日本政治のウラのウラ 証言・政界50年

  • 講談社
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レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062187558

作品紹介・あらすじ

永田町激震 圧巻の回顧録!

岸信介、田中角栄、安倍晋太郎、三塚博、福田赳夫、三木武夫、金丸信、竹下登、中曽根康弘、小沢一郎、宮沢喜一、細川護煕、小泉純一郎、安倍晋三……

日本政治史を書き換える一冊。政治とは何か? 交渉とは何か? 派閥とは何か? 盟友・田原に、腹を割って語った歴史的記録。

「ぼくは正直なところ、森さんがここまで話すとは思わなかった。この本にはすべてが詰まっている。政治家の交渉とはどういうものか、交渉で勝つ、あるいは負けるとはどういうことなのか、リアルに示されている。政治とは何か、政治家とは何か、ここまでわかる本はない」――田原総一朗

感想・レビュー・書評

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  • ☆3(付箋12枚/P341→割合3.52%)
    面白く読みました。こういう色々な人物評は楽しい。

    ・田原 東京はコペンハーゲンでの敗北以来、弱いとされてきたロビー外交を地道にやってきたわけですね。
    森 コペンハーゲンのIOC総会では、一回目の投票で二十二票、二回目は二十票しか取れなかった。IOC委員はいい顔をしたけれど、票を入れてくれなかったわけです。負けて帰国してから、JOC副会長の水野さんになぜ負けたのか、敗因をきちんと分析して報告してくれと言ったんだが、はっきりと言わないんですよ。それで、ぼくは「こいつらじゃダメだ」と思ったんですよ。JOCは仲間内だけでやっていて情報を外に出さない。だから、勝てないと思った。
    田原 なるほど、JOCのクローズな体質が敗因だったと。
    森 国民の支持率が四十パーセント程度しかなかったのも、そのせいなんですよ。国民に開かれた運動になっていない。ぼくは「これはいかん」と思ってね。ありとあらゆる人材を網羅した評議会を作ったんです。

    ・森 ぼくは「おかしいな」と思って、岸田くんを読んで話したんですよ。
    「いよいよTICADだから、こういうところに注意してくれ。ところで、きみはどうしてアフリカデーのパーティーに行かないんだ」
    「ええ、広島にちょっと帰るんです」
    「広島というのはきみ、選挙区だねえ」
    「選挙区の行事ではないんですが、大事な仲間が選挙で当選したのでお祝いに行くんです」
    「岸田くんな。いや、厳しいことを言うようだけど、それだったら外務大臣なんか辞めちまいなさい。だって、外務大臣になったら三百六十五日、国のために働かなきゃならん。それなのに、大事な行事を欠席して自分の選挙区に帰るとはどういうことか。

    森 そうしたら、大臣が翌日、ぼくのところへ飛んできたよ。
    「おっしゃる通り、行ってよかったです」
    「そうだろう。岸田という男がどういう人間か、大使たちは知らないよ。しかし、日本国の外務大臣が来てくれた。『さあ、来週のTICADはみんなで協力しよう』ということになるんだよ」
    「いやあ、しみじみとわかりました」
    そこまでとことん丁寧に教えないとわからない人が多いんだ。

    ・森 ぼくが自民党の幹事長時代のことです。河野洋平総裁に頼まれて田中真紀子を科学技術庁長官にして、もう大変だったのですよ。彼女にはすぐ調子に乗るクセがあって、誰の言うことも聞かない。千人単位の聴衆が待っているのに、「汗かいたから、私帰る」と言ってドタキャンを平気でやる。「そんな人を外務大臣にしたら大変なことになるから、やめておけ」と進言したのだけれど、「いや、外務大臣にするって約束しちゃったんだよ」ということだった。
    ただ、田中真紀子は総裁選で小泉を応援する条件として、「もし選挙に勝ったら自分を外務大臣にしろ」と要求したわけだから、約束する方もする方だけど、させる方もさせる方ですよ。
    田原 田中真紀子なら言いかねない。そういう条件を出す女性ですよ。
    森 そういう人なんだよ。外務大臣になると、まず鈴木宗雄をやっつける。それから、事務次官の野上義二をやっつける。とまあ、いろんなことをするわけですねえ。「小泉が鈴木を切るために田中を使った」という情報も流れましたが、事実かどうかは確認できていません。
    それで、日ロ問題について「イルクーツク会談?何、それ」というわけで、田中真紀子が「日ロの話は田中角栄・ブレジネフ会談に戻すべきだ」と言ったから、ロシア側が怒ったわけです。

