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著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 40
感想 : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062178303

作品紹介・あらすじ

カノジョなし、職業・フリーの助監督、住まいは風呂無し四畳半。いまだ大学のシャワーをモグリで利用している29歳。あと一年。俺の人生、何かが変わるのか、変えられるのか?誰もが味わう、不安と、苦悩と、希望の一年が始まる。

感想・レビュー・書評

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  • 僕は知っている。この作品に出てくる登場人物たちを。
    それは僕であり東京に出て来てから出会った友人たちと過した二十代の日々の中に居た僕らの気持ちでもある。
    別に夢見て何かを始めてもすぐに現実は否応なく目の前に現れて諦めというカーテンが引かれ光は差しこまくなってしまう。そして何かを続けることは失い続ける、あるいは道から逸れていく様な感覚すら感じられてしまう。

    それぞれがそれぞれの人生の中で選んだ大事なものをかけて必死に足掻いてもがいてそれを守ろうとする。そして価値観は変わりゆく。ある人はそんな道で何時までも青春を夢を追いかける人間に慰めと諦めと少しばかりの羨ましさを持って世界の事を教えてもくれる。
    そんなことは知っているけど知らないフリをしていた人達は揺さぶられ、時には泣き叫びながら迷う。どんなに信念が強くても。その最後の審判に似た季節が二十代の終りだ。

    時間の波は止まることなく留まる事はなく流れ出しては消えてく。そこで生きている僕らは有限だ。この気持ちも感情もこの肉体もいつか朽ち果てて消えていく。時間は擦り減って心臓はカウント数をどんどん増していく、いつかは止まるということだけは確かで。

    二十代が終わる最後の一、二ヶ月は僕は憂鬱で仕方なかった。マリッジブルーをもじってミソッジブルーとそれを呼びながらこの十年は何だったんだろうと考えていた。出会いと別れがあり世界は広がるように感じられたのに人と人の繋がりで実は世界が狭く緩やかに繋がっている事を知った。
    でも、どうしようもなく孤独が押し寄せてきて寝ようとしても眠れなかった。自分が今までしてきたことは何だったんだろうかと首をかしげるもう一人の僕がずっと語りかけてきた。

    小説の前半部分が読み進むのが遅かったのはデジャブのように限りなく知っている世界の別バージョンであり体験してはないけども知っているリンクしている事だったから。しかしポスティングのバイトの会社の件と友人のストーカー行為の辺りから物語の世界に深く入れるようになった。
    夏が終わる事でその繋がりの果ての冬に主人公に訪れる哀しい再会、世界いや社会と個人の人間の在り方やどうしようもならない事柄で奪われていく人がいる。それが僕達の生きている社会のシステムの光の当らない部分での事実だ。
    少しずつ臨界点は薄れて彼が本当に僕の知り合いの一人だと錯覚してしまう、体は何かに点火されて熱を持つ、どうしようもない哀しみと怒りがないまぜになる。

    彼は、主人公は最後に取る行動でようやく生についての覚悟ができる。いや自分の人生と世界の焦点がうまく合わせる事ができなかったのが彼が大事にしたもののおかげで合う。
    時に人は何かを投げ出して一人になって孤独と向きあいながら見つけないといけないものがある。

    ミソッジブルーが過ぎた時に僕はなんだかフッと楽になった。もう一人の自分の囁きは消えた、ただ存在しているのはわかっているけど僕が選んだ事をどうやらもう少し見守るみたいだ。

    この小説読み終わった時もその時の感覚が甦ってきた。

    あと、映像関係の人はこういうの読むとすぐに近い立場だからこれは俺だ!みたいに思って映像化しようと思うかもしれないけどきっとこれ映像化したらたぶん大事な何かが損なわれて失敗した自主映画みたいになると思うよ、なんとなくだけど。

  • 30才になったからタイムリーで面白く読めるのかなと思ったけど、あんな29いるんか。この主人公は40になっても50になってもこのままなんだろうなー

  • 映画監督を目指しながら底辺の生活を続ける若者の先の見えない話

  • 考えさせられる作品

  • 29歳のちょっとプアーでスレスレの青春?ストーリー(笑)シャワー部とは、いかにも東京らしいし、面白いスチュエーションでした。結構楽しく読めましたが、最後のオチがイマイチ(-。-;
    よく分からんかったのが残念でした。

  • 単純に面白かった。おそらく作者の自伝的要素も入っていると思われます。僕自身の29歳の頃とも重ね合わせました。ラストも前に進む感じがあって良いです。

  • 脈絡のない少し下品な話が進む。日の当たらない世代の心情が非常にうまくかけていると思う。29歳にはなったことないけど…。なんだか主人公のそうしたいわけじゃないのにそうしてしまう心理、というのがよく共感できてしまう。何かをやろうと思わせてくれるラストシーンもよい。あまり知られていないのが不思議なくらい良い小説。

  • 照明助手経験があり、大学の映画サークル出身である僕にとっては、こんなに面白い小説はない。
    特にVシネマの撮影現場なんて、これ以上のリアリティはないだろう。
    杉浦氏が書かんとしているひとつひとつの情景が目に浮かぶし、主人公の想いにも共感できる。

    ただ、映画経験もなく、就活が人生と思っている人達に、この作品は響くかな。会社の女の子にでも貸してみようかと思ったりする。

  • 29才の青春!?こういう人は本当にいるんだろうな~
    2012.8.27

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