三軒茶屋星座館

著者 :
  • 講談社
3.62
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感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062187183

作品紹介・あらすじ

この星座館には、家族の夢が詰まっていた――。

「和真は俺の兄貴で……そして今日から、月子のもうひとりのお父さんだ」
三軒茶屋の裏路地にひっそりと佇むプラネタリウム(兼バー)。酔客たちに星座の講釈を聞かせる店主・和真のもとに、10年ぶりに弟・創馬が帰ってきた。娘だという美少女・月子を連れて。18歳年上に夢中な高校生、彼氏の浮気を疑うキャバ嬢、筋肉フェチのオカマ、ウーロン茶一筋の謎の老人、不思議な客たちが集まる店で、”親子3人”の奇妙な共同生活が始まるが……。

辛いことがあったら夜空を見上げればいい。僕たちよりもずっと昔から悩んできた、星たちの物語が広がっているから――。

読めば心温まる、人生讃歌エンターテインメント!

感想・レビュー・書評

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  • バーカウンターがあり、夜7時から朝方まで営業する、プラネタリウムを開く、和真。
    10年ぶりに会った弟の創馬は、女の子を連れていて……。

    シリーズ第1作。

    プラネタリウムにきちんとしたプログラムはなく、客に合わせて即興で話すシステム。
    星座にまつわる話を、やや下世話に、身近な人のように話す、和真の解説がおもしろかった。
    ギリシャ神話の神々が、まるで知り合いのような親近感。

    星座にまつわる話を絡めながら、身の回りのトラブルを解決していく連作短編集。

    変わり者に囲まれる中、月子がかわいらしく、最後はぐっときた。

    和真を「お父さん」と呼ばせることに、合理性が感じられなかった。

  • 星座と共に語られるギリシャ神話がやたらと人間臭くて親近感がハンパない。

  • 三軒茶屋駅の裏手、オンボロ雑居ビルの7階にその店はある。「三軒茶屋星座館」バーとプラネタリウムが一体になったようなお店に夜な夜なやってくる個性的な人々。ある日、主人公・和真の弟の創馬が小学生の娘・月子と共に転がり込んでくる所から物語は始まる。
    月が好き!星が好き!星座が好き!ギリシャ神話が好き!!という事で、タイトルだけ見て選んだこの本。…正解でした!星座館に集まる人々の悩みをギリシャ神話の話を通じて助言したり励ましたりするんだけれど、和真が語るギリシャ神話が現代風でめちゃめちゃ面白い。普段は真面目な神々たちの愛や争いが、思わず笑ってしまう内容で語られる。こんなプラネタリウム斬新!一見胡散臭さ満載のお店だけれど、知ったらきっと常連になってしまうような場所だ。
    表紙や中表紙のイラストも綺麗で好みで、かなり気に入りました。

  • 星座の話は初め面白い切り口だなと思ったが、これがずっとかなので途中からあまり中身が入ってこなく、飛ばして読んでしまった。

  • 秋の夜空は、なんだかさびしい。明るい星が少ないんだろう。それでも見上げる夜空。星々の瞬きに思いを馳せる。
    世界中の人びとの頭上に、空は途切れることなく広がっている。

    きっと、今。
    見知らぬ誰かさんも、この星空を見上げているかもしれない……なんて思ってしまったら、ちょっぴりこそばゆい。
    こそばゆいついでに。

    どうか。
    見知らぬ誰かさんの星空が、かなしくて、さびしくて、涙で滲む星空でありませんように。

    どうか。
    たとえ……そうだったとしても、明日への一歩が踏み出せるように。
    癒しと勇気を与えてあげる星空でありますように。

    ギリシャ神話に登場する神々たちは、感情豊かで奔放だ。自分に嘘をつけない神々は、時には欲求のまま暴走してしまう。
    そんな神々の神話をもとに、人びとは自分を見つめなおす。癒され、勇気をもらい、時には戒めとなる。

    壮大な神話の世界が広がるプラネタリウム。
    漆黒のビロードがひろがる夜空に、無数のビジューを散らしたかのような静寂の瞬き。

    どうか。
    今宵も誰かの痛みを癒してください……

  • 路地裏にひっそり佇むおんぼろビル。
    その一角にバーを備えたプラネタリウムがある。
    ある日そこに長年海外にいた弟が一人の少女を連れてやって来る。

    終章の盛り上がりに5つ星つけたくなったが
    星の話がやや冗長なのと
    わざとらしい決め台詞が余計に感じて星4つ。

    でもそれぞれのキャラは見事だし
    まだ謎は残っているので
    続編が出るのを心待ちにしたくなる
    あったかい秀作。

    【図書館・初読・1/8読了】

    再読だと気付かないまま読了。
    やはりキメ台詞は余計。

    [再読·2020.9.19]

