〈正常〉を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告

  • 講談社
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (450ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062185516

作品紹介・あらすじ

2013年5月、世界の精神科医が診断・治療の基準にするマニュアル「DSM(精神疾患の診断と統計マニュアル)」が大改訂され、本来は投薬の必要がない患者にまで薬漬けになる危険性が生じた。精神の「異常」「正常」はどう線引きできるのか。今回の改訂はなぜ失敗なのか。最悪の事態を避けるために今、われわれはどうすればいいのか──アメリカ精神医学界を牽引してきた著者が、警告を発する。

感想・レビュー・書評

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  • DSM-5の問題点を記述し、診断のインフレ化と誤った治療による副作用、その他弊害を指摘した本。
    本人の自然治癒力を大切にする一方、極端な反精神医学には懸念を持つ等けっこう中立的な立場で話を進めている(製薬会社への批判は個人的な恨みでもあるのかと思うくらい痛烈だが…)。日本では禁忌である自己診断についても「利益はリスクをはるかにうわまわる」と肯定的。

    診断の流行りを「ダイアグノーシス・ドゥ・ジュール(本日のおすすめ診断)」と皮肉る言い回しが好きで、使ってみたくなった。

    日本においても神経症、発達障害、適応障害、最近ではゲーム依存等診断のインフレ化が進んでいる。診断を受けることで医療・福祉サービスの受け手となり、適切な治療がなされて人生が好転するのは素晴らしいことだと思う。一方で、一度診断されれば多くの責任が免除されるのは恐ろしいことだし、それが患者の力を奪うことにもつながる。「病気があるから、何もできない」と疾患名を印籠のように扱い、前に進む動機を失う人をたくさん見てきた。
    診断は手軽なものではなく、時間をかけてあらゆる可能性を考慮した上で、つける必要が多分にある場合に限ってつけるべきであるという著者の考えに同意する。

  • 精神医学におせる正常と異常の判定は、基準で割り切れるものではない。基準があることで、診断のインフレが起き、異常と判断される人が増え、過剰や薬物治療が行われている。人間は本来もっと「正常」だ。

    多少安全側に振れているだけのレベルではなく、過剰な薬がむしろ害になっている、という状況だと知りました。

  • アレン・フランセスはDSM-IV (1994年)の編集委員長を務めた人物である。DSMの第5版は単なる更新ではなかった。それは製薬会社からのリクエストに応じる新たな症状の創造であった。聖書が罪を定めるようにDSM-5が病気を決めるというわけだ。病気が増えれば薬は売れる。
    http://sessendo.blogspot.jp/2016/07/dsm-5.html

  • 2015/10/21

    「まるで歯の治療のよう。昔がいくらか不ぞろいでも、丈夫であれば問題なかったのに、今は全部まっすぐで真っ白でなくてはならないのだから」

  • 精神科診断のインフレがハイパーインフレになってしまうという危惧をDSM-IVを編纂した人が抱いているということで新鮮だ。DSM-5は確かに使い物にならん、し、その日本語訳もどれもまあいただけないというか日本語素養のないところを丸出しにした下品なものが多いと思う。

  • 製薬会社と自称専門家のための過剰診断を告発する内容はありがちで図るが、著者がDSM-Ⅲの起草者の一人というのが説得力がある。DSM-Ⅴに警告を発し、題名の通り過剰診断を戒め、人生の営みの中で誰もが経験しうる心の変化を、「正常」の世界に取り戻そうとしている。

  • DSM5をしっかり理解している訳ではないので詳細な論評はさけたい所であるが、DSMⅣ編集責任者が5への改訂内容があまりに看過できないものがあるために書かれた本である。DSMが「バイブル」になることで、治療が必要でない人が治療を受けることによって、本当に治療や援助が必要な人が受けれなくなっている現状がある。DSMⅣからの米国の現状であるが、現在の日本の状況をそのまま言い当てているほどであった。特に誤診と誤治療から抜けるための助言として、アルコールとドラッグの影響を軽視するな、はやりの診断を軽快せよ、製薬企業を警戒せよ、自然治癒の重視。当たり前のことであるが、この当たり前のことが見えにくくなっているのが、現在の状況であるという認識から始めないといけないだろう。

  • 診断のインフレの影響は、様々な場面で見られます。

    2016年に障害者差別解消法が施行されて以降、大学においても、障害のある学生に合理的配慮を提供することが義務付けられました。

    日本学生支援機構は、国内の大学における障害のある学生の在籍者数の推移をホームページで公開していますが、この中で、精神障害と発達障害のある学生の数が急激に伸びています。

    この状況にも診断のインフレの影響は少なくないだろうと思われます。学生が大学機関の中で合理的配慮を受ける資格を得るために、医師による「積極的診断」が行われていることが想像されます。

  • 翻訳のせいか、すごく読みにくくて途中から斜め読みした。

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著者プロフィール

アレン・フランセス(Allen Frances)
デューク大学医学部、精神医学・行動科学学科名誉教授。医学博士。『精神疾患の診断と統計マニュアル』第4版(DSM-IV)作成委員長、DSM-IIIおよびDSM-III-Rの作成の主導メンバーの一人でもある。著書に、世界的ベストセラー『正常を救え』(講談社)のほか、『精神疾患診断のエッセンス』(金剛出版)、『DSM-IV-TRケーススタディ』(医学書院)などがある。

「2020年 『アメリカは正気を取り戻せるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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