かさねちゃんにきいてみな

著者 :
  • 講談社
4.22
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本棚登録 : 282
感想 : 62
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062183253

作品紹介・あらすじ

かさねちゃんがすごいのは、オレたちに、リュウセイにさえ、一度も、うんざりって顔をしないとこだ。ちがうな、ほんとにすごいのは、どうもほんとに、かさねちゃんはぜんぜん、リュウセイにも、この班のメンバーにも、うんざりしてないってこと。
オレなんかしょっちゅう、いろんなことにうんざりして絶望すんのに。
かさねちゃんが絶望を知らないはずはない。だってオレより一才長生きしてるんだから。         ──本文より。

オレ、こと5年のユッキーは来年、登校班の班長になることが確定して絶望している。現在の班長は、「ちゃんとして」の魔法の言葉で皆が一瞬で大人しくなる、6年でカリスマ班長のかさねちゃんだ。
そのかさねちゃんを先頭に、1年で暴れん坊女子のミツ、2年で人見知りののんすけ、2年と3年で忍者マニアの兄弟・太郎と次郎に、4年のギャル系マユカと問題児リュウセイ、そして最後に5年で副班長のオレ、ユッキーが列をつくって登校する、間宮小・南雲町二班8人の子どもたちの毎朝の歩みを描く。

年齢も、家庭環境も、性格もてんでばらばらな小学生たち8人が、毎朝いっしょに騒がしく登校する様子がユーモラスで繊細な文章で生き生きと書かれています。
小学生って、たった数ヶ月でこんな風に自分とは全然違う他人たちとの関わりあいの中でそれぞれ着実に成長していくのだ、と納得させられる圧倒的なリアリティがあり、優しくありたい、賢い大人になりたい、と前向きな気持ちになれる爽やかな感動作です。

感想・レビュー・書評

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  • 一読してびょうびょう泣いて、読書会の課題本だけど私泣いちゃってもう話なんてできそうにないから参加しない方がいいかなとも思ったのだけど、ちょっと落ち着いたら話したいこと、聞きたいことがたくさんで、参加しないわけにはいかなかった。
    参加して良かった!
    ますます好きになった。
    話し合う中で、なぜこの話がここからここまでだったのかも発見できて、ますます今作が好きに。
    久々だったけど、やっぱり他の人と読むのもいいなぁ。

  • 小学校6年生のかさねちゃんは南雲町二班・登校隊の班長さん。
    個性豊かな1年から5年までの班員7名を毎朝しっかり学校まで導くそのカリスマぶりを5年生の副班長の俺・ユッキーの目から描く数か月。
    とっても面白いです~~!(#^.^#)

    まさに!!平成の子どもたちをリアルに描写した物語なんだけど、前作の「アナザー修学旅行」同様、痛くないところが好きでした。
    かさねちゃんは、ちょっと出来すぎ(#^.^#)かな、とも思えたけど、その淡々とした班長さんぶりが、うん、こんな女の子がいたっていいよね、と。

    暴れん坊の1年女子とか、もしかして緘黙症?とも感じられる無口な2年生女子、とてもとても子どもらしい2年と3年の仲良し兄弟、4年のお洒落女子、同じく4年で育児放棄&発達障害かも?と思われるリュウセイ、そして来年からの班長業務が憂鬱でならない俺。それに別の登校隊までもが問題を持ち込み、(そこの班長がかさねちゃんのことが好きみたいで、さりげなく自己アピールをしてくるのが、子どものころから男ってさ!という可笑しさ。)ホント、かさねちゃんは大変なんだよね。

    でも、キリキリすることもなく、愚痴をこぼすこともなく、穏やかに隊のみんなを楽しませたり、ちゃんとして、と規律を促したり。いいなぁ、私、こんな大人になりたいよ、なんて小学生を見習いたくなるのがあはは・・なんだけど。

    登校隊は、毎朝、間宮様という神社の前で手を合わせる。
    そこで吐露されるユッキーの折々の素直な心情がまたいいんだよね。

    たとえば、

    間宮さま、おはようございます。ミサがリュウセイに優しくなったのは遠くに行ったからですか?だったら、ずるいです。オレだって遠くからなら優しいです。だからリュウセイと離れられますように。リュウセイが遠くに行って、優しいオレになれますように。

    とか、

    間宮さま、おはようございます。かさねちゃんはユウヨをあげて今日は言わないかもしれないからオレが言っちゃうと西條は、ほんとサイテーな奴です。ぜったいバチをあててください。

