天翔る

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 114
  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062182591

感想・レビュー・書評

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  • エンデュランスという馬術競技を初めて知った。
    馬術競技というと馬場で行うというイメージだったが、これは外乗コースで行う長距離耐久レースだという。
    では映画『ヒダルゴ』のような、人にも馬にも過酷なレースなのかと思ったら、長距離ゆえ過酷ではあるが、馬は労わるレースであるという。
    距離にもよるが、6つの区間(レグ)を通過する間に馬の体調を獣医がチェックして、それをパスできないと次のレグは走れない。
    もし完走しても、完走後の獣医師チェックをパスしなければ失権する。
    ゴールした順位とは別にベストコンディションホース賞というのもある。

    その競技をはじめることになったまりもを中心に、まりもが牧場に通うきっかけとなった看護士の貴子、牧場主の志渡、エンデュランスという競技と普及に力を注ぐ漆原たちの話が展開される。

    父親と二人暮しのまりも。
    学校でいじめを受けはじめたのと同じ頃に父親が事故で亡くなる。
    それがきっかけで学校に通えなくなる。

    馬との触れあいで自信を得、志渡や貴子の助けで一度は学校に戻るのだが…。
    愛情を注いでくれる大人たちや理解してくれる友達がいる。
    まりも自身、恵まれた人間関係だということを頭では理解している。
    なのに二度目に学校に行けなくなったとき、まりもは常習的な自傷行為にまで及んでしまう。
    無条件な愛情・絶対的な安心感・自分を必要としてくれる存在の不在を感じているからだ。
    まりもにとってのそんな存在は父親だった。だからいくら周りに恵まれていても「自分だけが一人だ」と感じて時折父親に無性に会いたくなる。

    そんな弱さを持ちながらも、競技に対する真摯な強さ、馬との信頼関係、などをエンデュランスを通して培うまりも。
    心に傷を持っていた貴子や志渡も、まりもとともに少しずつ前に進んでいく。

    本場の大きな大会、テヴィスカップを完走したまりもの帰国後の思いがけない再会。
    父親との想い出の懐かしいある名前。
    光がいっぱい溢れるような、いろんなものが天に昇っていくような、希望を感じられるラストになっている。


    読者モニターとしてプルーフ版にて読了。

    • cecilさん
      面白そうですね〜!!最近の村山さんの作品は割と官能路線だったので、そろそろ久々に村山さんの王道のヒューマンドラマが読みたいと思っていました。...
      面白そうですね〜!!最近の村山さんの作品は割と官能路線だったので、そろそろ久々に村山さんの王道のヒューマンドラマが読みたいと思っていました。
      このレビューを読んで、エンデュランスという珍しい題材を絡めて人の心の動きを感じられそうな作品みたいで物凄く読みたくなりました。
      そういえばスポーツを絡めた話って村山由佳さんには珍しいですよね。
      発売されたら絶対に読みます!!
      2013/03/15
    • 九月猫さん
      cecilさん、こんばんはー♪
      コメントありがとうございます!

      そうなんですってね>最近の村山さんは官能路線
      村山さんの作品は少し...
      cecilさん、こんばんはー♪
      コメントありがとうございます!

      そうなんですってね>最近の村山さんは官能路線
      村山さんの作品は少ししか読んだことなかったのだけど、
      さわやかなイメージがあったのでビックリしましたよー。

      エンデュランスは村山さんもなさっているそうです。
      馬がお好きで牧場のようなおうちというのは知っていたのですが、
      自らこんな過酷な競技をなさっているとはこれまたビックリでした。

      アマゾンの発売日が当初8日だったので、8日にレビューをUPしたのですが、
      発売日遅れてるみたいですね……。
      お時間があってお好みそうなら、発売されたらぜひ読んでみてくださいね!
      その折にはcecilさんのレビュー楽しみにしてます~(´▽`)ノ
      2013/03/15
  • 父と祖父母と暮らす、まりもが馬と出会い、馬に乗り、エンデュランスという競技に出る…話と言えばそうだけど、
    なにかしらの、埋められない虚無…のようなものを持った登場人物たちが、
    馬、そしてエンデュランスという競技への参加を通して、
    少しずつ変わっていく、成朝していく話です。

