未明の闘争

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 177
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (546ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062184922

作品紹介・あらすじ

「ずいぶん鮮明だった夢でも九年も経つと細部の不確かさが現実と変わらなくなるのを避けられない。明治通りを雑司ヶ谷の方から北へ池袋に向かって歩いていると、西武百貨店の手前にある「ビックリガードの五叉路」と呼ばれているところで、私は一週間前に死んだ篠島が歩いていた。」 これは『未明の闘争』の始まりなのだが、引き込まれながらも、違和感を感じ、いろいろと考え悩んでしまう人もいるだろう。著者の保坂和志さんが『未明の闘争』について書いているので触れてみたい。
《冒頭の段落で、「私は一週間前に死んだ篠島が歩いていた。」という文法的におかしいセンテンスが出てくるが、文章というのは記号としてたんに頭で規則に沿って読んでいるだけでなく、全身で読んでいる。だから文法的におかしいセンテンスは体に響く。これはけっこうこの小説全体の方針で、私はその響きを共鳴体として、読者の五感や記憶や忘れている経験を鳴らしたいと思った。》
鳴らされる。読み進めていると、無性に大切なものを抱きしめたり、眠ったり、子供の頃を思い出したり、セックスしたり、ジミ・ヘンドリックスの曲を聴きたくなったり、何処か知らない所に行きたくなるのだ。
 そして、この小説について、ある人はジョイスに匹敵するといい、また他の人はガルシア・マルケスに比肩するといい、いやいやドストエフスキーだと話す。それにしても、大作感溢れているのに私たちの近くにあるのはなぜか。もう一度、保坂さんの文章に頼ってみる。
《作者は作品の外にいる存在だから、作品に働きかけることはあっても、作品から働きかけられることはない──つまり作者は作品に対して神のような存在であり、作品に流れる時間の影響受けない、というのが普通の作品観だが、一年くらい経った頃から「それはおかしい。おかしいし、つまらない。」と思うようになった。》そうなのだ。3・11以降の日常と非日常がごちゃまぜになっている我々の本当にリアルな現実が目の前に登場してくるから常に新しいのである。そう、この『未明の闘争』は我々の物語なのである。 
 チェーホフ、ゴーゴリ、宮沢賢治、小島信夫……という文学や、セシル・テイラー、三上寛、ローリング・ストーンズ……という音楽に彩られたこの小説は、【今を大切にしたくなる本】の最高峰といえる。

感想・レビュー・書評

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  • 2009年から「群像」で連載が始まって読んでいたが、東日本大震災の後にしばらくほとんどの小説が読もうにも読めなくなった時期にこの小説だけを読むことが出来た。その点で忘れることがないだろう大事な本である。単行本刊行時は高知県に居たが、友人がサイン本を送ってくれた。銀色の文字でサインされていて、大切にしている。

  • 死んだはずの友人篠島を交差点で見かけたことに端を発する壮大な思考のクロニクル。

    横道にそれたっきりもう戻らないだろうと思っていた話が数十ページ後に蒸し返されたりする。

    紙の上では長い時間のようにおもえるが人間の思考というのは瞬時にこれぐらいの飛躍を成し遂げる。

    通常の言語化作業では、要約や編集がされるはずのものを著者は全部トレースしようとした。

    ときに冗長に思えてもリアルな会話とはそういうものだ。

    柴田元幸氏は長い文章を書く米国の作家T.R.ピアソンのことを「それ自体はべつに面白おかしくない出来事を面白おかしく語って面白おかしい小説に仕立て上げる」と評価し、 「何にも奉仕しない小説が一番偉い小説」と述べている。

    保坂和志もそれに類するタイプの作家ではないだろうか。

  • ?な小説

  • 保坂和志さんの小説は好きなのだが、猫や犬の話になると全く興味が失せる。それでも好きと言えるのか⁉︎


    "「カエル顔の女とサル顔の男はモテるのよ。」 "92ページ

    "私はいいな、かわいいなと思っている女の子相手だとこういうちょっとエッチな話をしているだけでも、こっちの下心が刺激されて、どうせそこから先は何もないとわかっていても満足感があるのに(略)" 105ページ

    "耳から入ってくる言葉は内容の妥当性よりもこっちのその人に対する傾倒によるところがほとんどで(略)" 107ページ

  • わけがわからなかった
    誰にも共感できなかった
    ネコや自然描写、目に前にいるかのような人々の描写はうまいなあとは思うけれど
    この作者は苦手だな
    《 過去現在 通り過ぎる人 うつろって 》

  • 保坂和志「未明の闘争」http://bookclub.kodansha.co.jp/product?code=218492 … 読んだ。先日の「これは小説ではない」http://booklog.jp/users/brazil-log/archives/1/4891769866 … と同様に(あっちよりは各パートにまとまった分量はあるけど)おそろしく説明のしにくい、でもこれが読書でしょ!と言いたくなる(つづき

    初っ端の文章のてにをはが変で何度読んでも変なので、これが今この人がやりたいことなんだなと思って先へ進む。核になる筋は無くて会話が異様に観念的な方向へ振れるのはいつもどおり。脈絡なく話も視点も飛んで、夢やとりとめない考え事を書き起こしたかのよう。これは小説でしか成し得ない(おわり

  • 2014/10/9読了。

  • 読書会のために読んだ。この本をきっかけに怒濤の保坂和志旋風が巻き起こる。(もちろん自分の中で)

  • 2014.08.語り手の星川を中心に飼い猫や飼い犬の話,幼なじみのアキちゃん,浮気相手の村中鳴海,死んでしまった同僚の話など訳のわからない支離滅裂な理屈っぽい言い回しの長ったらしい小説.面白くも何ともないつまらない話だった.

  • [2014.04.14]

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著者プロフィール

1956年山梨県生まれ。「プレーンソング」でデビュー。「草の上の朝食」で野間文芸新人賞、「この人の閾(いき)」で芥川賞を受賞。「季節の記憶」で平林たい子文学賞、谷崎潤一郎賞、「未明の闘争」で野間文芸賞、「こことよそ」で川端康成文学賞を受賞。

「2019年 『文学2019』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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