  • 装丁に惹かれて何の気なしに手に取った本だったけど
    結構好きな話だった
    たまには違う作家を読んでみるのもいいな

  • 月子が笑われるのと、月子が笑うの、どっちがいい

    【感想】
    ああ、これは好みの世界やなあ。この設定はぼく的にはユートピアのひとつかもしんない。
    ・ただ、主人公がそうとう荒事に強かったり、弟くんが実はかなり大物科学者だったりというのは、イザとなったらチカラでなんとかできてしまうことになるのでそこは物語としては弱点かも。まあ、水戸黄門的なスッキリ感は得られるやろうけど。

    【一行目】
     道は細く、複雑に入り組んでいた。

    【内容】
    ・オンボロ雑居ビルて私設プラネタリウム(バー兼ねる)。床が抜けた吹き抜けでって大丈夫なの?
    ・弟の創馬の娘と思われる八歳の月子は和真のことを「もうひとりのお父さん」と紹介され、執拗に「お父さん」と呼ぶのはなぜ?
    ・今、月子をひとりにしたくないと創馬が言うのはなぜ?
    ・プラネタリウムに出入りする人たちとの交流。そしてイザというときには頼りになる和真くん。

    ▼三軒茶屋星座館についての簡単なメモ

    【藍/あい】山本藍。山本有紀乃の娘。奏太のは小学校での同級生。十八歳。フルートをやっていて演奏家を目指す。
    【アクアワン】智子が奏太を、ある意味売り飛ばした金貸し。
    【疑い】和真いわく「疑いの芽は、いちど芽吹くと絶やすのは難しい」第一巻p.102。過去になにかあったような感じだ。凪子いわく「目に見えるモノのほうが、きっと信じにくいよ」第一巻p.126
    【FM世田谷】三軒茶屋星座館を紹介してくれた。そのおかげで盛況に。
    【大坪和真/おおつぼ・かずま】→和真
    【大人】和真いわく「大人の男っていうのはさ、自分の人生でいちばん誰が好きだったのかを、決められた奴のことだから」「いちばん好きだった? なんで過去形なんだよ」「そういうものは、過去形でしか語れないんだ」第一巻p.61
    【おんぼろ雑居ビル】星座館があるビル。リリーいわく《このビル、オカマバーとかマッサージとか怪しいお店しかはいってないのよ?》第一巻p.260
    【和真】大坪和真。「三軒茶屋星座館」の主。三十三歳。金髪。マイナスイオンの声。楽しくざっくばらんに星の説明をしてくれる。
    【可南子/かなこ】和真と創馬の母。昭和天皇と同じ日に亡くなった。
    【奏太/かなた】高校生。月子の友人。らしい。小さくて分厚い手。ドクターペッパーが好き。母親と同じ年の智子とつきあっている。
    【居住スペース】星座館と同じフロアにある部屋。元々居住用ではないので一般的な暮らしをするには向いていない。
    【ギリシャ神話】和真の説明は基本的にはギリシャ神話をもとにしていることが多いようだ。科学的にというよりは。ざっくばらんな話し方でおもしろおかしく語ってくれるのでこんなプラネタリウムがあったらぼくも行きつけにしたい。
    【相模/さがみ】たぶん闇金、の社員。
    【三軒茶屋星座館】和真が開くプラネタリウム。三軒茶屋駅裏手の街の築五十年以上十階建て雑居ビルの七階にある。客席数は十二。バーカウンターもある。常連客はだいたい眠りに来ているか酒を飲んでいる。レンズ式プラネタリウムは常時点灯していて客から求められるとパソコンで操作し説明する。
    【事実】《いつだって客観的事実は主観的現実の前に歯が立たない。》第一巻p.41
    【潤くん】凪子の恋人。二十六歳。カメラマンアシスタント。誰が見てもイケメン。コミュ力が高く誰の心のなかにもあっさり入っていける人タラシ。凪子が「モナリザ」で働いていることは知らない(かもしれない)。《潤は相手を微笑ませる天才だ。》第一巻p.84
    【知る】和真いわく《僕らはいつも知るべきことしか知らないんだよ。》第一巻p.255
    【新宿】和真が働いていた街。荒事に強く頭の回転も速いのでトラブルシューター的な役割を担っていた。
    【信用】ミナミいわく信用できないじんぶつは、カメラマン、美容師、バーテンダー。
    【好き】和真いわく「そうさ。誰かを好きになるたびに、みんな発見するんだよ、こういう『好き』のかたちがあるんだって。ひとつとして、おなじ『好き』はないんだよ」第一巻p.249
    【星座】全天には八十八の星座がありそのうちの四十八はプトレマイオスが制定したギリシャ神話ゆかりのもの。天文時を作ったひとでもあり「ガンダム00」の母艦名(愛称トレミー)にも使われている。
    【創馬/そうま】和真の弟、月子の父。頭の後ろで束ねた長髪。アメリカ留学して物理学の博士号と格闘家のようなマッチョな体格を取得している。その後大学で教鞭を執っていたようだが、日本の大学のポストが空いたのでそれをアテに帰国した。星そのものについては和真よりも詳しい。重要な論文も発表しており物理学会では著名。
    【谷田/たにだ】プラネタリウムの常連客。不動産屋。麻雀好き。
    【月子/つきこ】創馬の娘。八歳。アメリカからの帰国子女。向こうでは飛び級していた秀才。口数は少ないが和真を嫌っているわけではなさそう。《彼女は、甘えることを覚えなかった。》第一巻p.246。関係ないけどぼくの脳内小説の主人公たちの一人と同名やなあ。
    【釣り堀】つぶれた釣り堀が街のどこかで再開しているという宇和さがあり、和真はそれを探すのをライフワークにしている。
    【智子/ともこ】奏太の恋人。元モデルの三十六歳。バッティングフォームが素晴らしく、ハイヒールなのに完璧な神主打法。高知の野球名門校出身。ホステスクラブ「バビロン」で働いているやうだが奏太には内緒のようだ。
    【ドラマ化するなら】この話は実写ドラマに向いていると思う。配役は、読んでていつの間にか「まほろ駅前」のコンビをイメージしてしまってたので、それで。
    【仲本/なかもと】月子の担任。五十前後の女性。
    【凪子/なぎこ】プラネタリウムの常連客。大学生。伊達メガネ。メガネを外すと地味な顔だち。水着ガールズバー「モナリザ」で働いている。恋人の潤くんには内緒。
    【猫とラッパ】慢ちゃんが経営していた女装パブ。慢ちゃんが長女で蘭ちゃんが末っ子の「浅丘三姉妹」が売りだった。ただし次女は消息不明の設定。
    【ピカ爺】プラネタリウムの常連客。いつもホットウーロン茶を注文する。ギョロリとした大きな目ねいつもニット帽。和真は「ピカ次郎」とも呼ぶ。ビルのオーナーのようだ。まともに話したことはない。じつはとある店のオーナー。
    【ピコラノータ】高級イタリア料理屋。山本有紀乃がやっている。奏太の父親の建設会社が施工した。
    【保科/ほしな】たぶん闇金、の部長。
    【慢ちゃん/まんちゃん】新宿で女装パブ「猫とラッパ」を経営していたオカマ。あたりの地主でもあり顔役でもあった面倒見のいい人物。和真がかつて世話になった恩人。
    【ミナミ】水着ガールズバー「モナリザ」で凪子の同僚。大学も同じらしい。
    【御代の湯】近くの銭湯。
    【村上】新宿で金融機関を営んでいた。一般的な闇金とは異なり債権者を護るような形を取っていた。味方も敵も多かった。慢ちゃんの紹介で和真が部下となった。
    【モナリザ】水着ガールズバー。凪子が働いている。谷田推薦。青い海と白い砂浜の写真パネルが壁一面に貼られており観葉植物など南国ムード満載。女たちは皆、豊満なバスト。
    【役立つ】慢ちゃんいわく「役立つ場所があるなら、疑問なんか持つ必要ないのよ」第一巻p.209
    【山本有紀乃/やまもと・ゆきの】近所の高級イタリアン。圧が強い。デリバリーで出前してくれるらしい。藍という十八歳の娘がいるようには見えない。その娘の話になると延々と自慢が続く。
    【幸雄/ゆきお】和真と創馬の叔父。可南子の弟。
    【義昌/よしまさ】和真と創馬の祖父。可南子の父。和真は一目見てこの人は信用できないと思ったが引き取られることになった。しつけのためにはすぐ殴るタイプの人。
    【蘭】「猫とラッパ」で働いていた。トロいけどみんなに愛されていた。
    【リリー】オカマバーで働いている。創馬のことを気に入っている。

