三谷幸喜 創作を語る

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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062187282

感想・レビュー・書評

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  • 脚本家(であり映画監督であり演出家で最近は小説家でもある)の三谷幸喜さんが、ご自分の作品の、まあ創作の裏側とか、三谷さんにとっての想いとか、を対談形式で話した。と、いう本です。
    つまりは、名作であり定番である「ヒッチコック/トリュフォー 映画術」と、同趣向の本ですね。「ワイルダーならどうする」というのもありました。あれも、面白かったです。この手の本は、対象の作家さんのことが好きなら、絶対面白いんです(笑)。
     で、面白かったです。

     印象に残ったのは、あれだけの数をこなして、クオリティも(凸凹は観る人によって当然ありますが)あまり落とさない。なんでかなあ、と思うと、「具体的なヒト」だからなんだろうなあ、と思いました。
    無論、才能、という前提があってですが…少なくとも話しぶり(というか印刷された本の感じ)からすると、カッコつけない。えらぶらない。観念論を言わない。判りにくい言葉を使わない。たぶん、そういうのがキライなんでしょう。そして、周りのせいに(あまり)しない。制約を喜ぶ。精神論というのは、ゼロではないけれど、それは判りやすい言葉で言える範囲でしか、表現しない。
    だからきっと、妥協ができる。これは、妥協をすぐする、という意味ではなくて。妥協をすることもできる、という意味。妥協をしないというのは、つまり儘ならない環境の責任にして「俺は悪くない」と責任回避することに繋がりかねない。何より、妥協というか方針変更を、頭からマイナスと受け取らない。むしろそれで思わぬ面白さが出るのでは、と考える。
    それから、きっと三谷さんは、「売れること、受けること」に阿ってはいないんだと思います。ただ、良いとか悪いじゃなくて、やっぱり三谷さんの根っこは、「アメリカン・ピクチャー」なんですよね。出てくる作品が、シット・コム。奥様は魔女。ワイルダー。ウディ・アレン。コロンボ。などなど。基本、素直なストーリーテリングで、エンターテイメントを身上とする世界観ですから。だから、三谷さんがやりたいこと、というのが、特段は商業主義と相反したりはしない。少なくとも、「商業主義と相反することが、やりたいこと」だったりはしない(そういう価値観も、結構ありますからねえ)。
    それから、「天才というのは記憶力のことだ」という言葉がありますが。司馬遼太郎さんも手塚治虫さんも淀川長治さんも。博覧強記、というより、一度読んだ観たものをとにかく忘れていないというのが凄かったそうですね(その人たちが「天才」なのかという議論は置いておいて)。
    そういう意味では、三谷さんも凄い。漫画家の浦澤直樹さんもそうですが、「誰も見たことも聞いたことも無いことをゼロから生み出す」というよりは、ある種の文化再生産。究極で言えば「僕が好きだったあーいうのを、僕なりにやってみたい。それがきっかけで、元ネタがみんなに知られたら、それはそれでシアワセ」みたいな。ディレッタント的な。余技遊び趣味オタク的な。そんな心情がアルんだと思います。
    それを遂行する上では「職人」に憧れたりするんでしょうけど、根っこは、余技遊び趣味オタク的な感じ。これは素晴らしいことで、だから、それゆえ、「モチベーションが枯れる」ことがないんじゃないかなあ、と思います。

    本の内容で言うと、ちょこちょこ全般に面白く、停滞せずにイッキ読み。そういう意味では編集もまとめ方もこなれている気がしました。
    僕としては、「振り返れば奴がいる」のラストシーンの話は特に面白かったですね。へー、って。

    最後に、個人的には三谷幸喜さん体験を言うと。
    実は演劇は不勉強でほとんど観ておらず。「十二人の優しい日本人」「ラヂオの時間」は文句なく傑作だと思います。「マジックアワー」は大いに楽しかったです。「素敵な金縛り」は、ちょっとダレたりしたけど、爆笑部分ではほんとに腹を抱えて笑わせてもらったので、脱帽。テレビ作品はあまり見ていないのですが、「王様のレストラン」は、とても、とても、面白く良く出来た作品だと思っています。あとは、代がドラマ「新選組!」。でもこれは、自分がちょっとだけ関わらせてもらったので、客観的な視点は持てませんが。でも、素敵な作品だと思います。
    ちょっと思うのは、「三谷幸喜さんは、あるジャンル、世界に、初めて挑んだ時の作品が、たいていいちばんおもしろい」という仮説。知人が言っていたことなんですが、考えると、そうかもしれません。そういう意味では、文楽「其成心中」が気になります。観てみたいです。