    視点が入れ替わる形なので、それぞれの登場人物の心情も理解しやすい。
    面白かったです。

  • 心に傷を受けた女の子が馬を通じて強くなっていく… って、何かありがちな話だな~って最初は思っていたけど、そこはやっぱさすが村山さんでした。
    エンデュランスにも興味が持てたし、なにしろ馬に乗るのがそんなに大変なことだとは知りませんでした。

  • 一人の少女と馬を軸に
    心に深い傷を負った人々の物語。

    母や別れた夫への恨みや確執を「私はこんなに辛かった」と手を変え品を変え訴えるような小説からようやく目線が離れたようでホッ(辛辣)。

    読み応えがありグイグイ読み進め、終章間近で「あとこれだけでまとまるの?」と心配に。
    一応綺麗に終わったけど
    誰も、何も解決はしてないよね。

    それが現実ではあるけれど
    だからこそ小説の中位は
    スッキリ決着をつけてほしい。

    【図書館・初読・5/8読了】

  • エンデュランスと言う乗馬競技と少女を中心とする人々のお話。
    自分の思う通りになる事なんてほとんど無い。と言う事は、チョットはあると言う事だ。強く思っていればそこに達することができる。でも、そんな束縛から解放され自由に、いや自由からも、さらに時間からも解放されたらどんな気分だろう‥

  • *看護師の貴子が出会った少女、まりもは、ある事件から学校に行けなくなってしまった。貴子は少女を牧場へと誘う。そこで待ち受けていたのは風変わりな牧場主と、乗馬耐久競技(エンデュランス)という未知の世界だった―。北海道の牧場を舞台に描かれる命の輝き。底知れぬ感動をよぶ、祈りと希望の物語*

    馬、かあ…と全く期待せず手に取った作品でしたが、思いのほか心に染みる良作でした。親を亡くしたまりも、男性不信の貴子、全てを喪った志渡…心に傷を負った人間同士が、ある時は全力で、ある時はそっと寄り添い、支え合って生きていく。そこにエンデュランスと言う特殊な競技と馬との交流、とても繊細で複雑な心理描写が加わり、さすがの村山作品に仕上がっています。ラストは出来過ぎな気もしますが、そこは筆力のなせる業。無理なく感動に導いてくれます。

  • ラブストーリーのイメージが強い村山さんですが、この本は純粋に少女と馬の絆のようなものが垣間見れて、何度か涙してしまいました。

    馬と触れ合う機会はなかなかないですが、本を読んだだけの私がかわいいんだろうなぁと感じるくらいなので、実際に育てている方からしたら、突然死や食用に回さなければならない事情は想像できない辛さがあるんだろうな、と思います。馬に限らず、ですが。

    なんだか牧場に行きたくなっちゃいました。

    あと、志渡さんと貴子がその後どうなったのかが気になります…。

  • まりも 父 いじめ 石本 貴子 シド 理沙 馬 ランチ エンデュランス 競馬 自傷行為 トラウマ 人馬一体

  • 一人の少女と、心に傷を持った人たちの暖かく再生に向かっていく物語。
    馬を通して、大切なものを手探りで感じていく、とても暖かい気持ちになる作品でした。
    何も解決していないし、これから続いていくのだけれど、爽やかに晴ればれする気持ちになれる。「青春」とはまた少し違う気がするけど、爽やかで不器用で真っ直ぐな心に感動しました。

  • 最後のレース部分は若干物足りなくも感じたが、周りの人々に助けられながら少女が成長していくストーリーは心地よく読み進められた。

著者プロフィール

村山由佳(むらやま ゆか)
1964年7月10日生まれ、立教大学文学部日本文学科卒業。不動産会社、塾講師などの勤務を経て作家となる。
1991年 『いのちのうた』でデビュー。1991年『もう一度デジャ・ヴ』で第1回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞佳作、1993年『春妃〜デッサン』(『天使の卵-エンジェルス・エッグ』に改題)で第6回小説すばる新人賞、2003年『星々の舟』で第129回直木三十五賞、2009年『ダブル・ファンタジー』で第4回中央公論文芸賞、第16回島清恋愛文学賞、第22回柴田錬三郎賞をそれぞれ受賞している。ほか、代表作として『おいしいコーヒーのいれ方』シリーズがある。

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