99%対1% アメリカ格差ウォーズ

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062179966

作品紹介・あらすじ

巨大資本に操られるインチキ政治運動、デマだらけの中傷CMをぶつけ合う選挙戦、暴走する過激メディアまで、日本人が知らない「アメリカの内戦」を徹底レポート。
● ティーパーティーを操る石油化学産業の帝王とは?
● 全米最大ニュース局に君臨する世論操作の達人とは?
● 最も信頼できるニュースキャスターに選ばれたお笑い芸人とは?
● ハゲタカファンドの出身の大統領候補ロムニーの本性とは?
● 「アラブの春はオバマの陰謀」と叫んだ“泣き虫扇動家”とは?
● アメリカをデフォルトさせようとしたキリスト教保守議員とは?

感想・レビュー・書評

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  • 前に読んだ本「USAカニバケツ」は、タブロイド版のアメリカ世相レポートだったけど、これはタブロイド版アかメリカ政治レポートである。

    アメリカに暮らす著者にとって「政治」は日本の我々の生活と同じ様に、テレビのコメンテーターによって見聞きする「情報」なのだろう。だから、それを再現させることは、我々が時折不思議に思うアメリカの「現実」を理解する上では有効なレポートになるだろう。

    なぜアメリカはオバマの医療保険化をあそこまで憎むことができたのかは、理屈ではなく、コメンテーターに充分扇動された面があることがわかる。

    そしてアメリカで起こっていることがいかに日本でも同じ様に起こっているか。例えば、ティーパーティー(保守派のロビイストの運動)はオバマの増税政策を「政府が史上最大の財政赤字を抱えている時に、国民に増税して支出を増やす政権を容認出来ない」と批判するけど、この赤字を作り出したのはブッシュである。しかも、増税の対象は富裕層のみ。批判の仕方が日本の自民党とよく似ているのである。まるで自民党が共産党の大企業や富裕層増税を非現実的だと批判するが如し。

    ティーパーティーも、メデイアと大企業が作った。日本でも隠れてよく見えない(原発では、たまたまそれがよく見えただけ)けど、メデイアと大企業が世論を作るのである。

    金持ち減税延長反対のために、8時間半の長い演説を行った二大政党に属さない議員の存在は、日本でも何かできるのではないかという気にさせるのである。(これと同じテーマを扱ったのが映画「スミス都に行く」(1939)だということを初めて知った)

    この本は1%のティーパーティーを報告することは熱心でも99%のオキュパイ運動を報告することは熱心ではなかった。2012年前半の状況を伝えて欲しかった。
    2012年11月22日読了

  • 今週は何と言っても米国大統領選挙で大変な盛り上がりだった。

    これまで色々と曰くのあったフロリダ州は相変わらず開票結果が確定しないなどそれなりの話題も提供してくれているが、一番笑えたニュースはオバマ候補が勝利濃厚と各テレビメディアが報道を始めた際に、一方で敗色濃厚となったロムニー陣営では「FOXにチャンネルを変えろ」という声が気せずして湧き上がったというNew York Timesの記事だ。

    いつの間にやら保守派代表メディアのちいを確立し、民主党への攻撃を止むこと無く続けるFOXニュースというのは知っていたが、具体的には何を称して今や視聴率ナンバーワンになっているのかは日本では意外と知られていない。そんなFOXニュースの報道を中心として保守派が何を主張しているのか、どういうキャンペーンを張っているのかを具体的にFOXニュースの報道、キャスターのトンデモ言動を取り上げ紹介しているのが本書である。

    米国生まれでなければ大統領にはなる権利は無いとする憲法を盾に、飽くまでもオバマの出生地はアフリカだと言い張る、アフリカの民主主義革命はオバマの陰謀だ、オバマケアは社会主義への道を開くだの、ティーパーティ等の集会報道は出席者数を誤魔化し過大に見せるために関係ない集会のフィルムと差し替える等など、まあニュースとは言いがたい単なるデマゴーグ的メディアとしての例がこれでもかとばかりに紹介されている。

    まあ日本で言うならばゴーマニズム宣言の小林的な短絡的かつ挑発的言動というのか、ネット右翼の妄信的な排斥主張というのか、そういうものが堂々とニュース番組と称して毎日毎晩垂れ流されているのだというからアメリカは奥が深い(笑)。

