お父さんと伊藤さん

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 341
感想 : 69
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062187589

作品紹介・あらすじ

名立たる選考委員たちがダントツで支持した“家族小説”
第8回小説現代長編新人賞受賞作!

石田衣良氏「台詞の上手さは出色」
伊集院静氏「安心して読める文章力を備えていた」
角田光代氏「思わず家とは何かを考えさせられた」
杉本章子氏「これほど登場人物の体温を感じた作品はなかった」
花村萬月氏「テンポよく読めたし、とても安定」

「この家に住む」
父が望んだのは、娘と彼氏の狭い同棲部屋。
すれ違って生きてきた“父”と“娘”に心通じ合える日はくるのか?

34歳の彩は「伊藤さん」という男性と暮している。彼はアルバイト生活をする54歳。夏のある日、彩のもとに兄から「お父さんを引き取ってくれないか」との連絡が。同棲中の彩は申し出を拒むが、74歳の父は身の回りの荷物を持って、部屋にやってきてしまった。「伊藤さん」の存在を知り驚く父。だが「この家に住む」と譲らない。その日から六畳と四畳半のボロアパートで3人のぎこちない共同生活が始まった。ところが父にはある重大な秘密が……。

感想・レビュー・書評

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  • 兄から父親と一緒に暮らしてほしいと言われたあたし「彩34歳」。
    無理ムリ無理!
    だってあたしには同棲中の彼「伊藤さん54歳」がいる。
    きっぱり断ったのに、家に帰るとすでにそこには「お父さん74歳」が……。
    その日から始まる窮屈で奇妙な同居生活。 

    これが実質デビュー作の作家さんのようですが、上手いです。
    はじめ彩の語り口が読みにくいと思ったけれど、すぐに気にならなくなるくらい。文章も話運びも人物設定もうまい。
    元教師で気難しく身内に厳しいお父さんと、バツイチで54歳なのにアルバイトで給食のおじさんをやっている伊藤さん。
    お父さんが伊藤さんを気に入るわけなどなく、同居は始めたものの歩み寄りは一切なし。
    伊藤さんのほうはといえば、淡々飄々としていて何を言われてもされても動じない、というか意に介さない。
    そんな日々が過ぎていき、ある日明らかになるお父さんの秘密。
    なんという爆弾!!

    なぜ?どうしてこうなった?頭を抱える彩の心に浮かんだ言葉、
    「誰が悪いのか、ではなく、誰もが悪いのだ」

    物語終盤、「お兄さんにもチャンスをあげなきゃ」と言い、お父さんには「嫌です」と言い、彩にはにっこり笑いながら置き去りにする伊藤さん。淡々飄々としているのに、なんだこの男らしさは。
    ○○は逃げない、が口癖の伊藤さんの「おれは、逃げないから、さ」も素敵。

    降り出した雨の中、ビニール傘をつかんで駆け出した彩はお父さんに追いついたとき、なんと言ったのだろう。
    いろいろと思い浮かべては温かい気持ちになり、本を閉じた。

    • 円軌道の外さん
      九月猫さん、お久しぶりです!
      たくさんのポチとあったまるこなコメントに
      ホンマ涙出そうでしたよ!(>_<)

      休んでた間の詳しい経緯...
      九月猫さん、お久しぶりです!
      たくさんのポチとあったまるこなコメントに
      ホンマ涙出そうでしたよ!(>_<)

      休んでた間の詳しい経緯はコメントいただいた斉藤由貴の『情熱』のレビューに書いてるんで、
      またお暇なときにでも見てみてください(笑)

      てか、九月猫さんも同じくブランクがあったみたいですが、
      読書って、『好き』なものだからこそ、
      義務感でレビュー書くようになったら
      なんか寂しいですもんね。
      レビューを書くためでも、何かを得るためでもなく、
      ただ本が好きで物語の世界に耽溺するためだけに
      本を読んでいたあの頃の気持ちを思い出すためにも、
      『長いお別れ』や『ロングバケーション』は必要なことやと
      あらためて思いましたよ(笑)
      (…となにやら、休んでた自分を正当化してますが笑)


