物語ること、生きること

  • 講談社
4.13
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本棚登録 : 698
レビュー : 85
  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062185684

作品紹介・あらすじ

大好きなことを仕事に出来たら、どんなにいいだろう。
 みなさんの中にも、そんな憧れを抱いている人がきっといると思います。
 私も、そんなひとりでした。
 子どもの頃から、たくさんの物語を夢中で読んできました。いつかこんな物語を、自分でも描けるようになりたい。どうしたらそれが出来るようになるのかもわからないまま、手探りで道を探していたのです。(本文「はじめに」より)

 『獣の奏者』、「守り人」シリーズなど、ベストセラーを生みつづける作家・上橋菜穂子による、読書する喜びと自身の体験、そして物語を書くことについての、初めての語りおろし。

感想・レビュー・書評

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  • 上橋菜穂子さんが作家になるまでの歩みをまとめた1冊。
    「おばあちゃんとわたし」という子供の頃の上橋さん(めっさ可愛い)が登場するお話から始まるこの本は、上橋さんがとてもたくさんのものへの憧れを持っている人であること、臆病な自分を何とか奮い立たせて世界を広げてきたことを教えてくれる。
    どのエピソードもキラキラと輝いていた。
    上橋さんは「靴ふきマットの上でもそもそしているな!」と自分自身に活を入れるそうなのだけど、実際に靴ふきマットの外に飛び出すのにどれほどの勇気が必要なのか。
    やはり臆病者の私には勇者にしか見えないのだった。
    だからこの本を上橋菜穂子さんという1人の勇者の物語として私は読んでしまった。
    あと、やはり広くて深い世界の物語として。
    上橋さんの物語は私に世界の広さを教えてくれる。
    自分と異なる他者の中にある世界の広さ。そして深さ。
    あの物語がどこからやってきたのかの答えの一部がこの本の中にある。
    あるんだけど、それだけじゃない。
    この本にも世界が広がっている。
    上橋さんは本当にすごい。やはり勇者にしか見えないのだった。

  • 大好きな上橋さん自身の物語。
    「どうやったら作家になれますか」という問いには、具体的な書き方の技術でなく、どんな人がどんな風に思って、どのようにして作家になったかという物語が一番の答えになる。

    上橋さんの生き方を丁寧に紐解いていますが、ふいにエリンやバルサの欠片を見つけて嬉しくなりました。
    私の好きな作家の方たちはよく、物語について、書かずにはいられない、と言います。
    上橋さんもそんな、作家としての性の持ち主だったのでしょう。
    ただ、そんな人たちがすべて作家になれるわけではなく、一歩踏み出す勇気が必要なんでしょうね。

    私も祖母や祖父との幼い頃の思い出は何にも代えがたい宝物ですが、そんなことをふと思い出しました。
    小さい頃に毎日母が寝る前に読んでくれた絵本のことも思い出します。

    甘ったれの幸せな子どもで、このままじゃ作家になんて絶対なれないと思っていた上橋さんが、人に笑われても一心に努力する偉人たち(偉人伝)に励まされたり、同じものを見て人とは違う見方をするかだということに気付いたりするエピソードも印象的でした。

    彼女の生い立ちを知ることで、どうしてあんな素敵な物語が生まれたかに触れることができて幸せです。
    心に残る人生観も数多い。それにやはり、言葉が美しくていいですね。
    著者をはじめ、この本を世に出してくれた方々に感謝です。

  • 「精霊の守り人」の作者、上橋菜穂子さんが語る、どうやって作品を生み出しているのかと、どうやって作家になったのか。
    繰り返し尋ねられては断り続けてきた彼女がアンサーとして出した一冊。
    研究者にもなれない、作家にもなれない、と涙が止まらなかった日々や、研究者としてオーストラリアをひたすらハンドルを握り走り続けた日々とその時の思いを、率直に語ってくれています。
    「子どものころ、時を忘れて物語にのめりこんだように、私はいまも、物語を生きるように、自分の人生を生きているような気がします。」p171
    簡単な道などない。一歩踏み出した先に、次の道が開ける。
    「古くてあたらしい仕事」を読んだ時と似た読後感。その人が語る、仕事とは、生きがいとは。
    「物語にしないと、とてもつたえきれないものを、人は、それぞれに抱えている。」
    だから、私たちは物語を読み、自分自身の物語を生きている。
    それぞれが抱えた物語を、大切にできる世の中であってほしい。そんなことを思った。

