あなたにだけわかること

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 241
感想 : 51
  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062183383

作品紹介・あらすじ

直木賞受賞作『切羽へ』をはじめ、大人の恋愛と一筋縄ではいかない関係を描いて独自の魅惑的な小説世界を展開する著者が、男と女の「愛ではないけれど、愛よりもかけがえのない関係」を描く長編小説。
桐生駿と野田夏が初めて出会ったのは共に5歳のとき。夏の父に恋をした駿の母が、密会のため息子を連れて夏の家に通ったからだ。親同士の情事の間、それとは知らず階下で待っていた幼い二人は、やがて親たちの関係を知る。以来、別々の人生を歩み始めた二人は、互いに「できれば思い出したくない相手」と感じながらも、なぜか人生の曲がり角ごとに出会ってしまう。まるで、互いの恋愛の証言者のように・・・。それぞれおろかな恋愛を重ねながら、人生における愛のどうしようもなさを受け入れていく男女の関係を描く長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • お得意の不倫ものだけれど、今回はちょっと趣向が違った。
    主役は不倫をしている男女それぞれの子供、駿と夏。
    大人が秘密の時間を持つ間一緒に過ごした二人。
    ほんの小さな子供だった二人は人生の時折ふと交わる。
    それは愛なんかじゃない、情でもない。
    共犯者に近いと思う。
    そんな二人の関係性が妙にリアルだった。

    親のしていたことが何だったのか理解する年頃になっても、親を責めたり反抗したりしない二人の姿が痛々しかった。
    どうしようもない親をじっと見てきた二人は、どうしようもない大人になる。
    人生の道々で時折交わる二人は因縁から抜け出せないようにも見えるし、それが必然のようにも思える。

    いい人ばかり出てくる小説はどうも好きになれない。
    空々しくて。
    むしろこの作品のように欠陥を抱えているけれどなんだか憎めない人達にどうしても共感してしまう。
    よくよく考えてみるとまともな人が誰一人出てこない。
    それぞれの親も、恋人も、その子供たちも。
    だめな人間だからこそ愛おしいんだと思う。

    井上さんの作品は好き嫌いが分かれそうであまり勧められないが、この小説はよかった。お勧めできるかも。
    独特のざらざらした感覚を残しつつ、サラッと読める。
    そして何といっても最後の最後が切なくて。
    余韻がじわーっと残る作品だった。

  • それぞれの父と母の逢瀬に連れていかれていた幼い少女と少年。
    大人になった2人は、なるべくなら思い出したくない関係、でもときどき思い出してしまう関係になった。

    夏と駿、2人の異常とも言える関係、そこに絡めた2人の人生が、とても興味深く、好みの作品でした。

    2人が成長していく過程で出会った人たちとの繋がり、それぞれへの思い、根底あるのは親の存在。
    幼少期の親の影響力の強さを思い知らされる思いでした。

    最後まで一気読み。
    面白かったです。

  • なんかふわっと読み始めてふわっと終わってしまって、夏と駿が誰の子なのかよく分かんないままだった。
    でも夏と駿の子の代まで話が続くのって、珍しい気がした。
    ぐちゃっとしたひとかたまりの人生たちを見たな、という感じかな。

  • 親同士が不倫関係だった駿と夏の終わらない関係。

    5歳の頃、駿と夏は、駿の母に手を引かれて川辺に行ったこと。
    駿の母と夏の父が2階で交わっている間、彼らは1階で待っていたこと。

    高校生で互いに出来た恋人と、それぞれ一緒にいるときに偶然出くわしたこと。
    彼氏と別れる口実に、駿を利用した夏。

    互いの親の関係が終わっても、駿の母は、駿が医大に落ちたのは夏とその父親のせいだと恨んでいること。

    駿の母が亡くなる前に、夏と夏の父に会いに来てもらったこと。

    手に入れたはずの夫が女を作って、離婚した夏。

    病気が見つかったのをきっかけに離婚を言い渡されている駿。

    5歳から、60歳くらいまでの駿と夏のそれぞれの人生。
    それぞれの人生を歩んでいながらも、ふとしたときに思い出す互いの存在。

  • タイトルの意味を考えながら読んだけど
    結局 あの時を共有してしまった夏と駿にしか
    わからないということなんだろうな。。

    「愛ではないけれど愛よりもかけがえのない関係」

    すごくしっくりくる言葉だと思ったし
    人生の節目にお互いの生き方を確認し合うようにこの先も二人の関係性が続くといいなと願った

    間違いのない人生なんてないよ。。きっと。。

    いろんな人の人生の終わり方をみていると
    何故か不倫のすべてを否定できなくて
    自分は最期に誰を想うのかとふと考えてしまった

    人生の節目にまた再読したいです

  • 展開としては、まあ、あれですが、そんなことはあまり関係ないのです。小川洋子さんの作品の中に「作家の声が聞こえる」という話がありましたけれど、まさに井上荒野さんの文章は声、ため息、息遣いが感じられるのです。ずっといっしょにおしゃべりしていたような。
     不倫関係の互いの息子と娘という駿と夏。一度も男女の関係になったことはなく、親の身勝手さに翻弄された仲という関係です。濡れ場を描かずにこれを書けるのってすごいです。映像化したらすべておじゃんになってしまうから、井上さんはこのままそっとしておいてください。

  • すごくすごく井上荒野らしい作品で、愛に溺れなくっちゃ生きられないダメな男と、同じようにダメな女が、母だったり父だったり、自分だったりして。まっすぐすぎて歪んでしまうジレンマや、のんびりと描かれているおかしな日常や、荒んだ景色がなぜか懐かしく感じるところや、それでも憎めない人々や関係性が、溢れすぎていて、じんわりと切ない。

  • *密会を重ねる父母の情事のあいだ、それと知らず共に過ごした幼い駿と夏。以来、思い出したくない記憶を封印するも、なぜか人生の曲がり角ごとに出会ってしまう。まるで、互いのおろかな恋愛の証言者のように…。男と女の“恋愛よりも深い縁”を描く長篇小説*
    駿と夏、それぞれの数年ごとの人生が交互に書かれているので、飛ばされた数年の経緯を想像する楽しみがあった。”恋愛より深い縁”はあまり感じられなかったけど。薄幸感漂う、つらつらと不思議な作品。

  • 何人もの人生が一冊につまってしまうのが小説。
    愛の記憶というには、動物的で時に嫌悪感を感じずにはいられない。
    性ほど生々しいものはないが、人の核になりうる。

    人が亡くなったら、その人を巡った感情はどこに消えていくのだろう。人にはすすめないけど、好きな本です。

  • 2016.5.28 読了


    なんというか、淡々とした話だった。

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著者プロフィール

1961年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。89年「わたしのヌレエフ」で第1回フェミナ賞を受賞しデビュー。2004年『潤一』で第11回島清恋愛文学賞を受賞。08年『切羽へ』で第139回直木賞を受賞。11年『そこへ行くな』で第6回中央公論文芸賞を受賞。16年『赤へ』(祥伝社刊)で第29回柴田錬三郎賞を受賞。18年『その話は今日はやめておきましょう』で第35回織田作之助賞を受賞。

「2020年 『ママナラナイ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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