ふたつの月の物語

著者 :
  • 講談社
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感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062178808

感想・レビュー・書評

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  • 奇妙な里子の条件に一致した美月と月明は湖畔に建つ湖月荘へ行くことに。里親の津田さんに迎えられるがふたりを歓迎しているようには見えない。
    津田さんが留守の間に湖月荘を探り開かずの間を発見。開かずの間にあった資料には、昔湖の底に沈んだ弓月村の年中行事や風習、そして不思議な神事について書かれてあった。津田さんはふたりを湖月荘に呼んで何をしようとしているのか…?

    章のタイトルとタイトルの下にある少しずつ満ちていく月の絵が私の心をくすぐる。
    弓月村で昔起こった事、津田さんの過去がわかった時、津田さんのしようとする事が見えてくる。津田さんの選んだ道は正しいものではないかもしれないけど、きっと私も同じ事をすると思う。それは哀しく切ないけどハッピーエンドと思いたい。

    児童書とあり物足りない感じもしたけど、この仄暗く悲しいにおいがする物語は暫く心に残るだろう。

  •  養護施設で育ったみづきと、親代わりの住職を亡くしたあかり。接点の無い2人に里子の話が持ち上がり、夏の間、里親の別荘で過ごすことに。突然現れた里親候補、別荘のそばに広がるダム湖に沈んだ村、2人の少女の出生を結ぶものは?

     図書館本。
     読んだことのある富安作品に比べ、ぐっと大人っぽい雰囲気を漂わせている。ただ、ダークテイストでも、やっぱり富安節なわけで。
     なかなか引き込まれるスタートを切り、謎また謎の展開で、ふとページを確認すると残りが3分の1も無い。えっ、これ収拾つくの?と思ったら、すごく平和な方向へ。今までのミステリアス、サスペンスフルな展開は何だったのか。私のようにホラーやサスペンスを期待すると、ガクッと来るので要注意(笑)。
     2人の秘める力も、過去を探るためのツールという扱いなのも残念。まあ、本の厚さからすれば、大冒険にならないのは想像がつくけど。
     里親の津田さんをもっと掘り下げてほしかったが、そうすると児童向けの範疇から逸れてしまうかなあ。

  • 児童書ですがしっかりしたストーリーでしてが美月 月明の絆より母親との絆をもっと書いてほしかったです。

  • 読みやすく、引き込まれて、ぐんぐん読んで読み切った感じ。
    別れ別れで育った双子の女の子。里子として引き取られて出会ったダムに沈んだ村の側の山荘で、過去の出来事と出会う。その村には不思議な伝承と神事があった。14年前、そこで何があったのか?

    ただ、ラスト、もっとホラーがかるのかと思ったが、どこか平和でほんわかした展開となった。そこが物足りない、ということもあるだろうし、そこが良い、という人もいるかもしれない。
    いずれにせよ、もっと様々な展開も予想させる設定だっただけに、少しもったいない気もする。

  • おもしろかった。
    謎めいた条件の中、養子候補として見つけ出されたみづきとあかりの二人は、やがて出生の秘密や里親の事情を知ることになる…。
    表紙のイメージからして、ミステリアスで静かなお話になるかと思ったけど、半分外れた。みづきは正にそんな感じの美少女だったけど、あかりは実に普通の子って感じだったので、おっと意外、と思いつつおかげで安心して読み進められた部分も大きかったような気がする。

  • 児童文芸賞受賞作家富安陽子さんの近頃の作品。

    導入のあたりは、孤児の引き取り話とか、捨てられていた子供が、育ての親がなくなってしまってとか、昔読んだ、小公女とか小公子とかの雰囲気。
    ちょっとわくわくしながら読みました。

    中盤から、不思議話、そして、よみがえり話、神がかりの話と展開していきます。

    終盤、無理があるかなあ。でも、まあ、こんなものかなあ。

    終章は、まあ、こんなもんでしょう。

    児童向けであることを考えれば、文字数もこんなあたりで抑えることもあり、描ききれないところも許すか?

