- Amazon.co.jp ・本 (594ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062186018
作品紹介・あらすじ
俺たちは生まれつき、捨てられている――。本州西端、800年前に安徳天皇が没した海辺の街で暮らす高校生・滝本徹は、出生の秘密を抱えていた。ニューヨークをテロが襲った年のクリスマス、徹の親友・相沢良男は世界の無意味を唱え、クリスチャンの国語教師、山根忍へのレイプ計画を進める。一方、地元選出の政治家である徹の実父・倉田正司が権力の中枢へ向かうと共に、対抗勢力の陰謀がうごめき始める・・・。この世を動かす絶対的な力とは、暴力か、権力か、性の力か?人間の悪に対して神は何をなすのか?現代日本のテーマを根源から問う傑作長篇小説。
感想・レビュー・書評
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厚みがある4cmもある長編.長編好きの私でも、これを読了するのはいささか大変。
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600ページに迫る長編の中のどのページを開いても、心理描写は深く丁寧、情景も細かく今そこにある様に描かれています。一週間かけて読み終わりましたが、退屈する時間は全くありませんでした。内容に関しては、保身の為に実の息子を廃人にしてしまったり、息子が関わったレイプ事件の犯人を殺したりと、少しやり過ぎだと思います。
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想像力とその表現に圧倒される。ものすごく美しい。そして気味が悪く、純粋だなと思う。
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文学
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この作家の作品をずっと何かは読みたいと思っていて、これが初。なので、短編はまた違うのか、それともいっつもこんな感じなのかも分からず。そういう前提であっても、「こういうのを意欲作、と表現するのか?」と途中から思いながら、頑張ってなんとか最後まで読んだ。
ずっとつながるテーマがあるのは分かるんだけど、そのテーマに意味を持たせる為に色々書いていて、結局書き過ぎていて、結果読者が読んでて面白いとか共感するとか「読ませる」なんて事はすっかり置き去りにされている?と思った。
盛り過ぎだし、余計な事多いし、どれも中途半端だし。私はやっぱり小説にはその世界に入り込ませてくれる満足感を得たい。この小説は、もう作者について行くのに精一杯になってしまうだけだった。
それでも最後まで読めたのは、作者の力量か。一つずつの出来事はそれなりに事件性があり、これをどうやって最後まとめるのか?と興味があったし。まあ、そのまとめについては、・・・・という感想しか抱けなかったが笑。 -
読んだのは少し前ですがレビューを書いてみます。
田中慎弥最大のボリュームとスケールの超問題作。これが出るまで彼は中短編の作家というイメージが強く、唯一?の長編の『神様のいない日本シリーズ』も割りと薄目だった。それが今回は700ページ近いボリューム。田中慎弥流総合小説とでもいうべきか、内容は多岐にわたっている。暴力・政治・宗教・テロ・・・アマゾンのレビューなどで評されている方も言うとおり、多少散漫になってテーマが整理されていない印象はあるが、日本文壇の中では若手の部類に入る作家としてこの出来は十分すぎるほどだろう。現時点での田中慎弥の最高傑作に挙げたい。
大まかなストーリーの流れは、高校生の主人公が親友たちと女教師のレイプ計画を実行するところから始まる。そして実の父親との直接対決、地獄の黙示録真っ青の父殺しが展開される。あまり書きすぎるとネタバレになってしまうので細かいことを書くのは控えるが、「至高の禁を犯すことによる美の追求」というモチーフは三島由紀夫や石原慎太郎の往年の作品にもみられる。そういう意味においては近代日本文学の系譜にある作品だろう。そういったガチガチの文学作法にのっとっているのだが、物語の始まりのシーンなどは「少年が成長していく物語」の匂いも漂わせており、ビルドゥングス・ロマンとしても読めるようになっていると思う。細かい欠点をあげると、父親との直接対決のシーンはもう少し本質を突いた言葉を登場人物に語らせてほしかった。せっかくの最大の見せ場なのに少しもったいない。もう少し長くなってもいいから、綿密に書き込んでほしかった。何度も言うが田中慎弥の現時点での最高傑作。まとまった時間が取れるときに読んでみてはいかがだろうか。 -
なんかグダグダした感じで途中で飽きてしまう。様々なものが混ざっても良いが、それらを絞りきった上で書かれた物語が読みたい。著者の視点はシャープだと思うのだけどな~。