    ・田原 それで、三木さんが総理になってロッキード事件が起きますね。ぼくはロッキード事件はアメリカの陰謀だと思っているんです。
    この時に、明治大学教授の藤原弘達から直接聞いたんですが、ある日、三木総理から「藤原くん、ちょっと来てくれ」と呼ばれて行ったら、三木総理にこう言われたそうです。
    「きみに聞きたいことがある。ロッキード事件で、アメリカに検事を送った方がオレは長持ちするか、送らない方が長持ちするか」(笑)
    送らないということは、ロッキード事件を事件にしないということです。
    それで、藤原さんは「どっちみち長持ちはしないけど(笑)、送った方が歴史に名が残るだろう」と応えたら、三木総理が「そうか」と言ったという話です。
    森 フフフ、さもありなんでしょうね。

    ・森 練習すらしたことがなかったからね。それで、結果はもうヒデエもんで、ハーフで百五十ぐらい叩いたかなあ(笑)。それで、昼食を取っていたら、保利さんがぼくに語り始めたんだね。
    「森さん、ゴルフというのは面白い競技なんだよ。アイアンの五番というのがあって、これ一本あればゴルフはできるんだ。軽くポンと当てたら百三十ヤード飛ぶようにできている。だから、どこのコースでも四回でグリーンに乗る。四回で乗せて、二回で入れるんだ。二回で入れられないのは頭が悪い(笑)。そうすると、ハーフで九ホールあるから、六×九=五十四だろう。そのうち、ショートホールが二つある。ここは二回でグリーンに乗る。だから四を引くと五十で回れる。だから、ゴルフというものは五十で回るものであって、五十を超えるというのはよほど頭が悪いんだ」(笑)
    田原 ヘエ~。でも、ほとんどの人が五十を超えているじゃないですか。頭が悪いからなんだ(笑)。
    森 ぼくらも超えているんですが(笑)、保利さんは「それは邪心が入るからだ」と言うんです。そういうゴルフの理屈をぼくに教えてくれたんですね。
    「ああ、そういうものですか」
    「そうだよ。だけど、きみはアイアンの五番で百三十ヤードずつ進むような、そんな年寄りじみたゴルフをしたくないだろう」
    「そりゃ、したくないですねえ」
    「だから、それを押さえて、できるようにならなきゃダメなんだ。いいかい、国会運営がそうなんだ。国会運営は力じゃなくて、タイミングなんだ。相手が弱ってきたなという時に押す。相手が強い時には引く。そのタイミングを見て、やりなさい」
    要は、ゴルフでそれをぼくに教えようということだったんですね。いやはや、実にありがたいことでした。

    ・森 文部大臣の時、ぼくが中曽根総理のところに入ったら、メモをくれたんですよ。名前がいっぱい書いてあった。そして、「森くん。この人たちを委員に入れてくれよ。文部省の言いなりになっちゃダメだ」と言われました。そこに書かれていたメンバーは、ウシオ電機の牛尾治朗、劇団四季の創設者で芸術総監督の浅利慶太、富士ゼロックス社長の小林陽太郎ら、中曽根さんの取り巻き連中です。
    田原 政治評論家の飯島清さんは入ってなかったですか?
    森 飯島さんは入っていた。それから、リクルート創業者の江副浩正さんも入っていた。
    田原 江副さんが入っていたんですか。なるほど。
    森 ぼくは直感的に「これは軽はずみで入れたらいかんな」と本気で思ったんです。ぼくは江副さんと個人的に親しかったけど、外しました。それから、牛尾さんら何人かを外したんです。もし江副さんがメンバーに入っていたら、藤波孝生さんの逮捕ではおさまらなかったと思いますよ。
    田原 リクルート事件ですね。

    ・田原 竹下内閣では、リクルート事件とともに、消費税導入をめぐって大騒ぎになりました。これについて、森さんはどう捉えていますか。
    森 ぼくらも、それはやむなしと考えていました。消費税というのは民主主義国家では当たり前のことで、要は高福祉高負担か、低福祉低負担か、あるいは中福祉中負担かという選択です。そおれは、その時の国の状況、国民の状態を見て、政治が舵取りをすべきことなんですね。北欧のように高負担にするなら、国がちゃんと面倒をみるけれども、可処分所得は少なくなる。日本人は自分のことは自分でお金を出してやりたいというのが常ですから、そうであれば、できるだけ負担を少なくして、しかも社会福祉を充実させていくというのが政治家に課せられた命題だと思います。

