三谷幸喜 創作を語る

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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062187282

作品紹介・あらすじ

「新しいこと」、「おもしろいこと」ばかり考える
希代のクリエーター、三谷幸喜の頭の中身。
『12人の優しい日本人』『古畑任三郎』から最新作『清須会議』まで、
アイデア創り・制作の舞台裏を語り尽くす。
       
●紙人形と心理グラフを使って登場人物一人ひとりの心情を考える
●プロデューサーから無茶な発注をされたほうが楽しい
●「天才の近くにいた人」に注目する
●脚本を書くときは、「あるイメージが浮かぶ」ところから始まる
●99パーセントを理詰めで創るのは、1パーセントの破綻を魅力的にするため・・・ほか、三谷流創作術の全貌が、今、明らかに!

三谷幸喜 みたに・こうき
1961年東京都生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業。在学中の83年に劇団『東京サンシャインボーイズ』を旗揚げ。94年『東京サンシャインボーイズの<罠>』の公演をもって30年の充電期間に入った。以後、脚本家としてテレビドラマ・舞台・映画と多方面で執筆活動中。主な舞台作品に『コンフィダント・絆』『TALK LIKE SINGING』『ろくでなし啄木』『国民の映画』『ベッジ・パードン』『90ミニッツ』『ホロヴィッツとの対話』『おのれナポレオン』ほか。映画作品としては『THE有頂天ホテル』『ザ・マジックアワー』『ステキな金縛り』ほか。テレビドラマでは『王様のレストラン』『新選組!』『警部補・古畑任三郎』『わが家の歴史』などがある。新作映画に『清須会議』(2013年11月公開)。

松野大介 まつの・だいすけ
1964年神奈川県川崎市生まれ。85年にABブラザーズでバラエティ番組『ライオンのいただきます』(フジテレビ)でタレントデビュー。テレビ、ラジオで活動。95年に小説『ジェラシー』が文学界新人賞候補、同年、文芸誌に『コールタールみたいな海』を発表し作家デビュー。私小説『芸人失格』(幻冬舎)がスマッシュヒット。著作に『アイドル、冴木洋子の生涯』(同)、『天国からマグノリアの花を』『路上ども』(共に講談社)、『サヤカ』『TVドラッグ』(共にマガジンハウス)、『バスルーム』(ベストセラーズ)、『顔のない女』(辰巳出版)ほか、小説やエッセー多数。現在はテレビコラムやインタビュー記事でも活動。

感想・レビュー・書評

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  • 脚本家(であり映画監督であり演出家で最近は小説家でもある)の三谷幸喜さんが、ご自分の作品の、まあ創作の裏側とか、三谷さんにとっての想いとか、を対談形式で話した。と、いう本です。
    つまりは、名作であり定番である「ヒッチコック/トリュフォー 映画術」と、同趣向の本ですね。「ワイルダーならどうする」というのもありました。あれも、面白かったです。この手の本は、対象の作家さんのことが好きなら、絶対面白いんです(笑)。
     で、面白かったです。

     印象に残ったのは、あれだけの数をこなして、クオリティも(凸凹は観る人によって当然ありますが)あまり落とさない。なんでかなあ、と思うと、「具体的なヒト」だからなんだろうなあ、と思いました。
    無論、才能、という前提があってですが…少なくとも話しぶり(というか印刷された本の感じ)からすると、カッコつけない。えらぶらない。観念論を言わない。判りにくい言葉を使わない。たぶん、そういうのがキライなんでしょう。そして、周りのせいに(あまり)しない。制約を喜ぶ。精神論というのは、ゼロではないけれど、それは判りやすい言葉で言える範囲でしか、表現しない。
    だからきっと、妥協ができる。これは、妥協をすぐする、という意味ではなくて。妥協をすることもできる、という意味。妥協をしないというのは、つまり儘ならない環境の責任にして「俺は悪くない」と責任回避することに繋がりかねない。何より、妥協というか方針変更を、頭からマイナスと受け取らない。むしろそれで思わぬ面白さが出るのでは、と考える。
    それから、きっと三谷さんは、「売れること、受けること」に阿ってはいないんだと思います。ただ、良いとか悪いじゃなくて、やっぱり三谷さんの根っこは、「アメリカン・ピクチャー」なんですよね。出てくる作品が、シット・コム。奥様は魔女。ワイルダー。ウディ・アレン。コロンボ。などなど。基本、素直なストーリーテリングで、エンターテイメントを身上とする世界観ですから。だから、三谷さんがやりたいこと、というのが、特段は商業主義と相反したりはしない。少なくとも、「商業主義と相反することが、やりたいこと」だったりはしない(そういう価値観も、結構ありますからねえ)。
    それから、「天才というのは記憶力のことだ」という言葉がありますが。司馬遼太郎さんも手塚治虫さんも淀川長治さんも。博覧強記、というより、一度読んだ観たものをとにかく忘れていないというのが凄かったそうですね(その人たちが「天才」なのかという議論は置いておいて)。
    そういう意味では、三谷さんも凄い。漫画家の浦澤直樹さんもそうですが、「誰も見たことも聞いたことも無いことをゼロから生み出す」というよりは、ある種の文化再生産。究極で言えば「僕が好きだったあーいうのを、僕なりにやってみたい。それがきっかけで、元ネタがみんなに知られたら、それはそれでシアワセ」みたいな。ディレッタント的な。余技遊び趣味オタク的な。そんな心情がアルんだと思います。
    それを遂行する上では「職人」に憧れたりするんでしょうけど、根っこは、余技遊び趣味オタク的な感じ。これは素晴らしいことで、だから、それゆえ、「モチベーションが枯れる」ことがないんじゃないかなあ、と思います。

