陽炎の門

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 214
感想 : 25
  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062183000

作品紹介・あらすじ

友を陥れてまで、己は出世を望んだのか――。若き執政がゆく道は、栄達か、修羅か。
職務において冷徹非情、若くして執政の座に昇った桐谷主水。かつて派閥抗争で親友を裏切り、いまの地位を得たと囁かれている。三十半ばにして娶った妻・由布は、己の手で介錯した親友の娘だった。あるとき、由布の弟・喬之助が仇討ちに現れる。友の死は己が咎か――主水の足元はにわかに崩れ、夫婦の安寧も破られていく。すべての糸口は、十年前、主水と親友を別った、ある〈事件〉にあった。

著者史上、最上の哀切と感動が押し寄せる。組織を生き抜く者たちへ--直木賞作家・葉室麟の最新作! 峻烈な筆で描き出す、渾身の時代長編!!

感想・レビュー・書評

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  • 若くして執政となった桐谷主水。かつて派閥抗争で親友の筆跡と断定し切腹の介錯した事が心の重荷になっている。妻の由布は、その親友の娘だった。しばらくして由布の弟が仇討ちに現れる。切腹の原因となった筆跡を巡る謎と過去の騒動の謎がリンクして意外な終盤になだれ込む展開はミステリーとしても人間ドラマとしても面白い。親友を誤って貶めたのかと苦悩するクールな主水と微妙な立場になった由布、謎多き与十郎などキャラも良い。顛末はかなり意外な感じでちょっとびっくりした。そうくるのかという感じです。切ないな、与十郎。

  • わが道をゆく桐谷主水、いつもながらスカッとした。

  • 913.6 ハ 登録番号10388

  • 2013.6.14読了。葉室作品は数冊読んでいるが、秀作だと思う。主人公のごとき強い生き方をしたいものだ。

  • 著者に抱いていた「爽やかさ」や「コミカル」な作風、等の認識を大きく改めさせられた。
    他の既刊によく似通った大筋・設定でありながら受けた印象が違うのは主人公の人となりもしくは腹の括り方にあると思う。
    真相を知った後、己が証言により罪を得、尚且つその手で介錯した親友を「武士の亀鑑」と称えた上で自らを「不忠不義の悪臣、氷柱の主水でござる」と開き直る場面など主人公の魅力にぞくぞくする。
    また、題名が作中でどの様に扱われているのか、という一事に於いても期待に以上のものを見せて頂けたなぁと至極満足している。

  • 冷徹非情、若くして執政の座に昇った「氷柱の主水」。妻「由布」は己の手で介錯した親友の娘。「冤罪かもしれない友を陥れてまで、己は出世を望んだのか」
    「武士道といふは死ぬことと見つけたり」「君、君たらざる時でも忠を貫く」観念的な武士道観に真っ向から向き合う。生きることにこだわり、武士の姿不忠不義の家臣と言われても、「曲げぬ、逃げぬ、屈さぬ」正しいことにこだわり挑んでいく執念。
    人の生き様を描くという点では同じだが、緩やかな流れで滔々と流れるような今までの葉室小説とも違い、いつもの凛とした女性を描くでもなく、お得意の和歌を芯にした作品でもない。ミステリー調であり、最初から緊迫感がある新たな面を見せた作品。代表作のひとつになるだろう。

  • しっかりした描き方とは思うが、少し足りない気もしました。主水以外の執政がヘタレばかりというのもね。

  • 葉室麟の小説に黒島藩シリーズというのがある。
    豊後黒島藩を舞台にした小説で、「陽炎の門」、「紫匂う」、「山月庵茶会記」の3作がある。
    黒島藩は作者が作り出した架空の藩である。
    おそらく藤沢周平の海坂藩を意識したのだろうが、作者の早過ぎる死で、わずか3作で終わってしまった。
    先日「紫匂う」を読んで、それがこのシリーズのひとつだと知り、他の作品も読んでみようと考えたのである。
    そのシリーズの第1作目となるのが、「陽炎の門」である。
    小説の冒頭に、その黒島藩について書かれた箇所がある。
    それによると「九州、豊後鶴ヶ江に六万石を領する」とある。
    そして「伊予国来島水軍の中でも<黒島衆>と称された黒島興正が藩祖」となっている。

    物語は、家禄五十石という軽格の家に生まれた桐谷主水が、三十七歳という若さで、執政になるという異例の出世を遂げたところから始まる。
    それをきっかけに、10年前のある事件の謎が再び浮上してくる。
    その事件というのは、藩の派閥争いの中で起きた事件で、城内で藩主父子を誹謗する落書が見つかったというもの。
    犯人として疑われたのが、親友である芳村綱四郎。
    そして落書の筆跡が綱四郎のものだと証言したのが主水であった。
    その証言が決め手となって綱四郎は切腹、綱四郎は介錯人として主水を指名する。
    それに応じた主水は介錯人を務めることになる。
    以来彼は「出世のために友を陥れた」と噂されるようになる。
    そして10年が経ち、再び事件が洗い直されることになったのである。

    過去の自分の判断が間違っていたのではないだろうかと煩悶する主水の姿や、ミステリー仕立ての展開でぐいぐいと読ませていく。
    主水はこれまでの葉室作品の主人公たちのように、清廉潔白とか高潔といった人物ではない。
    軽格の家に生まれたことで、貧しさを骨身に沁みて味わい、そこから抜け出そうと人一倍出世を望む男である。
    そのため職務においては冷徹非情、陰では「氷柱(つらら)の主水」と呼ばれている。
    そんな人間的な側面をもつ主水が、ライバルでもあった綱四郎を、間違った判断で蹴落としてしまったのではないかと苦悩しながら事件の真相に迫っていく。
    そのなかで、どんな真相を掴み、どんなことを考えるのか、さらにどんな行動をとってゆくことになるのか、どこまでも興味は尽きない。
    葉室麟の小説はやはり面白い。
    読み終わるとまた次を読みたくなってしまう。
    次は黒島藩シリーズ3作目の、「山月庵茶会記」を読むつもりである。

  • 2017.02.27

  • 9月-12。3.5点。
    親友が、藩主を侮辱する落書きを。筆跡が親友の物であると
    証言した主人公。介錯をつとめ、娘を妻と娶る。
    息子が現れ、仇討ちを狙い、藩のまわりも不穏な動き。
    監視役の若武者も敵か。
    面白い。隠れた想いが深く、さすが葉室作品。

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著者プロフィール

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。著書は他に『実朝の首』『橘花抄』『川あかり』『散り椿』『さわらびの譜』『風花帖』『峠しぐれ』『春雷』『蒼天見ゆ』『天翔ける』『晴嵐の坂』など。2017年12月、惜しまれつつ逝去。

「2021年 『青嵐の坂』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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