    ・森 どうしてかねえ。だけど、橋本さんは結局、それに乗ったんですよ。あの人は一度こうだと言うと、他人の意見に絶対に耳を貸さず、自分の道を進む。しかも、すぐに腹を立てるので、しょうがない人だなあという感じだったですけどね。それにしても、どうして自治省と郵政省をくっつけて総務省にしちゃうのか。
    田原 省庁を減らしたってまったく意味がないじゃないですか。
    森 あれはやっぱり旧内務省官僚の流れですよ。
    田原 もっと言うとね、省を減らすということはひとつの省が大きくなるわけでしょ。つまり、大臣の目が行き届かなくなり、官僚が勝手気ままにできるようになるんです。
    森 その際たる例が国土交通省でしょう。建設省と運輸省、国土庁、北海道開発庁が一緒になったわけですが、非常に意見が分かれたところですねえ。国交省は金を使うほうだけど、逆に金を供給する方の大蔵省の場合は、財務省と金融庁に分けた。それで、金融庁を第二検察庁みたいにしちゃったので、誰も手も口も出せなくなった。それが、今でも尾を引いているんですよ。金融庁が金融機関に入る時はすごいらしい。「みんな手を挙げろ。机の物はそのままにして触るな!立って、壁の方へ行け」と命じてやると言うんだから。

    ・田原 これは小泉内閣の時ですが、小泉総理が郵政解散をして大勝した後に、小泉さんに「あなたは道路公団や優性の民営化に取り組んでいるけれど、そんなものは端っこの端っこで、本丸中の本丸である霞が関を改革すべきだ」と言ったんですよ。そうしたら、小泉さんは橋本行革をよく勉強していて「橋本さんが大失敗した。だから、行革を成功させるには官僚対策を徹底的にやり、それからマスコミ対策を徹底的にやらなきゃいけないから、五年はかかる。田原さん、無理だよ」と言っていましたね。

    ・森 小渕さんから聞いた話の続きを言いますとね、小渕さんは竹さんに言われて派閥の会長になったが、癪に障るから、橋本内閣にだけは絶対に入閣しないと決めていたんです。
    田原 じゃ、小渕さんは橋本内閣に入らなかった。
    森 いや、入ったんですよ。その時に、やっぱり竹下さんに「消費税で橋本がつまずいた時、入閣していなければ、同じ平成研のきみには総理総裁が回ってこないよ。党が認めない。こういう時は大臣からの横滑りというのがいいんだ。だから、外務か大蔵に入ってくれ」と言われたと言っていたな。
    田原 それで、入閣したわけだ。
    森 外務大臣で入った。それは、小渕さん本人から聞いた。だから、竹さんという人はそういうところが深謀遠慮でね。
    田原 竹下さんというのはすごいね。深謀遠慮で、彼以上の人はいないんじゃなかな。

    ・田原 その小渕総理は小沢さんと会った直後に倒れ、亡くなりました。1999年に自自公連立政権が発足し、小渕総理は自由党党首の小沢さんと協議していたわけですが、その時、小沢さんは小渕総理に何を要求したんですか。
    森 いろいろと要求してきましたが、一番大きなのは自民党と合併したいと言ってきた。彼特有の攻撃です。
    田原 合併するのにも条件があったんでしょ。
    森 閣僚を三つ減らせとか、衆議院の比例代表をなくして定数を三百にするとか、党首討論をやれとか。それから、副大臣・政務官制を設けて、大臣を自由に外国に行けるようにしなきゃいかんとかね。どれも思いつきですよ。いつもそうだけど、自分で言い出して決めておいて、自分は守らないからねえ(笑)。

    ・田原 安倍内閣の菅義偉官房長官はどうですか。
    森 つきあいはあまりないんですけど、非常にしっかりしているね。簡単に右顧左眄しない。安倍一辺倒で来た人たちのなかではいいと思いますよ。同じ安倍一辺倒のなかでも、経済財政政策担当大臣の甘利明とか、塩崎恭久とか、山本一太とか、みんな「安倍、安倍」と安倍応援団の歌を朝から晩まで歌っているような連中だけど、自分の派閥や仲間を裏切ってやっているんですよ。
    甘利は山崎派の幹部でいながら存在感が薄くて、順番が来て大臣をやったけれど、それからずっとポストに就けなかったことにすごく不満だった。塩崎はすごくできる人ですけど、宏池会なのに派閥のために何かやるという気概がなく、親分も子分もいない。山本一太のごときはもうチンピラでどうしようもない(笑)。派閥に絶えず抵抗して、大恩ある福田先生の御曹司である康夫さんにまで楯ついてね。ぼくにも楯ついているけれども、そんな「抜け駆けクラブ」みたいな連中ばかりが「安倍、安倍」とやっている。
    田原 そう。そこが問題だ。仲よし内閣がダメなのは、仲がいいことがダメなんじゃなくて、仲よしの連中が派閥のことも何も考えずに「安倍、安倍」で踊っているからダメなんだ。
    森 うん。自分のこと、自分の出世ばかり考えている。要するに、自分が貢献せず派に対する不満をそっちに持っていっているだけの話ですよ。
    ところが、安倍くんの方が一枚上手だと思うのは、そういうやつらを上手にまとめながら、自民党のなかから「なるほど」と思える人材を引き抜いて結構使っていますね。たとえば、防衛大臣の小野寺五典であるとか、総務大臣の新藤義孝だとか、そういう将来の自民党を支える真面目な政策通を大事に使っていると思いますよ。もうひとつ、彼らしいなと思ったのは、総裁選挙で戦った石破茂や石原伸晃、元総裁の谷垣禎一まで抱え込んでいることです。
    田原 大事にして、ちゃんと使っていますね。
    森 誰の知恵かわからないけれど、安倍くんの考えだとすると、これは立派なもんですよ。

