島はぼくらと

著者 :
制作 : 五十嵐 大介 
  • 講談社
4.02
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本棚登録 : 3759
レビュー : 589
  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062183659

感想・レビュー・書評

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  • 「ああ、この人はお母さんなんだなぁ」

    辻村深月さんが、新刊『島はぼくらと』のプロモーションのために出演した情報番組でのインタビューをテレビで観ていた。
    お子さんを保育園に預けてその時間を執筆に当てているのだそうだ。
    「子供がくれた時間で書かせてもらっているんです」
    そう語る彼女の声をききながら早速パソコンを立ち上げ、図書館のホームページから『島はぼくらと』をネット予約した。

    瀬戸内に浮かぶ「冴島」を舞台に、そこでの生活が池上朱里(いけがみあかり)、榧野衣花(かやのきぬか)、矢野新(やのあらた)、青柳源樹(あおやぎげんき)ら、島で四人だけの高校生の視点で語られる。

    僕は熱心な辻村ファンというわけではないが、それでも『スロウハイツの神様』で心を掴まれ、『ぼくのメジャースプーン』『凍りのくじら』と読んで、この作家を追いかけていこうと思っていた。
    なのに『名前探しの放課後』やそれ以降をぶっとばして、最新作に手を出してしまった。

    明るい。
    『島はぼくらと』は明るいのだ。
    潮の匂いがして、太陽を感じて、健康的で生気に満ちあふれている。
    もちろん、ミステリ出身の作家さんらしく物語は緻密な構成で、一見うまく回っているような島の生活に不穏分子がはいってきたり、登場人物たちも謎や秘密を抱えていたりと、「辻村節」は健在なのだが何かが違う。
    レゴブロックで精巧に構築された箱庭にキャラクター達を正確に配置し、「よーいどん!」でピタゴラスイッチのように物語が収束していく従来のカタルシスも捨て難いが、この『島はぼくらと』は人々がもっとゆるやかに繋がり、活き活きのびのびと互いに影響しあって物語を奏でているのがいい。
    サプライズや伏線の回収があったとしても、「そんなの関係ないぜ」と違う人生を生きる。そんなことだってありえるかもしれない。

    「冴島」という架空の舞台には登場人物達が一人減ろうが増えようが、いくらでも物語が湧き上がってくるような生命力が宿っている。

    いい人だとか嫌なヤツだとか、人はそんなに単純じゃない。
    スーパーヒーローのように見えても、すべてが得意なわけでもない。
    また、何も持ってないようでも、必ず突出した何かがある。
    それぞれの人が、それぞれの役割で、それぞれに適した場所で、静かに連なっていければこれ以上に幸せなことはない。

    辻村深月はこんなに素晴らしい作品を産み落とした。
    彼女は母となり、新しいステージに突入したのだ。
    僕は勝手にそう解釈している。

    • 円軌道の外さん

      お久しぶりです!

      いやぁ〜とにかく多忙で
      仕事の休みがなかなかとれないんですが、

      またまた例の病気が再発し、
      ダウンして...

      お久しぶりです!

      いやぁ〜とにかく多忙で
      仕事の休みがなかなかとれないんですが、

      またまた例の病気が再発し、
      ダウンしております(>_<)


      病気にならんと
      時間の余裕がないのもなんだかな〜って感じやけど(笑)


      そちらはどうですか?
      暑い日が連日続いてるけど
      身体壊したりしてないですか?


