ルカの方舟

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062183758

作品紹介・あらすじ

人類史を変える謎。究明は、一人の天才に託された。
火星からの隕石に、生命の痕跡が発見された。そんな折、一通のメールが科学誌ライターの小日向に届く。それは、火星隕石に関する論文偽装を告発するメールだった。研究室に赴いた小日向は、教授の遺体を発見する。保管庫には、方舟の形をした黒い個体が残されていた。黒色の物体を鑑定した科学警察研究所の女性研究者・佐伯は、それが火星隕石であったことを証明する。天才惑星科学者・百地が語る衝撃の真相とは!

感想・レビュー・書評

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  • ミステリの原点が横溝正史と江戸川乱歩で、ぽーんと飛んで新本格派、のわたし。なので、鍾乳洞の迷路や菊人形やマントの怪人や妖しいアミューズメント孤島やヘンな館などが大好物。
    でも、いわゆる「理系ミステリ」も好きなのです。

    理系ミステリでよく見るのはコンピューター関係か医療、生化学あたりだけど、本書は宇宙科学の研究センターが舞台。ライトなスターウォッチャーでもあるので、そこに興味を引かれて手に取った。

    パタゴニア北氷床で採取された火星由来の隕石「HYADES1201」に生命の痕跡が発見される。研究論文を発表したのは、帝都工科大学アストロバイオロジー研究センターの笠見教授のチーム。
    一躍「時の人」となった笠見教授。だが、彼を取材していた科学雑誌「プリズム」の記者・小日向のもとへ、当該論文のFFPを告発するメールが届く。差出人は「ルカの末裔」。
    FFPとは、Fabrication(捏造)・Falsification(改ざん)・Plagiarism(盗用)の頭文字を取った言葉。
    翌日アストロ研を訪ねた小日向が見つけたのは、実験室でこと切れた笠見と方舟の形の黒い物体。黒い物体は高温電気炉で融かされた「HYADES1201」だった。

    笠見教授の死は事故なのか。なぜ「HYADES1201」は方舟型にされたのか。
    ルカの末裔が告発するFFPは事実なのか。ルカの末裔とは何者なのか。

    センター側から真相の究明を任されたのは惑星科学者の百地理一郎。
    天才として名前を知られる彼だが、ここ数年は何を研究しているのか誰も知らないというちょっと変わった科学者。三日月形の目を細めて「あは!」と笑うのが癖(?)。
    クセはあるけどアクはないので、キレッキレの探偵や天才がお好きなかたには物足りないかもしれません。
    やる気があるんだかないんだかわからない会話や行動が天然っぽくて、わたしは好きです。調査に協力することになった小日向とも、百地とはちょっとした縁がある科学警察研究所の佐相とも、よいコンビ(時にトリオ)。

    理系ミステリといっても特に難しい話はなく、専門的な用語も都度都度もしくは少し後に説明される。
    パンスペルミア説、磁鉄鉱、生体磁石、酸素同位体比などなど、聞いたことはあるけど自分では説明できないことがよくわかっておもしろかった。
    研究者の世界の闇の話もあり、いつでもどこでも何の世界でも一番たいへんなのは「現場」の人間だなぁとなんだかやるせなくなった。だからといって不正はよくないけれど。
    そんな暗い闇も百地のキャラのおかげか、とことん重苦しくならない。
    文体もさらりとしているので、文字通りさらさら読める。
    一同を集めて事件の解明の場面と、その後のエピローグ的な部分は丁寧に書かれており――正直少し冗長に感じた。けれど、最後にドタバタして慌しく収めるよりは好印象。(って、偉そうですみません)

  • 大学の研究室に突然送られてきた一通の告発メール。
    科学研究や論文に不正行為があるとする内容に一同困惑する中、研究室内で謎の殺人事件が起こる。

    伊与原さんお得意の科学ミステリー。
    今回は惑星や隕石等といった地球科学のジャンルで読み物としても面白かった。
    中でも、磁鉄鉱を体内に持つ微生物や動物の話が個人的に興味深い。
    磁気感覚を持つと地磁気の向きを感知して鋭い方向感覚を持つ、なんて羨ましい。
    だとすると方向音痴の動物は磁鉄鉱の割合が少ないということか。それは生きる上でも辛い。。
    方向音痴の渡り鳥や鮭がいたら面白そうだけど、本人にとってはそれこそ死活問題だろう。
    磁鉄鉱を脳内に持つ人間の場合、その磁気のせいで生じる激しい頭痛は嫌だな。でもほんの少しでいいから、磁鉄鉱が脳内に備わると便利だろうなー。