    本の内容で言うと、ちょこちょこ全般に面白く、停滞せずにイッキ読み。そういう意味では編集もまとめ方もこなれている気がしました。
    僕としては、「振り返れば奴がいる」のラストシーンの話は特に面白かったですね。へー、って。

    最後に、個人的には三谷幸喜さん体験を言うと。
    実は演劇は不勉強でほとんど観ておらず。「十二人の優しい日本人」「ラヂオの時間」は文句なく傑作だと思います。「マジックアワー」は大いに楽しかったです。「素敵な金縛り」は、ちょっとダレたりしたけど、爆笑部分ではほんとに腹を抱えて笑わせてもらったので、脱帽。テレビ作品はあまり見ていないのですが、「王様のレストラン」は、とても、とても、面白く良く出来た作品だと思っています。あとは、代がドラマ「新選組!」。でもこれは、自分がちょっとだけ関わらせてもらったので、客観的な視点は持てませんが。でも、素敵な作品だと思います。
    ちょっと思うのは、「三谷幸喜さんは、あるジャンル、世界に、初めて挑んだ時の作品が、たいていいちばんおもしろい」という仮説。知人が言っていたことなんですが、考えると、そうかもしれません。そういう意味では、文楽「其成心中」が気になります。観てみたいです。

    あと、この30年の、テレビも含めて「テレビ・映画」での、明るい乾き気味の笑える物語作者、という意味では、「三谷幸喜さんと周防正行さん」という枠組みで比較検討してみたりするのって、とっても面白いと思うんですよね。出自も経歴も仕事ペースもいろいろ、好対照なので。

  • 自分がテレビドラマをよく見ていた時期と、三谷さんがドラマをよく作っていた時期、そして自分が映画をよく見るようになった時期と三谷さんがよく映画を作るようになった時期、がかぶっていたみたいで、知ってる作品の話が多かったのでとても面白かった。本業である舞台作品はあんまり知らないけど。
    色々DVDを見直したくなる!
    「大きな声では言えないけど(笑)、佐藤浩市さんは(マジックアワーの)村田大樹という役者の役に似ているんです」という話が面白かった。

  • 演劇をやっていた三谷さんだからこそのこだわりが作品の良さやキャラクターに繋がっていることを知った。役者想いの監督、人の魅力を引き出すところは見習いたいなと思う。コメディーが作られていく過程を知り、非常に興味深かった。

  • インタビュー

  • 松野大介がこれまでの作品について一つ一つ三谷幸喜にインタビューする構成。「創作を語る」というほど硬い感じではなく思い出話的なフランクな感じ。でもファンにとってはおもしろい。気になったところをメモしたらずいぶんになった。 

    僕には矛盾があるんですよ。観るほうでは"集団で何かをやる"という設定の映画が大好きなのに、一人っ子でひとり遊びばかりしてた僕自身は"集団で何かをやる"ことに向いてない。そんな僕が自分の劇団を持つのは矛盾してる。(42)

    書いてて、『きたきたきた!』っていう瞬間があるわけですよ。2回だけですよ。その感覚は。少ないよね。向いてないのかな。(50)

    無理難題が降りかかった時に、他の作家なら「無理です!」と言うところを「わかりました、なんとかしましょう」と。何でも受け入れながらいものを創る、自分はそういうふうにありたいと思ってる。(80)

