島はぼくらと

著者 :
制作 : 五十嵐 大介 
  • 講談社
4.02
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本棚登録 : 3758
レビュー : 589
  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062183659

感想・レビュー・書評

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  • 直木賞受賞後の作品。
    瀬戸内海の小さな島に住む高校生4人を中心にした話。
    島ならではの問題もあるけど、基本的にはさわやかに読めました。

    瀬戸内海に浮かぶ人口3千人の小さな島、冴島。
    朱里、衣花、新、源樹の4人は、フェリーで本土の高校へ通っている。
    フェリーの時間の関係で、部活は出来ないので、帰るのはいつも一緒。
    朱里の母は、食品加工会社の社長。といっても、公民館に集まって仕事のある季節だけ皆で作業する会社で、くじ引きでトップになったのだ。
    朱里は見た目にはあまり力を入れていない。親友の衣花が誰が見ても群を抜いた美少女で、いつも彼女が目の前にいたからだ。
    クールな衣花は地元で一目置かれる網元の家の跡取りだが、そのために島の外へ出ることがまず出来ない運命も背負っていた。

    リゾートホテルを親が経営する源樹は、Iターン組。とはいえ、源樹は島育ちなのだが。
    やや派手な雰囲気の源樹に比べると平凡に見える新は、実は文才がある。
    フェリーに乗って露崎という脚本家の男性が現れ、島を引っ掻き回しそうになる。
    幻の脚本を探しているというのだ‥
    4人は、彼を追い出そうと計画し‥?

    この件だけではなく、島での揉め事と高校生たちの成長がかなりゆっくりと描かれます。
    気持ちよさそうな島の風景と、町おこしを目指す町長、地域活性デザイナーとの関わりなど、その土地ならではの事情が展開します。
    悪気のない子供たちの感情がさわやかで、広い対象に読んでもらうことを意識した作品だと思いました。
    エピローグで大人になった衣花が幸せそうで、明るい未来を感じさせる結末。
    心地よい読後感でした。

  • 辻村さん久しぶりの青春小説♪
    瀬戸内海の小さな島「冴島」で育ち、島外の高校に通う4人の高校生。
    島に残るという「幻の脚本」を縦軸に、それぞれの視点で島での日常、
    島と自分たちの未来が綴られていく。

    辻村さんと田舎といえば、暗さと閉塞感がつきものという感じがしていたけれど、
    読後感も爽やかで、瀬戸内海がきらめく島で、伸びやかに成長する高校生というイメージ。
    ここに綴られる冴島の生活にも、胡散臭い霧崎ハイジや、Iターンの悩み、
    村長の意外な裏の顔…など、一筋縄ではいかないこともあったりして、
    多少の息苦しさはあるけれど、Iターンやシングルマザーを受け入れていく
    島の懐の広さや島民の柔軟性とか、島の前向きな要素がふんだんで。
    なにより、高校生たちが島のこと、自分の将来のこと、真剣に考えているのが
    いいなぁと思った(オバサン的な意見?!)。

    最近、色々な出版社で本を出すようになったからか、他の作品とのリンクも
    以前と比べると減っていたけれど、この作品では「おおっ、こんなところで!」という
    再会があってうれしかった♪
    パクってデビューした霧崎ハイジにはインパクト強いわりに、それで終わり?
    というところで違和感だったけど(笑)。
    朱里たちが島を出てからの生活や交流なんかも知りたいし、スピンオフでいいから続編が出たらいいのになぁ。

    • まっきーさん
      マリモさん、こんばんは。

      いつも花丸ありがとうございます(o^∀^)
      辻村深月さん。。。いつも途中で挫折しちゃって。。。
      それの繰り返しで...
      マリモさん、こんばんは。

      いつも花丸ありがとうございます(o^∀^)
      辻村深月さん。。。いつも途中で挫折しちゃって。。。
      それの繰り返しで苦手意識がしみついてしまって・・・(-_-;)

      マリモさんのレビュー見て、「なんかいいかも!」と感じて、今日図書館で予約しました♪

      40人くらい待ちだけど、楽しみです。
      素敵なレビューありがとうございました(*・▽・*)
      2013/10/10
    • マリモさん
      まっき~さん♪
      こちらこそいつもありがとうございます!
      私のつたないレビューで予約していただけるなんて嬉しいです。
      辻村さんの長編は、最初の...
      まっき~さん♪
      こちらこそいつもありがとうございます!
      私のつたないレビューで予約していただけるなんて嬉しいです。
      辻村さんの長編は、最初の方がとっつきにくいときありますよね。
      この本は青春小説なので、最初から読みやすかったですよ~。
      まっき~さんのレビュー楽しみにしていますね♪^^
      2013/10/13
  • 舞台は瀬戸内海に浮かぶ冴島。
    本土までフェリーで20分のところにある。

