ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石

著者 :
  • 講談社
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感想 : 68
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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062186681

作品紹介・あらすじ

「ノボさん、ノボさん」「なんぞなもし」
明治二十年。新時代の躍動とともに、ノボさんこと正岡子規は二十歳を迎えた。アメリカ渡来のべーすぼーるに夢中の青年は、俳句・短歌・小説・随筆、あらゆる表現に魅入られ、やがて日本の文芸に多大な影響を及ぼす存在となる。
子規は常に人々に囲まれていた。友人、師、家族から愛され、子規もまた彼らを慕った。そしてこの年、東京大学予備門で運命的な出会いを果たす。同じく日本の文学の礎となる、金之助こと夏目漱石である。志をともにする子規と漱石は、人生を語り、夢を語り、恋を語った。明治三十五年、子規の余命が尽きるまで、誰もが憧れた二人の交際は続く。子規と漱石の友情を軸に、夢の中を走り続けた人、ノボさんの人生を描く。

小説家・伊集院静がデビュー前から温めていたのは、憧れの人、正岡子規の青春。野球と文芸に魅入られた若者の姿は、伊集院静の青春そのものだった。三十年にわたる作家生活の中で、ずっと憧れ、書きたかった。書かなければ、先には進めなかった。

『いねむり先生』から二年半、誰もが待ち望んだ青春小説の誕生!

感想・レビュー・書評

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  • 正岡子規というと私のイメージは子規庵の小さな宇宙での闘病と創作活動でしたが、このノボさんを読んでイメージが覆った。短い35年の人生だったが、一日一日を充実させており最後の瞬間にも俳句を作るなど精力的に生きたのだと思いました。

  • 私にとっては正岡子規といえば結核や脊椎カリエスの闘病生活ばかりがクローズアップされていたが
    この本は、夏目漱石との友情を中心に十代後半から34歳で亡くなるまでの子規が最もエネルギッシュに活躍していた時代のことが、とても丁寧に描かれている

    まるで好奇心の塊、やりたいことが次から次へと泉の如く湧き出てくる子規
    さらに子規は、いつもたくさんの人で囲まれていた
    何と懐の深い愉快な人だったのだろう

    明治の文学史に出てくる伊藤左千夫や長塚節など名だたる作家が子規の講義を聞きに、また自分の書いた作品の評価を求めて、松山や東京の住まいを訪ねている

    そして、一度子規に会った人たちは皆子規の人間的な魅力の虜になってしまうのだ
    私自身も子規の大ファンになってしまった

    たった34年間の人生ではあったが、普通の人の二倍も三倍も貪欲にいろんなことにチャレンジし、何と中身の濃い人生だったことだろうと思う
    しかし、もっと長生きし、母上の八重さんや妹の律さんに、親孝行、妹孝行し、労を労ってあげて欲しかったなと思う

    副題に「小説 正岡子規と夏目漱石」とある
    はじめは、会話も多く小説らしかったが、途中からは評伝のようだった
    巻末に参考文献とかはなかったが、これだけ丁寧に子規の半生を描こうと思ったら、たくさんの文献や資料を調べられたことだろう

  • 以前、坂の上の雲を読み、正岡子規の壮絶な闘病生活が印象に残っていました。
    夏目漱石自身のお話も、ドラマや本などでみたことがありました。
    しかし、正岡子規と夏目漱石と親友だったとは知りませんでした。
    お二人共、それぞれに苦しみ、望んだ暮らしではなかった中、精一杯に生きておられたんだなあと感じました。

  • ノボさん(正岡子規)の人となりが、余す所なく、伝わってきます。本当に愛すべき人です。ベースボールをこよなく愛した天国のノボさんは、大谷選手のメジャーで活躍、さぞかし喜んでいるだろうな。

    夏目漱石との友情も忘れることはできません。ノボさん最期の場面描写は読んでいて辛かったです。

    偉大な文学者について生き生き描き、小説にしてくれた、伊集院静さんに感謝。

  • 『ミチクサ先生』がとても良かったので、正岡子規を主人公にしたこちらを読んだ。
    これも良かった。特に最終章は泣いた。

    カリエスを患い、病状が進行し、その激痛に叫び、時に半狂乱になることもあった子規。子規庵の空気が耐えがたいものになることもあったという。
    でも、子規が亡くなったとき、息子の肩を抱き母が「さあ、もういっぺん痛いと言うておみ」と語りかけた。
    この場面を想像すると、涙が溢れてきた。

    自分の病状を知り、そんなに長くは生きられないと悟った子規。それでも、安静にしていれば、もう少し長くは生きられたかもしれない。
    でも、やりたいこと、やらねばならないことをやり、その後の文学に大きな役割を果たした。
    36歳で逝った子規。その時代にあっても、年数だけで言えば、短いもの。でも、その密度はとても濃く、命いっぱい生き抜いた。深い感動を覚える。

    最終章のタイトルがこれまたいい。「子規よ、白球を追った草原へ帰りたまえ」。
    伊集院静さんの本はエッセイを読んだことはあるけれど、小説はこの本で3冊目。読む人をぐいぐい引き込む作家さんです。

    それにしても、正岡子規がこんなにも傑出した人物だったとは知りませんでした。
    彼の人柄に惹かれて、彼の周囲には多くの人が集い、その中から多くの文学者が出てきたという。

  • 正岡子規の人柄が、魅力が、人を惹き付ける笑顔があふれる話しです。
    夏目漱石もメロメロ?