    あと、この30年の、テレビも含めて「テレビ・映画」での、明るい乾き気味の笑える物語作者、という意味では、「三谷幸喜さんと周防正行さん」という枠組みで比較検討してみたりするのって、とっても面白いと思うんですよね。出自も経歴も仕事ペースもいろいろ、好対照なので。

  • 自分がテレビドラマをよく見ていた時期と、三谷さんがドラマをよく作っていた時期、そして自分が映画をよく見るようになった時期と三谷さんがよく映画を作るようになった時期、がかぶっていたみたいで、知ってる作品の話が多かったのでとても面白かった。本業である舞台作品はあんまり知らないけど。
    色々DVDを見直したくなる!
    「大きな声では言えないけど(笑)、佐藤浩市さんは(マジックアワーの)村田大樹という役者の役に似ているんです」という話が面白かった。

  • 演劇をやっていた三谷さんだからこそのこだわりが作品の良さやキャラクターに繋がっていることを知った。役者想いの監督、人の魅力を引き出すところは見習いたいなと思う。コメディーが作られていく過程を知り、非常に興味深かった。

  • 912.7

  • 全作に触れられており、ファンなら必読。

  • 昔は三谷幸喜ってあんまり意識してなかったので、古い作品は余り見てないが、見たくなりましたね。
    後半の作品は大体見てるので、裏話は面白かった。

  • 同い年でとなりの駅烏山出身の三谷さんは大好きな作家の一人。宮藤官九郎さんのエッセイを読んでたら、三谷も読まなきゃとおもった。
    読んでみて、2年ほど前から舞台と映画は観ているが、テレビドラマはほとんどみていなかった。
    制約があると、燃える。仲間が集まってきて何かを成し遂げる。それら、創作の多くが子どもの頃の彼に由来している。

  • 舞台はあまり観ていないが、映画やテレビの三谷作品は結構観ている方である。「総理と呼ばないで」を一昨年見直したが、よくできていた。

  • 2013年11月刊。
    徹底して「振り返らない」タイプだと言い切る三谷幸喜が、自分の今までの作品を丁寧に振り返ったロングインタビュー。

    12時間以上のインタビューをたった2週間で本にまとめたという、なかなかすごい本。
    中身はボリュームぎっしりで、読み応えは十分です。

    本書に出てくるのは、『やっぱり猫が好き』『12人の優しい日本人』『古畑任三郎』『王様のレストラン』『ラヂオの時間』『みんなのいえ』『HR』『新選組!』『THE 有頂天ホテル』『ザ・マジックアワー』『ステキな金縛り』『清須会議』『大空港2013』などなどの20作品。

    劇団時代、テレビドラマ、大河ドラマ、そして映画。
    各作品の構想や狙いといった「創作の背景」を、三谷さんが丁寧に熱く語っています。

    「あまり成功しなかった」という言葉がよく出てくるのが、ちょっと意外でした。
    『HR』(2002~2003年)なんて、あんなに面白くて新しい試みだったのに、視聴率的には失敗だったというのは残念。

    ところどころで「~という話が大好き」と語っていたのが印象的だったので、以下にまとめておきます。

    ↓続きはこちらで
    http://nishi248.blog60.fc2.com/blog-entry-1147.html

  • 元ABブラザーズの松野さんが聞き手となり
    三谷さんの今までの作品について振り返る。
    制約があると燃えるってのは確かに感じる。
    今までの作品も見返したくなるが、
    これから先の作品が更に楽しみ。

    刊行の元となった新聞連載も読んでみたい。

    【図書館・初読・1/17読了】

著者プロフィール

1961年生まれ。脚本家。近年のおもな舞台作品に「大地」「23階の笑い」「日本の歴史」「ショウ・マスト・ゴー・オン」、ドラマ作品に「風雲児たち?蘭学革命篇?」や「誰かが、見ている」「鎌倉殿の13人」など、映画監督作品に「清須会議」「ギャラクシー街道」「記憶にございません!」などがある。また、おもな著書に『三谷幸喜のありふれた生活』シリーズ、『清須会議』など。

「2022年 『三谷幸喜のありふれた生活17』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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