島はぼくらと

著者 :
制作 : 五十嵐 大介 
  • 講談社
4.02
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本棚登録 : 3757
レビュー : 589
  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062183659

感想・レビュー・書評

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  •  図書館より。
     本土までフェリーで20分。人口約3000人の離島に暮らす四人の高校生。彼らの視点から島の人間模様と成長を描いた小説。

     冒頭のフェリー乗り場と海の描写の美しさに心掴まれました。そこを読んだだけで、「あ、これはいい本だ」と自分の中で確信し、結果その通りになりました。

     朱里、衣花、源樹、新、四人はフェリーで本土の高校に通っていますが、高校卒業後島を出たり、島に残ったり、とバラバラに。同級生が自分を入れて四人しかいない、しかもこの四人は小さいころからずっと一緒だったことを考えると、
    その関係の深さ、そして来たるべき別れの切なさがしっかりと書き込まれていて非常によかったです。衣花が感情を吐露する場面は心がギュッとつかまれて、ウルっときました。

     そうした青春小説の面だけでなく、島の人間関係もなかなか深くて面白いです。四人が暮らす「冴島」は村長の積極的な活動やコミュニティデザイナーのヨシノのおかげでIターン、特にシングルマザーが多く、また島独自の産業も成功を収めている、という島なのです。

     島にやってきたシングルマザーの物語、親子関係、島の事業をめぐっての生臭い話、またヨシノと島の住民の関係性など読みどころはとにかく多い! 

     前半のエピソードが後半に思わぬ形でつながるのはミステリ的でもあり、そのつながりが明らかになると人の優しさがとても感じられる展開になっています。ホントにいろいろな側面からおススメできる小説だと思います!

     僕がフォローしている方のレビューで『辻村さんは「白辻村」と「黒辻村」がある、そして自分は「白辻村」が好きだ』と書いてらっしゃる方がいたのですが、この本を読んでなるほど!と思いました。

     時に暗い場面、切ない場面もありますが、そうした場面をも優しく包み込んでくれます。冒頭のフェリー乗り場の描写で『目が痛いほどの銀色だ』とあるのですがこの本を読み終えたとき、自分の心がそれくらいまぶしい光で包まれた小説でした。

    2014年本屋大賞3位

  • すごく良かった。色々な部分が全部。

    母子手帳の件と母親の覚悟の件は、この本を読むよりも前に、辻村氏が新聞に書いていらしたコラムを読んで知っていた。
    本書を書くにあたって取材した実際の島のことだったと思う。
    その覚悟は母親としてとても切ない。
    でも、親にも子にも(早くに離ればなれになる)その覚悟があるからこそ、島の子たちはしっかりしていて立派だと思う。
    それに比べて、うちのダラダラした大学生2人とその母である私は、これじゃあいかんなあと思ってはみるけど、もう手遅れ。(^_^;)

    辻村氏の著書はこれで3冊目だが、私はたまたま独立した作品を3つ読んでいたことになるらしい。
    今後は、この順で読むと良いと言われているものを参考にして読む予定。

  • 辻村深月さんの作風に、少し特殊な印象を抱いていた私は、この本を読んで、『辻村さんって、こういう作品も(爽やかな高校生の青春ものだったり、離島で生活する人々の暮らしだったり…)書くんだ~』と思った。ちょっと意外。

    衣花、朱里、新、源樹、4人みんなキャラは違うけど、お互いを認めあっている関係が微笑ましく映る。若さが眩しい。
    冴島に暮らす人々それぞれの純粋な想いが詰まっていて、好き! (*^_^*)
    赤羽環をさらっと登場させているのも洒落っ気があって、読者を楽しませる。良かった。

  • 辻村深月さんの、直木賞受賞後・第一作。
    瀬戸内海にある架空の島「冴島」を舞台に、人々の交流や軋轢を、島で育った幼なじみ四人を軸に描いた、書き下ろし長編小説です。

    人口三千人弱の冴島は、島外から積極的に人を受け入れ仕事を世話するなどの施策をしており、活気のある島という印象。
    けれど物語が進むにつれ、島の住人と移住して来た人との埋められない距離感、移住して来た人同士での軋轢、狭いコミュニティでの諍いや覇権争いなど、島ならではの様々な事柄が浮き彫りになってくる。

