- Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062188098
作品紹介・あらすじ
日本橋本石町に弥三郎店と呼ばれる長屋があった。事情を抱えた住人ばかりが住んでいて――。
「時の鐘」真面目一徹、そろそろ嫁をと周囲から勧められる鉄五郎。そんな鉄五郎に気になる相手が現れたのだが、若くして出戻ったおやすという莨屋の女だった。
「みそはぎ」おすぎは、老いた母親の面倒をみている。ある日、勤め先の井筒屋に見慣れぬ男が来るようになった。
「青物茹でて、お魚焼いて」おときの旦那は錺職人。次第に泊まり込みの日数が長くなり、しまいにはひと月にもなった。
「嫁が君」おやすはずっと旦那が家にいるおひさのことが羨ましい。ある日、この旦那が寄せ場からきた人物だと噂になる。
「葺屋町の旦那」おすがのかつての奉公先の倅が、弥三郎店にやってきた。どうやらこの倅、わけありのようで。
「店立て騒動」弥三郎店が店立てに?! 住人は緊急事態にてんやわんやの大騒ぎ。どうにかこの事態をとめられないか。長屋の住人が一致団結して行ったことは。
感想・レビュー・書評
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日本橋本石町にある、通称「やさぐれ長屋」には、様々な事情を抱えた住人が集まっている。
お節介をやいたり、やかれたり、助けられたり、助けたり。
貧乏だけど、人情味溢れる物語。
もっと、読みたかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読んでみたら既読だったが、遠い昔のことなので新しい気持ちで読めた。
長屋の店子たちのあれこれ。
融通の利かない鉄五郎と出戻り娘のおやす。初対面の印象はあまり良くないのだが、そこから次第に相手が気になってきて…という、まるで恋愛マンガのような展開。
母親の介護で自分の生活すらままならないおすぎ。同じように老いた母親と共に暮らす喜助は何故かおすぎに言い寄ってくる。
現代にも通じる介護問題にストーカー事件を混ぜたようなハラハラする展開。
余所の女の素へ転がり込んだきり帰って来ない夫に腹を立て、こうなりゃ自分もと折しも言い寄って来た男と新たな人生を楽しもうとしたおとき。
これまた現代にもありそうな虐待事件に繋がりそうな展開。
など、様々な人生ドラマや人間関係を描いた六編。
先に書いたように緊張感ある話もあるが、結果的にはホッとするので安心して読める。
近すぎる長屋の住人たちとの関係は時に煩わしく厭になることもあるが、いざという時はやはりありがたい。
第四話のネズミが出た話では私もおやす同様ゾッとした。罠に掛けたところでそのネズミを始末するなんて恐ろしくて出来ない。
どんな噂があろうが実際に付き合ってみなければその人のことなど分からない。逆にどんな人でも魔が差すことはある。やり方を間違えてとんでもないことになることもある。
それでも日頃の付き合いがあれば助けてくれる。おせっかいでもありがたい。まさしく遠くの親戚より近くの他人。
最終話の長屋取り壊しの噂のオチは意外だった。しかし大団円。宇江佐さんらしいスパイスもありながら、楽しく読めた。 -
時代小説ってホッコリするよなぁーと気楽に読めました。
江戸時代の庶民の生活に入り込めて楽しいです。
さて、「弥三郎店」という裏長屋に住む人々たちのお話。
「店」とは江戸時代では「借家」という意味で、物語で「店子」と言われているのは入居者ということ。この話は江戸版『めぞん一刻』といったところですかね。もっと他にいい例があると思うけど。
鉄五郎が言う「おきゃあがれ」とか、おやすの「はばかり様」とか江戸の言葉がまた楽しい。こういう所で使うんだーと勉強になりました。
それにしても女性の名前がみんなひらがなだし、全部同じに見える( ; ; )
これは男尊女卑なところがあるけど、女性の名前に漢字を使うことを歓迎しなかったり、ひらがなしか使えないといった理由があるみたいですね。はー、江戸文化の学び直しになりました。 -
市井を切り取り、これほど濃密に書くことのできる作家さんをほかに知らない。多くの人がそうであるように、先生の新刊が読めないことが悲しい。
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2015/04/06
面白かった。
いつもですが、世の中を...というか、1番普段の普通の生活というかをよく表してるなぁと思う。
身に覚えがあったり年をとるにつけて発生する問題だったり。
あと、表紙がよい。 -
弥三郎店に住まうそれぞれの家族のお話。
ちょっとほろっとしたり、危なっかしかったり、
胸キュンしたりの安心な宇江佐ワールドでした。 -
そのうちNHKでドラマ化されそうですな。
安定の面白さ。 -
2024年2月12日
男と女の棲み分けがはっきりしてたのだな。この時代は。
今はムッとしてしまう。
人との関わりが強くて、本音で生き生きと暮らしている。
お節介で働き者で、気が強くて洒落っ気たっぷり。
こんな長屋いいなと思う。 -
日本橋本石町にある、通称”やさぐれ長屋”には、
様々な事情を抱えた住人が集まっている。
一本気な職人、早々に出戻った若い娘…。
お互い、お節介をやきながらも助け合う
長屋の人々の毎日を描く。