      そっかぁ〜
      辻村さん、お母さんなんですね(^O^)

      それにしても
      『レゴブロックで精巧に構築された箱庭にキャラクター達を正確に配置し、「よーいどん!」でピタゴラスイッチのように物語が収束していく従来のカタルシス』って
      まんまその通りですよね(笑)

      上手いこと形容するなぁ〜って
      ホンマ感心しましたよ(*^o^*)


      辻村さんの本は
      心理描写が緻密で
      物語にどっぷり浸ってしまうので
      読み終えると何も手につかなくなって
      ある意味危険なので(笑)、

      自分もまだ
      初期のものしか
      読めてない状況なんスよね〜(汗)(^_^;)


      でもこの作品は
      ホンマ読んでみたいなぁ〜♪

      新しい辻村さんの魅力を感じてみたいです(^_^)v


      2013/08/18
    • kwosaさん
      gumi-gumiさん

      こんにちは。
      リフォローありがとうございます。
      こちらこそよろしくお願いします。

      『スロウハイツの神様』いいです...
      gumi-gumiさん

      こんにちは。
      リフォローありがとうございます。
      こちらこそよろしくお願いします。

      『スロウハイツの神様』いいですよね。
      あれでどっぷりはまってしまいました。
      辻村深月さんの作品を読むのが楽しみで、がんばって追いかけていますがなかなか追いつきません。
      さて、次はどれを読もうか。
      わくわくしながら悩んでいます。
      2013/08/19
    • kwosaさん
      円軌道の外さん

      お久しぶりです!
      復活(?)でよいのでしょうか。
      こうやってコメント頂いたりレビューを拝読できるのは嬉しいのですが、お体の...
      円軌道の外さん

      お久しぶりです!
      復活(?)でよいのでしょうか。
      こうやってコメント頂いたりレビューを拝読できるのは嬉しいのですが、お体の具合が心配です。
      ご無理なさいませんように。

      こちらはおかげさまで元気でやっています。

      そうそう、辻村さんお母さんなんですよ。
      この『島はぼくらと』は、なんだか母性というか、母の強さや優しさがにじみ出ていて、過去に読んだ辻村作品とくらべると、角が取れて生命力が内側から溢れてくるような豊かさを感じるんですよね。

      先に最新作のこれを読んでしまったので、以前の胸を掻きむしられるような物語に戻れるのかが少し心配でもあります。

      でも、ぜひぜひ円軌道の外さんにも読んでほしいなぁ、って思っています。
      2013/08/19
  • ──辻村深月が帰ってきてくれた。
    「スロウハイツの神様」「名前探しの放課後」「凍りのくじら」などの彼女の生み出した初期の名作を読んで、感激し、感動した読者のもとに辻村深月が帰ってきてくれた。
    所々に散りばめられた数々の伏線を、ラストシーンが近づくにつれ、見事に回収されていく。
    その爽快感を味あわせてくれる名作の数々。
    最後は、必ずハッピーエンドで終わり、感動の涙で読者の心を虜にする彼女の講談社路線とも言うべき初期の名作群。
    その路線を受け継ぐこの作品は、また新しい名作の一つとして仲間入りするに違いない。

    物語の終盤。
    突然の、ずっと忘れていた、でもずっと会いたかった「スロウハイツ」のあの女性の突然の出現に驚き、何故かその名前を聞いた瞬間に不覚にも涙した。
    そして、思わず心の中で叫んでしまった。
    「お久しぶりです」と。

    辻村深月さんは、「最近の自分の作品を物足りなく感じていた初期の頃からのファンのために書いた」とあるインタビューで答えていたとおり、この作品は、本当に昔からのファンのために書いてくれたのだなあ、とあらためて彼女のサービス精神が嬉しかった。

    これで、最近の彼女の作品を読んでその魅力をどろどろした嫌らしさと思われている読者の方々に胸を張って大声で言うことができる。
    彼女の作品の本当の魅力は登場人物たちの思いがけない優しさなのだと。

    瀬戸内海の島に住む四人の高校生たち。
    彼、彼女を取り巻く様々なしきたりや縛り。そのなかで育まれた友情。
    父母や、祖父母の昔のエピソード。そこから現在につながる物語。
    最後も爽やかな涙がぼくの頬を伝った。
    ありがとう、辻村深月さん。
    この路線をまた書き続けてください。本当にありがとう。