    中でも個人的に一番印象に残ったのは、島の母親達が「子供が島を巣立つこと前提の子育てをしている」ということ。
    自分は「子供」の立場でしかこの辺りを考えたことがなく、大きくなるにつれ親元を自立したいと思うのは当然のことだと思ってきましたが、それは親の立場からすると、子供が離れて行くことを覚悟しながら育てるということ。
    ちょっと視点を変えてみれば当たり前のことなんだけど、私はこの事実にとても衝撃を受けました。
    しかも冴島には中学までしかない為、進路によっては高校入学と同時に島を出る必要があり、子供が巣立つ時期が割と明確かつ早い。
    全て飲み込んだうえで、限られた時間の中でじっくり愛情を注いで子育てをするというお母さん達の描写にはじんわり感動しました。
    そういう母親視点が盛り込まれたことの要因は、作者の辻村先生がご出産されてお母さんになられたことが大きいのかな、と思ったり。

    島に伝わるという幻の脚本の所在や、移住して来た人々の過去、幼なじみ四人の淡い恋愛模様なども絡んだ物語が、最後にはとても綺麗に収束するところが、さすが辻村さん。
    他の方のレビューにもありますが、初期の頃の作品を思い起こさせる青春小説でした。
    幼なじみ四人が、島を出る子と残る子とでいずれバラバラになってしまうこと。
    本当は離れたくないけれど、お互いの進路や夢の邪魔をしたくなくて、寂しい気持ちをなかなか伝えられないこと。
    自分の学生時代を思い出し、思わず涙が零れてしまいました。

    そしてお馴染みの、他作品とのリンクもあり。
    リンクだとわからなくても、そもそもリンクがなかったとしても、面白いお話だと思いますが、こういうサービスはやっぱり嬉しいです。
    今回は私の大好きなキャラが出て来て、しかも相変わらずな態度で嬉しかったのですが、そのキャラが登場した背景や今回のお話のキャラとの繋がりがとても嬉しかったです。
    こういう繋がりを見せられてしまうと、ずっと追い掛けたくなってしまう。
    本当に大好きです。

  • 美しいなあ。。。と何度も思いながら読みました。
    舞台は、瀬戸内海に浮かぶ冴島。
    母と祖母の女三代で暮らす、伸びやかな少女、朱里。
    美人で気が強く、どこか醒めた網元の一人娘、衣花。
    父のロハスに巻き込まれ、東京から連れてこられた源樹。
    熱心な演劇部員なのに、思うように練習に出られない新。
    島でたった4人の仲間。強い結びつきが強いです。

    同じ日本でありながら、まるで違う環境の冴島。
    中学を卒業したら、高校は島の外に通うしかない。
    さらに高校を卒業後は、島に残るか、島を出るか選ばないといけない。
    別れは、どんな世代にとっても辛いものですが、離れても繋がっている何かを拠り所にすることはできるのでしょうね。

    冴島は、Iターンの人、特にはシングルマザーを積極的に受け入れる施策をとっていますが、すばらしいセーフティネットだと思います。
    調べてみたら、島根県邑南町が似たような取り組みをしているんですね。シングルマザーは貧困リスクが高いし、生きづらさを抱きやすいから、責めるのではなく、受け入れる社会があってもいいと思います。
    ただ、夫の浮気で離婚してシングルマザーになった人と、自分が不倫してシングルマザーになった人では軋轢が生じてしまうのも容易に想像できるし、難しいものですね。。

    全体的に重苦しさはなく、むしろ希望に満ちた若者たちのキラキラした輝きが胸に残るようです。若者にのみ焦点を当てず、大人をしっかり描いているのも印象的でした。
    何事もいい面があり、悪い面があり、その背景には歴史がある。そのことを尊ぶ姿勢が大切ですよね。
    それから、作中に出てくる幻の脚本、すごく素敵ですよね。なんというか、全体から漂う祈りにも似た希望こそが、この本の美しさの正体なんでしょうね。
    多くの世代に読まれて欲しい1冊でした。

