光のうつしえ 廣島 ヒロシマ 広島

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 116
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062183734

作品紹介・あらすじ

真夏の夜、元安川に、人々は色とりどりの灯籠を流す。光を揺らしながら、遠い海へと流れていく――。
68年前の8月6日。広島上空で原子爆弾が炸裂した。そこに暮らしていた人々は、人類が経験したことのない光、熱線、爆風、そして放射能にさらされた。ひとりひとりの人生。ひとりひとりの物語。そのすべてが、一瞬にして消えてしまった。
昨年、原爆をテーマに研ぎ澄まされた筆致で『八月の光』を世に問うた朽木祥が、今回、長編で原爆を描ききる。
日本児童文学者協会新人賞をはじめ、産経児童出版文化賞大賞など多数の賞に輝く朽木祥が、渾身の力で、祈りをこめて描く代表作!

感想・レビュー・書評

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  • 数年前から、夏には必ず戦争を扱った作品を読もうと思い少しずつ実行しています。
    私にとって読むのがしんどくかなりヨイショがいる読書ですが、平和について考える機会を持つことは大切なこと。
    これからも続けていきたいです。
    今年は朽木祥さんの『光のうつしえ 廣島 ヒロシマ 広島』にしました。

    一昨年は同じ朽木さんの『八月の光』
    http://d.hatena.ne.jp/lovelyplace923/20121010


    早くに読み終わっていたのですが、思うことが多すぎてまとまらず感想になかなか取りかかれませんでした。
    強く心に残る作品に限って感想を書くまでに長く時間がかかる気がします。


    広島は大学時代に住んでいたのでなじみのある地名も多くとても愛着があります。
    その頃、平和記念資料館にも行きましたが、怖くてあまり直視できなかった記憶が・・・
    焼け焦げたお弁当箱、制服など強烈な印象が残っています。
    また訪れてみたいと思っていますが、あの頃と同じで怖い気持ちはずっと変わらないかもしれません。


    広島で暮らしていた頃、原爆ドームの側を何度も通りましたが、爆弾を受ける前のことは考えたこともなかったし、産業奨励館だったことも知りませんでした。
    ネットで過去の姿を調べたらとても美しい西洋風建築でびっくり!
    チェコの建築家が設計した建物だったんですね。
    それを知ってから改めて原爆ドームを見るとより一層、原爆の恐ろしさ、悲惨さを感じることができるような気がします。


    物語は原爆投下後25年経った頃の広島。
    主人公の希未は中学一年生です。
    美術部の文化祭に向けて「あのころの廣島とヒロシマ:聞いてみよう、あなたの身近な人のあの日のこと」をテーマに活動を始めます。

    12歳の希未は1970年頃の生まれ・・・ということは、私の年齢よりほんの少し上。
    そのせいか遠い出来事ではなく、とても身近な感じがしました。


    >「よう知っとると思うとることでも、ほんまは知らんことが多いよな」


    これは本当にそうだと思います。
    家族のこと、友達のこと、日本のこと、世界のこと・・・
    大人になっても知らないことがたくさんあって、それは一生続くのかもしれません。


    たくさんの人から話を聞いて当時の広島のことを知っていく希未達。
    私も一緒に話を聞かせてもらっているようでした。


    >「今日も明日も元気で帰ってくると信じとるけえ、きついことも言えるわけじゃ」


    ここを読んだ時、一気に涙があふれました。
    ちょっとしたことで娘達を強く叱ってしまった日だったのもあるけれど、(後で思うとそんなにきつく言わなくてもよかったと反省)叱ることができるのも生きていればこそ、平和あってこそなんですよね。
    それがとても強く実感できました。


    小山ひとみさんの短歌も印象に残りました。
    当時、小山ひとみさんのような思いをした人達が数多くいたはず。


    体は助かっても心が死んでしまったという言葉が出てきますが、私には想像できない辛さです。



    >「生かされたなら、生きんといけん。どんとに(どんなに)つろうても、お迎えが来るまでは生きんといけんのじゃ」

    それでも、生かされた命を大切に生き切りたいと強く思いました。



    >どうか、あなたたちの世代が生きる世界が平和でありますように。自由な心を縛る愚かな思想が、二度と再びこの世界に紛れこみませんように。健やかに成長され、生を全うされますように。