  • キラキラした青春小説だろうと思い読み始めた。
    心の芯がジーンとなって読み終えた。

    伸びやかな少女、朱里。
    美人で気が強く、衣花。
    東京から連れてこられた、源樹。
    熱心な演劇好き、新。
    4人が冴島で育ち、生きていく。

    青春だけじゃない。
    都会から島に逃げてくるしかなかった親子の物語。
    一緒に生きていきたかった祖母、母の物語。
    ヨシノ、環の伝える言葉、生き方に共感する。

    母子手帳、幻の物語に込められた想い、願い、やさしさが深い。
    そして、衣花の溢れだす想いに涙を零してしまった。
    ぐっときた。

    「おはよう」「おはよう」
    「いってらっしゃい」「いってきます」
    そして「おかえり」...「ただいま」。

    相手がいるからこそ伝えられる。

    良い物語でした。

    いつかまた出会いたい。
    朱里、衣花、源樹、新の大人になった姿に。

  • しかし、なんと胸を打つラストだろう。
    万感の思い溢れるとはこのことだし、
    映像喚起力に優れた文章が
    容易に絵となって登場人物たちの笑顔と覚悟を読む者にイメージさせ、
    美しい島の四季折々の自然や
    潮の香り、照りつける太陽の暑さまでリアルに届けてくれる、
    この巧みな辻村マジック!


    太陽を受けきらめく、銀色のコンクリート。
    どこまでも続くエメラルドグリーンの海。
    麦わら帽子と赤いサングラス。
    オレンジ色に染まる、傾いた夏の日。
    主要キャラたちがフェリー乗り場に集まる冒頭場面だけで
    彼、彼女らがどういう人物でどういう性格なのかが瞬時に伝わってきて、
    心地良く物語の中、引き込まれていく。

    母と祖母の女三代で暮らす、
    ショートカットの心優しき高校二年生の少女、池上朱里(いけがみ・あかり)。

    網元の娘で、天然茶色のウェーブヘアにグレーの瞳を持つ美少女、榧野衣花(かやの・きぬか)。

    演劇部メガネ男子で脚本家に憧れる矢野 新(やの・あらた)。

    リゾートホテル経営者の息子で
    着崩した制服と金髪がよく似合うイケメン少年、青柳源樹(あおやぎ・げんき)。

    この島暮らしの4人の同級生たちの青春と
    島暮らしの理想と現実を徹底的にリアルに描いたストーリーです。


    瀬戸内海に浮かぶ人口三千人弱の火山の島、冴島(さえじま)がこの物語の舞台。
    中学まではあるものの、高校は島にはないため
    中学卒業と同時に誰もが
    フェリーで本土の高校に通わなければならなくて、
    卒業すれば進学や就職のために
    殆どの若者が島を出ていってしまいます。

    つまり、若者たちは自分がいつか、ここを出ていくことをみんな理解して、
    親たちも高校卒業と同時に子供との別れが待っていることを最初から分かっているし、
    覚悟しているんですよね。

    だから美しい島の描写と人懐っこい島の住民との触れ合いを描きながらも
    いつもそこかしこに別れの匂いや予感が漂っていて、
    花火を観たあとに感じる儚さや
    祭りの終わりの寂しさ、切なさを
    読みながらずっと感じていました。


    島に来る人がいれば、島を去る人がいる。

    Iターン移住者の問題、医者不足に病院不足、仕事がないこと、
    夢を抱き移住したはいいが
    島に溶けこめず本土にまた帰る人たち、
    身内を亡くし居場所がなくなる高齢者たち。
    傲慢でワンマンな村長と保守的な
    古くからの島の住民。
    気が合う男同士が「兄弟」の杯を交わし助け合う、昔からの島の風習。

    僕自身、年を取ってリタイアしたら
    小さな島で暮らすのもいいなぁ~なんて
    安易に考えていた時期もあったけど、
    コレ読むと島には良い部分以上に様々な問題があって
    理想と現実との違いをあらためて思い知らされたし、