    僕は無茶な発注をされたほうが楽しい。制約がないとダメです。「主役の××が今、喉を痛めて声がでないんで、次の回は台詞ナシでお願いします」とか言われたら、喜んで書きますよ。(82)

    実は僕、ドラマでCMが入るところを書くのが大好き。(102)

    僕が理想としている脚本家は井上由美子さん。井上さんはあまり表に出ないので世間的には顔は分からない。名前も一般にはそんなにポピュラーではないけど、面白いドラマを観て、脚本家の名前を確かめたら、「あ!井上由美子なんだ」と思う人って多い。これって理想的だと思う。脚本家の名前をまず見るんじゃなくて、作品から観て、結果的にこの脚本は「井上由美子だ!」となるのが脚本家の立ち位置として理想。僕は理想からはずれちゃったんですね。(105)

    ダメ出しって、僕の中にあるその役の完成型のイメージに近づけていく作業なんです。その時気づいたのは、僕の中の完成型は、戸田恵子さんなんだって。(122)

    まず、近藤勇の人生の中でターニングポイントとなった49日間を設定し、毎週、「×年×月×日」と設定を創って、その日の出来事だけで1時間作った。(141)

    おもしろい芝居とおもしろい映画があったら、おもしろい芝居のほうがおもしろい。でもつまらない芝居とつまらない映画なら、つまらない芝居のほうがつまらない映画よりつまらない。(154)

    「笑の大学」に登場する喜劇作家・椿一のモデルとなった菊谷栄さんは、かつてエノケンの座付き作家をしていて、「最後の伝令」を書いた。その台本を読む機会があったんです。「どんなにおもしろいのだろう」とワクワクして読んでみたら、そんなにおもしろくなくて、それが衝撃だった。それは「菊谷栄がつまらないんじゃないか」って衝撃じゃなくて、お笑いというのはこんなにも同時代性があるものなのか!と。(155)

    脚本を書き始める時はいつもそうなんだけど、あるビジュアルが浮かぶんです。今回は、「佐藤さんが建物の外でトランポリンを使って上下運動をしてる」様子。"なぜ彼は窓の外で飛んでるんだろう"と。このシーンが成立するシーンはなんだろうと。(186)

    小説には絶対向いてない。小説は"なんでもあり"で自由すぎる。(189)

    僕はいつもリアリティーとファンタジーとのサジ加減で悩む。(194)

    破綻は破綻で力を持ってるんですよ。僕は99パーセントを理詰めで創る。それは1パーセントの破綻を魅力的にするためでもあるんです。(197)

    絨毯がすべてきれいに敷きつめられているより、一部分、モッコリしてたほうが味わいがあるみたいな。そのモッコリしてる場所と大きさをきっちり計算しなきゃいけない。あえて破綻させることってある。もっと悩めば理にかなった展開が浮かぶかもしれないのに、あえてそうしないみたいな。(198)

    ジュースをストローで飲むシーンがあったとして、この場合は手を使わずに口を近づけてズーッと吸い込むほうがおもしろいと僕が思っていても、ふつうは手を使って飲む。僕が「手を使わずに飲んでください」と言わなきゃいけない。これって大きい。だって手を使わずに飲むとおもしろいってことがわからずに演技するわけだから。でも深津さんは何も言わなくても脚本や状況を察してくれて、手を使わずに飲んでくれる女優さんなんです。なぜ手を使わないとおもしろいのかと聞かれても、説明出来ないおもしろさがあって、それを深津さんは僕と共通のものを持っている。(203)

    自分が面白いと思うことをやるだけで、みんなも同じように思っているかはまったく自信がないんだ。今は自信が笑えるものはみんなも笑ってくれてるから成立してるだけであって、いつかはズレる時がくるかもしれない。だからあとはもう祈るだけだ。(231)

  • 912.7

  • 2013年11月14日、初、並、帯付
    2015年5月27日、津BF

  • 全作に触れられており、ファンなら必読。

  • 昔は三谷幸喜ってあんまり意識してなかったので、古い作品は余り見てないが、見たくなりましたね。
    後半の作品は大体見てるので、裏話は面白かった。

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著者プロフィール

1961年生まれ。脚本家。近年のおもな舞台作品に「大地」「23階の笑い」「日本の歴史」「ショウ・マスト・ゴー・オン」、ドラマ作品に「風雲児たち?蘭学革命篇?」や「誰かが、見ている」「鎌倉殿の13人」など、映画監督作品に「清須会議」「ギャラクシー街道」「記憶にございません!」などがある。また、おもな著書に『三谷幸喜のありふれた生活』シリーズ、『清須会議』など。

「2022年 『三谷幸喜のありふれた生活17』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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