晴れたり曇ったり

著者 :
  • 講談社
3.59
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本棚登録 : 366
レビュー : 62
  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062183741

作品紹介・あらすじ

「もういない、でもまだいる」 この前、好きだったひとを、みかけた。まちがいない。会いたいと思いながら会えなかった人に、ようやく会えた。そう思ったとたんに、その人がもうなくなっていることを思いだした。
「ぬか床のごきげん」 ぬか床には四種類の期限がある。笑うぬか床、慇懃なぬか床、怒るぬか床、そして淋しがるぬか床。
「真夜中の海で」 大学では生物を勉強した。私の卒業研究は、「ウニの精子のしっぽの運動性」だった。
「晴れたり曇ったり」 大学時代、バスの窓越しに見かけた喫茶店「晴れたり曇ったり」。一度訪ねてみたいと思いつつ、いくことはなかった。

感想・レビュー・書評

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  • いま読んでいる小池昌代さんの散文集に川上さんの(これとは違う)エッセイの紹介があって気になり、たまたま書架にあったこのエッセイ本を借りる。

    匂いの記憶
    ぬか床のごきげん
    いつもそばに本が
    お訊ねしますが
    いつもそばに本が2
    晴れたり曇ったり

    の章にわかれている。

    匂いの記憶、ぬか床のごきげん、いつもそばに本が、いつもそばに本が2 

    が、ものすごくよくってついうっとりしてしまった。昔の記憶、香りの記憶よく覚えているよなぁ…、作家ってすごーい…と思った。

    お手伝いをしない、宿題してない、夕方になっても帰らなかった…などで、おしおきでよく怒られて外に追い出された時の、昼とは違う庭の夜の顔や雰囲気…をつい思い出してしまった。こういう記憶から『七夜物語』を書いたのかな…と、ちょっと感動した。

    いつも本がそばに…も昭和の薄暗い、じめっとした部屋で、こっそり見た人体大図鑑とか本の匂いやその時の雰囲気がよみがえってきて思わずシンクロした。いまはもう取り壊されてしまったけど育った家を思い出した。

    川上さんの作品もっともっと読みたくなった♪

  • 川上弘美って、やっぱり普通と違う(笑)
    いつもの通り、皆が見過ごしそうな物に気が付いて
    エッセイなのに、まるで俳句の様な濃縮感

  • 初めて川上さんを読んでから、
    読む度にひらがなが好きになります。

    それまで、たくさんの漢字で
    ぎゅうぎゅう詰めにされた文章を
    頭が良い、と思っていた10代

    それをいとも容易く裏返したのが川上さんです。

    今回もひらがなのように、
    柔らかくて、丸みを帯びています。

    それでいながら漢字のバランスも絶妙。

    相変わらず、目に映る
    文字のビジュアルで内容が入ってきます。

    川上さんの頭を覗いているような
    図々しい気持ちになります。

  • エッセイ集。
    結構最近の本でした。
    作家の着眼点って変わっていて本当に面白い。何でもないような物事を何でもあるように思わせる書き方が出来るのは、日常の何でもないようなことに気が付いて常に考えているからなんだなとよく分かります。

  • 『目の前にあるものを良しとするあまり、記憶の中のものの価値をゆがめてはいけない、でもその記憶の中のものは事実よくないものだったかもしれないということも、疑い忘れてはならない。などと、意味があるんだかないんだかよくわからない、格言(にしては長すぎる)みたいなものを、一人でぶつぶつつぶやいた』ー『ぬか床のごきげん』

    やっぱり、と思う。川上弘美は怒りん坊なのだなあ。恋愛小説家だとか、あわあわだとか。そんな形容には少し違和感があった。間違っていると正面から言い募るほどではない。確かに恋愛小説(らしきもの)を書くし、あわあわと言い表したくなる言葉を連ねる。でもそれは、多分に表面的な特徴で(でもそこに惹かれもする)きっと何か言葉に置き換えられないものが裏側にある。それは、怒りに似た感情なのかな、と思っていた。

    例えば、神様の書き直し。これは随分と直接的な怒りの表現だなと思う。もちろん川上弘美は大きな声を出して怒るわけではなく、ぶつぶつと、あるいは、ふつふつと、静かに執念深く怒る。こんな怒り方をする人は、逆にかつてもっと感情の赴くままに怒鳴り散らし気味だった人ではないか、とも思う。その兆の一つは、この本に収められた文章でも語られる、マダガスカルへの新婚旅行。勝手に二時間も早く飛行機が飛び立ったのを知り、忘れたと思っていた(と、川上弘美は言うけれど鵜呑みにしてはならない)英語が腹の底からどんどん飛び出して文句をまくし立てた、というエピソードが別のエッセイで語られている。スイッチが入った途端、普段は使わない言語で怒りを爆発させるなんて、そもそも凄味があるけれど、そんな風に、涼しげな表情の裏側では熱い溶岩が底の方で煮えたぎっている。それが川上弘美だと思う。