    ある意味では狂信的なティーパーティ信奉者が何故存在するのか、はたから見ていると良く判らないところが多いのだが、こうやってFOX報道を紹介照会して貰うと少しはその背景が理解できるのかもしれない。

  • 【由来】
    ・COURRIERからのメルマガ

    【期待したもの】
    ・堤未果のアメリカシリーズと補完する内容なのかと。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  •  月刊誌『クーリエ・ジャポン』の連載「USニュースの番犬」の単行本化。2009年暮れから昨年にかけての米国政治をウォッチした時事コラム集である。

     前に読んだ町山の『教科書に載ってないUSA語録』の類書だが、あちらが芸能ネタや映画ネタまで幅広く扱う雑食型コラム集であるのに対し、本書は政治・経済ネタに絞っているのが特徴。
     また、コラムといっても一本が10ページ以上にのぼる長いものなので、一つのテーマをじっくり論じていて読み応えがある。

     けっして政治評論にはならず、あくまで「政治ネタのコラム集」になっている。つまり、随所に笑いや皮肉が盛り込まれ、文章の芸で読ませる内容なのだ。

     日本に政治評論家や経済評論家は山ほどいるが、政治や経済をネタにしてこのような面白いコラムが書けるのは、町山と小田嶋隆くらいではないか。両氏の「堅いテーマを面白く読ませる能力」は、すごいものだと思う。日本の政治経済については小田嶋の、アメリカのそれについては町山の独擅場だろう。

     もちろん、本書はたんに面白いだけではなく、ためになる。アメリカ政治がよくわかる本なのだ。

     たとえば、一昨日私はジェフリー・トゥービンの『ザ・ナイン――アメリカ連邦最高裁の素顔』を読んだが、同書を読んでもいまいちよく理解できなかった点が、本書所収のコラム「オバマケアは合憲か? 最高裁9人の判断が下る」を読んで、「ああ、そういうことか」とすっきり理解できた。
     そのように、難しいことをわかりやすく説明する知的咀嚼力においても、町山はバツグンだと思う。

  • なぜアメリカは1%の富裕層が99%の中流、貧困層に比べ優遇され続けているのかがよくわかる一冊。

  • 町山さんの著書は面白いのが分かっているのですぐに買い、そして面白かったんだけど、第一印象は(好きな大御所の装丁家ではあるが)装丁、ダサッ。そしてあっさり増刷時に装丁が変わってビックリ。けどフォントもイラストも変えずに配置だけ変えるんだったらやらなくても良かったんじゃないか。

    中身がよければ買うのは買うんだけど、久々に見たダメな装丁がまさか町山さんの著書だなんてというショック。同時期にでた文庫も単行本も装丁が素晴らしいだけに、なおショック。

    「カワイイはつくれる(by花王エッセンシャル)」という、装丁は技術の問題なので、中身ありきで外見もよければ大大大好き!になるんだし、もうちょい頑張れなかったかなぁと思ってしまった。っていう中身とは関係ない外ヅラの感想(欲張りすぎ)。

    • tomomachiさん
      おっしゃる通りです。あの装丁は著者の承認を得ていません。びっくりして改善させたので重版から変わりました。たいして効果はありませんが。
      おっしゃる通りです。あの装丁は著者の承認を得ていません。びっくりして改善させたので重版から変わりました。たいして効果はありませんが。
      2012/10/26
    • modi_eさん
      装丁が売上に「効果」があるのはほんとに微々たるものな気がしますが(3刷決定!おめでとうございます!)、水道橋博士が鈴木成一さんの装丁に関して...
      装丁が売上に「効果」があるのはほんとに微々たるものな気がしますが(3刷決定!おめでとうございます!)、水道橋博士が鈴木成一さんの装丁に関して仰っていた「背中で語る、その背中が装丁(中身・内容がおもて、のような意だと思うのですが…)」がとてもしっくりきます。本が好きなだけに、そして本好きな人ほど手元に長く置いておきたいと思うがゆえに、男の背中はカッコよく映って欲しいのものです!