    それにしても科学者達に対する厳しすぎるプレッシャーには同情してしまった。
    こんな圧力を常にかけられていたら、ついデータも偽造したくもなる。
    「科学の世界に『あり得ない』と言い切れる実験結果などない」
    百地教授の言葉に救われた。

  • 隕石を分析する大学の実験室で人が亡くなった。事故死か他殺か?科学誌の記者と大学教授が調べていく話。
    科学的な説明がわかりやすく、なるほどと思うことが多かった。隕石ひとつでこんなにも調べること分かることがあるのか、自然の大きさに学問の広さに驚いた。それに比べ大学の狭い世界の人間関係や利害関係に悲しくなった。仕方ない面もあるのかもしれないけど。
    犯人の予想がつきだしてからの展開が複雑で最後まで楽しめた。

  • おもしろかった。
    しっかし、今読むとどうしてもスタップ細胞を思い起こしてしまう。
    発行は去年なので、
    こーゆー問題はもとからあったことなのね、と思う。
    難しいよなあ。
    研究ってやっぱりそれなりの情熱、だとかがないとできないんだろうが、結果が出るとは限らないわけで、
    今や世の中全てが結果至上主義、とゆーか、
    利益がでないと意味ない、とゆーか。
    ムダにみえることがいつか、大きなことに繋がる可能性ってのもあるんだろうに、その不確定なものに懸ける余裕ってのが、人にも社会にもなくなっている気がする・・・。

    ブラックすぎるはかせのはなし、は実際にネットに載ってたのを引用したみたい。
    うう、こわいわあ。
    地道に頑張っても報われない。
    そんなことは世の中ザラにあることだが、それでも
    いつかはちゃんと報われて欲しいんだがなあ。

    百地先生の、「あはっ」な笑顔がくせものすぎて笑える。天才って、キャラクターとしてはとても魅力的だけど、側にいたらいらっとさせられることも多々あるのかも。

  • 人類史を変える謎。究明は、一人の天才に託された。
    火星からの隕石に、生命の痕跡が発見された。
    そんな折、一通のメールが科学誌ライターの小日向に届く。
    それは、火星隕石に関する論文偽装を告発するメールだった。
    研究室に赴いた小日向は、教授の遺体を発見する。
    保管庫には、方舟の形をした黒い個体が残されていた。
    黒色の物体を鑑定した科学警察研究所の女性研究者・佐伯は、それが火星隕石であったことを証明する。
    天才惑星科学者・百地が語る衝撃の真相とは!
    (アマゾンより引用)

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  • さすがの伊与原作品。
    評価は別れるのだろうけど、個人的には好みバッチリ、かなり上位のお気に入り。

  • やっぱり伊与原新は面白い。
    ひさしぶりの理系ミステリー堪能。
    論文の偽装、ルカの意味、方舟の意味、
    ラストの描かれる真実。
    続編が読みたい!

    映像にしても十分楽しめる内容だと思う。
    科学誌ライターの小日向に松坂桃李
    天才惑星科学者百地教授に小日向文世
    なんてどうかな。。。

    コンタミも読む予定。

  • 2022.2.1読了

  • とてつもなく壮大な事象を扱った物語で、読み終わってなんだか無性に夜空を眺めたくなった。
    研究者と呼ばれる方たちの努力や熱や闇がどれも身近に感じられる素敵な話だった。

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著者プロフィール

1972年、大阪府生まれ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。2010年、『お台場アイランドベイビー』で第30回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。19年、『月まで三キロ』で第38回新田次郎文学賞を受賞。20年刊の『八月の銀の雪』が第164回直木三十五賞候補、第34回山本周五郎賞候補となり、2021年本屋大賞で6位に入賞する。近著に『オオルリ流星群』がある。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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