    堀田道子さんから届いた手紙の文章が心に響きます。
    戦争を経験し、大切な人を亡くした多くの人達の平和への強い願いがぎゅっと詰まっている気がしました。
    何度も読んで心に刻みたい言葉です。


    平和な日本で元気に生きていることがどんなに幸せなことなのか・・・
    忙しく日々を過ごしているとつい忘れがちになってしまうけれど、ふとした瞬間にでも感謝したいです。
    こうやって本を読むことで平和への思いを強くできることにも感謝です。

    将来、娘達もこの本を手に取ってもらえたらいいなと思います。
    私も必ず再読したいです。

    • ぶっかけさん
      想像する力を拡げてくれる体験って大切ですね。
      想像する力を拡げてくれる体験って大切ですね。
      2014/09/11
    • はぴさん
      >ぶっかけさん

      そうですね。
      読むのにヨイショがいりましたが、とても心に響きました。
      >ぶっかけさん

      そうですね。
      読むのにヨイショがいりましたが、とても心に響きました。
      2014/09/11
  • この時期手に取り、今日読了したのは、やはり本に呼ばれたのでしょう。
    昨夜、やなせたかしさんの番組を見た涙と果てしなくリンク。
    奇しくも随分前に読了し、疑問を持った『永遠の0』に関するコメントも。
    そう、勘違いしたくないです。戦争は決して美談ではない、「感動」で済ませて欲しくない。
    涙が流れるのは、人の身体と心を何度も殺す、むごい人災に対する怒り。
    当時ヒロシマだけでなく世界各国で犠牲になった「無辜の民」。
    今、フクシマでの人災を忘れているのは誰?
    「加害者になるな。犠牲者になるな。そしてなによりも傍観者になるな。」

    やなせたかしさんの番組→http://www.nhk.or.jp/special/sp/detail/2014/0105/

  • 小説のような、ノンフィクションのような。
    あの日から25年目の広島のどこかで、本当にこのお話のようなことがあったのかもしれない……


    この地に移り住み、気づけばけっこうな時間が流れていました。希未たちの方言も注釈なしでも理解できるほどに。
    毎年、8:15には黙祷を捧げていますが、こういった書籍には、これまでなかなか手をつけることができませんでした。

    明後日は73回目の8月6日がやってきます。
    そんな今日、何となく図書館で出会ったこの物語には、なにかわたしなりの必然があったのかもしれません。

    あの日に何が起きたのか知ること、そして忘れないこと。わたしにできることを少しずつしていけるといいな。

  • 美術部に入っている希未は、お墓参りの帰りに、顧問の吉田先生の姿を見かけます。学校で見る先生とは違った後ろ姿だったのが気になりました。後日、先生の婚約者がピカに合い、遺骨は見つからず、櫛だけが残った話を聞きます。
    そして自分の周りには、知らない話がまだあることに気づきます。
    美術部で一緒の俊と、文化祭で「あのころの廣島とヒロシマ ~聞いてみよう、あなたの身近な人のあの日のことを~」のテーマで作品を作ることにします。

    希未は、吉岡先生の婚約者聡子の物語やお母さんの昔好きだった人との思い出。俊は原爆ドームをモチーフにした絵と、子どもが被爆して帰って来なかった須藤さんの物語の彫塑に。友人の耕造は、先生をしていた澄子とその生徒6人の物語を。

    文化祭当日、美術部以外にも公募した作品が並びました。希未たちは、原爆を受けた人たちに色々な物語があることを改めて知ります。真に悼むこと「大切な人の死を受け入れて見送ること、心に刻むこと」を続けていこうと思うのです。

    文中に出てくる短歌は、愛する人を失った気待ちに沿うものて、同じ想いを抱いている人が他にもたくさんいたことを、知らせます。

    吉岡先生が言うように、私たちは子どもたちに、この事実をきちんと伝えなくてはいけません。この本のように、当時のことを静かに、でも決して繰り返してはいけないという強い想いを伝えてくれる人は、周りからどんどんいなくなっています。私自身、祖父母や両親から聞いた話をきちんと伝えられるかは、わかりません。
    だからこそ、こういった本を読んで欲しいと思うのです。