    このエッセイ集の中での怒りは、もっぱら社会派的な怒り。それを少し珍しく思いながら読む。年齢を重ねて社会の仕組みが見えて来るが故に、少し世間からずれていると自らを分析しつつも怒りが収まらない、ということなのかも知れない。けれども、それはむしろ自分自身を意味付ける言葉としての文脈をそう置いてみただけのことなのでは、とも思う。常にもやもやとした感情が根元にあり、分からないまま吐き出してみると怒りとなるのでなんらかの説明を試みる、という図式なのではないかと訝しむ。その根っ子には、娘としての自分の立ち位置に対する違和感というものがあり、母と娘という関係が作り出す緊張感があるのではないか。幾つかの川上弘美の小説を読みながら、同じようなことを考えたことを、思い返してみる。

    そんなこと言ってはみるが、実は川上弘美のエッセイを読むことは、ラムネ菓子を舌の上でしゅわしゅわと溶かすのを楽しむような喜びがある。それは、川上弘美独特の潔さを垣間見るから。例えばこれも他のエッセイで読んだ話。直情的に準備もなしに家出をする。それでも毎日学校へは行くのだが、下着は一つしか持っていない。前の晩に洗って干すのを忘れた日、まあいいか、とノーパンで学校へゆく。まあいいか、と言う態度の竹を割ったようなところに、川上弘美特有の艶っぽさが加わる。しかもそんな危なっかしさに何度となく行き当たっていることが、エッセイの中で明かされる。それを演出かも知れないと用心しつつ、その先へ引き込まれるような心持ちに抗えない。

    小説以外の文章が必ずしも創作ではないと言い切れないところも、また、川上弘美の特徴だ。「東京日記」のように日記の体裁を取っているものでさえ、非現実的な「おはなし」がそこにはある。そこにカモフラージュされた世界には、川上弘美にしか見えない現実の世界の色が言葉にされてまぶされている。それを感じ取ってしまうと、現実と想像の狭間に身を捕られたような心地が生まれる。だから、この本や「此処 彼処」のようなエッセイの中で、どれだけ個人的ことを語っていたとしても、決して鵜呑みにしてはならないとも思う。それでも、ここに収められた文章たちの中では随分と素直な面がさらけ出されているようにも思う。例えば、家族のこと。子どもの話以外のことを川上弘美が書いている文章は珍しい。離婚のことや、母親のこと、祖母のことなどが、するすると語られる。そこで明かされる昭和な少女の姿や思春期の思い、更には小説を書きたくても書けなかった時代の、そんなエピソードたちがやっぱり書かれた小説と繋がっていることが見えてくる。その時代そのものが澱のように言葉の素になった思いの底に沈殿していたのだ、と一人勝手に合点する。

    もちろんそれは、多分に同じ時代をやり過ごして来たことによる勘違いという面もあるとは思うけれども。それでも、川上弘美を通してあの時代の舗装されていない道路や近所の子どもたちの服装や表情が、くっきりとした明暗を伴ってよみがえってくるのを止めることは出来ないのだ。

  • おしゃれなエッセイ集。

    「へへん。」で生きていること自体のスランプってのを考えてしみじみとする。「号泣する準備はできていた」でクスクス笑う。「ナウシカの偶然」で自意識過剰すぎる今の自分を見直してしゅんとした。
    本に関する話では、読みたくなる小説もちらほら見つかる。

    ちょっと憂鬱な気分の時に読み始めてちょうどよかった。
    これからはそんな時、「晴れたり曇ったり」とつぶやこうと思う。

  • P72
    ぬか床のごきげん
    その一、笑うぬか床
    その二、慇懃なぬか床
    その三、怒るぬか床
    その四、淋しがるぬか床

    表現力がすてきです。そんな語彙しかない私が、恥ずかしい。一つ一つきちんと考えられた単語。独特の物の言い回し。
    さすが作家!だと感じた。

  • 前回読んだ日記のエッセイには書いてなかった離婚が書いてあった。離婚したんだねぇ…。

    吉行淳之介さんの『菓子祭』も気になったけど、石井桃子さんの『幼ものがたり』は絶対読むとおもう。

    人からよく道を尋ねられると著者が書いている。私も旅先でよく尋ねられる。もしかしてほとんどの人がそう感じているのか?

    私自身、人から尋ねられるのは、顔立ちが人のよさそうなさまをしているからとずっと自負していたが、娘によく道を尋ねられるというと「歩く速度が人より遅いから掴まえやすいんでしょう」と言われ、即、目から鱗が落ちました。

  • 日々を見つめるエッセイの寄せ集め。

  • +++
    日々の暮らしの発見、忘れられない人との出会い、大好きな本、そして、「あの日」からのこと。いろんな想いが満載!最新エッセイ集。
    +++

    川上さんの欠片の一部を集めて並べたようなエッセイ集である。個人的には、作家さんのエッセイは、読まなければよかったと思わされることも多いのだが、川上弘美さんのエッセイは、小説から想う著者像を裏切らず、さらに深く納得させてくれるので好きである。町のどこかでそんな彼女に偶然出会いたいと思わされる一冊である。

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著者プロフィール

1958年東京都生まれ。お茶の水女子大学理学部卒業。著書に『蛇を踏む』(芥川賞)、『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)、『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)、『水声』(読売文学賞)等。

「2018年 『話しベタですが… 暮らしの文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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