    奇しくも同じテーマを描いた現在放送中のNHK朝ドラ「まれ」で
    まれの母親役の常盤貴子さんが
    島の住民と移住してくる人たちの関係を
    『本当はお互いがお互いに憧れてるのかもしれんね…』と言っていた言葉が
    この物語を読んで初めてストンと腑に落ちたのです。

    そして物語のクライマックス、
    4人の少年少女たちがあるお婆ちゃんのために
    東京や大阪を奔走する、
    時間制限付きのロードムービーのひたむきな思いには
    まんまと泣かされましたよ…( >_<)

    そして永遠に続くかと思われた少年少女たちの島での日々にも訪れる
    別れのとき。

    それぞれの夢や目標を手に
    島に残る者ととどまる者。
    行ってらっしゃいと送り出す者と
    行ってきますと旅立つ者。

    帰る場所があるってことは
    なんて素晴らしいことなんだろう。


    遠くまで旅する人たちに あふれる幸せを祈るよ!

    僕らの住むこの世界では 太陽がいつも昇り

    誰もみな 手を振っては しばし別れる…


    『ぼくらが旅に出る理由 / 小沢健二』

    オザケンオリジナル↓
    https://www.youtube.com/watch?v=ByaGUx2HfbQ&feature=youtube_gdata_player

    秀逸なアレンジと豪華メンバーによる安藤裕子のカバーVer.↓
    https://www.youtube.com/watch?v=23achdSE-QI&feature=youtube_gdata_player


    ラストシーンを読んだ僕の胸には
    いつまでもいつまでも
    大好きなこの歌が鳴り響いてました♪


    P.S. シングルマザーの蕗子(ふきこ)が作った
    お酒入りの手作りフルーツポンチを朱里が食べるシーンと
    新が朝食に食べる手作りみかんジャムのシーンが個人的には好き~(笑)

  • よかった。すごくよかった。
    辻村深月にしては、割と普通というか等身大の登場人物が多くて
    多少の毒はありつつも、とても真っ直ぐで明るくて爽やか。
    表紙もかわいい。

    島という閉鎖的なコミュニティかと思いきや、
    そんなおどろおどろしい感じや前時代的な古臭さもさほどない。
    どんな場所でも住民の入れ替わりや世代交代はあるけれど、
    最初から出ていくことを前提に子育てをする島のお母さん、
    真っ黒になるまで母子手帳に書き込みをするという。
    巣立つときに子供に渡すんだね。
    同じ瀬戸内でも、本土の都会に生まれ育った私は
    まるで聞いたことのないエピソードでした。
    わたし母子手帳は母が保管しているし、そういうものだと思っていて
    私自身、娘の母子手帳はわたしのものだと思っていた。
    故郷という立ち位置の濃さが違うにしても、
    やっぱり地元にいつでも帰れることってとても幸せなことなんだな。

    シングルマザーの蕗子や、ヨシノの生き方や
    おじいちゃんおばあちゃん世代のほろ苦い思い出に
    高校生4人の関係も希望も葛藤も、
    眩しかったり霧に包まれていたり波に洗われたりして
    それぞれの思いが心に響いてきて、何度も涙が出た。
    盛り沢山な内容だったけどすっきり纏まって、ハッピーな余韻もたっぷり。
    赤羽環まで出てきて、にやにやしてしまったよ。

    しかし、朱里と源樹の絡みがないまま終わってしまって残念だ。
    まぁきっと卒業までにはうまくいってたんだろう。

  • 本書の舞台は瀬戸内海に浮かぶ冴島。一昨年に開催された瀬戸内国際芸術祭の際に、足を運んだ『男木島』をイメージしながら読んだ。

    主人公の4人以外にも魅力的な登場人物達が沢山登場してきて面白い。特に、朱里の母、我が子のためにIターンを決意した蕗子、コミュニティデザイナーのヨシノの三人は、それぞれが、それぞれ守らなければならない者のために、日々を懸命に生きているところに好感が持てた。その他にも、読みながらいろいろが感想が浮かんだが、大きなものは三つある。

