スリジエセンター1991

著者 :
  • 講談社
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感想 : 242
  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062179539

作品紹介・あらすじ

手術を受けたいなら全財産の半分を差し出せと放言する天才外科医・天城は、東城大学医学部でのスリジエ・ハートセンター設立資金捻出のため、ウエスギ・モーターズ会長の公開手術を目論む。だが、佐伯教授の急進的な病院改革を危惧する者たちが抵抗勢力として動き始めた。桜宮に永遠に咲き続ける「さくら」を植えるという天城と世良の夢の行く末は。

感想・レビュー・書評

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  • 桜宮に桜の木を植えようとする天城雪彦と、それを阻止せんとばかりに暗躍する高階権太。

    他の作品によってこの結末になることは予想がついたが、それでも「なぜこうなってしまったのだ?」という虚無感は漂う。

    天城は一方的に負けたわけではなく、むしろ勝っていたようにも見える。しかしその中で、自分が受け入れられない苦しみを持っていたのだし、天才であるということは、誰よりも孤独であるということなのだろう。

    そして高階権太ーロマンスグレーのこの人物のダークサイドがここに描かれている。天城の考える医療を受け入れられないことから、次第に男の嫉妬、そして権力欲に変わって行き、佐伯清剛に相対する姿は、初めて見る高階のダークサイドかもしれない。

    海堂尊作品を読んで思ったいくつかの疑問ー

    高階はなぜ藤原に頭が上がらないのか。

    ジェネラル・ルージュの凱旋の臨時リスクマネジメント総会で、黒崎はなぜ速水に「ただちに辞表を撤回せよ。」という言葉をかけたのか。

    彦根はなぜ医療費によって国が滅ぶのならそれは本望、という考えに至ったのか。

    ケルベロスの肖像で、高階はなぜ桜宮岬で「かつてここで芽の咲く桜の木を引っこ抜いてしまった。」と後悔したのか。

    速水はなぜジェネラルになりえたのか。

    世良の心はなぜ病んだ世界に一人で対抗するかのごとく孤独になってしまったのか。

    それの答えがここにあるような気がする。

  • 医療小説、医療サスペンスという珍しい分野に取り組んだ意欲作を書く作家、海道尊。
    代表作「チーム・バチスタの栄光」を映画で見て衝撃を感じたので、ずっと彼の作品に興味があった。
    小説としては彼の作品、初読である。 
    著者は現役の医師でもあり、作品はほとんどが医療関連の物語のようだ。

    序盤はいきなりモンテカルロでの回想シーンから始まり、その後、舞台は一年前の国内病院に飛ぶ。
    読み始めは、医局内の派閥争いや、それに関わる人物の説明、医療の専門的知識や専門用語などの記述が多く、医療のことなど全く門外漢の私としては小説世界に入り込むのにかなり苦労した。
    ようやく中盤に入るあたりからキーマンでもある、外科医天城雪彦のキャラクターに興味を覚え、物語が今後どういう展開になっていくのかに期待が高まり、ページをめくる手が少しずつ早くなったのだが……。
    その後読み進めても、鼻持ちならない天城教授のキャラクターや台詞、ほかの教授連中のいやらしい性格、教授同士の確執、権力闘争や足の引っ張り合い、あるいは他人に対する言葉の汚さや言動に呆れた。

    本当に病院の内情ってこんなものなの?
    まるで政治世界の出来事のようで、かなり唖然としながら読んでいた。
    これなら政界の人間の方がまだオトナと言うべきか。
    いい年こいたオトナなのに、オフィシャルな場でこれほど他人を馬鹿にしたような言い回しはしないだろうと思えるほど気障だったり、汚い言葉、あるいは時代がかった台詞や呼び名の応酬。
    一般企業の上層部の会議なら、想像できない発言ばかりだ。
    そんなわけで、登場人物のキャラに感情移入しづらく、テレビドラマや映画を観ているような印象だった。
    これを読まれた他の方は、そのあたりに違和感を感じないのだろうか? 
    というか、もし病院の内情に詳しい方がいたら、病院内の会議とは本当にこういう風に展開されるのか、どなたか教えて欲しいものだ。

    後半もいまひとつ盛り上がりに欠けたまま話は進むのだが、それが一変するのが、第三部のブラックフィーバーの章で手術中に突然のアクシデントが起こるあたりから。
    ここからは緊迫感が一気に高まり、最後まで読みきった。

    物語としては、医療分野に特化しすぎているとはいえ、秀逸で、たしかに面白いと言えるだろう。
    でも、ラストシーンを読み終えても、「だから何なんだ?」という疑問が残ったのも事実だ。
    もっとも、この本はシリーズ三部作の最終話であり、私が最初から読んでいない故に、作者の思いや物語の本筋を理解できないのかもしれない。
    シリーズ一作目の「ブラックペアン1988」から読めばもっと面白いのだろうか。