      で、この本、確か去年、映画化してましたよね!
      上野樹里とリリー・フランキーと藤竜也で。
      話題作ではなかったけど、
      上野樹里もリリーさんも好きな俳優なので
      気になってたんスよね~(笑)
      (つか、いつの間にやら、リリー・フランキーって世間の認識も、はじめから役者だったみたいになってるし笑)

      上野樹里は満島ひかり以前の憑依女優で、
      (勝手に僕がそう呼んでます笑)

      とにかく役に成りきるの範疇を越えた、その人自身として『スクリーンの中に生れる』
      女優なので、
      観賞後『あの演技上手かったわ~』ではなく、
      『あの子に会いたいな~』とか、
      『あの子今どうしてるかな』とか
      見終わったあとに
      実在する友達のように本気で思ってまうんです。
      僕の中ではそれくらいスゴい女優なんですが、
      結局忙しさに追われて、映画も行けなかったので、
      せめて、せめて、この小説読んで
      頭の中で上野樹里で妄想してみたいです!(笑)

      あと、久しぶりに
      たくさんの九月猫さん色のレビューを読ませてもらって、
      『あっ、この本、九月猫さんのこのレビュー読んで
      手に入れたんや!』とか、
      昔僕が書いたコメントを読んで
      4年前からまったく変わってない自分にこっ恥ずかしくなったり(笑)、
      なんか懐かしかったです。


      しょうもない話長々してしまい、すいません!
      これからも末長く楽しい話ができるよう、
      お互いムリなく頑張っていきましょう!
      2018/01/19
    • 九月猫さん
      円軌道の外さん♪
      こちらのほうこそ、たくさんのポチとコメントありがとうございます!
      円軌道の外さんのコメントを読ませていただいて、ああ本...
      円軌道の外さん♪
      こちらのほうこそ、たくさんのポチとコメントありがとうございます!
      円軌道の外さんのコメントを読ませていただいて、ああ本当に戻ってきてくださったんだなぁと実感・・・じわじわ嬉しさがこみあげてきてます(*´ω`*)

      そうですそうです、これ、上野樹里ちゃんとリリーさんで映画化された作品です。
      映画は観ていないんですけど、原作はおススメですよー。円軌道の外さんもお好きな系統ではないかしら……と思います。(と水を向けてみたり。実のところ円軌道の外さんの感想が読みたいのです・笑)
      上野樹里ちゃんが憑依女優!うん、わかります!
      隣の市出身なので、友達に上野樹里ちゃんの裏話を知ってる子がいるんですけど、そういうのってきっといい話ばかりじゃないんだろうなと聞かないことにしてます(;^ω^)

      本当に私も懐かしくて感涙ー♡
      これからは私ももうちょっとこちらに顔を出そう!
      また今後とも仲良くしてくださるとうれしいです♪
      2018/01/19
  • 主人公の私と、年上の彼氏と、父親の奇妙な同居生活。
    憎めないキャラクターで楽しめた。

  • タイトルが良いよね。
    それを引き立たせるような、シンプルな表紙も好き。
     ■ ■ ■ ■ ■ 
    伊藤さんのお人柄なのか、のほほん感が漂うお話。
    結構シビアな状況なんやけど。
    『家族』って、他のどこよかキレイゴトが許されない集団だもんね。
    自分も親ときょうだいとの関係が、現在進行形でちょっと困った状態にあるぶん
    最後の彩さんの決断の行方は気になるところ。
     ■ ■ ■ ■ ■ 
    気になると言えば、伊藤さんの過去も気になるなぁ。
    お父さんの実家でのセリフからして、単なるフリーターのおっさんでは無さげやし。
    スピンオフで書いてくれないかしら。
     ■ ■ ■ ■ ■ 
    カンマニワさんのソースの提案も良かったな。
     ■ ■ ■ ■ ■ 
    彼氏と友達がこんだけすてきだってことは
    彩さん自身もそうなんだと思うのよ。
    未来は明るいばかりではなく、後悔することも度々あるだろうけど、きっと彩さんはだいじょぶ。
    亡くなったお母さんに代って、そう言ってあげたくなるようなお話でした。

