住民と出会い、砂州の上に融通無碍な商いの都が誕生・発展する。上町台地=南北軸と住吉〜四天王寺〜生駒=東西軸が交差する大地の一大叙事詩を歌いあげる。

感想・レビュー・書評

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  • 古代大阪は海がほとんど島として天満橋近辺、三国ヶ丘、石切まであった。

    縦軸は生命の軸。
    横軸は死の磁力をもつ死の軸。横軸があることがいまの大阪を作った。

    歴史や土地名の由来をいろいろ。当時13歳の厩戸皇子は物部守屋と蘇我馬子の戦闘をみたこと。森ノ宮は物部守屋が敗れ去った場所。当初建てられた四天王寺はそこから移転し、現在の場所へ建てられた。

    千日寺であった法善寺へ向かう道が千日前通り。法善寺の奥には処刑場があり、しょっちゅう首が晒されていた様子。墓守非人と呼ばれる人たちが千日前にあった大阪最大の墓を中心に遺体処理をしていた。非人は縄文時代は霊と踊ったりとネクロマンサー的な役割。お経をあげる聖と非人は芸に秀でていた。見世物小屋などを通し芸能が盛り上がっていく。漫才など芸能の始まりであった。

    荒陵の地である茶臼山から新世界にかけての場所で第5回内国勧業博覧会が開催。不潔住宅の取り壊しで行き場を失った住人は今宮村方面へ。海が隣接していた時代、塩を焼く釜があったため釜ヶ崎と呼ばれた場所も集まり場所となった。
    四天王寺の作り手の伝説はさておき、古代に建立された四天王寺の許容の深さにおいて、大阪人の人情深い精神・性根が作られたのかもしれない。

    大阪のもっとも古い文化層は生駒山麓。軍事的志向の強くならに根ざした天皇家に服従はしたが、経済的政治的にはそれを上回っていた。モノと呼ばれる精神技術があり、モノを扱う専門集団という由来で物部氏。磐船の内部へ入るのは物部氏の若者の成人になるイニシエーション。これが6世紀。

    堺と平野は環濠都市として農民が入らない、商人職人が集まる市民を作り上げていった。それに対抗したのは一向宗の寺内町。15世紀の室町時代。組合などの信頼と、宗教による信仰による結びつきを作っていた。織田信長や豊臣秀吉の統一国家づくりには大きな障害て、排除を続けてきた。イスラム教では今もそれがつづいている。

    大阪の在日問題や天皇家のことを少し露わにしながら進んでいった。大阪の歴史は深い。この歳になりあちこち土地や土地柄を知った状態で、学ぶべき歴史をようやく学んだ気がする。

  • 大阪は水の都である。という一文から始まる司馬遼太郎の小説があったと思う。何だったか思い出せないのだが、
    私事ながら、秋から大阪に単身赴任している。東京と比べると大阪は本当に平べったい。坂がない。地下鉄の出口案内に並ぶのは、橋や堀のつく地名ばかり。高低差を愛でるタモリ氏やスリバチ学会の会員だったらつらい都市だろう。

    東京の地形の記憶を扱った前作のアースダイバーを読んだのは、2006年頃。大阪をテーマにした本書が出版されたことは知っていた。暫く手を出さないでいたのだが、大阪暮らしに慣れる意味でも読んでみた。

    土地勘がない心配は杞憂だった。舞台になるのは殆ど上町台地ばかり、北は大阪城から南は住吉大社近くに繋がる台地。他の場所は昔は海の底だったから、東京版のように彼方此方の場所を尋ねる面白さは少ないと思う。
    大陸系の海民の姫神達、物部氏の本拠に建てられた四天王寺、と大地に残る歴史を中沢氏らしいチョッと気障っぽい語り口で物語る。
    商業は共同体ではなく、「無縁」から生まれたとの記述は、著者の義兄、網野善彦を思い出させる。
    後半は上町台地から西の千日前やミナミのディープな大阪の演芸や処刑場、墓地の記憶。そして差別の原因になった歴史の経緯。