    ただし、どうにも気になったのが、先にも書いたが登場人物の台詞や、地の文の表現や比喩。
    ところどころに日本語の使い方として納得できない部分がたくさんあった。
    もう少し細部にこだわって欲しいものだ。
    ──例えば
    “助教授が教授を一喝”という言い回し。
    企業で言えば、課長が部長を“一喝”する。普通ありえませんぜ、こんな表現と状況。
    テレビドラマじゃあるまいし。
    “凝視する”という表現も随所に使われすぎて、うんざりした。そんなに凝視ばかりしていたら目が疲れます。
    怒りを覚えた時に、“机を拳で叩く”という表現が頻繁に使われるのにも辟易した。そんなに机を叩いてばかりいたら拳から血が出ます。
    さらには、「大仰な物言い、どうにかならんかなあ」と黒崎教授に注文をつけながら、自ら大仰な言い回しをする佐伯教授。 
    というよりも、作中の人物の会話すべてが大仰な言い回しなのだ。まるで芝居の台詞みたいに。
    たまたまテレビで「水戸黄門」を見ていたが、台詞の雰囲気がこの時代劇ドラマに似ているのだ。
    作者は時代劇ファンなのか?
    一言一句、文字を追いながら文章を読んでいると常に違和感があり、読みにくい。先に進みにくい。
    「どうにかならんかなあ、この文章」と思う。
    地の文で、毎回説明がないと誰が誰だか分かりにくいのは、地の文も会話文もこなれてないからだろう。
    言わば、文章に致命的な傷があるのだ。
    小説家といっても、もともとはお医者さんだからしゃあないか。

    まあ、難癖をつける部分はたくさんあるにもかかわらず、ストーリー自体はかなり綿密に練られて面白いので、海堂氏のストーリーテラーとしての才能とエンターティンメント小説としての評価はするが、いかんせん日本語表現の問題がどうしても気になって読みづらいので、小説で読むよりはドラマや映画向きであり、それで見た方が面白いのではないかという気がした。  

  • みんなまっくろ。天城だけ金ぴか。世良はブルーかな。なにやってんのかね。みんな。ばかみたい。
    主義主張は大義だとしてぶつかり合い、最悪のポイントで落としどころをつくってしまった。
    勝負は時の運だけれど、切れ者の高階もこのときばかりは小物の風情。佐伯に至るには高階を経なくてはならないのか。
    天城は夢だけ与えて去っていった。天才は去るのみなのか。
    しのぎを削る真剣勝負だからこそ、人は傷つき、結束も深まり、高みにも達するのか。それではあまりに辛すぎるのでは。
    この事態に比べたら田口なんてひよっこのひよっこだわね。
    速水がちょびっとでてきてよい。彼にはまた翼が生えることでしょう。

  •  海堂尊の小説「スリジエセンター1991」を読了。「ブラックペアン1988」「ブレイズメス1990 」のビギニングシリーズ3部作の最終章で、まとめにふさわしく過去の2作以上に、大学病院の権力闘争など見せ場満載の人間ドラマとなっている。
     海堂ワールドの重要キャストである「ジェネラル・ルージュ」の速水、「ナニワ・モンスター」の彦根などが新人で登場し、将来のキャラクターに繋がるキッカケが描かれている。現在は、医療亡国論に反抗する彦根は明らかに逆の考えだったが、天才医師の天城の出会いによって考えを改めた。
     この作品の中心は、理想家の天城VSリアリストの高階とのバトル中心であるが、善と悪でなくアムロとシャア的、それぞれが医療に対して自分の信じる信念を持っており、どちらとも共感できる部分がある。結果的に勝ち負けはあるが正解はないと思う。
     3部作を読み終えると、「極北クレーマー」で突如現れた冷酷な病院リストラ請負人世良の新人時代を描いた青春ストーリーであると同時に、田口・白鳥の「バチスタシリーズ」の影の主役、病院長の高階の若き日の出世物語となっていた。
     特に、「ブレイズメス」から世良が神の手を持つ天才外科医の天城に魅せられていき、最後の別れまでのストーリーは、楽しくも悲しい話である。日本を去った天城にモンテカルロで再会するかと思いきや、悲劇のラストに思わず涙する。
     後に、彼が「極北クレーマー」で病院リストラ請負人として登場し、「極北ラプソティ」で後に別れたはずの花房と再び一緒になるが、海堂尊シリーズの中でも、こんだけ人生ストーリを描いているの他にはいないような。
     とにかく、海堂ファンには必須だろう。この本だけで楽しむのはまず無理なので、ブラック・シリーズと、極北2作は読んでおきたい。

    • hs19501112さん
      あれ・・・?花房さんは、たしか速水と共に去ったのでは・・・?

      まだ未読だが、どういう経緯でそうなるのか・・・、本書も、「極北ラプソディ...
      あれ・・・?花房さんは、たしか速水と共に去ったのでは・・・?

      まだ未読だが、どういう経緯でそうなるのか・・・、本書も、「極北ラプソディ」も、“早く読まねば”と思わされました(笑)
      2012/12/18
  • おもいろい!泣ける!

