光のうつしえ 廣島 ヒロシマ 広島

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 209
感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062183734

作品紹介・あらすじ

真夏の夜、元安川に、人々は色とりどりの灯籠を流す。光を揺らしながら、遠い海へと流れていく――。
68年前の8月6日。広島上空で原子爆弾が炸裂した。そこに暮らしていた人々は、人類が経験したことのない光、熱線、爆風、そして放射能にさらされた。ひとりひとりの人生。ひとりひとりの物語。そのすべてが、一瞬にして消えてしまった。
昨年、原爆をテーマに研ぎ澄まされた筆致で『八月の光』を世に問うた朽木祥が、今回、長編で原爆を描ききる。
日本児童文学者協会新人賞をはじめ、産経児童出版文化賞大賞など多数の賞に輝く朽木祥が、渾身の力で、祈りをこめて描く代表作!

感想・レビュー・書評

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  • たまたま図書館で手に取った本ですが、出会えて良かったです。
    物語の舞台は終戦より四半世紀経った広島。子どもたちは戦争を経験してはいないけれど、親の世代はみんなそれぞれに大切な人を失い、自身も被曝者として原爆病の恐怖と戦う世代です。

    私自身、小学生の頃『おじいちゃんおばあちゃんに戦争の頃よ話を聞いてみよう』という課題学習がありました。当時疎開していた祖母が、夜、遠くの町の空が空襲で赤く燃えていた。と語ってくれたことだけを、ぼんやりと覚えています。母方の曽祖父は戦争で若くして帰らぬ人になったそうで、仏間には坊主頭のハンサムな若者の遺影が飾られていました。
    当時の様子を直接語れる人はどんどん少なくなってしまいます。でも今までの先人が大切に残してくれた記録に触れることはできますから、遠い昔の歴史だと割り切らずに、度々立ち返って考える時間を持ちたいと思います。

    作中、吉岡先生の手紙に非常に胸うたれ、何度も読み返して何個もフレーズを書き留めました。
    戦争がもたらした不幸は広島に限った話ではなく、日本中、世界中に及びます。二度と繰り返さないために、と口で言うことは簡単ですが、被害者の怒りや悲しみは計り知れません。怒りが復讐を誘発し、更に次の怒りを産む負のループ……『それぞのささやかな日常が、小さいと思える生活が、世界を形作っているーー小さな物語を丁寧に描いていくことこそが、大きな事件を描き出す最も確かな道のりなのだと思いませんか』怒りを枯らさないことが弔いではなく、失った小さな幸せたちを大切に慈しむことこそが、平和な時代を続けるために必要なのではないかなと思いました。

    ウクライナの戦争や、ガザの紛争、世界で起きている無辜の人々を巻き込む痛ましい戦いが一日もはやく終結することを願って。

  • 新婦人しんぶんの平和の絵本で紹介。大人が読んでもとても良かった。
    八月の光も読んでみたい。

  • 朝日新聞デジタル:「光のうつしえ」 - 広島 - 地域(2016年05月02日)
    http://www.asahi.com/area/hiroshima/articles/MTW20160502350160005.html

    被爆2世で広島出身の児童文学作家 朽木祥さん 小説「光のうつしえ」 英語版刊行 | 中国新聞ヒロシマ平和メディアセンター(21年4月7日)
    https://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=104612

    『光のうつしえ 廣島 ヒロシマ 広島』(朽木 祥)|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000188126

  • 『加害者になるな、犠牲者になるな、そしてなにより傍観者になるな。』
    とても難しい言葉だ。みんな何かに当てはまるんじゃないか。そう、大多数が傍観者に…。そして無辜の民は戦争に巻き込まれていく。ヒロシマだけじゃない、世界のあちこちで。やはり歴史を知ることは大切だなあと強く感じた。

  • 自分が被爆何世なのかは分からない。
    それほど時間が経ってしまっているということがわかる。
    そのような現代において、【被爆二世】の話を読むことは、意味のあることのように感じた。

    【被爆】と【被曝】

    【被爆二世】と【被曝者】

    文化祭というきっかけから、子供達が自分なりにまとめていこうとする姿は、心に響くものがある。
    作者もまた、被爆二世。
    そこが、またリアリティをかもしだしている。

  • 戦後の広島で生まれた中学生の希未、俊、耕造。教師の吉岡が被曝者であるということから、自分の身近な人たちも被爆・被曝者であり、さまざまな思いを抱えていることに気づき、美術部の文化祭のテーマとして、「あのころの廣島とヒロシマ」を描くことにした……。

