存在しない小説

  • 講談社
3.23
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062186834

作品紹介・あらすじ

フィラデルフィア、ペルー辺境の村、クアラルンプール、東京、香港、クロアチアの海辺……世界各地で、未知なる小説が発見された! 国境を超えた声なき声が同時代のリアルを映す、新たな「地球文学」の誕生。

「背中から来て遠ざかる」:人生のどん詰まりから抜け出すため、フィラデルィアからニューヨーク行きのアムトラックに乗りこんだ男の回想の行方は…。
「リマから八時間」:ペルー辺境の村にやってきた日本人の小男は、この村で死んだ女の家に「存在しない小説」があるという。
「あたし」:豪雨のため浸水したクアラルンプールで、マレー人の少女はチャイナタウンに迷い込む。
「能楽堂まで」:妙見菩薩像を海に沈めた私は、過去に追われるように都内を流されていく。
「ゴールド」:極貧から成り上がり香港に通う中国人男とロシア人娼婦の愛と破局。
「オン・ザ・ビーチ」:今から10年先、クロアチアのリゾートホテルに滞在する老人が自分を監視する警備員のノートを盗み読むと…。

いま地球上のさまざまな場所で、声なき声が織りなす「存在しない小説」。はたして、「作者」は誰なのか?
「ポスト3・11の文学」として大反響を集めた前作「想像ラジオ」に続く、いとうせいこうの最新作。

感想・レビュー・書評

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  • 恩田陸の「私と踊って 」という短編集を読んでいて
    最後に収められている唯一横書きの短編で
    「東京の日記」を読んでいるうちに
    この本とシンクロというか
    どこかで繋がっているような気がして
    先に読もうと思っていた本を後回しにして
    こちらを先に読んでしまった。


    小説とは、小説を読むとはなんだろう?ということを
    根源的なところから、なんだろう?とあらためて
    読んでいるのかなと感じ


    エンタテイメント的なとっつきやすさはないものの
    言葉と取り組んでいる人から今出てきた小説なんだなぁ
    と読んでいても感じるような
    存在しない小説だけれど
    一つ一つの短編は世界のどこかを切り取ってきたような
    それぞれの、手触りや、色や、喧騒や怒鳴り声、雨…
    今どこかで起こっていることのような
    各短編の世界に入り込みながら
    けれど一つの小説が終わると、その部屋から出ていることに気付く。
    その部屋に入った覚えもなく、いつの間に・・・とおかしく思いながら。


    だから、本自体に入り込んでいるわけではないような気もするし
    でもたくさんのドアが並んだ
    本という建物に入り込んでいるような気もして

    一つ読み終わると、
    存在しない小説の間に挟まる編者解説を
    今度はその建物の廊下や中庭に出て
    時々迷子になったりもしながら
    読んでいるような気がしていた。


    各短編の内容にではなく、本の形式は
    自由であることに抵抗のない人でいれば
    いつまでもその建物の中で無限に居られるような
    本なのかもしれない。

    私は一度読んで、今度は
    自由について考えながら
    幾つかの短編をまた読んでいる。


    存在しない小説は存在しないことで、こうして、どうとでもいくつでも、増えていくのかもしれないし
    私が今居る場所は間違いなく日本だけれど
    存在しない小説を読んでいるこの建物は
    いったい世界のどこに存在しているんだろう?と思いつつ

  • フィラデルフィア、ペルーの辺境、クアラルンプール…世界各地で未知の小説が発見された!という背景で、国籍も文化も全く異なる6編が収録された短編集。

    個々の作品は国も時代もバラエティに富んでいて面白い。6人の架空の作家になりきって書いたと考えると、その知識と想像力に驚く。東京を舞台にした『能楽堂まで』が特に印象的だった。
    ただ、各章の間に挟まれた「編者解説」がわざとらしいというか、してやったり的な意図が見え隠れしてしまいしらけた気分に…相性の問題です。

  • 不思議な感じ。
    単純に、それぞれの短編を味わって楽しめましたが、
    それと同時に、世界ってどこかでつながっている?と、
    妙に変な感覚が残りました。

  • 面白い!

  • 文学

  • ☆でも、あれだな。日々我々は存在しない小説の主人公になったり、読者になったりしているな。

  • 2016/12/21購入

  • 存在しない小説が存在することが分かりました!
    言葉遊びで読者をおちょくってるよう・・・
    途中、面白くない話を挿入しているのだって、わざとだと思う。
    「肉を切らせて骨を断つ」方式か・・・?
    リスクありすぎ!

  • 「想像ラジオ」に次いでせいこう氏2冊目、死生を論じた前回とは打って変わってあくまでもライトにそしてノリがいい!とはこういう事を言うのだろうな的な企みに満ち満ちた短編集。
    ぶっちゃけ言ってしまえば世界文学のパロディ(揶揄を廃した正当の)なのであるがこの出来が素晴らしくそれだけでも十二分に楽しむことができる。しかしこの作品の醍醐味はあくまでも「存在しない小説」でありこのクリエイティブな命題に挑戦しないのは勿体無さすぎる。
    幸いにも随所に編者解説がありわかりやすくまとめられてはいるもののやはりこの実験のレヴェルは高度で…わかったふりをしておこうw。
    でも面白いですよこの本

  • なにかの書評で気になって読んだけど、洋書の翻訳ものでやはり私には肌が合わなく読みきれない。
    いとうせいこうの短編もあったけど、それも日本人が訳してあって?

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著者プロフィール

1961年生まれ。編集者を経て、作家、クリエイターとして、活字・映像・音楽・テレビ・舞台など、様々な分野で活躍。1988年、小説『ノーライフキング』(河出文庫)で作家デビュー。『ボタニカル・ライフ―植物生活―』(新潮文庫)で第15回講談社エッセイ賞受賞。『想像ラジオ』(河出文庫)で第35回野間文芸新人賞を受賞。近著に『「国境なき医師団」になろう!』(講談社現代新書)など。

「2020年 『ど忘れ書道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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