  • プラネタリウムのあるバーのオーナー(金髪)のもとに転がり込んできた弟とその娘。彼女は伯父のことを「お父さん」と意地でも呼び出すが……。なかなかにエキセントリックだけどいい子の月子ちゃんは魅力的だけど、やはり主人公のヤンキーノリなギリシャ神話解説が一番。これはくせになりそうだ。続編も書店で見かけたので読んでみるつもりです。

  • 主人公は星座館のオーナー。
    「役立つ場所があるのなら、疑問なんか持つ必要ないのよ」。(109ページ)
    過去に言われたこの言葉をモットーにするかのように、訪れる人たちの思いや悩みに静かに寄り添い、惜しみなく手を差し伸べる。
    血がつながっていなくても家族であるということ。
    家族にはいろんな形があること。
    そんなことを、彼と周りの人間たちは知っていく。

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著者プロフィール

作家。1976年東京都生まれ。慶応義塾大学経済学部卒。東京三菱銀行退行後、バーテンダー、香水プランナーなどを経て、小説「シャンペイン・キャデラック」で三田文學新人賞を受賞しデビュー。主な著書に「オワ婚」(2012年/幻冬舎)、「三軒茶屋星座館」シリーズ(講談社)など。映画やドラマの脚本も多数手掛ける。

「2021年 『恋侍 ー中目黒世直し編ー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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