佐渡の三人

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 379
感想 : 84
  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062179935

作品紹介・あらすじ

「佐渡の三人」-佐渡行その1。おばちゃん(大叔父の奥さん)が亡くなった。儀礼嫌いの大叔父に代わり、なぜか私と弟、父の三人が佐渡にある一族の墓へお骨を納めに行くことに。「戒名」-ワンマンな祖母は生前に自分で戒名を決めてしまった。問題は字数が足りないことだ、と寝たきりの祖父母を世話する、ひきこもりの弟がいう。「スリーナインで大往生」-佐渡行その2。祖父が亡くなった。享年99歳9カ月。「惜しい!」「スリーナインだ」と家族は盛り上がって…。「旅人」-佐渡行その3。大叔父が亡くなった。祖母との「ダブル納骨」のため、父の後妻を含め一族7人が佐渡に集まった。…そして、「納骨」の旅はまだまだつづく。

感想・レビュー・書評

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  • とても好きな雰囲気の小説。

    佐渡に納骨に行くお話。
    そこで事件が起きたり、帰れなくなったりはしない。
    ちょっとお金とのし袋が足りなかったりするくらいで平穏無事な旅と言って差し支えない。
    ハラハラしないどころか、主人公達のゆったりした雰囲気につられてしまう。
    そして思わずクスッとしてしまうところがめちゃめちゃ多い。
    爆笑はしない。
    でも読んでいる間ずっとにやにやしていた。(またもあやしい人に…)

    こんな家族いいなぁ。
    大真面目なのに深刻じゃなくて、やわらかくて可愛い。そんな家族。
    近付きすぎていない距離感がいいのかもしれない。
    ひきこもり、介護、相続、等々…なかなかシビアな問題もふんわり受け止めているように見える。
    こんな風になりたいな。

  • なんだかすごい表紙だなと思ったら、題字はアラーキー作らしい。
    久々に長嶋作品を読んだけど、やっぱりいいなと思った。特に女性を主人公にした時の作品が好き。本当に男性作家が書いたのだろうかと疑いたくなるような心理描写。独特の会話の空気感がいい。
    亡くなった家族の納骨をめぐって話は展開し、そこには介護、ニート、葬儀など重いテーマを扱ってると思いきや暗さのみじんもない。実際の家族ってこんな感じだよなと共感しつつ肩の力を抜いて読めた。

  • この鋭敏な言語感覚は、
    彼の唯一無二の個性であり才能であると思う。
    時間への意識とそれに付随する人間の意識、
    そしてそれを言語化する力がすごい。

    日常を愛する力というものは確かにあるな、と感じた作品。

  • 冠婚葬祭、とくに身内の葬儀となると人間性が浮き彫りになるのは定理。伊丹十造的生々しくさではなく、長島有が手掛けると、こんなに「なんとなく」なるのだ、と口元が弛みっぱなしだった。
    三十代後半の引きこもりの弟が、葬式を取り仕切る世知に長けていたり、戒名の文字数や納骨料の相場など、難易度の高い常識が覚束なくて戸惑う大人たちのはしゃいだ風情など、どこかで感じた雰囲気を巧みに再生しているのが面白くて心地よい。

  • 家族について考える。

    家族については「考える」という言葉はあんまりふさわしくないような気がしていて、だからといって代わりの言葉はなにかと聞かれても答えに窮するわけだけれども、こういう本を読めば、まあ窮したところで咎めだてする気になったとしてもまあそんなもんなのかなあ、と落ち着いていただけるかもしれない、と思う。そういう時がきた時のために常に懐に忍ばせておこうかな、とちょっとだけ思ったりもするが、はたしてそういうことが起きる確率は懐に忍ばせておくものをポケットティッシュにしておいて突然の腹痛に襲われた時のために備えにしておく、という選択肢から比べるとやや劣るような気がするし、だいいちわたしが「家族について『考える』なんてちゃんちゃらおかしいんだよバカヤローコノヤロー」と言ったあとに反論され答えに困った際に「あのこれ読んでくださいこれよんだらなんかわかると思うんですケド…」とおずおずと差し出すにしてはもう時すでに遅し、びっしびしにしばかれるかこれからずっと口きいてくれなくなるかという状況が想定されるので今のうちにお薦めしておく次第である。

    ごく個人的なことを思い出してしまったことをここにこっそり告白するならば、そう遠くない前に叔父が亡くなった時、わたしと一緒に暮らしている祖母に対して息子が亡くなったことをいかにして、そしていつ、その事実と伝えるかに関して、認知症が進行しているとはいえ、もしかするとそうとうなショックを与えてしまうのではと恐れを抱きながら、叔父に会いに行くと言えば顔がほころぶ祖母には言いだせず、飛行機に乗り久しぶりの旅行でウキウキしてしまっている祖母にもやはり言いだせず、到着した先の空港のロビーのベンチにて意を決し事実を伝えたところ祖母の涙腺崩壊、おろおろしてしまった我らが家族がとった行動が「おいしいものを食べさせる」であり、それにより祖母は劇的に回復、その後都度都度忘れてしまった同じ事実に同じショック受けながらも再び同じ方法にて立ち直る祖母をみて結局わたしたち家族は「面白がってしまう」のだった。ということである。たぶんこの本に書いてあることもそういうことだと思う。それをとても細かい細かいところまでゆるがせにせずに(でもそういう部分こそ見た目にはとてもどうでもいいことのように映るのだが)描き出してくれるこのひとの文章はやっぱり好きなのである。

    • vilureefさん
      つるーりさん

      はじめまして。
      長嶋有、私も大好きです。
      「泣かない女はいない」だったかな、あまりに感激してサイン会はないのだろうか...
      つるーりさん