    漫才についての記載。
    「ここから、大阪に独特な言語コミュニケーションの発達が起こった。意味の中身を伝え合うのではなく、意味らしきものを伝えあっている、そのプロセスの方に重点がおかれた。意味の固い層の下を流動している無意識の流れを、ひょっと会話の中に紛れ込ませる技に高い評価を与えた。」
    内田樹さんの「うほほいシネマ倶楽部」にあったポストモダンの説明、ボールに価値はない、パスにこそ価値があるという言説を思い出す。大阪人どうしの会話ってポストモダンなのか?え~!。

    河内の盆踊りでは非業の死を遂げた人の物語や猟奇的大量殺人事件や俊徳丸のような物語が音頭で歌われる。
    東京版のような地形から呼び起こされる物語は少なかったが、なかなかディープな話が多く、満足した。

  • 大阪市東住吉区で生まれ育った私には、とても説得力のある分析だった。筆者の大阪へのシンパシーと造詣の深さがひしひしと感じられた。あとがきの指摘も全く同感。今、大阪は歴史と伝統文化の重みを理解しない某為政者の、学歴では測れない教養と品性の欠如に振り回されがちである。しかし大阪人は賢明にも違和感を感じ始めている。

  • 海民・無縁など、網野善彦の歴史観に立ちつつ、砂州の上に作られるべくして造られた都市として、大阪をアースダイブする。読んでいるうちに、今ではすっかり色のうすくなった大阪らしい息遣いが、立ち上ってくる。

  • 大変興味深い本である。
    大阪の多重的古層を探る。
    例のごとく、人類学者(?)の確信めいた、断定的物言いだが、大阪の人はどう受け止めているのだろう。
    ---- ☆大阪出張の折、再読したが、役立った。南北の通りを「筋」、東西の通りを「通り」。この区別は歩くと分かりやすい。

  • 大阪の地理を知らずあまり具体的な実感が湧かないのが残念ですが、前著の東京編に劣らず面白かった。東京より人の歴史が重層的で大阪は深いんだなぁと。

  • 昔の職場近辺の話が盛りだくさん。へーとかほーとか言いなが一気に読んでしまった。大阪のディープさは古代から脈々と受け継がれている。

  • 大阪は南北を貫く軸に、太陽が通る「東西」の軸をメインにした場所であった。

    ナニワでは信用に対する信仰に支えられた商人たちが活躍し、「有縁社会の中の無縁」を体現しており、ミトコンドリアのように大阪に活気を与えていた。

    四天王寺には聖徳太子伝説が息づき、敗者をも退けない「和」という思想がみられた。

    ミナミは胎蔵界曼荼羅を表している。
    無産者のためのあいりん地区は「アンフラマンス(超薄い)」世界で、静の向こうの師が透けて見える。
    そこでは風俗と共にお笑いが生み出された。

  • 水位が高い頃の大阪の地図は眺めていて飽きない。奈良や京都でも書いてほしいけど難しいかな。

  • 〜というようなことが言えるんじゃないかな。みたいな本。柳田国男だとか荒俣宏、澁澤龍彦の仕事に近い。アカデミックではなくセンスで書いてある。様々な事実を踏まえて感性で融合させている。中沢新一氏が博学で勉強熱心だと認めた上で読み方を間違えなければ面白い読み物。こういう風に歴史を眺めるのは素敵なことではある。歴史の事実の話と言われると疑問符が沢山つく。が、このような試み、読み、知的統合、考察といったものは失われつつある感性の賜物だとも思う。大阪が違って見えてくるという意味では面白い。事実と感性の比重が通常と違うことを注意して読めば面白いと言える。

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著者プロフィール

一九五〇年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。明治大学野生の科学研究所所長。思想家。著書に、『チベットのモーツァルト』『雪片曲線論』『森のバロック』『カイエ・ソバージュ』シリーズ『アースダイバー』シリーズ『野生の科学』ほか多数

「2019年 『レンマ学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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