    一つ目。蕗子が、自分とはまったく立場の違う女性の新聞への投書を読む場面。著者は蕗子に、「人が乗っかるのは、栄誉だけではない。人間は、自分の物語を作るためなら、なんにでも意味を見る。・・・他人の死すら、人は自分に引きつけて、イベントごとのように消化してしまうものなのか、と足が竦んだ」(P.119)と語らせている。読んでいて、著者の、世界を見る目は本当に鋭い(ここでいう鋭さは、分析力)と思った。

    二つ目。その反面、スロウハイツの時もそうだったけど、主人公と対立する立場の人(村長や霧崎ハイジ、衣花の父)を、悪く書いていない(つまり、さまざまな側面から描いている)ところに好感が持てた。だからこそ、主軸となる物語、そして舞台となっている島の力とも相まって、読後感がとても爽やかでよかった。この本の著者は、本当に良い小説を描く人だなぁと思った。

    三つ目。主人公の一人である朱里の祖母が、冴島の噴火により、結果として友人と今生の別れとなる一連の物語が印象に残った。読みながら、自分がかつて高校に勤めていた頃、震災の影響で続々と転向してきた福島の高校生たちのことをふと思い出し、彼らの未来が幸福なものであってほしいと思った。

    最後にもう一つ。本書は友人から借りて読んだのだけどど、同時にスロウハイツも薦めてもらったので併せて借りた。なので、何となくスロウハイツを先に読んでからの方がいいかなと思ったけど、やっぱり正解だった。読むなら、スロウハイツ→本書の順がオススメ。

  •  図書館より。
     本土までフェリーで20分。人口約3000人の離島に暮らす四人の高校生。彼らの視点から島の人間模様と成長を描いた小説。

     冒頭のフェリー乗り場と海の描写の美しさに心掴まれました。そこを読んだだけで、「あ、これはいい本だ」と自分の中で確信し、結果その通りになりました。

     朱里、衣花、源樹、新、四人はフェリーで本土の高校に通っていますが、高校卒業後島を出たり、島に残ったり、とバラバラに。同級生が自分を入れて四人しかいない、しかもこの四人は小さいころからずっと一緒だったことを考えると、
    その関係の深さ、そして来たるべき別れの切なさがしっかりと書き込まれていて非常によかったです。衣花が感情を吐露する場面は心がギュッとつかまれて、ウルっときました。

     そうした青春小説の面だけでなく、島の人間関係もなかなか深くて面白いです。四人が暮らす「冴島」は村長の積極的な活動やコミュニティデザイナーのヨシノのおかげでIターン、特にシングルマザーが多く、また島独自の産業も成功を収めている、という島なのです。

     島にやってきたシングルマザーの物語、親子関係、島の事業をめぐっての生臭い話、またヨシノと島の住民の関係性など読みどころはとにかく多い! 

     前半のエピソードが後半に思わぬ形でつながるのはミステリ的でもあり、そのつながりが明らかになると人の優しさがとても感じられる展開になっています。ホントにいろいろな側面からおススメできる小説だと思います!

     僕がフォローしている方のレビューで『辻村さんは「白辻村」と「黒辻村」がある、そして自分は「白辻村」が好きだ』と書いてらっしゃる方がいたのですが、この本を読んでなるほど!と思いました。

     時に暗い場面、切ない場面もありますが、そうした場面をも優しく包み込んでくれます。冒頭のフェリー乗り場の描写で『目が痛いほどの銀色だ』とあるのですがこの本を読み終えたとき、自分の心がそれくらいまぶしい光で包まれた小説でした。

