四〇〇万企業が哭いている ドキュメント検察が会社を踏み潰した日

著者 :
  • 講談社
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感想 : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062178846

作品紹介・あらすじ

平成二十三年九月、東京地検特捜部が摘発した粉飾詐欺事件。検察のリークを受けたマスコミは「破綻寸前の会社に粉飾決算を指南して"金のなる木"に仕立て上げる常習的犯行」と逮捕された男らを厳しく指弾した。だが、実像はまったく違うものだった。標的にされたのは、粉飾の泥沼から脱出するため懸命のリストラに取り組み、再生の光を目前にしていた一人の経営者。そして、多くの中小企業が粉飾決算に追いやられる現実に苦悩しつつ、歪んだ金融システムと格闘していた男たちだった。検察首脳も絶句する「はき違えた正義」。『特捜崩壊』の著者による入魂のノンフィクション作品。

感想・レビュー・書評

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  • 「四〇〇万企業が哭いている-ドキュメント検察が会社を踏み潰した日」読了です。
    この何年かで読んだ「ノンフィクション作品」ではダントツおもしろい(やや不謹慎ですが)内容。

    検察モノに興味があったので手にとったのですが、帯の裏側をみると【中小企業400万社の7割超が粉飾(決算)をする現実】とあるではないですか。

    粉飾7割???????と他の本を放り出して昨晩から一気読みしてしまいました。

    ある税理士へのインタビューでは「取引先の中小企業のうち6割~8割が粉飾決算」(ジャーナリストによると8割~9割)というところですが、そしてその粉飾も「借入をおこすための粉飾」、つまり「会社の数字をよく見せるための数字操作」だそうです。。。。。
    (そんなにひどいの・・・)

    ところで『この本の主題はあくまで「検察(特捜部)への批判」』です。
    つまり
    (1)特捜部がこんな事件をとりあげるのか
    (2)捜査手法の問題点

    というところです。

    私がおもしろい(不謹慎ですね・・・・)と思うのは、その嫌疑がかかった内容です。

    「真面目に商売をしている中小企業経営者」による「詐欺」(粉飾決算を隠しての融資詐欺)が嫌疑ということで、受けた融資金を目的外の事に流用したり、怪しい投資をしたり、計画倒産予定という事などでは決してない訳なんですね。

    つまりこれが「融資詐欺」にあたるのであれば前述した「全国400万の中小企業のうちの7割の決算書にお化粧をしている会社の方々はどうなの?」となるわけです。
    みなさん懲役刑ですか?という事です。

    真黒の経済事件ではなく、グレーなところがこの事件の背景にあるので読む方によって意見はわかれると思います。

    『悪』は「粉飾決算をする経営者」なのか「強引な捜査をする検察」、それとも「プロパー融資をする審査能力もなく保証協会に頼る金融機関」か、それとも「金融機関を監督する金融庁」か。

    興味をもった方は「序章」から「第1章」までだけでも読むと勉強になると思います。

    私は著者の方とは違って「粉飾をしている経営者が1番悪い」と思いますけどね。だからこの事件の被告には同情しない。
    (ただ捜査のありかたは別問題ですけど)

    ちなみにネットで調べてみるとこの事件のようです。
    詐欺容疑で逮捕者を出したスカーラ(株)/破産開始決定
    http://n-seikei.jp/2012/05/post-8478.html

  •  銀行を辞めて中小企業のコンサルタントになった男が、粉飾決算によって不正に銀行から融資を受けたとみなされ、顧客と共に詐欺で東京地検特捜部に逮捕される。

     本書は「会社を立て直す為に必死で働いていた社長とコンサルタントが、特捜部のメンツのために突然逮捕されることになった」という筋でこの事件を紹介している。同時に、彼らの姿を通じて日本の中小企業の社長たちが置かれている状況に光を当てる。

     彼らが粉飾決算をしていたこと自体は事実で、両人ともあっさり認めている。しかしそれは銀行を騙すつもりで行ったことではなく、あくまでも再生するためのテクニックであり、特捜部が手がけるような悪質なものではないというのが彼らの主張だ。

     私自身は経営者ではなく気楽なサラリーマンなので、粉飾決算が実際どの程度の問題かピンと来ない。本書からのイメージとしては、車のちょっとしたスピード違反や駐車違反など青切符レベルのことに思われる。