  • 今後、ものすごく期待のできる新人作家。第8回小説現代長編新人賞受賞作「柿の木、枇杷も木」を改題したものです。
    改題前も素敵なタイトルだけど、「お父さんと伊藤さん」のが惹きつけられたな。新刊案内でこのタイトルでなければ手に出すことはなかっただろうと思う。けどほんとうに読んで、出会えてよかったなって思います。

    名立たる選考委員たちがダントツで支持した“家族小説”
    と銘打つだけあると思います。もはや新人ではない筆力の安定さ。台詞運びが実に巧い。のちに戯曲のほうで活躍されていたと知り納得
    初っ端からとてもテンポが心地よい。するりするりと物語を運んで行くし、言葉選びが魅力的、惹きつけられる表現が多い。首をかしげる表現もあったけれども。

    34歳の彩はアルバイト生活をする54歳「伊藤さん」という男性と暮している。そんな中74歳のお父さんがやってきて奇妙な3人暮らしが始まることになる。ぎこちない共同生活を送るなかで分かるお父さんの重大な、どこの家庭でも起こりうる秘密が明るみになっていく――。

    お父さんも伊藤さんも彩も、彩の兄もその嫁も、登場人物みんなに愛着わくのもこの小説の素晴らしいところなのかも。偏屈なお父さんでさえも、54歳バツイチ素性わりかし不明の伊藤さんも、頼りにならない兄も、みんなみんな。
    伊藤さんの~は逃げないっていう口癖もお父さんの大いなる無駄遣い、文明人ならウースターという妙な口癖もテンポとセンスの良さが光りさらに物語を際立たせている。
    途中ちょっとすかすかで、少しだれてしまった箇所もあったけど、一貫して楽しかった。

    ただ物語終盤のところ(246頁)誤植かなぁと。。。
    (来ていた→着ていた)ハラハラドキドキ後の注目エピソードだったことも手伝って目立ってしまっていたのが少し残念。意味が通じず読むのが滞ってしまった。

  • 34歳の彩は、54歳の伊藤さんと同棲している。そこへ、彩の父が同居することになり…。

    ふだんの彩をとりまく人は、のんびりとした空気でマイペース。
    そこに若干空気読めない父という異分子が投下されることで、彩のまわりが騒がしくなる様子が、コミカルで楽しかった。
    私が実際に彩の立場になったら、居留守使うなり黙って引っ越すなりして、父との同居を拒否してしまうだろう。。
    だから、同居する彩と伊藤さんは優しいと思います。

    父の秘密が判明した時は、衝撃だった。
    まさか…誰かを庇っているとか、事情があるんじゃないの?と思ってしまった…。
    火事の描写もショックだったけど、それがきっかけで昔の教え子と再会したり、まさに災い転じて福となす。
    訪ねてきた教え子は、阿佐ヶ谷姉妹の二人で脳内再生された笑。

  • 初めて読む作家さん。
    文体とかストーリーとか好き。

    最後謎が残っちゃったけど、、、。

    段ボール、、、

  • 読みやすい文章で一気読みしてしまった

    アラサー主人公と定年退職後のお父さん(元教師でお堅い)の距離感はあるあるなのでは 最初は3人の同居物語なのかなと思っていたらなかなかヘビーな展開に

    家族って遠慮がないから余計なこと言ったり、あれこれ深入りしたくないから知らないことがあったりして以外と難しい関係だけど他人の伊藤さんがいたからこそ2人は向き合えたのかな