  • 上橋さんはほとんどぜんぶ読んでいるけれど、上橋さん個人のことは、対談などでうかがい知るほかは何も知りませんでした。こどもにも読めるように平易に書いてあるのに、大人が読んでも面白い。上橋さんの描く物語には、これだけ重厚なバックボーンがあったのだと、驚きの連続でした。世界観や地球環境、現代の社会問題なども、人類学者としての目線でさらりと語られていましたが、ことばを選ぶのは難しいはずです。
    上橋さんが古武術によって身体の動きを知っていたので、バルサの殺陣も息を呑む緊張が生まれていたのだと、あらためて知りました。
    物語を聞かせ続けてくれたおばあさま、好きでたまらなかった本。必死になって身体を動かし続けたこと。
    それらが謙虚に語られています。上橋さんはインタビューを受けたので、書いた人は違うのですが、上橋さんを浮かび上がらせて、見事な構成だと思いました。
    上橋さんの物語は、この後もずっと語られてゆくことでしょう。それは上橋さんの人生そのものだから。

  • 物語を書いてみたいと、作家になりたいと読書が好きな子供なら一度位は思ったことがあるのではないだろうか。

    それでも読む側のままの人と、物語を生み出す人の違いってなんだろうと思ってた答えが、この本からおぼろげに見えてきた気がする。

    自分の好きなこと、興味があることを突き詰めて行く強さ、一歩を踏み出す勇気。上橋さんは家でぬくぬくミルクティーを飲んでいたいタイプといいながら、毎回悩みながらも自分で自分を鼓舞して、温かい場所から抜け出し、自分を新たな場所へ運んでいる。

    「経験は大切です。でも、べつに、人と違うことをたくさんしなければいけないということではなくて、むしろ、人と同じことをしていながらわ、そこに人とは違うものを感じ取ることの方が大切だと思います。」

    どんな人間にも話したい思いや考えや物語が頭の中に詰まっていて、物語はそこにあるはず。ただ、「一言主」になり、自分の気持ちや興味があることを掘り下げられなければそこで終わってしまう。自分自身に興味をもち自分を理解した上で、周りのことに興味をもち広げていける人、そして最後までやり通す粘り強さがある人が、自分の頭の中にある物語を他の人が読める「本」という形にできるのだろう。

    これから作家になろうとしてる人にも、なにか始めたいと思っている人にも、上橋さんが手を差し伸べて一緒に頑張りましょうと言ってくれているような本でした。

    靴ふきマットの上でもそもそしていないで、自分で自分の背中を蹴っ飛ばして、一歩新しい場所に踏み出したくなります。

  • 上橋菜穂子さんの作品の、一人一人の登場人物たちが、なぜあんなに生き生きと胸に迫るか、それがよくわかる。すべての人物が、上橋さんの分身だからだ。自分が行動して得た、喜び、悩み、痛み、苦しみ。それら一つ一つが登場人物となって立ち現れる。
    何歳になっても、どんな状況になっても、現実から目を背けないで、自分の目で心で物を見る勇気をもらった。

  • 作家の人のエッセイを読むと、
    昔のことを感じたことを含めて、すっごく覚えているなぁということ。
    すぐに忘れてしまう私にはムリだ…。
    上橋菜穂子さんの小説は、骨格がしっかりしていて、物語に厚みがあるなぁと思っていたんだけど、体験したことや感じたこと、考えたことをしっかり組み込んでいるからなんだと思った。
    「むしろ、人と同じことをしていながら、そこに人とは違うものを感じ取ることのほうが大切だと思います。」
    確かに作家として飽きられることなく長く物語を紡いでいくのに、必要な要素だ。

  • 何故勉強するか?よりきちんと分かって欲しい事が生の声で書いてある。
    出来ないと諦める前に足掻いて欲しい。

  • 図書館より。
    物語の舞台裏を見てしまったような気持ちになって、ドキドキした。
    獣の奏者も好きだが、精霊の守人シリーズも好きだ。
    また読み返したい。

  • 2014.3.11市立図書館
    「獣の奏者」や「守り人」シリーズからの引用がしょっちゅうあるので、守り人シリーズをもうちょっと読み進めてから読むべきなのかしら、とためらいつつ3合目。
    「夢の守り人(第3部)」まで読み終えてから、最後まで読み終える。作者の生い立ちや経験・姿勢などがみな物語世界に大きな影響をあたえていること、上橋さんの中に物語のあの人物この人物が生きていることを強く感じた。
    語り上手も相まって上橋さんの半生そのものをおもしろく励まされる物語として読むことができた。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「引用がしょっちゅうあるので」
      おー早く読み終えよう「守り人」(「獣の奏者」は未着手)、、、
      「引用がしょっちゅうあるので」
      おー早く読み終えよう「守り人」(「獣の奏者」は未着手)、、、
      2014/03/14
    • NORISさん
      とりあえず手元の三巻目『夢の守り人』を読み始めています。
      ネタバレが気にならないならば、読み始める前に想像をふくらませてくれるシーンや言葉...
      とりあえず手元の三巻目『夢の守り人』を読み始めています。
      ネタバレが気にならないならば、読み始める前に想像をふくらませてくれるシーンや言葉がいっぱい、とも言えます。
      2014/03/14
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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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