     政治家や大企業など巨悪に立ち向かうのが本務であるはずの東京地検特捜部が出張ってくる事件ではない、という著者の主張はなんとなく共感できる。とは言え、軽微といえども犯罪は犯罪という見方も当然可能だ。意見が別れるだろう。

     現在まだ裁判が続いている事件なので結末は分からない。注視したいと思う。

  • 『粉飾』に引き続き読んだ本書であるが、検察の役割と銀行を含めた金融のありかたについて、改めて考えさせられた。

    主任検事の描いたシナリオに沿って行われる捜査、途中で間違いに気づいても引き返せない体質、捜査能力低下により本当に糾弾すべき大企業等への不正については及び腰になる実態。巨悪に立ち向かう「かつてのヒーロー」は随分と変容してしまったが、相変わらず強大な権限だけは持ち続けている。その権限をどこに、どのように使うのかを再考すべき時期にきていると感じた。もはや権限を適正に使えないのであれば、素直に返上すべきなのかもしれない。

    一方、銀行は企業経営の実情や経営者の人となりを調査せず、単に数字のみで融資可否を判断していく。企業の成長と発展を金融面からサポートするという崇高な役割は完全に過去のものとなってしまった。

    マニュアルに沿って融資判断をする限り、個人の責任は問われないし、お役所にも文句は言われない。融資先がどんなに困っても、自分の銀行が経営危機になっても、マニュアルに従ってさえいれば、申し開きが立つ。そして、責任転嫁やアリバイ作りのための膨大な資料作りに労力が割かれることになる。これではもはや経営とは言えない。

    もちろん粉飾は悪であり、粉飾を行った中小企業、粉飾を指南したコンサルタントには罪がある。しかし、本当に是正すべきは、現在の不適切な金融システムとそのシステムの中で凝り固まってしまった銀行経営にある。これを打破しない限り日本の将来は暗い。

  •  粉飾決算をする中小企業の経営者と、それを助けるコンサルタント。彼らが特捜検察に詐欺罪で起訴され、有罪となるまでの話。普通に考えると、当たり前の話だが、「検察が会社を踏み潰した日」というタイトルにあるように、著者はそれに批判的だ。

     多くの中小企業は大なり小なり粉飾決算をやっている。銀行は数字だけを見て金を貸し、個別の企業の事情を考慮しないから、そうせざるを得ない。彼らは決して銀行を騙す意図はなく、必ず返すつもりでいる(例外もいるが)。そのような中小企業を起訴し、倒産に追いやるのが検察の役目だろうか?、と。

     中小企業の窮状は理解できたが、それを救うのは政策の問題ではないだろうか?。検察が自己の描いた主張を曲げず、被疑者・被告人を捜査し起訴したことを批判しているが、それはお門違いの気がする。

     ただ、検察官には諸般の事情を考慮して起訴するかどうかと決める権限があるので(起訴独占主義・起訴便宜主義)、その観点からすると、特捜検察が扱う事件であったかどうかは疑問が残った。

    なお、この本で主人公となったコンサルタントが自ら書いた本、「粉飾 特捜に狙われた元銀行員の告白 」も出ているので、本人の弁も読んでみたい。

  • 特捜の暴走というか、手前勝手な倫理で、必死に生きる庶民の生活を一方的に破壊してしまう。

    正義感に燃えるジャーナリストが克明な取材により暴く特捜の病理。

    好きなアパレルの仕事を資金繰りに奔走しながら、必死に生きる中小企業経営者。

    そんな経営者を元銀行マンが、融資を受ける立場にたって誠実なコンサルを行う。

    大多数の中小零細企業の実情をよく表している。

    そんな誠実に生きている国民を世間知らずの特捜が無理筋な権力行使。

    あってはならないことだ。

    石塚健司氏のようなジャーナリストが日本のジャーナリズムの正常化の旗振りとなってほしいものである。

  • 中小企業の現実の経営状況をリアルにレポートされており、
    わかるわかると思いながら読ませてもらいました。

    途中から特捜の捜査の問題に内容が移ってからは、
    ちょっと内容がしつこく思えた。

    中小企業の社長とコンサルのやり取りをもっと知りたかった。

  • 重たい話でした
    本文より 日本の企業数は約四百二十万社(平成二十四年版中小企業白書)。このうち九九・七%を中小企業が占め、雇用の七割弱を中小企業が支えている。そのうち何割ぐらいの会社が粉飾決算をしているのだろう。巷間では八割とも九割とも言われるが、それを実証するデータはもちろん存在しない。