    この島に住む4人の高校生たち。
    明るく、素直で、人が寂しさや辛さを抱えているのをほっておけない朱里。
    美人で、少し冷めたところのある、衣花。網本の一人娘であるが故、島から出ることはできないとあきらめにも似た気持ちを抱えている。
    子どもの頃に移り住んできた、少々不良っぽい、源樹。
    演劇に対する深い思いを持ちながら、フェリーの時間の制約のために部活動に打ち込むことができない新。


    島と本土とを隔てる海によって、島の生活は一見穏やかに守られているように見える。けれど海は、高校を卒業してこの島を出て行った者と残った者との間をその距離以上に隔てているようだ。

    母親が経験した友人との思わぬ別れによる寂しさを、祖母には味わってほしくないと朱里は奔走する。人が抱える辛さを思いやることができる彼女は、本土における別れ以上に、島から出ていく人との心理的な距離を敏感に感じている。島を取り巻く自然環境や特有の生活環境が高校生の彼らを少しばかり早く大人にさせるようだ。


    海がなくても、距離が遠くなくても、会わずにいる人が何人もいる。年賀状に書かれたコメントへの返事を次の年の年賀状に書いたりして。

    『会いたいね』ではなく、せめて今年は『会おうよ!』と書いてみようかなあ。

  • いままで辻村さんの作品では、地方にうまれた子が、その狭い場所から抜け出せない葛藤を描いていたりしたんだけど、今回の作品の高校生たちは、それを苦しみではなくてとてもあかるく前向きにとらえてて、そこからさらっと解放されててちょっと驚いた。
    新しい世代ってことかもしれないなあ、と。
    現実的に、地方在住でもネットがあるからわりと仕事はできたりするし。
    そんで、地方を活性化させるためのコーディネーターもキーパーソン的に配置されてて、それも地方の新しいあり方を提示してて面白かった。

    都会が華やかな勝ち組で、地方がさえない負け組みたいな価値観はもういまや古いんだろうなあ。

    あと、辻村さんって人と人の関係性を描くのがすごくうまくて、今までは、どっちかというと狭くて濃い関係の中でみえてくる、人間のどうしようもないいやーな部分を絶妙に描いてたりしたんだけど、今回は逆に、わりと閉ざされた人間関係の中なのに、それがしがらみではなく、むしろ強い結びつきっていう好ましいものとして描かれてるのも、いい意味で意外でした。
    ちょっといやな奴でもむしろそのマイナス部分までおおらかに包み込んでいて、心底いやな奴ってのは出てきません。

    ので、島の海のさわやかな雰囲気ともあいまって、どっかすこーんと突き抜けたようなあかるさがあり、希望にあふれた作品になっていました。

    「スロウハイツの神様」のあの人も登場したりする、ちょっとうれしいサプライズも。

  • 美しいなあ。。。と何度も思いながら読みました。
    舞台は、瀬戸内海に浮かぶ冴島。
    母と祖母の女三代で暮らす、伸びやかな少女、朱里。
    美人で気が強く、どこか醒めた網元の一人娘、衣花。
    父のロハスに巻き込まれ、東京から連れてこられた源樹。
    熱心な演劇部員なのに、思うように練習に出られない新。
    島でたった4人の仲間。強い結びつきが強いです。

    同じ日本でありながら、まるで違う環境の冴島。
    中学を卒業したら、高校は島の外に通うしかない。
    さらに高校を卒業後は、島に残るか、島を出るか選ばないといけない。
    別れは、どんな世代にとっても辛いものですが、離れても繋がっている何かを拠り所にすることはできるのでしょうね。

    冴島は、Iターンの人、特にはシングルマザーを積極的に受け入れる施策をとっていますが、すばらしいセーフティネットだと思います。
    調べてみたら、島根県邑南町が似たような取り組みをしているんですね。シングルマザーは貧困リスクが高いし、生きづらさを抱きやすいから、責めるのではなく、受け入れる社会があってもいいと思います。
    ただ、夫の浮気で離婚してシングルマザーになった人と、自分が不倫してシングルマザーになった人では軋轢が生じてしまうのも容易に想像できるし、難しいものですね。。

    全体的に重苦しさはなく、むしろ希望に満ちた若者たちのキラキラした輝きが胸に残るようです。若者にのみ焦点を当てず、大人をしっかり描いているのも印象的でした。
    何事もいい面があり、悪い面があり、その背景には歴史がある。そのことを尊ぶ姿勢が大切ですよね。
    それから、作中に出てくる幻の脚本、すごく素敵ですよね。なんというか、全体から漂う祈りにも似た希望こそが、この本の美しさの正体なんでしょうね。
    多くの世代に読まれて欲しい1冊でした。

  • 辻村深月、本当に大衆的に、きれいになったなあ!
    もちろん良い意味で!
    ああ、辻村さんここまでこれたのね…
    と、あの頃あの辻村さん特有の、
    暗くて痛くてそれでも絶望から這い上がる、
    沢山の登場人物たちに助けられた私は思います。

