デフレの真犯人 ―脱ROE〔株主資本利益率〕革命で甦る日本

著者 :
  • 講談社
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感想 : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062180726

作品紹介・あらすじ

「実質的な金融引き締め」への正しい認識を持つことから、すべては始まる。「政府はバカだ」「日銀は無力だ」「人口が減るからダメだ」と憤慨し諦める必要はない。論点を修正すれば、日本経済は再び成長する。日本経済に横たわる「死角」を探れ。苦境から脱するために必要なことは何か、日本を代表するトップストラテジストが説く。

感想・レビュー・書評

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  • JMMのレギュラーコメンテーターで、結構好きな人でしたので早速買って読んでみました。
    「企業利益」を「株主が要求する金利」としてとらえるというのは、とても意外な発想でしたが、言われてみるとたしかにそのとおりと納得。利益率追求のために、他のステークホルダーの取り分をいたずらに減らしているというのも、実体経済に合っていてとても説得力があると感じました。とはいえ、その解決策として「売上高」を経営目標にすべし、というのも、たしかにその通りなのでしょうが、ここの企業、経営者のマインドをそのように変えるパスや、消費者がお金を使ってもいいなというマインドに変化するパスを見つけること自体、とても容易ではなさそう。
    本にも書かれていたように、アメリカのFRBが金融緩和を長引かせすぎてインフレにしてしまい、そのあおりで日本もインフレになる、というパスの方が、あり得るシナリオのように思いました。
    ともあれ、新しい視点を与えてくれる、非常におもしろい本でした。

  • 経済や経営を取り巻く「空気」に対して論理を積み上げて反論していく良書。
    その「空気」とは、近年の株主の意向に従う風潮とそれに応じたROE重視の経営のことだ。

    この本が出版されたのは2012年12月でまだ日銀の金融緩和政策が発表される前だった。
    現在はデフレ脱却に向けて日銀による異次元の緩和が行われているわけだが、そんな中で「デフレの真犯人」と銘打った本書を読む意義はあるのだろうか。

    十分にあると思う。
    本書は企業の行動にデフレの原因と脱却法を見出しており、その点で金融緩和策とは違う論点が提示されているからだ。

    筆者は本書の結びで、デフレの真犯人を思考停止した「私たち自身」だと読者に発破をかけるが、
    デフレの一因として身の丈に合わないROEを数値目標に掲げ、実行しようとする日本企業だと主張している。(というのが私の理解)
    近年ではステークホルダーを重視した経営というのも広がりつつあり、株主主権偏重の空気は一時に比べれば少し弱回っているように思える。(もっともスチュワードシップコードなどもあり、株主側の意向が強まっている傾向もあるが、経営者はバランス感覚を持ち始めたように思う)
    ROE至上主義をやめ、ステークホルダー経営を意識することが、デフレ脱却の糸口だと主張し、そのことが「脱ROE革命で甦る日本」というサブタイトルにも現れている。

  • ROE重視の経営によって、バランスシート縮小と投資の減少をまねき、デフレが止まらない、という趣旨。

    予測インフレ率は、国債の利回りと、物価連動債の利回りの差。
    アメリカとは、インフレ率で2%の差がある。

    アメリカは、相互不信のため、ハブ・アンド・スポーク型にするためにFRBのバランスシート拡大が必要だった。

    19世紀末の世界的デフレが終わったのは、南アフリカの金が発見されたから=貨幣量が増えた。

    PER=時価総額/当期純利益
    PBR=時価総額/株主資本
    ROE=当期純利益/株主資本
    PER=PBR/ROE PBRが1なら、
    PERとROEは、逆数。

    フリードマンとモジリアニ

    高く売る、ことは頭を使うという苦痛を伴う。

    リフレ派と構造改革派。

    外国人投資家の行動様式は、ライバルに負けないこと。
    ライバルとは、市場のこと。
    負けないためには、ライバルと同じことをすれば良い。
    上がれば買う、下がれば売る。

    バブルは循環論法に陥った時。
    イタリアの金利。
    Qレシオという循環論法=1980年代の日本のバブル
    メットワーク外部性=2000年のITバブル
    円キャリートレード=2007年円安バブル
    原油枯渇説=2008年の原油バブル

    現象の説明が、循環論法?循環している時は、既にバブルになっている。

  • 本書ではデフレの原因を株式のリターン、あるいは株式の「金利」に当たるRoE(株主資本利益率)に求める。
    グローバル化が進み、当然、日本企業も世界と同じリターン水準が求められる。中国の株のリターンは8%だけど、日本は人口も減るし景気も悪いから2%でいいよ、ということには絶対にならない。
    このため、日本の経営者は、株主からさまざまな圧力を受け、株主の配当を増やすために、取り引き先(下請け)や従業員に泣いてもらうしかありません。
    こうして日本の経済はどんどんシュリンクしていく。

  • 元三菱UFJ・JPモルガン証券ストラテジストが日本経済の低迷について、過去あまり注目されなかった視点を加えて分析・解説する本です。

    最近読んだ日本経済に関するの本の中では最も興味深い本であり、"目からウロコ"な箇所が多かったため、2度3度と読み返しました。

    著者の分析によると、日本経済の長期低迷の原因は、世界経済のグローバル化によって、身の丈に合わない資本コストを使わざるを得ない状況になったから、というものです。
    また、失業者が目立ち、若年層の就職難が常態化している現在、ROE・利益重視の経営は不適当であり、売上高を目標にするべき、と提言しています。