  • 正岡子規の情熱に振り回される友人たちと家族の愛情が溢れ楽しく読めました。

  •  正岡子規の評伝は何かの折に読んだことがある。ここでは、学生時代に熱中したべーすぼーるに明け暮れるシーンにはじまる導入から死に臨んで青空と白球を思い浮かべる末期までの間の、驚くべき創作活動と熱中した俳句の体系化・評論から広い交友関係までが坦々とつづられる。改めてこうして読むと明治文壇の支柱たる天才であったことがよくわかり、早すぎる死がまことに惜しまれる。中でも主題となっている洒脱と謹厳の好対照のように思える漱石との交遊はほほえましいし、若き鴎外とも親交があったことは知らなかった。伊集院静という人は夏目雅子のダンナというくらいしか知らなかったが、なかなか達者な文章家であることを知った。

  • 正岡子規と云う、日本でコアなファンの多そうな、人気の高い人物を扱うと云う、作家冥利に尽きる以前にプレッシャーは無かったのだろうかと思い、実は然程期待せず手にしました。何より、著者自身が正岡子規贔屓と云う事、然れば逆に筆が走りすぎてファンタジーになったりしてやいまいか、「私家版子規」像が出来上がっていて、これまで自分が読んで、見て、想像に描いてきた子規像をぶち壊されたりしないかとか、若干の不安も抱いていました。

    が、その部分は流石名著作者、貫禄ある作品として収まっていました。随筆、日記、写真、又は同時代を生きた人たちの手記や評伝も多数有る為、非常によく勉強されて、それでいて非常に謙虚な文章が好感を持てました。
    小説と銘打ってはありますが、評伝に近い位とも思うほどでした。910.26寄りの913.6。

  • 正岡常規。幼名・升(のぼる)。なので、「ノボさん」。俳人で
    あり、歌人である正岡子規である。

    四国・松山から上京した子規と、東京生まれ東京育ちの夏目
    金之助(漱石)は、東京大学予備門で偶然の出会いを果たす。

    そうして、ふたりの文学者の付き合いは子規の命が尽きる
    まで続くのだが、子規が死の床にあった時、漱石はロンドン
    留学中だった。

    子規と漱石の書簡集が大好きななのでタイトル買いした作品
    なのだが、買った後で著者が伊集院静であることに気が付いた
    うっかり者である。

    「この人はいつまで亡くなった奥さん(女優・夏目雅子)をネタ
    にするんだろう」と思って、ずっと避けて来た作者だ。

    初の作品が本書なのだが、この人、こんなに文章が下手なの
    か?確かいろいろと文学賞を受賞していなかったっけ?

    「小説」と銘打っているのだけれど、所々評伝のようだし、
    小説ならばいささかの脚色があってもいいのだろうけれど
    それもない。

    子規と漱石の関係って興味深いものなんだけれど、全編
    これ、退屈である。最後まで文体が読み難かったのも影響
    しているのだろうけれど。

    坪内祐三『慶応三年生まれ七人の旋毛曲がり』や、関川
    夏央『子規 最後の八年』に遠く及ばない。

    あ~あ、大失敗だ。せkっかく副題に「正岡子規と夏目漱石」
    と付けたのだから、もうちょっとどうにかならなかったかね。

    ただ、子規が松山に帰省した時に憧れのノボさんに会った
    河東碧梧桐の描写は可愛らしかったけど。よかったのは
    そこだけだわぁ。

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著者プロフィール

1950年山口県生まれ。’81年短編小説「皐月」でデビュー。’91年『乳房』で吉川英治文学新人賞、’92年『受け月』で直木賞、’94年『機関車先生』で柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で吉川英治文学賞、’14年『ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石』で司馬遼太郎賞をそれぞれ受賞する。’16年紫綬褒章を受章。著書に『三年坂』『白秋』『海峡』『春雷』『岬へ』『駅までの道をおしえて』『ぼくのボールが君に届けば』『いねむり先生』、『琥珀の夢 小説 鳥井信治郎』『いとまの雪 新説忠臣蔵・ひとりの家老の生涯』、エッセイ集『大人のカタチを語ろう』「大人の流儀」シリーズなどがある。

「2023年 『ミチクサ先生(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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