  • 戦争の惨さ,恐ろしさを伝え,人の強さと優しさを信じさせてくれる作品。
    大きな苦しみを抱えながら,懸命に今を生きる人々に涙。

  • 鎮魂の書であり、戦争を知らない世代にも平和への思いを強くさせてくれる本。これは読み継がれなければいけない。

  • 灯篭流しの夜、十二歳の希未は見知らぬ老婦人から声をかけられる。
    「あなたは、おいくつ?」「あなたのお母さんは、おいくつ?」
    希未が答えると、老婦人は涙を流し、その場から立ち去ってしまう――

    「……誰かを捜しとる人が広島には今でも、えっと(たくさん)おられるからねえ」
    一瞬で七万人以上の人が「消えてしまった」ヒロシマ。
    身近な人たちにとって、あの朝はどんな朝だったのだろう。
    希未は美術部の仲間とともに、あの日の朝を描き始める――

    朽木祥という作家さんの本を始めて読みました。大袈裟な文章がまったく無くて、それなのに人の悲しみが読者の内まで届くような、いい言葉を書かれる方だなと。

    原爆の朝から今日までは、ずっと地続きなんだなあと。それは当たり前のことですけれど、あまりにも酷い事実ゆえに現代の自分とは上手く繋がらない原爆の朝を身近に感じました。

  • 心にしみわたるような物語だった。この物語は「事実」から織られた物語で、悲しみや痛みは隠れていてなかなか見ることや知ることはできないけれど、「戦争」という行為は戦い自体が終わる事はあっても、そこから生まれてしまったもの(悲しみや痛みや憎しみ)はどれほど長い年月がたっても癒えるものではないのだ、ということでしょうか。けれども、それは人の思いによって救われることもある、という部分に、暗闇の中に浮かぶ燈籠の光を感じました。戦争はいけません、絶対に。

  • 亡くなった方を「悼む」とはその人のことをいつまでも忘れずに、ずっと心に想い、伝えていくということ。
    この本は、中学生の主人公の希未(のぞみ)とともに、あの日ヒロシマで無残に命を奪われた無辜の民(天災を受けた罪のない人々)に想いを馳せる物語です。
    美術部員として、あの日の記憶を作品に込め語り継いでいこうとする希未は、あまりの悲惨さに口をつぐみ、心を閉ざした周囲の被爆者の声にふれることになります。

    献辞文の「世界中の小山ひとみさん」とは、ある日突然、大切な我が子を失くしてしまった世界中のお母さん達のこと。そのやり場のない悲しみと一生癒されることのない悲しみを想うと涙が止まらなくなります。

  • 終戦から二十五年後の広島の中学校。原爆の被害に遭ったひとや、その家族がたくさんいる時代だが、そのとき何があったのか、聞こえてはこない。だから知ろうとして、ごく身近な人々に聞いてみようと思った。ごく身近な家族がいきなり「いなくなってしまう」不幸。その上、「本当に死んだのか」と信じられないという残酷な出来事が、敵も味方も、膨大に起こりうるということは、誰にとってもかなしいこと。こういいう本が、「ふと手に取れる」状況が必要だと思いました。

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著者プロフィール

朽木祥 広島市生まれ。被爆二世。上智大学大学院博士前期課程修了。Postgraduate diploma course of Trinity College, Dublin 修了。著書に『かはたれ』(児童文芸新人賞、日本児童文学者協会新人賞ほか受賞/福音館書店)、『風の靴』(産経児童出版文化賞大賞/講談社)、『光のうつしえ』(小学館児童出版文化賞、福田清人賞/講談社)、『彼岸花はきつねのかんざし』(日本児童文芸家協会賞/学習研究社)、『あひるの手紙』(日本児童文学者協会賞/佼成出版社)、『オン・ザ・ライン』(全国青少年読書感想文コンクール指定図書/小学館)、『たそかれ』(福音館書店)、『引き出しの中の家』(ポプラ社)、『八月の光 失われた声に耳をすませて』(小学館) など多数。鎌倉市在住。

「2019年 『バレエシューズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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