    本書における著者の説明はとても納得できるものでした。ただ私にはどうしても、著者の提言が現実に達成されるとは思えません。著者の提言は、ある意味で根本的な社会変革・思想転換を訴えるものです。そして低成長と世界経済のグローバル化が問題の根幹にある以上、これはどうしようもなく困難な道のように思えます。

    とはいえ、経済・ビジネス書にカテゴライズされる本の中では、抜群にエキサイティングな一冊ですので、高く評価したいです。

    なお私が"目からウロコ"に感じた点を以下に列挙します。

    ・円グラフにした損益計算書、「パイの取り合い」の視点でP/Lをみること
    ・収益率を「金利」とみること、またその変動を「金融緩和・引き締め」と
     みること
    ・アナリストが使うWACCは4%、期待収益率は5%、実は根拠が薄い。
     そもそも業界内比較が目的ならば、収益率は同じであれば何でもいい。
    ・大企業の支払利息:1991年度 38兆円 ⇒ 2006年度 10兆円
     大企業の純利益:1989年度 18兆円 ⇒ 2006年度 28兆円

    (タイトルはミスリードを誘います。ROEを重視する経営が"日本にとって分不相応"であることがデフレの原因ではないか、ということです)

  • デフレーションの正体見たり枯れインフレ、かな。

  • 日本経済低迷の要因を実情に合わない高ROEの要求に求めている点は、前著「なぜグローバリゼーションで豊かになれないのか」においてその理由を資本コストの高さとしている点と基本的に同じである。
    しかし「利益」を「株主への配分」として、売り上げというパイの切り分け先を取引先、従業員、銀行、株主とシンプルに整理したうえで、個別企業への高ROEの要求がパイ(=売上)の拡大ではなく株主以外への配分を減らす方向に働き、その結果デフレとなって結局は日本全体としてROEは高まらないという説明はなるほどと思わせるものだった。
    デフレの根本的な原因は人口構成の変化ではないと言っているあたりは「デフレの正体」への対抗(?)意識がにじみ出ている。
    キリスト教における神、預言者、王の関係を資本主義における株主、投資家、経営者の関係になぞらえ、日本の経営者の「勘違い」を指摘している点も面白い。
    また本題と直接関係するものではないが、上がる(下がる)から買う(売る)、買う(売る)から上がる(下がる)という循環論法に陥っている状態を「バブル」と定義している点も興味深い。

  •  外資系証券会社に勤める著者が、2012年11月すなわちアベノミクスが始まる直前に出した本である。デフレの原因がReturn On Equityに応えたからと指摘する。それまで株式は企業間の持ち合いで利益=株主を重視していなかったが、海外投資家の増加などでそれを重視するようになったために、その分だけ設備投資とか賃金が抑えられ、実質的に金利上昇したと説く。
     経営者は物言う投資家を気にするのではなく、すべての株主=理想と理論武装して、バランス経営せよと対処法も示している。
     本書は200ページほどあるが、そんなにページ数を費やさなくても主張は説明できると思う。経済本は、どうもこのようなページ数過剰な傾向が多い気がする。
     筆者は、日本の状況において金融緩和をやや批判的であるように私には読み取れたが、このアベノミクスをどう感じているのだろうか。

  • 筆者の目的は、ROEを重視する経営って本当にいい経営なのか?という問題提起である。
    ROEの水準が高いということは、直接金融での資金調達コストが高くなり、企業にとっての金利が高くなることを意味する。つまり、投資意思決定をする際の割引率が高くなり、投資を減らすことにつながる。つまりデフレにつながる。
    また、株主の本当の要求である「企業価値の最大化」とROEの向上というのは必ずしもイコールではない。
    という2つの主張から、ROEを重視するのではなく。売上の拡大を目指す経営をしたらどうだろうか、という提言をしている。別にROEを軽視しろと主張しているわけではない。

    私自身はアメリカのROE至上主義の経営に力強さを感じているので、筆者の主張には懐疑的で、読んでみてもあまり説得力を感じなかった。そのため評価は2にした。
    なぜ説得力がないのかというと、売上の拡大がなぜよりよい経営につながるのかが不明なこと、筆者の理論にところどころ飛躍があり、私の頭がついていかなかったためである。

  • デフレの現況は「金利」のグローバルな収斂にある。「金利」とは資本コストのこと。長期金利については納得できない点もあったが、いろいろ考えさせられる名著だと思う。

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著者プロフィール

バークレイズ証券株式会社マネージング・ディレクター、日本株チーフ・ストラテジスト。
1982年、大阪大学法学部卒業後、三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。資金証券部、ニューヨーク支店を経て、1991年より為替資金部にて為替アナリストに。1997年より東京三菱証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)にて株式ストラテジストを担当。2006年に株式調査部チーフストラテジストとしてJPモルガン証券株式会社に入社。2013年、バークレイズ証券に入社。米国『インスティテューショナル・インベスター』誌の株式ストラテジスト部門で3回にわたり1位にランクされる。
著書に 『なぜグローバリゼーションで豊かになれないのか――企業と家計に、いま必要な金融力』(ダイヤモンド社)、 『おじいさんは山へ金儲けに――時として、投資は希望を生む』 (村上龍氏、山崎元氏らと共著、幻冬舎文庫)、『デフレの真犯人――脱ROE〔株主資本利益率〕革命で甦る日本』(講談社)がある。

「2014年 『日銀はいつからスーパーマンになったのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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