      『アメリカ人の半分は…』からつづく「時事コラム系は並製本」で安価に皆の手に!、の手法、とっても素晴らしいです!
      だからこそ、面構えもかっこいいとなぁ〜という、欲張りな感想でした。
      2012/10/26
  •  アメリカの政治的な流れが知りたくて借りた。
     圧倒的にオバマよりの視点だけれど、かえってその方がわかりやすかった。
     
     レーガン以来の新自由主義(小さな政府)を取ってきたアメリカはここ30年で格差はますます広がった。
     オバマは1期目の宣誓式でそれらとの決別を示唆するが…
     オバマ陣営の足を引っ張る共和党(FOX、グレンベック、ティーパーティー運動など)を紹介する。
     グレン・ベックは「アメリカが黒人に乗っ取られる」とわめき、草の根運動を装うティーパーティーには実は大企業のバックが付いている。
     それもそのはず、共和党は自由市場競争と規制緩和を是とするからだ。
     「オバマケア(国民皆保険)」はアメリカンドリームへの攻撃だ、とする黒人大富豪などなど。
     富めるものはさらに富み、
     それを守るために「そこまでするか!?」的にヒステリックなまでに必死になる、という構図がよく見える。

    参照図 
    米国の共和党と民主党
    http://ladygodiva.web.fc2.com/other/usaseiji2.html

    ネオコンとブッシュ
    http://allabout.co.jp/gm/gc/293106/3/

  • 2009年1月〜2012年7月
    アメリカ政治に関するコラム
    特に共和党の支持母体が如何に嘘をつき中傷を行うか
    ティーパーティーの黒幕がコーク兄弟などの富裕層であること
    既得権益の維持に莫大な資金が投じられていることなど

  • ひ~!!
    おそロシア…ではなく、おそろしアメリカ!

    アメリカの政治情勢などがめちゃくちゃ詳しくわかります。
    で、読めば読むほどひぃ~!!となります。

    「自由」と「平等」を掲げたアメリカ
    日本にいる私たちはそういうイメージを持ってますが…実際のところはなかなか収拾がつかないとこまで走っちゃってるって感じです。

    自由が進みすぎると弱肉強食になり、貧富の差が拡大しすぎて社会の流動性がなくなる…つまり自由競争も行われなくなる。
    平等が進みすぎると自由競争が抑圧され、官僚化が進み社会が停滞する。
    そのバランスを取るのが資本主義国家。
    でもアメリカは「自由」が暴走して破綻
    これじゃまずいってことで「平等」を押すとやりすぎて破綻…ってな状況らしい。

    これを知っていてこの本を読むとわかりやすいかも。

    たとえばオバマさんが掲げたオバマケア
    なんで医療保険制度に国民が反対するのか理解できなかったのだけど反対派の陰にはティーパーティーなるものがあったり、フェイクニュースを流しっぱなしのTV局が存在したり、人種差別バリバリの運動家が民衆をCMで煽ったり…
    いや~もうやりたい放題にビビります。

    驚くべきことに、テレビのキャスターが支持政党を明らかにしてメディア煽りまくるっていうのは日本ではまず考えられない。(放送メディアは不偏不党であるという原則をアメリカは1987年に撤廃したんだって!ひ~!!)オバマさんの名前がウサマ・ビン・ラディンぽいからイスラム教徒だ~なんて馬鹿げた理由で攻撃する人、ヘイトメディアが堂々とムチャクチャな理由で人種差別をしたり…
    まあホント、もはや無法地帯といってもいいかも。
    でもまあそれもひっくるめてUSAなんだろね。

    で、「どうせ他人の国」…なんて冷ややかな目でアメリカを見てはいけないんだよね。
    明日は我が身…日本もこんな風にぶっとんだ国になるかもしれないもんね。

    で、思った。
    町山智浩さんってすごい!
    映画の評論だけでなくこんなに政治を分かりやすく伝えられるなんて!
    ってあれ…私、もしかして町山さん思想に染められてる?
    まあそれでもいいやっ。

  • クーリエジャポンの連載をまとめたもの。オバマ時代のアメリカをざっと振り返るのに良い。

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著者プロフィール

1962年生まれ。映画評論家。1995年に雑誌『映画秘宝』を創刊した後、渡米。現在はカリフォルニア州バークレーに在住。近著に『トランピストはマスクをしない コロナとデモでカオスのアメリカ現地報告』(文藝春秋)、『映画には「動機」がある「最前線の映画」を読む Vol.2』(集英社インターナショナル)、『最も危険なアメリカ映画』(集英社文庫)、『町山智浩のシネマトーク 怖い映画』『町山智浩の「アメリカ流れ者」』(スモール出版)などがある。

「2021年 『町山智浩のシネマトーク 恋する映画』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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