四月七日の桜 戦艦「大和」と伊藤整一の最期

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感想 : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062183277

作品紹介・あらすじ

山本五十六に最も信頼された男が家族を思うとき――司令長官として「大和」とともに沈んだ父。沖縄へ出撃した特攻機で散った息子。二人を追うように娘を残して逝った母。昭和20年4月7日から翌年9月までに、悲劇が立てつづけに伊藤家を襲う。ただし、伊藤が植えた桜は、今もその命日を忘れずに満開となる。
新資料多数掲載。山本五十六から伊藤に宛てた未公開書簡・色紙、アメリカ国立公文書館から戦艦「大和」から発信された無線暗号の解読資料、戦死した父・兄から家族への手紙など。
海軍大将・伊藤整一は、沖縄へ向かう際、撃沈された戦艦「大和」を率いる司令長官として、艦とともに海に没した知米派軍人として知られる。ちなみに映画『男たちの大和』では、渡哲也が演じた。伊藤を描いた書籍としては、これまで「大和」に乗艦し一命をとりとめた作家・吉田満の『提督伊藤整一の生涯』があが、本書は、伊藤の家族愛、その独断により若者たち多数の命を救った面を中心に焦点をあてる。
昭和16年9月、開戦が不可避となったとき、伊藤は山本五十六ら知米派の期待を受け、作戦の意思決定機関・軍令部のナンバー2次長につく。しかし、おのれの考えと逆に海軍は破滅への道を突き進む。異例の3年4ヵ月次長の職にあった伊藤は、日本の敗戦を意識し、死に場所を求め「大和」と共に前線に立つ。その死は、4月7日だった。
父の影響から海軍士官学校へ進み、飛行兵となった息子・叡も、「大和」出撃時に上空から援護する部隊に属していたが、その沈没後、4月27日に沖縄への特攻で命を落とす。5月には東京大空襲で伊藤家が全焼する。そしてその後には、母にも悲劇が待ちうけて・・・

感想・レビュー・書評

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  • 無謀とも言える大和の最後の出撃に当り、第二艦隊司令官伊藤整一は二つの決断を下していた。一つは出航にあたり少尉候補生73名に退艦命令を下したこと、もう一つは連合艦隊司令部から作戦中止判断の一任を得ていたことである。

    伊藤が志願して第二艦隊司令部という現場に出たのはレイテ沖海戦の後、日本海軍が水上戦力を失った後だから、開戦以来軍令部の要職にあり戦争指導に当たってきた身として、忸怩たる思いがあったのは事実だろう。そこに下された特攻作戦の命令。普通の作戦を立案できる状況ではないことは熟知していたはずだから、それなりに覚悟はあり、捨てざるを得ないものと守るべきものの区別もついていたのかもしれない。

    まだ坊津沖に達したばかりというのに米軍の大空襲を浴びて大和は戦闘不能に陥り、天号作戦の続行は不可能になる。 そして大和も軽巡洋艦矢矧も沈没し、残された駆逐艦五隻は生存者を収容の上、作戦続行を断念して佐世保へ向かう。伊藤が取り付けておいた作戦中止一任が活きたのだ、とするのが筆者の立場。しかし16時39分に作戦中止命令が発せられた時点で伊藤は既に艦と共に海中に沈み、他の司令部要員もまだ海上にあったことを考えると、作戦中止命令は連合艦隊司令部によるものと考えるのが普通かもしれない。

    大和の沈没から時間が経てば経つほど、後世の人々は大和の憤死を美化しようとする。

  • 伊藤整一という戦艦大和とともに海に沈んだ軍人、その家族を書いたものである。

  • この本は、大和にまつわる話だとか戦術戦略的な話ではなく、伊藤整一の半生、特に家族愛にまつわるエピソードに重きをおいた本だと思います。(挿入される戦史的な話は、あくまで彼の人柄を描くための切り口程度のものかと)
    ご息女たちへのインタビューを通して描かれる夫妻の間の結びつきはとても感動的で、特に遺書を読みつつなきくずれるちとせ夫人の言葉には涙を禁じえませんでした。
    やや著作者の主観が強めかもしれませんが、かなり細かいところまで書かれているのではないでしょうか。

    WW2関連に興味を持ち始めたばかりの人間の書評ですのでご容赦を。

  • 連合艦隊司令部からの戦艦大和の沖縄特攻命令により、最後の戦艦部隊総員六千有余のうち多くの兵が犬死同然に死んでいったのである。米軍による第八波におよぶ攻撃を受け甚大な損害を蒙ったことで、第二艦隊司令長官伊藤整一は特攻作戦中止を決断した。その決断が約千七百名余の命を救うことができたのである。 作戦遂行が不可能となったときの作戦中止の裁量を伊藤自身が行えるように、草鹿参謀長から言質を取っていたのである。先を見据えた行動により、かけがえのない命がわずかながらも救われたのである。

  • 愛媛新聞読書欄

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著者プロフィール

ノンフィクション作家。
1941年熊本県生まれ。66年九州大学卒業後、NHK入局。おもに現代史を中心にドキュメンタリー番組を手がける。『戒厳指令「交信ヲ傍受セヨ」二・二六事件秘録』で、日本新聞協会賞・文化庁芸術祭優秀賞などを受賞。大正大学教授を経て、執筆に専念。『満州国皇帝の秘録―ラストエンペラーと「厳秘会見録」の謎』で、毎日出版文化賞・吉田茂賞を、『トレイシー―日本兵捕虜秘密尋問所』で、講談社ノンフィクション賞を受賞。他の著書『盗聴二・二六事件』『最後の戦犯死刑囚』などがある

「2013年 『四月七日の桜 戦艦「大和」と伊藤整一の最期』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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