  • オリンピック関連で昨今話題の森元総理に田原総一朗が聞き手の形で話を引き出した一冊。正直物凄く面白かったというのと、森元総理に対して悪い印象は持たない。なんでも喋っていてそれこそ広報チェックは入ってるのかと心配するぐらいだけど、これまでの自民党政治がどういうものであったのか、マスコミを通じた印象とは違う血の通った部分や、最近あまり聞かなくなった金の話など。(聞かなくなってなかったわ。都知事それで辞めたんだったわ。)ここ半世紀の日本の政治の事情の一面がよくわかる内容だった。ビートたけしみたいな立ち位置だったら人気になったんだろうけど、政治家で首相経験者で今も公人ですから、もう少しつまらなくてもサービス精神を押さえた話の仕方をしなくちゃいけないだろ、と思いつつもこの本は面白かったです。

  • 森元総理は、人が良かったことが分かる本だった。人前だと、何か喜ばせることを言いたがる。それが災いとなることも多かったが。自民党のどの派閥を担当するかで、記者クラブの記者にも派閥感情が芽生えてしまう。対象に近づき過ぎて間取り込まれてしまう。大変危険なことだ。これこそ、権力の番犬が愛玩犬となる例だろう。

  • 喜朗元総理と田原総一朗氏の対談をおさめた本です。
    読むと、 森喜朗氏が好きになります。

    代議士を引退したとはいえ、あれこれ裏事情を語っていて面白かったです。もちろん、田原総一朗氏が聞き上手ではあるのですが。
    これまで、森元総理には、良い印象を持っていなかったのですが、行動力・サービス精神・語り方など、総理になって、その後もずっとキーパーソンで居続ける理由がわかりました。

  • 森さんて印象あまり良くなかったけどこの本は面白かった!
    ロシアとの重要性もよくわかるし、それがどうしてうまくいかないのか?
    戦後の自民党政治を学ぶのにも良い1冊です!
    それにしても加藤紘一先生は残念です…

  • 森さんが首相になった時、も少し賢い人を選べばよいのにと正直思ったが、この本を読んで信頼された人柄が首相の座につけたと知った 石原親子の関係が見えて来た 歴代首相の離合衆参が国際社会になじまないことでありながら、永田町の村社会はお粗末極まりない 裸で外国の指導者と付き合える人を育てることが大切だと思う

  • 正に政治の裏の裏の話がポンポンと飛び出してくるし、しかも随所で抱腹絶倒。実名でかなり細かな事まで具体的に言うので、読んでいるこちら側がここまで言って良いのかなと、返って心配するほでである。
    聞き手の田原総一郎も巧みに誘導するし、森元首相も心置きなく喋っている(?)ので一種の清々しさを感じる。
    70年代以降の政治に興味がある人は、必ず面白く読めること請け合います。
    チャーチルやニクソンの著したものと、比較すると幻滅するかもしれないが、これも日本の政治の一面かなとも思う。

  • 森喜朗氏に語り中に、これまで明らかになっていなかった真実が現れて、かなりの良書です。

  • かなり詳細にぶっちゃけており非常に面白かった。なんでたか近代史は好きで、一つ情報が入ると今までのと組み合わさり新たにとか増えてきた。あとは宏池会の話だが、出ないだろうなあ。あと小沢系。

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著者プロフィール

もり・よしろう●1937年石川県生まれ。早稲田大学商学部卒業。産経新聞記者を経て1963年より議員秘書。1969年、衆議院議員初当選。以来、43年にわたって衆議院議員をつとめる。第85、86代内閣総理大臣。2012年、代議士引退。日本体育協会会長、日本ラグビー協会会長などを歴任。

「2013年 『日本政治のウラのウラ 証言・政界50年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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