    映画では伊藤さんをリリー・フランキーが演じていてぴったりだなー

  • すごく面白かった!夢中で読んだし引き込まれるかんじだった。


    本屋のバイトで生計を立てている彩は、20歳年上の伊藤さんと同棲している。あるとき、兄から電話がかかって来て同居している父親を引き取ってほしいと打診があった。同棲してる人がいると断った彩だが、帰ってみるとなんと父親がいるではないか。そして、父は「しばらく世話になる」と言い、伊藤さんとの関係を聞いてくるのだった。偏屈な父親とは会えば喧嘩ばかりしていた彩は早く兄の家に帰ってくれないかと思っていたが…


    彩と同い年だからかなんとなく気持ちが分かってしまった。母ではなく父を兄妹のうちどっちが引き取るのか。父には「戻る場所」があっても「帰る家」はない。厄介になっていることは分かっている。そして、息子の嫁にも迷惑をかけていることもわかっているのだ。


    女の人はコミュニティを築くのがうまいと思う。もし、配偶者亡くなってもなんやかんやでお友達との交流があったりして「場所を選ぶ」ことが出来る。だけど、男の人は本能なのか分からないけど何をしていいのか分からずに街を彷徨って「場所を選び取っている」という。確かになぁ。そして、それを目のあたりにするとすごく辛いよなぁ。自分の親が行く場所なくて少ない選択肢の中から選んでるんだもん。もし、これが彩の母だったらたくさんある選択肢の中で、今日はこれ明日はこれって選ぶことが出来ていたんだろうなぁ。


    うちにも一人で暮らしている親がいるから身につまされる。そして、つい実親だから説得するつもりが責める口調になって交渉決裂になる。そんなときに、伊藤さんみたいな第三者がいると案外話はまとまったりするんだよね。
    だけど、伊藤さんがお父さんの申し出を断ったときは衝撃的だったけど。


    この小説はたぶん、しばらくして自分の中でろ過して、また「あー読みたいな」ってなるものだなぁ。


    2019.12.15 読了

  • 大好きの一言に尽きます!

  • 物語は、あたしこと彩の語りで進んでいきます。

    最初は彩34歳と伊藤さん54歳の同棲恋愛話に、彩の父74歳が首を突っ込んでくるパターンかな、と思っていました。

    が、読み進めるうちにこの話は「お父さん」の話なんだ、と気づきました。
    いい意味で裏切られました。

    伊藤さんはいい味は出していますが、準主役ではありません。完全に脇役です。

    お父さんの置かれている状況を想像すると、なんともいえない気持ちになります。でも、それぞれにもちゃんと理由があって、結果、お父さんの居場所がなくなってしまっているのです。

    お父さんの思いを最後に理解したのは、娘の彩でした。でも、それは読者には言葉ではっきりとは示されていません。
    すっきりしないと思う人もいると思います。

    でも、そもそも人の気持ちなんて、本当にはわかることはありません。
    お父さんのように本人ですら、本当の思いに気づかないこともあるくらいですから。

    物語の読み手もお父さんの思いを推測するくらいの曖昧さで、十分なのではないでしょうか。

    お父さんが万引きしていたのは、食器類でした。

    孫のお受験をやめさせたくて、無意識に万引きしていたのかな?とか、もう永遠に取り戻せない息子娘、妻、そして生まれ育った故郷との「時間」を取り戻したかったのか…

    私が思いついたのはこんな感じですが、みなさんはいかがでしょうか。

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著者プロフィール

1969年東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。出版社勤務の後、劇作家として活躍。2007年「ミチユキ→キサラギ」で第3回仙台劇のまち戯曲賞大賞、12年「春昼遊戯」で第4回泉鏡花記念金沢戯曲大賞優秀賞を受賞。13年に『お父さんと伊藤さん』で第8回小説現代長編新人賞を受賞し、小説家デビュー。著書に『おまめごとの島』『星球』がある。

「2017年 『PTAグランパ! 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中澤日菜子の作品

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