  • さすが今年の本屋大賞のノミネート作。
    2位だっけ?3位だっけ??
    辻村さんの作品って、割と学生と田舎の町って言うのが舞台になるけど、今回は冴島(漢字あってるかな?)という瀬戸内海の島が舞台。
    ドロドロした感がこの話はそんなになく、かと言って凄い爽やかなのかというとそうでもない。
    だからこそ臨場感というか現実味のある日々の青春という感じが伝わってきた。
    そして思わず最後は電車の中にも関わらずうるうるしてしまう素敵な気持ちのいい終わり方だった。

  • 直木賞受賞後、第1作となるこの本。
    本屋大賞にもノミネートされていました。
    瀬戸内海の冴島(架空の島)の4人の高校生はフェリーで島外の高校に通っている。
    島で生まれ育った人々、Uターンした人々、Iターンの人々。
    島で暮らすということ・・・
    ラストは感動的です。

  • 瀬戸内海に浮かぶ島・冴島。
    この火山の島の子供たちのほとんどは15歳になると島を出ます。母親達はそれを覚悟し、島特有のオリジナル性のある母子手帳に成長期をした為、とても短い子育てと子供といられる時間を持っています。

    また島の子供たちも、早くから親離れを意識し、幼馴染との貴重な時間を過ごします。都会育ちの自分には分からないけれど、限られた時間をとても大切に密に生きているように見えて羨ましくも思いました。別れが近づくと時はゆっくりと流れるような気がします。滅多に会う事のなくなった遠くに暮らす友人と過ごす時間がとても惜しくてたまらないように・・。

    冴島の4人の同級生は、1人は網元の娘で島から出られない使命があり、他の3人はいづれ出て行くであろう立場。最後には別れがあって、エピローグではその後の島での再会があり、じんわりと目頭が熱くなりました。他にもIターンの母子家庭や外から入ってきた人たちとの確執や、島での諸問題もリアルに盛り込まれています。そうしたことを勉強できたし、その問題と向き合っている行政や元々の島住民の考え方が、物語の終わりに向って納得できました。

    またもう一つ、島にある幻の芝居という伏線があり、お芝居が人に与える影響というところにも感動しました。

    ゆったりと温かみが心に浸みる、そんな辻村さんらしい作品でした。

  • 辻村深月、本当に大衆的に、きれいになったなあ!
    もちろん良い意味で!
    ああ、辻村さんここまでこれたのね…
    と、あの頃あの辻村さん特有の、
    暗くて痛くてそれでも絶望から這い上がる、
    沢山の登場人物たちに助けられた私は思います。

    瀬戸内海のきらきら光る眩しい海のように、
    若くて瑞々しくて希望にあふれたお話でした。
    きれいごとだけではいかないけれど、
    そういうものにもなるべく明るい方を向いて、
    色んなものをひっくるめて強くなれる。
    若いとはそういうことだ。

    そしてそして、環ぃぃぃいいいい‼
    もう出てきた瞬間叫んじゃったよ!
    ありがとう辻村さん!環元気だったのねーー!!
    ヨシノちゃんも他作品で出てきそうだな♪
    楽しみ!
    こんな言い方をするとすごく傲慢だけど、
    あの頃、あのいちばん辛かった頃に、
    私と変わらない年齢で苦しんでいた環たちが、
    きちんと大人になって、きちんと生きていて、
    私も今やっとそうなれているから、
    一緒に戦って、生きてきたような感覚になる。
    ありがとう。
    何度でも言いたい、辻村さんには。

  • ただただ、良かった。
    毎日読むのが楽しくて、最後はたくさん泣いた小説。

    瀬戸内の架空の島『冴島』を舞台にしていて
    島の同級生四人の友情や恋愛だけでなく、
    「島は」とタイトルになっているだけあって、島について書かれていました。
    島がなければ出てこない話がすごくすごく良かった。
    お医者がいないとか、網元とか、母子手帳の話とか。
    わたしもこの夏に瀬戸内の直島と小豆島に行ったので、なんとなく島の雰囲気を自分のなかで重なるところもたくさんありました。
    また瀬戸内遊びにいきたいなと思いました。
    優しい人になりたいとすごく思える小説。よかったあ

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著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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