    瀬戸内海のきらきら光る眩しい海のように、
    若くて瑞々しくて希望にあふれたお話でした。
    きれいごとだけではいかないけれど、
    そういうものにもなるべく明るい方を向いて、
    色んなものをひっくるめて強くなれる。
    若いとはそういうことだ。

    そしてそして、環ぃぃぃいいいい‼
    もう出てきた瞬間叫んじゃったよ!
    ありがとう辻村さん!環元気だったのねーー!!
    ヨシノちゃんも他作品で出てきそうだな♪
    楽しみ!
    こんな言い方をするとすごく傲慢だけど、
    あの頃、あのいちばん辛かった頃に、
    私と変わらない年齢で苦しんでいた環たちが、
    きちんと大人になって、きちんと生きていて、
    私も今やっとそうなれているから、
    一緒に戦って、生きてきたような感覚になる。
    ありがとう。
    何度でも言いたい、辻村さんには。

  • いい本だったな〜。
    4つのパートに分かれているので、気軽に読めた。
    個人的には、「Ⅲ」のお話がグッときた。

    ヨシノが「早く年をとりたい」って言ったことに対して、衣花が「若さを犠牲にしてもいいだなんて…」とヨシノの自己犠牲を不安視するかの発言をしたことに、すごく純粋さを感じて、この子がすごく愛しくなった。
    女子高生にとっては、若さという圧倒的なものが価値が高くて、働いたことがないから仕事というものがわからない…という、ある種の純粋さを的確に表現してると思う。思い返してみれば、若い時の方が、私も友人達も、若さを失うことを恐れていた気がする。
    でも、働き始めたら、若さを犠牲にするというより、若さが枷になることもたくさんある。周りからの目もそうだし、自分自身のメンタリティとしても。
    50くらいなったら今の悩みなんて「若かったねーw」と鼻で笑えるんだろうな、早くそうなりたいよ!って、思ってるアラサー女性は多いと思う笑。

    そんなアラサー女性のボヤキを、「若さを犠牲にして…」と捉えてくれる若者。
    甘酸っぱいし、純粋でかわいい。

    高校生が主人公(?)の小説なんて滅多に読まないから、なんかそんなところに気がいってしまいました。

    ところで辻村さんは、10代のキャラの名前つけにこだわりがあるのでしょうかね。
    衣花(きぬか)、朱里(あかり)って、キラキラネームではないけど、絶対一読はできない凝った名前。言うなればイマドキネームですよね。

  • 続編熱望!!!

  • いつもよりさらに登場人物の名前が憶えづらく、序盤はこの人はどの人だと何度が戻りながら読み進めた。
    五十嵐大介さんの表紙がマッチしている。

    最近好きなドストレートな青春系。島という閉じられた空間での話で、悪い部分ももちろん描かれているのだが、助け合いやつながりなどいい部分が強調されていたと思う。
    村長や蕗子の周りの大人のどろどろした話もあったが、4人の爽やかさが勝ったように思える。

    幻の「脚本」という言葉が出てきた時点で、その人が出てくるのは容易に想像できたのだが、こんなにがっつり絡んでくるとは…。

    地域活性デザイナーは、私はそういうことを知っているのでそんな感じないが、傍から見たらうさんくさいなーと改めて思った。

    最後に衣花が村長になったのは若すぎだろ!と思ったが、少しすると悪くないように思えた。

    「いってらっしゃい」、「いってきます」
    「おかえり」、「ただいま」
    この作品を読んだ後、この言葉が大事でいとおしく思えた。

    「兄弟」もすごくいい。

  • 良かった。
    とても良かった。
    初期から出版年順に作品を追ってきた辻村深月作品愛読者としてはたまらない展開が隠されていた。
    初期の頃はよく見られたが、最近はそんな仕掛けも見られず、もうないのかなと淋しい思いもあったので269頁のあの名前を見た時は感激して涙が出た。

    読んでいて、心が潤う。
    悪意にふれて傷つく現実に嫌気が差していたが皆の善意に触れて、救われた。
    展開自体は無理やり、さすがフィクションという部分ももちろんあるがそれは些細なこと。それよりも朱里、衣花、源樹、新をはじめ登場人物、互いが互いを思いやり大切にする気持ちに触れ、浄化される読後感。これが得られただけでも、私はこの本を読めて本当に良かったと思う。

    そして、初期の頃(講談社ノベルス時代)辻村深月作品を好きになった私として近年の作品、特に直木賞受賞作などは認めたくないものだった。作風が変わってしまったのかと。
    この作品は直木賞受賞後一作目、帯にそう書いてある。
    なんだか、嬉しくなる。
    「変わってない」という、メッセージを受け取ったような、そんな気分だ。
    それは、彼女の仕掛けとして出てきたのが、あの人物であることも余計そう感じさせてくれる。
    辻村先生、ありがとう。

著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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