- Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062188111
作品紹介・あらすじ
『ジーノの家』で「日本エッセイスト・クラブ賞」、「講談社エッセイ賞」を同時受賞した、イタリア在住歴30年以上の著者が描く、食と人を巡るエッセイ集。青空市場で魚を売る無口なカラブリア出身の三兄弟。毎年、夏に農家で作るトマトピューレ。自慢のオリーブを黙って差し出す、無骨なリグリアの父娘。スープに凝縮される家族の歴史。食べることは、生きること。食と共に鮮やかに浮かび上がる、イタリアに住まう人々の営み20編。
感想・レビュー・書評
-
最近2冊続けて内田洋子の本を読んだ。「海をゆくイタリア」と本書「皿の中に、イタリア」である。以前は内田洋子をよく読んでいたが、この2冊は実は1年ぶりの内田洋子だった。「海をゆくイタリア」は、内田洋子が所有している船の船長が主人公であり、内田洋子の他の作品とは、趣が異なる。本書「皿の中に、イタリア」はこれまでの内田洋子のテイストであり、ある意味、安心して内田洋子を堪能した。
内田洋子が料理に対して並々ならぬ知識と実践力(要するに腕前)を持っている(持っていそう)ことに驚いた。料理に関しての描写が、素晴らしい。
【引用】
母親は、長年使い込んですっかり色が褪せてしまったプラスチックのボウルに水を張り、石のようなパンをいくつか放り込む。
その一方で、窓際に吊るしてあるニンニクを取り、薄皮を剥き、包丁の背で叩き潰し、その手でボウルからパンを引き上げ、ざっと余計な水を切り、濡れたパンの表面に潰したニンニクをなすり付ける。
ざくざくざく。細長いトマトを角切りにしたかと思うと、皿に並べたパンに載せ、上からオリーブオイルと塩をかける。トマトは生食向きの品種ではなく、サン・マルツァーノという古くから近郊で生産されているものである。甘くて濃い味がして、たいてい水煮にしソースとして使う。
【引用終わり】
これは、内田洋子が友人宅を訪問した際に、友人の母親が料理を作ってくれているさまを描写したものであるが、このような描写が作品のどこにでも登場する。一度訪問した友人の家で、たまたま母親が作ってくれた料理を、どうしてここまで細かく描写できるのか謎である。
もちろん、このような細部の描写は、料理に限らず内田洋子の得意とするところなのであるが、それにしても料理に関しての描写、内田洋子の料理好きが(本当に料理好きかどうかは知らないが)よく出ている。
本書は、友人・知人達との食事や料理や料理素材に関してのテーマで書かれた短いエッセイを集めたエッセイ集である。
これを読むと、内田洋子ばかりではなく、イタリア人が食べること、および、食べながら友人・知人・家族と交流することが好きなことがよく分かる。また、内田洋子と同じく、食いしん坊というか、料理・食べることが大好きなことも非常によく分かる。中には悲しい、苦い話もあるが、楽しく読めるエッセイ集だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
図書館で。
友人が面白いよ、というのでリクエストして借りたのですがハードカバーだった… 通勤のお供にはちょっと重たかった。
そう言えばイタリアとかスペインはタコとか食べるんだったなぁなんて思いながら読みました。イタリア人というと陽気で明るいラテン系というイメージがありますがイタリアだって広いものなぁ。色々な人が居て当然だよなぁ。日本だって北海道から沖縄まで縦長の国土に住む人間が皆同じ性格している訳ではないのだし。
魚屋さんと段々仲良くなっていく過程が良いですね。何尾、とかじゃ無くてキロ単位でドサっと売るのも海外らしいなぁと思います。読んでいてイタリア料理が食べたくなりました。個人的にはドイツ人のバカンスの吝嗇っぷりがとても面白かったです。 -
内田洋子のエッセイはこれで5冊目を読了した。食べ物のことに関する話は他のエッセイにも登場するが、『皿の中に、イタリア』では必ず食に関するエピソードがあり、当然ながらイタメシを食べたくなり、勤め帰りのスーパーで近いものを買い求めたことは言うまでもない。
本日は2023.3.25読了したので、イタリア産の白ワインとオリーブを買ってきた。
最初に読んだのは、『モンテレッジォの小さな村の旅する本屋の物語』であったが、どの本もそうだが難しい熟語がチョイチョイ出てきてスマホのお世話になる。前後の文脈でなんとなく分かるので、シカトしていたが、だんだんわからないのが腹立たしくなり都度調べながら読み進める、満員電車の中ではそれは苦痛である。
しばらくの間 内田洋子のエッセイを読んでみようかと思う。積読が5冊くらいあるので、読むのが楽しみである。 -
カラブリア島出身の魚屋三兄弟との出会いから始まり、料理を軸に広がっていく様々な人とのエピソード。
きれいな文章で読みやすく、読んでいるだけで温かくなる本。 -
2019年8月21日読了
-
人とのつながり、土地とのかかわりと共に食がある。
食を楽しんいるか?生きていることが楽しいか?と、問いかけられているような気がした。 -
カラブリア三兄弟を支点としてめぐっていくイタリア人間模様。安定の内田洋子。本当にジーノの家で始めてこの筆者を読む機会があった幸運に感謝。
珠玉の佳作を今後も期待。 -
タイトルから、イタリアの食にまつわる、軽めのエッセイ集かな、と思って手に取ったのだが、思っていた以上に読み応えがあった。
著者がイタリアに長く暮らすうちに出会った人々の、食から浮かび上がる生活や悩み、人生。
美味しいものがたくさんあるイタリアでも、手間のかかる伝統的な料理でなく、手軽で画一的な料理が幅をきかせつつあるが、それに抗する人々もいれば、いろんな問題から食の豊かさを享受できない人も…。
おいしい食べ物もたくさん出てきたので、それを堪能しつつ、いろいろと考えさせられる本でもあった。 -
ひとつひとつのエピソードが物語のようで、読み応えあり。イタリアとの関わりを静かな口調で、自然に描けるひとは、今は彼女だけなのではないでしょうか。
-
巡り合って良かった、この本に。
行ったことがないのに、繰り広げられる食のあれこれが、実感を伴って目に浮かぶ。
保存版にして時々取り出して読みたい。いつかサルデーニャにリグリアにカラブリアに行くことを心に誓って。