    でも、この本を読んで子供たちが満足するのでしょうか?
    正直、もう一息、よく練りこんでほしいと思いました。

  • 評価3.5ですが.5が出来ないので…。

    片方は孤児院で、もう片方は血の繋がらないお爺さんのもとで育った「4月生まれで本当の親を知らず、月の標を持つ」二人の少女の話。

    寄り道なく進んでいくシンプルさがとても良いです、ダレることなく読了まで一直線でした。
    はにかみながらポップコーンの匂いをまとい、慎重派のみづきの手を取るあかり。凸凹コンビは王道だけれど可愛らしい。

    途中「ああ、子供が生贄になる因習村系で何やかんや二人が生還する話か〜」と気分が少し下がりそうでしたが良い意味で裏切られました。あかりとみづきは別荘に返され津田のお婆さんが三年前に亡くなった孫と運命を共にする…。津田のお婆さんにとっては後悔が晴れる展開だったでしょう。

    ただやはりそれ以外のことが頭を過ぎります。あの日自分を迎えに来るために、恋人とその祖母が土砂崩れに巻き込まれたと知った婚約者の傷は一つ多くなり。
    やっと血の繋がった家族を見つけたあかりとみづきの二人の真夏の冒険譚は泡と消え他人に逆戻り。
    遺言により再会はするでしょうが、あの恐る恐る手を伸ばすような、過去の綻びを一つ一つ共に解くようなあのカナカナの鳴く夏の日々は戻らないのでしょう。

    せっかくみづきが力強く約束した「わたしが見つける」も結局遺言により再会が濃厚そうです。

    自分たちの手で過去を紐解くのと、手紙で通告されるのでは感情も全く違うと思い切なくなります。どうかリセットされても、二人があの湖の別荘で再び自分たちの手で謎を解き真実に辿り着く時間が与えられますようにと願って止みません。

    最後の「愛をこめて」も、それを言うのはやっぱりずるいんじゃないかな。「感謝をこめて」なら分かるのですが。結果的に、おそらく記憶が残っていないとは言え二人はまた家族になるはずだった人を失ったのですから少し身勝手に思ってしまいました。

  • 富安作品をあまり読んだことがないので、表紙と神様が絡むということでこれを選びました。

    養護施設で育った美月(みづき)と育ててもらった住職のおじいちゃんが亡くなり行くあてのなくなった日明(あかり)。

    この二人を里子にしようというのが、70歳の津田節子。
    彼女が出した条件は、
    1 14年前の4月の生まれた子どもであること
    2 両親および血縁者がひとりもいない、あるいは所在が不明であること。
    3 出生場所、出生時の状況が不明であること
    4ただし出生につながる手がかりを有していて、その手がかりはなんらかのかたちで月に関連していること

    二人は夏休みの一か月間、

  • 孤児院で生まれ育った美月(みづき)と、
    育ての親を亡くしたばかりの月明(あかり)。
    奇妙な里子の条件に一致した二人は
    謎の富豪・津田節子の別荘に招待されるが…

    表紙に惹かれて読んでみました。
    和風ファンタジー、というよりは日本文化に
    沿った王道ファンタジー。
    生き別れになっていた双子の少女、
    ダムに沈んだ村、村で信仰されていたという
    狼の姿をした「真神」、村で行われていた儀式
    禁忌の儀式のために辿った哀しい結末…

    児童書なので大人が読むとやはり物足りない
    感じは否めませんが…
    ただ、明るいファンタジーではなく
    「命が生まれるのは奇跡で、やがて死ぬのは必然」
    など、ちゃんと考えさせられるテーマも
    書かれていますので、本を読み始めて
    色んなジャンルを読んでみたいなと
    思い始めたくらいの年頃の子供さんに
    オススメしたい良い本でした。

  • あかちゃんの時に捨てられ、それぞれ養護施設とお寺で育てられた美月と月明は、14年前に捨てられ月に関する印(名前)を持つ女の子という条件で里親を希望する女性の山の家に行くことになる。初めて出会った二人は、互いの中に惹かれあうものを感じ取る。

    ダムに沈む村にまつわる言い伝えを元に、過去と現在を行きつ戻りつ、二人が呼び寄せられた真相に迫る。

    ミステリアスなファンタジー。

著者プロフィール

1959年生まれ。1991年『クヌギ林のザワザワ荘』(あかね書房)で第24回日本児童文学者協会賞新人賞、第40回小学館文学賞を受賞、1997年「小さなスズナ姫」シリーズ(偕成社)で第15回新美南吉児童文学賞を受賞、2001年『空へつづく神話』(偕成社)で第48回産経児童出版文化賞を受賞、『盆まねき』(偕成社)により2011年第49回野間児童文芸賞、2012年第59回産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞、2021年『さくらの谷』(絵・松成真理子 偕成社)で第52回講談社絵本賞を受賞。絵本に「やまんばのむすめ まゆのおはなし」シリーズ(絵・降矢なな 福音館書店)、「オニのサラリーマン」シリーズ(絵・大島妙子 福音館書店)などがある。

「2023年 『そらうみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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