  • スリジエセンター読了
    世良君が切ない
    孤高の天才天城先生に気に入られて振り回されているが、その先生もモンテカルロへ帰り、亡くなってしまった
    高階先生は天城先生への対抗心のため?、やはり世良君にちょっかいをかけ、二人の間でどっちつかず?の状態に
    本来なら10年くらいのキャリアから選出するはずの医局長も4年目の彼がやることに
    もちろん周囲は面白くないので余計孤立化

    世良君は天城先生のお気に入りだが、天城先生が気にかけている天才速水君の存在に嫉妬
    極北での話があったとわかっていても

    速水先生は大好きだけどこの本を読むと世良君がかわいそう過ぎて速水先生がちょっと嫌になる
    凡人と天才というか

    高階先生も好きだったけど、この本ではちょっとデキルこずるい人として描かれているせいであんまり好きになれない
    天城先生が孤立化してしまってかわいそうになる

  • 通称・黒本。
    桜宮サーガ過去編で、高階・黒崎がまだ若く、田口や速水が医者になりたて一年生のころ。
    巨大派閥である「佐伯外科」の中で陰謀渦巻く医局政治、異端児と目される天才・天城雪彦。
    佐伯外科の三羽烏、黒崎・高階・天城の時代が訪れ、佐伯外科という巨大組織が終焉の時を迎え始めている。

    さて、おなじみであるキャラの彦根が医学生として登場。
    彦根はこんなころからディベート屋だったのかよ!
    しかし理想論を掲げて戦うところは今でも変わっていないんだなぁ。内容は医学生時代からはだいぶ変わったようだけど。

    公開手術で天城が単なる外科医になったのは残念。モンテカルロのエトワールのままでいて欲しかったなぁ…と思ったら手術成功したのかよ! その神がかった手術を描写してくれよ!
    しかし、この流れで彦根が結局救命センターの臨床医になったということを考えると感慨深い。

    院内政治も終局を迎え、佐伯教授は引退を迫られ、佐伯外科は二分され、天城は日本を去る決意をする。
    世良が天城に傾倒してたのはすごくよく伝わってきてたから、辞職願のくだりはなんだか納得した。
    ていうか世良が引きこもってからの天城の手紙が!
    本当にもう、よかったな世良…という気持ちでいっぱい。
    と思ったらー!!!

    黒本からすれば未来にあたる現在軸の話を先に読んでしまっているので、世良と天城がまた再会してふたりで頑張る…という優しい展開にならないことはわかっていたけど、この展開は卑怯すぎる。

    それにしても高階は結局、策士策に溺れるの理論で世良も速水も失ってしまったんだなぁ。
    ていうか速水のためのICU構想で速水を獲得するための医局政治が行われていたわけで、なんか桜宮サーガの軸が速水になってる気がしないでもない。

  • 極北ラプソディが、また違った彩りになるね。読み終わった後。
    ジェネラル・ルージュの伝説もそう。ケルベロスの肖像もそう。

    海堂尊の物語の「はじまりのおわり」みたいな立ち位置の作品。
    世良も速水も彦根も高階も藤原も花房も黒崎も、みんなこの作品がターニングポイント。

  • 現実的な解説と幻日のはあり得ない出来事がタイミング良く出てきてテンポ良く読めた。時々覗く人間らしさが清涼剤になった。

  • ☆3つ

    新年2冊目は久々の海堂先生。今回は週刊誌への連載作品の発表です。うーむやはり連載モノはかぁなり面白いのですなぁ。最近は文庫の書き下ろし作品とかが沢山あるけど、やはり連載を持てるような作家さんを目指さないといけないのでしょうな。海堂さんはもう文体が出来上がっているご様子で、どこからどう読んでも海堂尊ってことがすぐに分かってしまうのですな。まあ、つまりわ つまんない! ってことさぁ~。もうこれ以上いくら書いても似たような作品にしかならないでしょいう。

    ああ、またひとりこれは!と思える作家が去ってゆく。お元気で。

    すまんこってす。すごすご[m:237]。

    • Pipo@ひねもす縁側さん
      本当に、作家さんの必勝パターンとマンネリは紙一重でございますなあ。いつもながら、本質的に鋭くていらっしゃいますこと!

      今年もどうぞよろしく...
      本当に、作家さんの必勝パターンとマンネリは紙一重でございますなあ。いつもながら、本質的に鋭くていらっしゃいますこと!

      今年もどうぞよろしくお願いいたします。
      2013/01/03
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著者プロフィール

1961年、千葉県生まれ。作家、医師。2006年、『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)で第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し作家デビュー。
著書は「桜宮サーガ」と呼ばれるシリーズを成し、本作および前作の『コロナ黙示録』(宝島社)も連なってい る。
他にはキューバ革命のゲバラとカストロを描いた「ポーラースター」シリーズ(文藝春秋)がある。最新作は『医学のひよこ』『医学のつばさ』(KADOKAWA)。

「2021年 『コロナ狂騒録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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