    途中からずっと涙をこらえ、最後には号泣しながら読んだ。
    この作品の英訳が評価されていると知り、日本語で読もうと思ったが、広島弁や漢字(被曝と被爆)について説明している部分や短歌など、どのように英語で表現されているのか英訳版も確認したくなってしまった。
    描かれているのは1970年頃。親が戦争を体験していて、身近な人が亡くなっているのに、希未たちには意外なほどそれらの体験を身近に感じていない。祖父母ですら戦後生まれという現代っ子が戦争について遠い世界のことと感じるのも仕方ないことと思えてくるが、このころは余計に、(時期や関係性が)近いからこそ話せないということもあったのかもしれない。
    大切な人を亡くした希未の両親、希未と同じ年頃で亡くなった叔母、大切な人と明日また会えることが当たり前ではないこと、後悔を抱えて生きること、大切な人の死を認めるつらさ、すべてのエピソードが心に響く。
    広島の一般市民が巻き込まれた戦争だが、自分達の被害を語るだけではなく、ほかの国でも多くの市民が犠牲になったことについて触れられているのがいい。そして、日本は被害者であるだけでなく、加害者であったこともしっかりと語られている。「加害者になるな。犠牲者になるな。そしてなによりも傍観者になるな」という言葉は、胸にしみる。関係ないこととせず、知って、動いていかなくてはならない。そして、戦争では無駄なこととされた文化こそが人を救う、と希未たちが気づくところもいい。
    「うつしえ」という日本語が好きだ。これが英訳でタイトルになっていないのは残念でもある。灯籠流しの美しさと悲しさを描くのにふさわしい和語だ。
    子どもたちや、外国の方に読まれてほしい1冊ではあるが、大人にもぜひ読んでほしい。

  • ヒロシマ、その後の物語。かの地に住む人たちの思い、感覚、垣間見られて良かった。中学生たちの素直な気づきと優しさにほっとする。

  • 5年教科書掲載本

    恥ずかしながら、「被爆」と「被曝」の違いを知りませんでした。

    ヒロシマ、そして原爆のことだけでなく、戦争そのものについても書かれていたので、一人でも多くの人に読んでほしい本。


    息子を特攻で失くした母親から、息子が好きだった女性の娘さんへの手紙ー

    「どうか、あなたたちの世代が生きる世界が平和でありますように。自由な心を縛る愚かな思想が、二度と再びこの世界に紛れこみませんように。健やかに成長され、生を全うされますように。」


    そして、ホロコーストの研究者たちが訴え続けているという言葉ー

    「加害者になるな。犠牲者になるな。そしてなによりも傍観者になるな」


    自分にも周りにも言い続けたい。

  • 原爆から25年の舞台。戦争後に産まれた子(産まれているけれど記憶にない子)たちと体験した方たちが入り交じる時代。戦後75年とは感覚がまた違うだろうな…
    そしてこの先もずっと二度と戦争は起らず今起こっているところは今すぐ終わってほしい。
    にじゅういっせいきにもなってなにをしているのか。

    灯篭流しの描写がとても美しく悲しくいろいろな人の想いが伝わってぐう…となった。

    その時のことをきくのも、はなすのも、とても、難しい。
    そして、語り継いでくださったから
    「今」があって。
    くりかえしてはいけないために
    にどとおこらないために
    あとの時代の者は生きねば。と思う。

  • 原爆のことを子供目線でどう感じていたのかがわかる本だった。
    読み始めたら止まらない。

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著者プロフィール

広島出身。被爆2世。
デビュー作『かはたれ』(福音館書店)で児童文芸新人賞、日本児童文学者協会新人賞、産経児童出版文化賞受賞。その後『彼岸花はきつねのかんざし』(学習研究社)で日本児童文芸家協会賞受賞。『風の靴』(講談社)で産経児童出版文化賞大賞受賞。『光のうつしえ』(講談社)で小学館児童出版文化賞、福田清人賞受賞。『あひるの手紙』(佼成出版社)で日本児童文学者協会賞受賞。ほかの著書に『引き出しの中の家』(ポプラ社)、『月白青船山』(岩波書店)、『八月の光 失われた声に耳をすませて』(小学館)などがある。
近年では、『光のうつしえ』が英訳刊行され、アメリカでベストブックス2021に選定されるなど、海外での評価も高まっている。

「2023年 『かげふみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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