    粉飾決算は当然すべきではない。しかし、しないと金が借りられないという現実が有り、生き延びられる企業に金が廻らず倒産するとしたら誰も得をしない。

    主役はエス・オーインクと言うアパレルの経営者とそこを助ける銀行出身のコンサル。粉飾決算をしても借りた金を返す意思とそれなりの能力があり、しかし検挙され銀行を騙した詐欺罪で実刑判決を受けた。震災特別融資を悪用したというのが検察特捜部のストーリーで中小企業の粉飾決算なら普通は特捜部の出る幕ではない。

    粉飾決算に薄々気がついてながらも保証付き融資であればノーリスクなので実は歓迎している銀行が被害者で真面目に経営しながらも方便として粉飾決算に手を染めた経営者が加害者。事件になってどちらも得をしなかった。

    貸倒が増えても貸し剥がしせざるを得なくてもいずれにせよ世間の批判を受ける銀行の立場。上司の意向に逆らえない検察の担当者。法律違反をわかりながらも踏み込まざるを得ない経営社とコンサル。それぞれの立場は理解できる。
    しかし震災特別融資と言うのは紋切り型では貸せない相手に貸し社会全体の負担を下げる制度のはず。そこであら探ししてしまったのが筋が悪かったのだろう。

    以下も本文より
    「それは確かに……しかし、すべての会社に即座に実態を表に出させるようなことをすれば、倒産してしまう会社が続出します。それはハードランディングです。ソフトランディングさせてあげるべき会社もたくさんあります。粉飾決算を続けながらでも銀行借入額を少しずつ減らしていった例はたくさん──」「その考え方がおかしい。粉飾をしている会社は倒産して当然なのではないですか。なにしろ実態は破綻なんですから
    「……逮捕されたら、会社は潰れてしまいます」「それはしょうがないねえ」「でも……そうなれば仕入先にも影響が出ますし、倒産するところも出てくるかもしれません。路頭に迷うのはうちの社員だけじゃすまなくなるし……」「それも含めて、やはりしょうがないでしょうねえ

    検察上部もこの担当官の発言は言い過ぎだと認めている。
    現在佐藤、朝倉両氏に対してはヤメ検弁護士の郷原氏が中心となって支援しているようだ。逮捕時には報道した大手新聞社が検察の行きすぎに対しての意見は調べた限り見つからなかった。

  • これは、本当に恐ろしい事実を記載した本です。
    なお、恐ろしいことは、この本の主人公たちに実刑判決が下されていることです。
    あまりにも想像力が欠如しているとしか思えません。

    この本に描かれたことは、単なる特捜部の問題だけでなく、司法全体の問題へつながっているように思われます。

    ここ数年、司法改革が叫ばれ、裁判員裁判が始まり、弁護士の数も増えました。

    しかし、本当の意味で必要なのは、その人の立場に立って物事を考えてみる能力や、時には人の痛みに寄り添える能力を持った人が、人の人生を左右する権力を持つ職務に就くような制度作りではないでしょうか。

    この本の主人公たちほどではないにしても、日々、司法権力に大なり小なり苦汁をなめた経験をお持ちの人はたくさんおられることと思います。

    誰にでも降りかかるおそれのあることと認識し、司法制度にも関心を持って頂きたい、だから、一人でも多くの人に読んで欲しいとの願いを込めて、★5つです。

  • 最後に著者の方が書かれていることと同じ心境です。

    日本の検察、銀行って怖いところです。

  • ノンフィクションはあまり読んでこなかったが、この本はとても読みやすく一気に読んだ。
    内容も、多くの人に読んでもらいたいもの。

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著者プロフィール

石塚健司(いしづか・けんじ)
産経新聞社記者。1961年茨城県生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、産経新聞社入社。司法記者クラブキャップ、社会部次長などを経て、現在は社会部編集委員。著書に『特捜崩壊』(講談社文庫)がある。

「2016年 『ひどい捜査 検察が会社を踏み潰した』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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