    2014年本屋大賞3位

  • すごく良かった。色々な部分が全部。

    母子手帳の件と母親の覚悟の件は、この本を読むよりも前に、辻村氏が新聞に書いていらしたコラムを読んで知っていた。
    本書を書くにあたって取材した実際の島のことだったと思う。
    その覚悟は母親としてとても切ない。
    でも、親にも子にも(早くに離ればなれになる)その覚悟があるからこそ、島の子たちはしっかりしていて立派だと思う。
    それに比べて、うちのダラダラした大学生2人とその母である私は、これじゃあいかんなあと思ってはみるけど、もう手遅れ。(^_^;)

    辻村氏の著書はこれで3冊目だが、私はたまたま独立した作品を3つ読んでいたことになるらしい。
    今後は、この順で読むと良いと言われているものを参考にして読む予定。

  • 辻村深月さんの作風に、少し特殊な印象を抱いていた私は、この本を読んで、『辻村さんって、こういう作品も(爽やかな高校生の青春ものだったり、離島で生活する人々の暮らしだったり…)書くんだ~』と思った。ちょっと意外。

    衣花、朱里、新、源樹、4人みんなキャラは違うけど、お互いを認めあっている関係が微笑ましく映る。若さが眩しい。
    冴島に暮らす人々それぞれの純粋な想いが詰まっていて、好き! (*^_^*)
    赤羽環をさらっと登場させているのも洒落っ気があって、読者を楽しませる。良かった。

  • 辻村深月さんの、直木賞受賞後・第一作。
    瀬戸内海にある架空の島「冴島」を舞台に、人々の交流や軋轢を、島で育った幼なじみ四人を軸に描いた、書き下ろし長編小説です。

    人口三千人弱の冴島は、島外から積極的に人を受け入れ仕事を世話するなどの施策をしており、活気のある島という印象。
    けれど物語が進むにつれ、島の住人と移住して来た人との埋められない距離感、移住して来た人同士での軋轢、狭いコミュニティでの諍いや覇権争いなど、島ならではの様々な事柄が浮き彫りになってくる。

    中でも個人的に一番印象に残ったのは、島の母親達が「子供が島を巣立つこと前提の子育てをしている」ということ。
    自分は「子供」の立場でしかこの辺りを考えたことがなく、大きくなるにつれ親元を自立したいと思うのは当然のことだと思ってきましたが、それは親の立場からすると、子供が離れて行くことを覚悟しながら育てるということ。
    ちょっと視点を変えてみれば当たり前のことなんだけど、私はこの事実にとても衝撃を受けました。
    しかも冴島には中学までしかない為、進路によっては高校入学と同時に島を出る必要があり、子供が巣立つ時期が割と明確かつ早い。
    全て飲み込んだうえで、限られた時間の中でじっくり愛情を注いで子育てをするというお母さん達の描写にはじんわり感動しました。
    そういう母親視点が盛り込まれたことの要因は、作者の辻村先生がご出産されてお母さんになられたことが大きいのかな、と思ったり。

    島に伝わるという幻の脚本の所在や、移住して来た人々の過去、幼なじみ四人の淡い恋愛模様なども絡んだ物語が、最後にはとても綺麗に収束するところが、さすが辻村さん。
    他の方のレビューにもありますが、初期の頃の作品を思い起こさせる青春小説でした。
    幼なじみ四人が、島を出る子と残る子とでいずれバラバラになってしまうこと。
    本当は離れたくないけれど、お互いの進路や夢の邪魔をしたくなくて、寂しい気持ちをなかなか伝えられないこと。
    自分の学生時代を思い出し、思わず涙が零れてしまいました。

    そしてお馴染みの、他作品とのリンクもあり。
    リンクだとわからなくても、そもそもリンクがなかったとしても、面白いお話だと思いますが、こういうサービスはやっぱり嬉しいです。
    今回は私の大好きなキャラが出て来て、しかも相変わらずな態度で嬉しかったのですが、そのキャラが登場した背景や今回のお話のキャラとの繋がりがとても嬉しかったです。
    こういう繋がりを見せられてしまうと、ずっと追い掛けたくなってしまう。
    本当に大好きです。

著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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