      はじめまして。
      長嶋有、私も大好きです。
      「泣かない女はいない」だったかな、あまりに感激してサイン会はないのだろうかと本気で考えてしまったほど。
      彼の独特の空気感と、他の作家が書きそうで書かない心理描写がたまりません。

      佐渡の三人、良かったですよね。久々の長嶋有王道作品だと思いました。
      2013/01/08
    • 思いのほかゆるい平さん
      はじめまして。
      「長嶋有王道作品」、まさにそれですね。
      王道というフレーズが入っておきながら、
      一般的に考えられている王道とは全く違うという...
      はじめまして。
      「長嶋有王道作品」、まさにそれですね。
      王道というフレーズが入っておきながら、
      一般的に考えられている王道とは全く違うという。
      なんかいいですね「長嶋有王道」。

      とても細かくて気づきにくいし忘れやすい気がするけれども、きっととても大事なことをこのひとは掬いとって見せてくれますよね。
      2013/01/10
  • 納骨、そして往生がテーマだったりするのに
    この気の抜けたような間の抜けたような珍道中が
    あったかい気持ちにさせてくれる。

    逝く人みんなきちんと年を重ねた歴史のある人たちばかりだから
    悲しみより安らぎとか、そんなイメージ。
    どうしようもない小ネタが面白くて、意外とこういうのが日常あるあるなんだよねーって気がした。
    一方で、納骨や戒名やへーっと思う話でもある。

    ただ、ちょっとテンポに乗れなくて、しっくりこないまま読み終えてしまいました。

  • 題字がかっこいい。
    短編かなと思っていたらちゃんと話がつながってた。
    納骨しに佐渡へ行くという旅行とも少し違う場所の移動が書かれているのだけれど、登場人物が個性的なせいか何かが滑稽。
    人んちの日常生活を覗き見しているような感じがするからおもしろいのかも。

  • 長嶋有っぽい、たんたんとした話。画や空気感を思い浮かべられるのがいいなぁ

  • 佐渡に納骨に行く。というのを小説にしちゃうあたり、登場する人たち一族だなあ(書いてる人が)。
    淡々としてるけど悲しかったり?おかしかったり。ふと、死んでいることについて書かれていたり。
    なんともうまく感想いえない…

  • 東京に住む女性作家(そこそこ売れているらしい(*^_^*))が親族の納骨のために家族と共に佐渡を訪れる話 。
    何も起こらず、ただ家族・親族のあれこれや道中が淡々と語られるだけなのになんでこんなに面白いのか?



    納骨連作短編集ってどうよ??と言ってしまいたくなるけど、うん、長嶋さんならいいか、と思えるあたりが長嶋さん、だよね。(*^_^*)

    語り手はどう見ても長嶋さんの分身なんだけど、(だって、父親や叔父さんの設定がモロにまんま)なぜか女性の作家・道子であるところが面白い、というか、女性作家で書いてみよう、って思われたんでしょうね。
    長年ひきこもり、のはずだったのが、祖父母の家で居場所を見つけて緩い介護をしている弟、道子の母親と離婚をしてあまり付き合いのない父親、の三人で吉祥寺の駅で待ち合わせをして、佐渡に向かうところから話は始まる。

    亡くなったのは、道子のおばちゃん。なぜ、おばちゃんの夫や子どもは納骨に来ないのか、お骨をユニクロの袋で包んであるのはあんまりじゃない?なんて、早くもツッコミどころ満載なんだけど、三人が話すともなく話す話が妙に可笑しくて、なんでも許してしまいたくなる・・。

    東京駅に着いた時、「とき」の先頭車両の前で黙って道子にカメラを渡す父。

    以下、引用。
    父は電車好きだ。一緒に写してくれ、ということらしい。観光旅行じゃないんだ、と弟が怒るかと思って顔を見たが、これくらいはかまわないようだ。

    なんて話が面白くてたまらない。(でも、こうやって引用してもあんまり面白くないんだよね・・。流れ、というものがあるからかなぁ。)

    この連作では、年を取った親族がぽつりぽつりと順番に死んでいき、(ということは、そのたびに時の経過があり)その都度、道子と誰かが佐渡に納骨に行く。
    そこで段々読者に道子の親族の珍妙さが明かされ、それはいわゆる「変人」の範疇に入るんだろうけど、でも、みんな自分たちのことはたぶん普通だと思っていて、確かにそれぞれの思いや行動に対する自分たちなりの理屈は通っていたりもする。そうえいば、私の実家の母が、「どこの家にも色々あるもんだよ」と口癖のように言ってたことが思い出され、何が普通なのか、人間ってみんな、どっかこっか変なんじゃないの?って思えたのがこの物語の一番好きだったところかなぁ。

    どこが変なのか、あれこれピックアップしてここに記しておきたいのだけど、一行、一行が変なのでさっきから本をめくっては、ま、いいか、なんて言ってる・・・。

    うん、こんな感想じゃ読む人に伝わらないだろうな、なんて思いつつ、これでいいことにします。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。東洋大学第2部文学部国文学科卒業。2001年、「サイドカーに犬」で第92回文學界新人賞を受賞しデビュー。02年、「猛スピードで母は」で第126回芥川賞、07年、『夕子ちゃんの近道』で第1回大江健三郎賞、16年、『三の隣は五号室』で第52回谷崎潤一郎賞を受賞。その他の著書に『佐渡の三人』『私に付け足されるもの』『今も未来も変わらない』などの小説、および漫画作品に『長嶋有漫画化計画』『フキンシンちゃん』がある。

「2021年 『もう生まれたくない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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