デッド・オア・アライヴ

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感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062187596

感想・レビュー・書評

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  • 半分以上が初読みの作家さん。

    大抵アンソロジーは私にとってはいまいちなのだが、本書は面白い作品がとても多かった。
    初読みの作家さんである竹吉優輔氏の「イーストウッドに助けはこない」は、この些細なことも全部伏線なんだろうなと思って読んでいたら、見事にそうであって綺麗に回収された。
    映像がありありと想像でき、カッコよかった。
    私の脳内映像では、本当は登場人物よりだいぶ年齢が上になってしまうが鶴瓶さんで展開された。
    その鶴瓶さんがカッコいいのだ。


    私はあまり「○○賞を取った作品」だから読む、ということにはこだわっていなくて、ブクログ内で人気であったりレビューを拝見して面白そうだなと思って読んだ作品がそうか「○○賞を取った作品」だったから話題だったのか、というパターンが多いような気がする。
    ブクログ本棚に「○○賞」のタグを作るのも、後になってからだ。

    ということで、本書を読んだことをきっかけに、江戸川乱歩賞歴代受賞一覧を検索して、ブクログ本棚に新たにタグを作った。
    今までに読んでいた本で5冊該当した。
    なお、本書は江戸川乱歩賞作家アンソロジーであって、もちろん受賞作ではないのでタグ付けしない。

  • アンソロジーのいいところは、ふだんは手に取らない作家の作品に触れられるというところ。
    横関大さんと鏑木蓮さん目当てで買ったのだが、他の作家さんの作品も面白く読めた。遠藤武文さんのは、あれはなんなんだろう、不思議な内容の作品だった。
    一応帝国ホテル縛りにはなってるけど、あんまり関係なくなっちゃってた気がする。2013年9月7日の12:00に帝国ホテルにいる、ということの意味がイマイチわからなくて、まあわからなくても作品を読むには関係なかったけど、ちょっとあてが外れた感じがする。

  • 薬丸岳氏の夏目シリーズが読みたくて手に取った本。
    帝国ホテル縛りという制約の中で
    これだけ幅広い作風に出逢えるのはかなりお得だと思う。

    不惑(薬丸岳)
    話のラストで動機が一気にひっくり返るのがすごい。
    というか夏目のハンパない達観振りには感嘆した。
    イマドキこんな達観した40歳はそうそう居ないんじゃないか(爆)。

    イーストウッドに助けはこない(竹吉優輔)
    導入部を読んだ時点で
    どうやって帝国ホテルを絡めてくるんだろうと思っていたが
    意外とうまいこと纏まったので驚いた。
    これも最後のどんでん返しが爽快。
    そこに至るまでの追い詰められっぷりがものすごかったので余計に。

    悪魔的暗示(高野史緒)
    実在の人物を絡めてくる力業。
    連城三紀彦氏の『黄昏のベルリン』を彷彿とさせる。

    クイズ&ドリーム(横関大)
    …ああ懐かしい『ファミリータイズ』。マイケル・J・フォックス(笑)。
    まさかSFを繰り出されると思わなかったので吃驚だ。
    『BACK TO THE FUTURE』観たいなぁ久し振りに。
    つーかPART3観た記憶がないんだけど…(笑)。

    平和への祈り(遠藤武文)
    作中に作者登場、ということなんだろうか。
    なんつーか、シリアスな聖おにいさん的な?(爆)。
    作家に起こった断片的な出来事たちが最後にひとつに纏まる様は圧巻だった。

    墓石の呼ぶ声(翔田寛)
    この話がいちばん帝国ホテルの歴史的な部分に深くかかわっていた気がする。
    最後に辿り着いた結末は恐ろしいものだったけど
    それが真実か否か曖昧に終わっている辺りがステキだった。

    終章~タイムオーバー(鏑木蓮)
    満足に体が動かない状態で頭をフル回転させて真実に辿り着いた
    凛子の聡明さと大胆な行動に吃驚。
    人を束ねる人はこうでなくちゃいけないんだろうな。
    これも最後のどんでん返しが鮮やかな話だった。

  • まーちさんのレポを読んで薬丸岳さんの短編に
    夏目刑事が登場するのを知って早速手にしてみました



    7人の著者に与えられたテーマは
    「デッドオアアライブ(生死の危機)」
    さらに各作品の登場人物が2013年9月7日正午の
    帝国ホテルに同時に存在するという時空間のミステリー



    薬丸岳:不惑
    結婚式のビデオ制作ディレクターをしている窪田には
    12年間眠りつづけている恋人がいる
    そして今日行われるある結婚式で窪田は復讐を企てていた。
    夏目が窪田の真意にたどり着いた時
    そういう事かとため息とともにとても切なかったです。



    竹吉優輔:イーストウッドには助けはこない
    学生時代にカタギの世界から足を踏み外し、非合法に近い
    金貸しの仕事を手伝うコージ。その道に入るきっかけとなった
    叔父を仲間とリンチする羽目になるが。
    コージの人生に何かと関わってきたダメダメな叔父
    私もそう思っていたけどロマン溢れる叔父さんに
    読了後、清々しさを感じました。



    高野史緒:悪魔的暗示
    1918年、帝国ホテルのシガーラウンジ、少年はアメリカの
    スパイたちの会話を耳にしていた
    ロシア帝国崩壊で闇と消えたロマノフ王朝の秘宝の行方は
    う〜ん複雑。



    横関大:クイズ&ドリーム
    ホテルにチェックインした川尻は、突然部屋を訪れた
    お面をかぶった男に「これからクイズを出し合い
    それに答える、負けた方がこのカプセルを飲む」という
    ゲームを強制され。
    緊迫感溢れる展開と結末はアメリカドラマを
    1本見たような感じでした。




    遠藤武文:平和への祈り
    帝国ホテルのエントランスでケサランパサランを見かけ
    そのあとを追った作家。日比谷公園の林の中で
    「我が名はミカエル」と名乗る天使と出会う。
    ミカエルに試練を与えられた作家の右往左往する
    姿はそういう立場になるとそういうものなのか・・と
    違和感がありつつも不思議なお話でした。




    翔田寛:墓石の叫ぶ声
    帝国ホテルのロビーで倒れた雨宮勇吉という老人は戦後
    ずっと9月1日に泊まりに来る常連だ
    ホテルマンが聞いた、雨宮の過去と墓石の秘密とは
    真実はどこまでも残酷で切なかったです。



    鏑木蓮:終章〜タイムオーバー〜
    ナノバブルと呼ばれる微細な気泡を水耕栽培に活かす
    事業を興し、37歳の女性社長として手腕を振るう日下凜子
    ある夜、一人で酒を飲んでいると身体をしびれが襲い。
    小さな綻びから言葉の毒となり自分に返ってくる
    そっちのタイムオーバーか・・・と力が抜けました。




    どの作品もおもしろかったです。
    アンソロジーはあまり手にしないのですが
    新しい作者さんに出会え気分転換になりました。

著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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