    とか。

    小学生だけじゃなくて、毎朝すれ違う散歩の犬とか、不審な大人とか、登校隊には心配がたくさんあって、でも、楽しいことや町のフォローとかもあって、全部含めて、うん、とっても好きな物語でした。

  • すごい!
    小学生の登校班の朝の登校だけで話が進む。
    おまけに、五年生の副班長ユッキーの視点なので、いろいろ説明不足で、わからないことが多いが、どんどん読めてしまう。
    すばらしいリーダーのかさねちゃん。
    口うるさいけど空気が読めるマユカ。
    にぎやかな太郎次郎兄弟。
    本人にも家庭にも問題がありそうなリュウセイ。
    アリと、カブトムシの幼虫が手をつないでるみたいな一年生のミツと二年生ののんすけ。
    太郎と次郎がどなりながらしゃべる様は声が響いてる感じすらある。
    ずっと朝の登校シーンなので、終盤のお出かけがとても効いている。班のみんなそれぞれのリュウセイへのプレゼントが良かった。 

  • スーパー班長のかさねちゃん率いる南雲町2班の、11月半ばから一月ほどの登校時の様子を、5年生のユッキーの目線から語る。

    「小学生小説というジャンルができそうな予感。」
    という帯の言葉に全力で頷くレベルの、小学生力満載の文章。
    よくもここまで、と思えるくらい、ユッキーの語りも、班員のセリフも、リアルな小学生感に溢れている。
    何より、キャラがいい。みんなの個性が爆発している。
    特に、3年生と2年生の兄弟・太郎と次郎の存在は、文章に勢いと小学生力を5割増しはしている。
    かさねちゃんのことだけは、こんな小6いるかな?とは思ったが、少し異質なかさねちゃんの存在が、作中ではスパイスになっているのだろう。
    かさねちゃんみたいにはなれないと悩んでいるユッキーだが、ユッキーの小学生らしくも、意外と公平な目線には好感が持てた。
    リュウセイのことなんか好きでもなんでもないと思いながらも、西條にリュウセイの悪口を言われてムカつくユッキーと2班の面々。
    リュウセイは、恐らく自閉だか発達障害だかがあるのだろうと思うが、作中にそういった言葉は一切出てこず、2班の面々も親たちも、リュウセイはリュウセイとして受け入れている。その性質を困ったものだと思いながらも、2班の面々がそれを受け入れ、おおよそ理解していることに、温かさを感じる。

    とはいえ、前半は大きな事件があるわけでもないので、途中で少し中だるみ感もあったが、最後の方でバッと山場が来た。ユッキーがリュウセイにあげたものが盛大に伏線を回収していて密かにニヤッとした。

    とても面白かったが、リアルな小学生にとってはどうなのだろうか?小学生時代を懐かしむ大人には面白いが、子どもにも面白いだろうか?
    感想を書くために読み返していたら、

    『自分の前が、直で道じゃん。
     自分の前が、直で世界じゃん。』

    とあって、なんだか感動した。
    これから最高学年を迎える新6年生に、おすすめしたらいいかもしれない。

  • 目の前に一人一人、個性豊かな子どもたちの様子が目に浮かぶようで、電車の中でにやにや笑いながら読んだ。
    「通学班は女尊男卑」って言葉に「そのとーり!」と心の中で叫んでから「そうか、子ども達だってこんなことわかってたんだな」って思った。
    他の班でもてあまされてしまった子や、もともとなかなか癖のある子たちが揃っているこの班を、班長のかさねちゃんが上手にまとめている。まとめている、というか、かさねちゃんは一人一人のメンバーのことがすごい好きなんじゃないかな。他のメンバーもかさねちゃんのことが大好きなように。そして、かさねちゃんという人を通してその向こうにいる「同じ通学班」の子たちを「意識しない仲間意識」で想っているんじゃないかなと。
    他の班のヤツにリュウセイの悪口をいわれるのはむかつくけど、俺たちがいうのはいいんだ、的な。いや、いじめの構図とかそういうのではなくて、俺たちがリュウセイやほかのメンバーに色々いっても、それには「愛情」があるのだ。本人たちはもちろん「愛情」だとか「仲間意識」だとかそういった形にはしないけど。

    世の中の、大変な下級生たちを連れて歩いている「小学生班長」にぜひささげたい。

  • 目の前に一人一人、個性豊かな子どもたちの様子が目に浮かぶようで、電車の中でにやにや笑いながら読んだ。
    「通学班は女尊男卑」って言葉に「そのとーり!」と心の中で叫んでから「そうか、子ども達だってこんなことわかってたんだな」って思った。
    他の班でもてあまされてしまった子や、もともとなかなか癖のある子たちが揃っているこの班を、班長のかさねちゃんが上手にまとめている。まとめている、というか、かさねちゃんは一人一人のメンバーのことがすごい好きなんじゃないかな。他のメンバーもかさねちゃんのことが大好きなように。そして、かさねちゃんという人を通してその向こうにいる「同じ通学班」の子たちを「意識しない仲間意識」で想っているんじゃないかなと。
    他の班のヤツにリュウセイの悪口をいわれるのはむかつくけど、俺たちがいうのはいいんだ、的な。いや、いじめの構図とかそういうのではなくて、俺たちがリュウセイやほかのメンバーに色々いっても、それには「愛情」があるのだ。本人たちはもちろん「愛情」だとか「仲間意識」だとかそういった形にはしないけど。

    世の中の、大変な下級生たちを連れて歩いている「小学生班長」にぜひささげたい。

  • おもしろかった
    「ちゃんとして」が魔法のことばだけが引っ掛かる。何をどうすればちゃんとしたことになるのかわかるのはユッキーとマユカだけだと思うから。
    かさねちゃんのスクールカーストが高いのは彼女が容姿がよくてコミュニケーション能力が高いからだ。本を読んで物知りだからじゃない。

    そういう子が生きにくい子たちに心を添わせる姿が素敵なファンタジーになっている。

    新学期、ユッキーが班長を引き継ぐがかさねちゃんは中学一年生だ。最高学年として皆を引っ張っていってたかさねちゃんが先輩の顔色をうかがう一年生になる。そこのところも読んでみたい。

  • 早く読めばよかった!よかったです。
    タイトルはかさねちゃんだけど、これはユッキーの話でありリュウセイの話でもある。
    小学生のころって独特の気だるさがあり時間の流れが遅かったり、非日常のなにかを怖がったりうざかったり、かと思うと爆笑必死なこともあったりと濃密だった。毎日の登校時間は分数にすれば短い時間だけど、そういうこどもの時の流れの代表格かもしれない。それをゆるゆるとした雰囲気で描ける作者はすごいと思う。

  • 登校班で学校に行く間の子供たちのやりとりを、副班長のユッキーの目線で書かれています。
    とにかく面白い。

    題名のかさねちゃんは班長で、クセのある班の下級生にとても信頼されています。ユッキーは、来年かさねちゃんが卒業した後、この班をまとめる自信がありません。

    学校に行くまでの子どもたちの会話には、その子の背景、家庭が見えてきます。突拍子もない行動に出てしまう裏には、抱えている家族の問題があったりするのです。

    登校班のメンバーは、個性豊か。
    ミツやリュウセイは、すぐに行動に出てしまうし、のんたんは、異常なほどに綺麗好き。太郎、次郎兄弟は、これぞ男子っていうくらい、子どもぽい。それに比べて、4年生のマユカはませている。

    そんな、下級生のようすを、冷静に、優しく、時には凛と接するかさねちゃんは、ユッキーじゃなくても、憧れてしまいます。

    かさねちゃんに会ってみたいと、つくづく思うのでした。

  • 現代の子供達ってこんなに語彙が豊富だったり感性が豊かだったりするのだろうか。自分自身が小学生の頃ボーっとしてたから、そう思う。まあ今の情報量の多さや取り入れやすさも影響しているのかなあ。

    学年の差や家庭の差、親の関わり具合の差、成長度合い、発達度合い、全てが混ぜこぜになる通学時間の一瞬のお話しだけど、そしてこの状態が大人世界でも通じるようなそんな印象

    自分のこと、他人のこと。豊かな時代だけに見えてくるものが多く、複雑だ。それでも関わりを捨てずに考え続けることが必要だと思った。

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著者プロフィール

有沢佳映…・1974年生まれ、昭和女子大学短期大学部卒業。群馬県在住。『アナザー修学旅行』で第50回講談社児童文学新人賞を受賞。『かさねちゃんにきいてみな』で第24回椋鳩十児童文学賞、第47回日本児童文学者協会新人賞受賞。

「2020年 『お庭番デイズ  逢沢学園女子寮日記 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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